ファイル56:刃と不自然な待ち合わせ『後編』
前回までのあらすじ
杯戸競泳プールに遊びにやって来た、刃達浪花の少年探偵団。
そこで刃は、関西弁の男から飲み物のお使いを頼まれる。
売店が近いというのに、わざわざ刃にお使いを頼んだ男。
それだけでもおかしいが、もっとおかしいのは男のそばの浮き輪。
幹彦がつまづいたのに、ほとんど動かない浮き輪。
それなのに、男はカンカンに怒った。
という事は、浮き輪の中に大事な物が入っているという事だ。
その上、男の回りに彼を監視する男達がたくさんいる。
刃は状況から、男と誰かがプールで取り引きをする事を推理した。
浮き輪に発信器を取りつけるため、ロッカーに向かった刃。
そこには、拳銃を持った大阪中学会と、東京三橋組の2大暴力団の姿があった!!
刃
「(ヤツらの出方がわかれば、打つ手はあるわ。コイツら全員、一網打尽にしてやる!よーし、バッジで繭美ちゃん達に協力をお願いしないとね・・・)」
刃は探偵団バッジを取り出した。
このバッジは、浪花の少年探偵団用である。
トゥルルル・・・
マサ
「あー、やっぱりあなたが有部さんでしたか。ちょっとそこでストップしてください。まずワシの周りにいる見張りの人達にどいてもらいたいんやけど・・・そやなー、プールの対面に集合させてもらえます?そのあと、有部さん1人でここに来てください。」
コツコツ・・・
有部
「オマエか・・・たった1人で5億の取り引きをしようってのは。いい度胸してるじゃねぇか。」
マサ
「度胸だけでこんな事できまへん。ITいうヤツのおかげですわ。便利な世の中になりましたなー。こいつのおかげで、重い現金持ち歩かんで済むんやから。」
マサはパソコンを手に取った。
マサ
「インターネット銀行の口座は作ってもらえましたな?」
有部
「ああ。」
マサ
「そしたらこれからブツを確認してもらいます。その後携帯で、ワシのネット銀行の口座に代金を振り込んでください。こいつで入金を確認して、取り引き終了です。それじゃ品物を確認してもらいますが、おかしなマネはせんでくださいよ。そん時は、『コイツ麻薬持ってるでー』って大声出させてもらいますで。こんだけ人がおるんや、バッチリ顔見られて逃げ切れるもんやありまへん。」
有部
「よけいな心配はするな。こっちも格安で20キロものブツが手に入るんだ、欲をかくマネはせんよ。」
マサ
「おおきに、じゃあ改めて・・・」
タタタ・・・
幹彦
「ラッキー、浮き輪が落ちてるで。」
健太
「これ使おうぜー!」
マサ
「え!?」
幹彦と健太が、浮き輪を持ち、走り出した。
マサ
「オ、オマエ何するんや、返せ!!」
有部
「おい、どうした?」
マサ
「あ、あの浮き輪の中にブツが・・・」
有部
「何!?オマエら!あのガキどもから浮き輪を取り返せ、ブツはあの中だ!!」
「ヘイ!!」
ダダダダダ・・・
健太
「刃ちゃんの言う通りや!重いな、これ。」
そう・・・健太、繭美、幹彦は、刃にバッジで呼び出され、指示を受けていたのだ。
刃『いい?健太君、幹彦君、繭美ちゃん。幹彦君がつまづいた浮き輪の中には、麻薬が入ってるの。』
幹彦『ま、麻薬?』
健太『それで、幹彦がつまづいたのに浮き輪は動かへんかったんか!』
繭美『それなら、刃ちゃんにお使いを頼んだのも、幹彦君を殴ったんも説明がつくな!』
刃『そうよ。それであなた達には、あの浮き輪を持ち出して、マサさん達の注意を引きつけてほしいの。できる?』
健太『任しとけ!』
刃『1人じゃ重いから、幹彦君も行ってくれる?』
幹彦『任せてくれ!』
繭美『じゃあ、ウチは?』
刃『繭美ちゃんはプールの中で待ち伏せて、健太君達が飛び込んだら、近づいて浮き輪をスリ替えて!』
繭美『オッケー!』
刃『それと、追っ手の行く手を阻むために、通り道にトラップを仕掛けておいて。浮き輪を陸でスリ替えた後は、アタシがヤツらを引きつけるから!』
繭美『1人で大丈夫?』
刃『大丈夫よ。ヤツらを一網打尽にできたら、みんなにごちそうおごってあげるわ!!』
繭美・健太・幹彦『よっしゃー!!!』
刃『それから、最後にヤツら全員を倒す場所は・・・』
繭美・健太・幹彦『うんうん・・・』
追っ手が2人を追ってきた。
幹彦
「わー、来たー!!」
マサ
「このガキ!!」
ズルッ!
