Quest[018]:優しい夜
この季節、レイド村は常に晴天に恵まれる。滅多な事では雨が降らない、言わば乾期のような状態ではあるが、元より水源に恵まれた村である。豊かな水源が常に注ぎ込み、更には溢れんばかりの陽射しが降り注ぐ。生命が育まれるのに、これほど適した環境もない。
イャンクック討伐から帰還したルースは、数日の間、その環境と戦っていた。
生命が育まれるという事は、当然借りている農場にもそれが反映される。一人での管理は大変だからと村長に勧められ、ネルフィと合同管理という形になった農場では、作物が勢いよく成長するためにその収穫に追われ、更には負けじと成長する雑草駆除にも追われていた。
それが一段落した今日、ルースは自宅の床に座り込み、一心不乱に作業を続けていた。
「旦那、お茶飲むかニャ?」
イャンクックを討伐したという事で、ネコバァからようやく認めてもらい、紹介してもらったキッチンアイルーのトウマが、見事な銀青の毛並みを覗かせる。
「あー。飲むー」
「何でネルフィが先に答えるのさ。ごめん、トウマ。二人分よろしく」
「分かったニャ」
答えて、トウマはキッチンへと引っ込んで行く。
ルースは再度、作業に没頭した。
二人が現在、一心不乱に挑んでいるのは、調合という作業である。床に広げられたのは、それらの材料や道具、そして雑貨屋の女将から勧められるがままに押し切られてルースが購入した、調合書の入門編と初級編の二冊である。
ハンターという職業は、案外経費がかかる。シビレ罠や落とし穴、爆弾といった道具から、回復薬やクーラードリンク、ホットドリンクといった消耗品に至るまで。生死を懸けてギリギリの死線を渡る身としては、出来る限りの道具を揃えて挑むべきではあるが、その際に物を言うのは経費だ。
勿論、報酬はそれなりに貰えるが、それらは往々にして武具の強化費用に注ぎ込まれる。生活をしつつ、武具を強化し、更に道具を揃えるとなると、まだ新米の彼らにとっては大きな負担になってしまう。
その際に役立つのが、農場であり調合だ。
農場で育つ作物などを採取し、調合書に倣って調合する。そして、普段使う道具を作るのだ。
ルースが作っているのは、ペイントボール。ペイントの実という派手な蛍光色をした実をすり潰し、粘性のあるネンチャク草という植物を同様にすり潰して混ぜる事により、モンスターに投げ付けた際に簡単には落ちないペイントが可能になる。大型モンスターと戦う際の必須アイテムであるため、ひたすらにペイントの実をすり鉢に入れ、すり潰す。
目の前でやはり床に座り込んだネルフィが作っているのは、回復薬。ギルドから支給される応急薬と同様の効果がある薬で、こちらは農場の畑で取れた薬草をひたすらにすり潰している。これを、農場にあるキノコの木から取れたアオキノコと混ぜて熟成させる事により、薬草が元から持つ治癒力を増強させる事が出来るのだ。密林の蜂の巣から採取したハチミツと混ぜれば、その効果は更に増強される。そうやって作られた物は回復薬グレートといい、市販の物は高価で簡単に手に入る物ではないため、かなり重宝する事になる。
二人は、無言で作業に没頭する。途中、トウマがティーカップが二つ乗ったお盆を運んで来たが、それにもなかなか手を付けず、ひたすらに目の前の物をすり潰していた。
イャンクックを討伐した。
だが、その喜びの余韻に浸っているような暇はない。イャンクックは確かに強敵だったが、あくまでも登竜門と呼ばれるモンスターだ。これから先、更に強く、更に凶暴な相手と戦っていかなければならない。
勿論、イャンクックを討伐すれば一人前として認められる。だから、ここで終わってもいい。そのレベルでの依頼を受け続けるだけでも、それなりに生活は成り立つ。事実、そうやって日々の生活を成り立たせる事で、ハンターとして生計を立てている者はいくらでもいる。ハンターという職種に就く者の大半がそういった層であり、実際に飛竜を目にした事すらない者も多い。
