ファイル54:美保の危険な家庭教師『後編』
前回までのあらすじ
白野美保は、大学院受験をする大学生の家庭教師を任され、その大学生、ナツホの家に向かう。
しかし、そのナツホの家ではすでに、ナツホの父親が1人の男によって刺殺されていた。
男は事件の痕跡をなるべく残さないようにして、逃走しようとしたのだが、運悪く美保と出くわしてしまい・・・
『本当に大変でした・・・あの子が亡くなった時には、まだうちの子も小さくて・・・旅に出たと言ってムリヤリ納得させたんです・・・』
スススス・・・
美保『なるほど・・・それは大変でしたね。』
『ああ・・・本当に・・・なっ!!』
ヒュッ!
ガッ!
美保『うぐっ・・・!!何を!?』
『残念だったな!オレはこの家の主人なんかじゃないのさ!!あの男ならとっくに死体になってるぜ!!』
ギリギリギリ・・・
美保『う・・・んぐ・・・!!』
美保
「旦那さん?」
「え!?」
美保
「どうかなされたんですか?」
「(い、いけね・・・妄想先走りだ!!)ご、ごめんなさい!話の途中だったのに・・・」
美保
「ああ、そうですか・・・失礼しました・・・ただ親との関係が学習意欲に関係しているという心理データがあるので、参考までに伺いたかったんですが・・・」
「そうだったんですか、スゴくしっかりした方ですね。そこまで考えているなんて、若いのにスゴい。」
美保
「いえ・・・おっと!肝心な事をお伺いするのを忘れてました。娘さんの不得意科目を教えていただけませんか?できれば受験に関係した科目について伺いたいのですが?」
「ああ・・・あの子が得意なのは算数です!どっちかっていうと国語が苦手かな・・・」
ピリリ・・・
「あっ!メールだ!ちょっと失礼!!」
ピュ〜!
キョロキョロ・・・
美保
「・・・アーハァン・・・」
「!!」
『004
Data / 18:26
Sub 今駅
Fr ナツホ
ナツホだけど。駅に着いたけどどうする?お父さんもう家に帰ってる?』
「(まずい!このまま帰ってきたら、もう15分もすれば家に着いちまう・・・!あの家庭教師のお嬢ちゃんさえまだ殺してないし、あの男の遺体も処分しなきゃいけないってのに!!よし!こうなったら・・・)」
カチカチ・・・
『【メッセージ】
もう少しでお父さんも駅に着くから、駅前のバーガー屋さんで待ってるんだ。一緒に帰ろう』
ピリリ・・・
『005
Data / 18:27
Sub えー
Fr ナツホ
えー、いいよ。1人で帰る』
『【メッセージ】
ダメ!絶対にダメ!もしそんな事したら、おこづかいあげないよ。わかったな。ちゃんとお父さん待ってなさい!絶対来るまで待ってろよ!』
パチン!
「お待たせしました・・・(もうこうなったらなりふりかまってられん!!帰ってこられたら終わりなんだ!それまでになんとしても!!)」
美保
「それにしても、娘さんは遅いですね。」
「あ・・・今ちょっとメールが来て、塾の友達の家でご飯を食べてくると・・・」
美保
「そうですか・・・それは残念でした・・・」
「(もう待てん!どうせ相手はか弱そうな娘だし、少し暴れても強引に首を絞めて・・・!!)」
美保
「旦那さん。1つ伺ってもよろしいでしょうか?」
「え・・・な、何?」
美保
「さっき私が来た時、出かけようとしてましたね?あれはどこに行くつもりだったんですか?」
「あ、あれね・・・あの・・・近くのコンビニまでちょっと・・・」
美保
「でも外はどしゃ降りだった・・・それなのになぜあんなサンダルで?靴下がびしょ濡れになってしまいますよ?」
「ああ・・・考えもしなかった・・・」
美保
「でも玄関には長靴がちゃんとありましたよ?」
「(何が言いたいんだこのガキ!!死人の靴なんか履けるかよ!!)」
美保
「おっと・・・そろそろお暇しなきゃ・・・もう夕食の時間ですよね?何も用意してないみたいですけど・・・」
「あ・・・それは大丈夫!今日は娘も外で食べるっていうし、オレは最初から食事抜くつもりでいたから・・・(逃がすか、このガキ!!)」
美保
「そうですか・・・ではあれは何ですか?」
美保は炊飯器を指さした。
「あれって・・・?」
美保
「3・・・2・・・1・・・」
ピー!!
ギクッ!!