ズデン!!
マサ
「痛っ!!」
「うわっ。」
「あ!気をつけろ、オイルがまいてあるぞ!」
「くそ〜。何なんだ、あのガキども。」
健太・幹彦
「今のうちに・・・そーれっ!!」
ドボーン!!
「テテ・・・」
マサ
「ど、どこ行った・・・」
マサの目の先に、浮き輪を引き上げている3人の姿が見えた。
繭美、幹彦、健太だ。
マサ
「いた!!オマエら待た・・・」
マサがそこまで言った時・・・
無藤
「待たんかーい。」
マサ
「い・・・今の声・・・」
マサには聞き覚えのある声が聞こえた。
マサ
「な、無藤さんに銀田の兄ィ!?なんでこんなトコに!?」
無藤
「コラ、嬢ちゃーん!」
銀田
「ロッカーのカギ返さんかーい!!」
2人が追っているのは、刃だった。
しかも、刃は余裕の表情で逃げている。
マサ
「ウワッ、こっち来よる。」
ドポン!
無藤
「なんなんや、あの嬢ちゃん。ちょっと目ェ離したスキにロッカー閉めて、カギ抜きくさった。」
銀田
「銃が中に入ってるのに!」
マサ
「(気づくな気づくな・・・)」
ス〜・・・
刃
「あー、マサさん!」
無藤
「何?」
銀田
「マサ?」
刃
「大変よマサさん!この人達マサさん追ってるって!逃げなきゃマサさん!」
刃は、ワザと2人に聞こえるように叫んだ。
マサ
「ゲッ・・・」
無藤・銀田
「あー、マサー!!」
マサ
「こらアカン。逃げろ!!」
無藤
「マサ、待たんかい!!」
その頃、健太と幹彦は・・・
「待てー、このガキども。」
健太
「おい、そろそろ・・・」
幹彦
「そやね。」
健太・幹彦
「それ。」
ポーイ!
パス・・・
「?おい、ブツなんか入ってないぞ。」
「どうなってんだ?」
その頃、刃とマサ・・・
刃
「マサさん、こっちはダメ!追っ手がいるわ。」
マサ
「何〜。嬢ちゃん、いったい何者や・・・」
刃
「今、それどころじゃないでしょ。」
有部
「バカヤロウ、ニセモノつかまされるわ、ガキは逃がすわ!どこに目ェつけてたんだ!!」
「け、けどいつの間にか・・・」
「あ!あの嬢ちゃん、さっきのヤツらの連れですよ・・・」
有部
「何・・・よし、アイツを追うぞ!!」
刃
「ねー、マサさんに謝る事があるんだけど・・・」
マサ
「なんや?」
刃
「マサさんのおつりで、浮き輪いっぱい借りちゃった。」
マサ
「アッ!オマエ、あの金もう返せや!」
健太・幹彦
「刃ちゃーん!うまくいったよー!」
マサ
「あーっ、なんやこれ!?」
浮き輪がポールの中にある。
マサ
「オマエ、これ取れへんやないか!!」
刃
「来た、来た!」
タタタ・・・
銀田
「あ、ブツの入った浮き輪!」
無藤
「よし、まず回収や!」
銀田
「けど、どうすりゃ取れるんや?」
無藤
「浮き輪破けや!」
銀田
「けど、刃物ありまへんで。」
無藤
「歯ーがあるやろ、歯ーが!!」
ギリギリギリ・・・
ボン!!
