ファイル53:美保の危険な家庭教師『前編』
京都
白野邸
美保
「え、家庭教師ですか?」
「そうなんだよ。ぜひ、君に教えてもらいたいという子がいてな。大学生なんだが、よろしく頼むよ。」
美保
「はい。わかりました・・・」
ザーッ・・・
「ハアハアハア・・・と・・・とうとうやってしまった・・・」
ジャー・・・
バシャバシャ・・・
「は・・・はずみだ!そんなつもりで来たワケじゃ・・・この男がいけないんだ!自分の妻が死んだからって、人の妻に手を出すから・・・そ、そうだ!指紋をつけちゃ・・・」
キュ!
「でもどうしよう!?遺体が見つかれば、妻の口からオレが怪しいって警察に通報されるかもしれない・・・そうだ!一回家に戻って車を取ってきて、遺体を誰にも見つからないところに運ぶんだ!血を拭いて床をキレイにして、そこのパソコンに書き置きの1つでも残して、失踪したって事にすれば・・・」
その時、携帯電話が振動した。
ピリリ・・・
ギクッ!
メールだった。
「あ・・・あの男の携帯にメール・・・?だ・・・誰からだ・・・?」
『Eメール受信 ナツホ』
「ナツホ?娘か・・・この男の歳なら、いてもおかしくない・・・どうする?無視する?イヤ、まずい・・・もし、今からすぐ帰るなんてメールだったら・・・」
『002
Data / 17:52
Sub そろそろ終わり
Fr ナツホ
塾もそろそろ終わるし、今から帰ろうと思ってるんだけど、夕食の材料とか、いつも通り私が買って帰るならメールで教えて。』
「ま・・・まずいっ!すぐに帰ってこられたら、終わりだっ!!こ、こうなったら・・・」
カチカチカチ・・・
『【メッセージ】
ごめんナツホ。ちょっと今から急に出かけなきゃならなくなったんだ。遅くなるからどっかで食事してきて』
ピリリ・・・
『003
Data / 17:57
Sub え??
Fr ナツホ。
え!?そんな事聞いてないよ?』
『【メッセージ】
だから急ぎだって言ってるだろ。いいからどっかでゆっくりしてこい。お金は後であげるから、友達と一緒に』
ピリリ・・・
『004
Data / 18:04
Sub 了解
Fr ナツホ
はぁーい』
「とりあえずこれで時間を稼げた・・・後はいったんどっかにこの男を隠して家に車を取りに行って・・・それから車で遺体を捨てて証拠をすべて隠滅すれば・・・どこに隠す?」
キョロキョロ・・・
「よし!いったん『あそこ』に隠そう!なるべく周りを血で汚さないようにして・・・」
「よし!これで事件の痕跡はない・・・急がなければ・・・」
コツ・・・
「雨?ここにある傘を借りるしかないか・・・」
ガチャ!
「!!」
男の目の前に、美保がいた。
「(なっ・・・何!?あの男の娘がもう帰ってきたのか!?)」
美保
「あ・・・旦那さんですか?こんばんは。夜分遅くにすみません・・・」
「(え?娘じゃない・・・?)」
美保
「娘さんの家庭教師の面接に来ました、白野美保と申します。」
「(か・・・家庭教師〜!?こ・・・こんな若い子が・・・!?どう見ても中学生か、せいぜい高1じゃないか!!)き・・・君が家庭教師!?」
美保
「はい!家庭教師紹介所の方から、ご連絡が行ったかと思うのですが・・・能力的には、娘さんを充分ご指導できる自信があります。紹介所の推薦状も、こうして持ってきました。面接、よろしいでしょうか?」
「(ど、どうする?ここで追い返したら、後々ややこしい事になるし・・・それに、この子に顔見られたじゃないか!)あ・・・ああ・・・どうぞ!」
美保
「・・・おじゃまします・・・」
「(やるしかない・・・!スゴくカワイイ子だけど、こんな時に来たオマエが悪いんだ!!殺さなきゃ・・・この子を殺さなきゃ!!家庭教師だかなんだか知らないが、オレがこの家にいるトコ見られてるんだから・・・)ど・・・どうぞ!」
コト!