美保
「炊飯器のご飯が炊けたようですよ?」
「あ・・・ああ・・・タイマー入れたまま忘れてた!(何だ!いったい何が言いたいんだよ!!ハッ!まさか遺体を見つけられた!?イヤ、それはない!だったら悲鳴を上げて逃げ出してるはずだ!!)」
美保
「・・・さて、それじゃあ帰ろうかしら?」
「あ・・・あれ?もう少しゆっくりしていきなよ、雨もひどいし!(そうだ!殺さなきゃいけないんだからっ!!)」
美保
「おっと、そうだ!もう1つ気になる事があるんです!娘さんは右利きですよね?」
「あ・・・ああ、もちろん!」
美保
「そして家政婦もいない・・・では・・・この調味料や器を棚に並べる時、どうしてわざわざ右に寄せたんですか?」
「なぜって・・・別に深い意味はないけど、その方が使いやすいから・・・」
美保
「それはおかしいわね。あなたは今までの行動からして、まちがいなく右利きだわ。やってみればわかります。私も右利きだけど・・・こうして左側に寄せて並べるのは置きにくい・・・特に持ち手のついたカップなどはね。日常の習慣だけど、特に理由がなければ右利きの人は自然と棚の左側に寄せるはずだわ。それに、道具入れの中にあるキッチンバサミは左利き用・・・右利きのあなたには使いにくい・・・それでは最後にもう1つだけ・・・あなたの娘さんの歳はいくつですか?」
「な、何を言うんです?6年生だよ、小学校6年生!!」
美保
「クス・・・残念ながら、またハズレです。私が家庭教師をする予定だったナツホさんは・・・今4年生です。」
「ええっ!?今時の子は小4ぐらいで家庭教師をつけるのか!?」
美保
「ただし・・・彼女は現在大学4年生の、『大学院受験生』なんですよ!!」
「エ゛・・・エ゛エ゛〜?だってオマエ15歳じゃないか!それがなんで大学院受験の家庭教師なんて・・・あっ!」
美保
「フフッ・・・ようやくボロを出してくれたわね。私、本当は18歳の高校2年生なのよ。それに私はこう見えても、アメリカのハーバード大学の入学資格も持っている。向こうの工学部の人に招かれて、一緒に研究に参加した事もある。ちなみに私が教える予定だったのは、『犯罪心理学』と『薬学概説』・・・『算数』でも、『国語』でもないわ。あなたはどこの誰?少なくとも、この家の主人じゃない・・・そして私が面接を受けるはずだった・・・大学生の父親は、いったいどこに消えたのかしら?」
「ぐっ・・・」
美保
「最初から妙だとは思っていたのよ。この大雨の中サンダルで出かけようとした事も不自然だったけど、私が上がろうとした時、あなたが出したこのスリッパ・・・スリッパ立てに並んでいる上等な布地のスリッパとは明らかにちがう、ビニールの安っぽいスリッパよね?これはどう見ても汚れた時簡単に洗える、トイレ用のスリッパだわ!外にこのスリッパを放り出していたから、ついうっかり私に出してしまったんでしょ?それだけじゃない!あなたは私に甘いケーキを出したにもかかわらず、飲み物を出そうとしなかった・・・そうやってコーヒーメーカーもあって、ペーパーやコーヒー豆も揃っているのに、なぜコーヒーを出そうとしなかったのか?あなたは怖かったのよ。コーヒーには利尿作用があって、私もそうだけど人によっては飲むとすぐにトイレに行きたくなる。つまりあなたは、私にトイレに行かれては都合が悪かった!そしてそれは、トイレのスリッパを外に出さなければならない理由と一致している!」
スッ・・・
ズル・・・
美保
「トイレには血まみれの遺体が隠してあって、スリッパを汚さないようにトイレから出しておいたのよ。さあ、まだ何か言いたい事はある?」
「このガキ・・・死ねぇ〜っ!!」
ダダッ!!
男は美保に襲いかかろうとした。
しかし・・・
ガッ!
グイッ!!
ヒュオオオオッ!!
美保
「ハアアアアッ!!」
美保は一本背負いで、男を投げ飛ばした。
ドオオォォン!!
ビッ!!
ギリギリ!!
美保はガムテープで、男の手首を拘束した。
「イテテテテッ!!は・・・放せよ!くそっ・・・!テメエいったい何者だ!?」
美保は警察手帳を突き出した。
美保
「京都府警本部長・白野琴葉の娘、白野美保よ!!」
「なっ・・・」
美保
「母親の名において、あなたを殺人容疑で京都府警に引き渡します!!」
「ついてないよ・・・なんてついてないんだ・・・」
ガク・・・
ピリリ・・・
美保
「ん?」
『005
Data / 18:41
Sub まだ?
Fr ナツホ
お父さん、いつまで待てばいいの?』
美保
「・・・」
カチカチカチ・・・
『【メッセージ】
私は、京都府警の白野といいます。残念ですが、あなたのお父さんは』
ピタ・・・
美保
「イヤ・・・この場に呼ぶのは、いくらなんでもかわいそうすぎるわね・・・」
『【メッセージ】
ナツホ、ごめんね。今日お父さんは行けないんだ。しばらく知り合いの家に行ってなさい。』
ピッ!
『送信完了しました』
美保
「『母亡くし また父も亡くし 娘かな』か・・・」
ピッポッパッピッ!
美保
「もしもし、内海さん?美保だけど・・・」 |