銀田
「わっ!?これ、中身水や!!」
刃
「クス♪引っ掛かってる・・・」
銀田
「あ!」
無藤
「この小娘!!」
タタタタタ・・・
マサ
「なんか、同じトコグルグル回ってへんか?」
刃
「大丈夫、すぐまけるわ!」
マサ
「ぜんぜんまけてへんやないか!それどころか、全員集合してるわ!」
ドドドドドドドドドドドドドドドド・・・
刃
「あ、マサさん。地面に敷いてあるバスタオル、踏まないでね!」
マサ
「?」
ズキッ!
「ギャアッ!!」
「タオルの下に小石を敷いてやがる!」
有部
「あの小娘、調子にのりやがって・・・」
無藤
「生かして帰さん!!」
マサ
「おいおい、大丈夫か?アイツら、頭に血ィのぼりきってるで!」
刃
「それが狙いよ。ついて来て!!」
ウォータースライダー
「ウォータースライダーに逃げるぞ!」
「あ、いやがった。ガキどもと浮き輪!!」
健太・幹彦
「どいて、どいて。」
繭美
「非常事態なの。」
「追え追え。」
刃が手を上げた。
繭美
「刃ちゃんが合図送ってる。」
幹彦
「よーし、行くでー!」
「ちょっとボウヤ達、割り込みはダメよ。それにそんな大きな浮き輪・・・このパイプは細いんだから・・・」
健太
「そんな場合じゃないんや!」
繭美
「おっかない人達が来るの!」
「おっかない人?」
チラ・・・
ドドドドドドドドドドドドドドドド・・・
「キャー。」
健太
「っていうワケだから、行かせてもらいまーす。」
シュワワア・・・
パッ!
ボイン!
キュキュキュ・・・
刃
「アタシ達も行くよ。」
マサ
「はよせい、もうそこまで来てる。」
ザーッ!
「追え追え。」
シュワァァァ・・・
ゴー・・・
パッ!
キュキュキュ・・・
ピタッ。
マサ
「な、なんやー!?」
ダン!!
マサ
「オ、オマエなんで詰まっとるんやー。」
刃
「この浮き輪、パイプの直径より少し大きいの。縦にすると詰まっちゃうのよ。」
マサ
「な、何〜。」
刃
「あ!マサさん後ろ危ないよ。」
「マサー、待たんかい。」
「ヤク返せ!!」
マサ
「ワー!!」
銀田
「あ、マサ!何しとるんや?行かんかい!」
マサ
「ヒッ!!」
銀田
「ギャッ。」
無藤
「グエッ!」
「ぐおおおお!!」
有部
「イ、イテテ、何やってるんだ前滑れよ!!」
「ッタタ、ダメです〜。」
銀田
「く・・・苦しい・・・息が・・・」
無藤
「まったく動けん!!」
マサ
「アカン、完全に詰まってもうた!!」
銀田
「マ、マサ、薬はどこじゃ〜。」
マサ
「わ〜、この状況でそんなん言うか?」
刃
「麻薬は、プールの底よ。仲間がプールに飛び込んだ後、そのまま沈めたのよ。もちろん、普通の浮き輪は沈まないけどね。その後は普通の浮き輪を運んでたのよ。」
マサ
「オ、オマエいったい何者や・・・」
刃
「剣野刃、探偵よ!じゃ、もうすぐ警察が来るから助けてもらうといいわ。」
マサ
「あ、コラ、待たんかい。」
バシャーン!!
刃
「大成功!!」
繭美・健太・幹彦
「イエー!!」
こうして、大阪中学会と東京三橋組の2大暴力団組員は逮捕された。
そして・・・
大阪
フランス料理店『ラ・フューレ』
健太
「うめー!!」
幹彦
「最高や!!」
繭美
「刃ちゃん、ええの?ここ、高そうやで?」
刃
「大丈夫よ!ね、オーナーさん!」
「ええ!あの方のツケになってますし・・・ごゆるりとおくつろぎください・・・」
その夜・・・
ユーリ
「あー、いい湯だった・・・ん?メールだ・・・」
『お兄ちゃん、元気?アタシだけど。今日、健太君達とフランス料理店で食事したから、お兄ちゃんのカードで500万円使っちゃったの。ゴメンね。 リアン』
ユーリ
「な、何〜ッ!!?」
ユーリはその夜、号泣したという・・・
刃
「テヘッ♪」 |