美保
「どうぞおかまいなく・・・」
「いいえ〜。ハハハ・・・(適当に面接してケーキ勧めて油断したスキに・・・この子を始末するんだっ!!)」
美保
「あの・・・さっそくですけど家庭教師紹介所からご連絡が行ってるかと思いますが・・・私の家庭教師資格審査の成績表です。」
スッ・・・
『SSS・・・
SSS・・・
SSS・・・
SSS・・・
SSS・・・
』
長いので省略。
美保
「このように、最高レベルのSSSクラスの評価をいただいています。私はまだ15歳ですが、ご心配には及びません。必ずや娘さんの成績アップのお役に立てる自信があります!」
「そ、そうですか〜アハハ・・・(なんだかわかんないけど、スゴそうな事言ってるなぁ・・・よっぽどの名門の私立中学の生徒なのか?でも、育ちが良さそうなのになんで家庭教師のアルバイトを・・・?おっと!こんな事考えてる場合じゃない!ここの家の娘が帰ってくる前に、カタをつけなければ・・・!!)」
美保
「・・・?失礼ですが、家政婦さんをお雇いですか?」
「え・・・い・・・いえ!別にそんな事はないですが・・・」
美保
「あの・・・すみません。水でけっこうなので、飲み物いただけませんでしょうか?」
「あ・・・ああ、ごめんなさい!うっかり・・・すぐジュースを出します!」
トプトプ・・・
「はい、どうぞ!」
美保
「すみません・・・いただきます。(甘いケーキに甘いジュース・・・?)」
「あれ?お口に合わない?」
美保
「いえ・・・おいしいです、ありがとうございます。」
「そう!よかった。(どうやって殺す?あの男と同じように包丁で・・・イヤ、それはダメだ!この家の娘が帰ってくるまでそんなに時間がないし、できれば血で床を汚したくない・・・となると、やっぱりロープで・・・)」
美保
「あの・・・」
「なにっ!!」
美保
「よろしいでしょうか?私からもいろいろ娘さんの事を伺って・・・」
「あ・・・ああ!もちろんです!」
美保
「娘さんの寝る時間は何時頃でしょうか?勉強は何時頃なさってますか?」
「そ・・・そうだね・・・最近は勉強もするようになって9時30分には寝てると思います。だから勉強はその前・・・夕食の後と学校から帰ってきた直後かな?」
美保
「そうですか。実は大脳生理学からいうと、朝早く起きて勉強を少しされた方が効率がよく・・・それ以降の学習の成果が上がるそうです。」
「難しい話ですね・・・(何この中学生!?まあ、この歳で家庭教師をやるぐらいの子だから、普通じゃなく頭がいいんだろうが・・・)」
美保
「朝ごはんは、どんなメニューですか?」
「そうだね・・・コーンフレークと牛乳かな・・・」
美保
「うーん・・・それは少し改善しないといけませんね。パンやフレークは、あっという間に吸収されてエネルギーとなって燃え尽きてしまいます。その点、ご飯はゆっくり代謝するので学校に行ってもお昼くらいまでは保ちます。ぜひご飯食に切り替えてください。」
「わ、わかりました・・・」
美保
「それと、ちょっと聞きづらい事なんですが・・・奥さんはいらっしゃらないそうで・・・」
「(しめた!それは知ってる!)そうなんですよ・・・ちょっと前に亡くなって、私1人で子供を育てておりまして・・・(よーし、今まで少し変な事言ったかもしれないから・・・ここで取り返してやる!!ついでに同情も買って、油断したスキにこのロープで・・・)」
『本当に大変でした・・・あの子が亡くなった時には、まだうちの子も小さくて・・・旅に出たと言ってムリヤリ納得させたんです・・・』
スススス・・・
美保『なるほど・・・それは大変でしたね。』
『ああ・・・本当に・・・なっ!!』
ヒュッ!
ガッ!
美保『うぐっ・・・!!何を!?』
『残念だったな!オレはこの家の主人なんかじゃないのさ!!あの男ならとっくに死体になってるぜ!!』
ギリギリギリ・・・
美保『う・・・んぐ・・・!!』 |