ファイル44:消えた王女『前編』
帝丹小学校の前に、怪しげな2人組の影があった。
「おい、本当にやるのか・・・?」
「ああ、もちろんだ・・・どんな手を使ってでも、あれを手に入れてやる・・・」
男は、不適な笑みを浮かべた。
阿笠邸
阿笠
「哀君、いよいよ来週じゃな!」
哀
「え、ええ・・・」
阿笠
「劇、楽しみにしておるぞ!哀君はどんな役をやるんじゃ?ひょっとして、王女様か?」
哀
「そ、それが・・・」
翌日
帝丹小学校
哀
「どうして私が、こんな役やらなきゃいけないのよ・・・」
哀は、自分が選ばれた役に不満なようである。
これが動物や背景の役であるのなら、さしもの哀も文句は言わないであろう。
なら、なぜ哀は不満があるのか?
それは、女の子である哀が、王子様役に選ばれてしまったからである。
哀
「私は女の子なのよ、お・ん・な・の・こ!!なのに・・・どうして王子様役をやらなきゃいけないのよぉ!!」
不機嫌そうな哀に、元太と光彦が話しかけてきた。
元太
「王子様役なんて、まだマシじゃないかよ!!」
光彦
「ボクと元太君なんて、庭師に執事ですよ?灰原さんなんか、まだいい方じゃないですか!!」
元太と光彦も、自分の役に多少不服があるようで。
光彦
「歩美ちゃんも、お妃といういい役をもらいましたしね。」
歩美
「エヘヘ。」
お妃役の衣装を着た歩美が、微笑んでいる。
刃
「あら、アタシとユリちゃんも、いい役をもらえたつもりよ。」
歩美の後ろから、刃とユリも衣装を着て現れた。
刃は魔法使い、ユリはメイド役である。
刃
「魔法使いは、西洋における科学者ですものね。」
刃の意見は、まあ理にかなっていると言える。
ユリ
「それに、私はメイド役よ。事件を目撃して、現場を検証して、犯人を指名して・・・腕が鳴るわぁ〜!!」
歩美
「ユ、ユリちゃん・・・」
元太
「それはちがうと思うぞ・・・」
どうやらユリは、夜にやっている人気推理ドラマ、『メイドさんは見た!!』と、この劇の内容をゴッチャにしてしまっているらしい。
光彦
「ところで、コナン君はどうしたんですか?」
刃
「ああ、コナン君はまだ更衣室で着替えてるわよ。」
ユリ
「なんでも、小林先生曰く、『とっておき』の役だからって・・・」
ザッ・・・
哀・刃・ユリ・歩美・元太・光彦
「!!」
コナン
「みんな、お待たせ!」
ウワサをすれば何とやら。
主役のコナンが現れた。
歩美
「うっわ〜、コナン君、キレイ・・・」
歩美はコナンの姿を『キレイ』だと言った。
この表現は、まったくまちがってはいない。
なぜなら・・・
哀
「(スゴくカワイイ・・・工藤君・・・)」
哀までもがカワイイと言う役といえば、1つしかない。
そう・・・
コナンは、王女様役だったのだ。
ただでさえ美少年だというのに、王女様役に変身したコナンは、あまりにも美しすぎだ。
コナンのバックが、キラキラと光り輝いている。
光彦
「とても似合ってますよ、コナン君!」
コナン
「ありがとう、光彦君!」
コナンは、精一杯のハスキーボイスでしゃべっている。
そのキレイな声に、哀、歩美、刃、ユリの4人は完全に魅了されてしまった。
哀・歩美・刃・ユリ
「・・・」
4人はすっかり、熟れた赤リンゴ状態である。
元太
「男にしとくにはもったいないよな!」
元太の意見は、コナンをキズつけるような気がした哀。
しかし、コナンはまったく動じていない。
コナン
「ありがと、元太君♪」
コナンは、元太にウインクする。
その笑顔に、元太は顔が赤くなった。
