ファイル46:殺意を呼ぶウェディング『前編』
ある日、白野邸の一室で、携帯電話が鳴った。
美保
「はい、もしもし・・・」
美保は携帯電話を取った。
エル
「おーっす、美保〜っ!!」
キーン・・・
エルのかん高い声に、美保は気絶しそうになった。
美保
「エ、エル・・・何よ、朝っぱらから大声出して・・・」
エル
「悪い悪い!美保、さっそく本題なんだけどさ、今から新京極教会に来てくれない?頼みたい事があってさ。」
美保
「新京極教会?いいけど・・・」
新京極教会
美保はエルに呼ばれ、エルが勤務している新京極教会にやって来た。
美保
「エルー、来たわよー!」
シスターの服を来たエルが、美保を出迎えた。
エル
「待ってたよ、美保!」
美保
「ところでエル。私に頼みたい事って、何?」
エル
「ああ、それね。」
美保
「バーチャルウェディング?」
美保は教会の子供と遊びながら、エルの話を聞いていた。
エル
「そ!結婚式をビデオで撮影して、雑誌で教会の宣伝をするの!美保なら、誰も文句言わないわ!」
エルはピアノを弾きながら答えた。
ブーカブーカブーカ・・・
元
「美保姉ちゃん、お嫁さんやるか?」
志乃
「見たーい!美保姉ちゃんの花嫁姿ー!!」
エル
「ほらね!」
美保
「で、でも・・・」
美保は困惑する。
エル
「わかってる!『新郎役は誰?』でしょ?」
美保
「う、うん・・・」
エル
「だーいじょうぶ!深雪達の中の誰かに頼むから、心配しないで!」
美保
「は、はあ・・・」
そして一週間後・・・
美保
「・・・」
伊澄
「や、美保!」
美保のお相手役は、三千院伊澄だった。
美保
「な、なんで・・・?」
エル
「ごめん、美保!深雪も美香も弓雁も、あの3人も都合がつかなくて・・・やっぱり、止めようか?」
美保
「いい・・・私、やるわ・・・」
エル
「そうこなくっちゃ!」
美保
「で、でも・・・銀一にバレたらどうしよう・・・」
伊澄
「だーいじょうぶだって!銀一ならわかってくれるよ!」
美保
「そ、そうかなぁ・・・」
伊澄
「うん!」
美保
「わかった。じゃあ私、着替えてくるね。」
美保は更衣室に走っていった。
エル
「伊澄・・・前々から気になっていたんだけど・・・」
伊澄
「どうしたの、エル?」
エル
「美保と銀一君って、どうしてああも仲がいいの?伊澄は知ってるんでしょ?」
それはそうである。
伊澄は美保のイトコなのだから。
伊澄
「ええ、知ってるわよ。確かあれは、13年前のホームパーティの時だったわね・・・」
回想・・・
13年前・・・
弥生(5)
「何やねん、この落書きは。」
美保(5)
「落書きじゃないよ弥生姉ちゃん!美保が一生懸命書いたマンガだよ!」
弥生
「マンガやてー?ん?このけったいなヤツが敵か?」
美保
「それはヒロインのミーアちゃんだよ!」
弥生
「あー、ワイ古代文字は苦手やで。」
美保
「それは必殺雷斬りのシーンだよ!」
弥生
「ま、何にしてもこんな下手なマンガなんか書いてないで・・・」
伊澄(5)
「少しはアタシらと外で遊び!」
ボスッ!
美保
「フンだ!二度と・・・もう二度とマンガなんか書かないんだから!!」
「・・・」
ヒョイ!
パラパラ・・・
美保
「あ!返せよ!!」
バシッ!
美保
「何だよ!まだ笑い足りないのかよ!!」
銀一(4)
「続きは?」
美保
「え?」
銀一
「そのマンガの・・・続きはどうなるの?」
美保
「続きって、その・・・おもしろかったの?」
銀一
「とっても。」
それが美保と銀一の出会い・・・
出会ってわずか数秒で・・・
2人は親友となった。
ぐっ!
美保
「私と結婚してください。」
銀一
「はい?」
エル
「ヘー、そんな事があったんだ・・・じゃあ、あの2人は相当仲がいいのね。」
伊澄
「ええ。」
エル
「でも銀一君、たいしたものね。あのマンガの内容が理解できるなんて・・・」
伊澄
「ホントだよねー。休日にはいつも、美保が銀一にマンガを読ませて、感想を聞いてるわ。」
エル
「でもそれって、何となく将来が不安な感じじゃない?」
伊澄
「まったくねー。」
美保
「お待たせ、2人とも!」
エル
「お、来た来た!」
ウェディングドレスを着た美保は、とてもキレイだった。
エル
「やっぱり、素材がいいとよく似合うわねー。」
美保
「///・・・///」
美保は顔が赤くなった。
伊澄
「じゃあ、アタシも着替えてくるか。」
数分後、伊澄がタキシードを着て戻ってきた。
エル
「じゃあ、練習開始ね!」
エルはさっそくイスに座り、ピアノを引き始めた。
チャララ〜チャララ〜チャララ〜チャララ〜チャ〜ララララ〜・・・
美保
「エル、それベートーベンのピアノソナタ『月光』でしょ・・・」
エル
「いっけね、まちがえた・・・気を取り直してもう一度・・・」
チャ〜ラ〜ラ〜ラ〜チャ〜ラ〜ラ〜ラ〜チャ〜ラ〜ラ〜ラ〜ラ〜チャ〜ララ〜・・・
伊澄
「それはベートーベンの『歓喜の歌』よ・・・」
エル
「はれ・・・?」
美保
「エル、あなたもしかしてワザとやってない・・・?」
エル
「ち、ちがうちがう、断じてちがう!よし、今度こそ・・・」
チャ〜ラララ〜チャ〜ラララ〜チャ〜ララチャ〜ララチャ〜ラララ〜チャ〜ラララ〜チャ〜ラララ〜チャ〜ララチャ〜ララチャ〜ラララ〜・・・
エル
「以上、ワーグナーの『婚礼の合唱』でした。さて、次はキスシーンね。」
美保
「えええ〜!?」
伊澄
「大丈夫よ、銀一とすでにやってるでしょ?」
美保
「う、うん・・・」
伊澄
「じゃ、さっさと済ませるよ!」
グイッ!
美保
「わっ!」
エル
「あらら〜・・・」
伊澄
「エル、これでいいんでしょ?」
エル
「バッチシ!本番もそれでお願いね!」
美保
「私、もうヤダァ〜!!」
美保は恥ずかしくて、赤面しっぱなしだった。
しかし、同時に美保にはイヤな感じがしていた。
これから起こるであろう、血も凍る惨劇の予感が、彼女の脳裏によぎっていた・・・ |