コナンのカワイらしさは、潜入捜査の時よりも数倍レベルアップしている(詳しくは第33〜36話を参照)。
刃も赤面しながら、コナンに話しかけた。
刃
「ねえコナン君、首から下げているそれは何?」
コナン
「あ、これ?小林先生から借りた、エメラルドのネックレスよ。」
コナンは、女言葉で説明を始めた。
コナン
「何でも、小林先生が前の学校の同僚にもらったアクセサリーなんだって。3つあってね、エメラルドのネックレスの他に、ルビーのブレスレットとサファイアの指輪があるのよ。」
コナンは、赤青緑のキレイなアクセサリーを哀達に見せた。
コナン
「3つとも美術的価値が高くって、今売りに出せば30億の値打ちが付くんだって。まあ、小林先生の同僚の旦那さんが手に入れた時には、まだ7億だったそうだけど・・・」
哀・刃・ユリ・歩美・元太・光彦
「な、7億が30億!!?」
哀達は驚きで、声も出なかった。
コナン
「何でも、この3つのアクセサリーを盗んだ2人組の強盗が5年前に捕まって、それ以来価値が上がり続けてるんだってさ。」
哀・刃・ユリ・歩美・元太・光彦
「ヘ、ヘー・・・」
ユリ
「それで、その2人組ってどうなったの?」
刃
「こないだ仮出所になったって、ニュースでやってたけど・・・」
哀
「なんだか、イヤな感じがするわね・・・」
同じ頃、その2人組の男は帝丹小学校の向かい側のビルから望遠鏡で帝丹小学校を監視していた。
「ん?なあ、兄貴!」
「なんだ?」
「あの女の子が持っているアレ、例のアクセサリーじゃないか?」
望遠鏡には、コナンが身につけている3つのアクセサリーが写っていた。
「ほ、本当だ・・・」
「しかし、なぜあの子が?」
「とにかく、夜になったら潜入するぞ。」
「あ、ああ。」
その夜、帝丹小学校
コナンは、夜遅くまで劇の練習をやっていた。
コナン
「すっかり遅くなっちゃった・・・」
コナンは職員室にある小林先生の机の中にアクセサリーを戻すと、1−Bの教室に急いだ。
1−B
コナン
「フゥ、着替えよ・・・」
その時、後ろから不気味な声がした。
「おやおや、こんな時間に1人でいるのは危険だよ・・・」
「カワイイ王女様・・・」
コナン
「えっ・・・!?」
コナンが振り返った時には、もうコナンの口はハンカチで塞がれていた。
コナン
「うっ・・・」
コナンを眠らせた2人組は、コナンをコートに包み込み、連れ去っていった。
刃
「ハア、ハア・・・」
刃は、帝丹小学校に向かって走っていた。
学校に忘れ物をしたためである。
ピタッ。
刃
「ハアハア・・・やっと着いた・・・」
その時、何者かの気配がした。
刃
「ヤバ・・・」
刃は物陰に隠れ、様子を伺った。
すると、厚手のコートに身を包んだ2人組の男が、帝丹小学校から出てきた。
刃
「(な、何なの?あの怪しい2人組は・・・)ん?」
コートの中から、誰かの顔がうっすらと見えた。
刃
「(コ、コナン君・・・!!)」
コナンがコートの中に包み込まれ、2人組に抱えられていた。
刃
「(あの2人組って・・・こないだ仮出所した、例の・・・?)」
2人組は、コナンを車の中に運び込んでいる。
刃はすばやく車に走り寄ると、トランクの中に忍び込んだ。
刃
「・・・(このまま見つかれば、アタシも危なくなる・・・よし!)」
刃は携帯電話を取り出すと、すばやく哀達5人に向けてメールを早打ちした。
『送信完了しました』
刃
「(これで、よしと・・・)」
刃は、そっと耳を澄ませる。
刃
「(お願い、みんな・・・気づいて・・・)」
車はそのまま、どこかへ向けて走り出した。 |