それだけ、上級飛竜だの古龍だのを相手にするあの二人は脅威であるのだが、ルースとネルフィの目標はあの二人だ。あの二人に、弟子として認められた。その時点で、彼らには妥協は許されない。世界に名を轟かせる【黒狼】と【紅蓮の疾風】の弟子が、十人並みのハンターであっていいはずがない。
そういった自覚があればこそ、二人は村にいる間は村で出来る事を、せめて精一杯にやらなければならないと考え、辿り着いたのが次のクエストへ向けての万全の準備をする事、だったのだ。
「そういえばさぁ‥‥」
「んー?」
二つ分のペイントの実をすり潰し、別な容器に移し替えたルースは、ぼやくように呟いたネルフィに応じる。
「クックシリーズって、いつ出来上がるって?」
「二週間とか言ってたから、あと一週間ぐらいじゃないかなぁ?」
イャンクックから剥ぎ取った素材は思いの外多く、ルースの分の防具のクックシリーズ一式と、ネルフィのザンシュトウ【雛】という大剣の素材として鍛冶屋に発注済みである。
ネルフィが防具ではなく武器に素材を使用した理由は、二人分の防具にするには素材が足りなかった事もあるが、それ以前に「クックシリーズは可愛くないから」という彼女の主張からである。
「あと一週間なら、ちょうどいいかもね。ルースからしたら」
「まぁね。出来上がらなくても、バトルがあるから大丈夫なんだけど」
「防具の問題じゃないじゃん」
激闘から帰還した二人は、村の門前で待ち構えていた先輩ハンターのヴァンズデイルにより、診療所へと叩き込まれた。親子ほども年の離れた二人を心配してくれていたのだろうが、結局のところネルフィは背中の打撲、ルースは肋骨のヒビによって、しばらくの療養を言い渡される結果となった。ネルフィは一週間、ルースは二週間である。
どちらにしても、今は火急の依頼もなければ、師である二人もまだ帰って来ていない。大人しく従う事に何ら問題はないだろう。もっとも、火急の依頼があったとしても、ヴァンズデイルが引き受けて、ルースたちには絶対に回さないようにするだろうとも思えるが。
「二人とも、遅いよね」
ネンチャク草を別のすり鉢に入れて、ルースはふと呟く。
二人が村を出たのは、ルースたちが密林に向かう前日。つまり、もう一週間近くなる。
「仕方ないわよ。カノンさんは古塔だもの、純粋に遠いし。シュウさんだって、ドンドルマで仲間募ってから行くって言ってたし。時間かかるんじゃない?」
アオキノコを手に、ネルフィが答える。もう片方の手には、小振りのナイフ。これでアオキノコを小さく刻んでからすり潰し、あらかじめすり潰した薬草と混ぜて瓶に詰めるのだ。
「ドンドルマかぁ‥‥」
「ルース、行った事ないの?」
「ないよ。ミナガルデならあるけど」
「私、ドンドルマの養成所出てるから、一時期暮らしてたよ」
ドンドルマとミナガルデは、立地的には離れているが、街としては非常に似通っている。
どちらも、様々な産業の中心地だが、その更に中心にハンターがあるのだ。ハンターギルドの巨大な施設があるため、ハンターを中心として、それを支える産業が発展している。その異質さは独特だが、ハンターにとってある種の憧れを抱かせるには充分すぎるものがある。
「いいなぁ。行ってみたいな、ドンドルマ」
何となく、ルースは呟いた。誰に何を言おうとした訳ではない。本当に独り言にしか過ぎない、何となくの呟きだった。
だが。
「ほほう。いい事を聞いたな」
突如、窓から降ってわいた声に、ルースは驚いてすり潰している最中のネンチャク草をひっくり返してしまった。
「え? シュウさん?」
開かれた窓から、先ほどまでの話題の中心人物の片割れが、顔を覗かせていたのだ。
「いつ帰って来たんですか?」
同じく驚いて目を丸くしているネルフィが、背を向けていた窓を振り返る。
彼女が、こちら側に座ってなくて良かった、とルースは心底思った。ルースだったからネンチャク草をひっくり返すで済んだが、ネルフィはナイフを持っていた。手を滑らせたりしなくて良かった、と。
どちらにしても、よりによって掃除の大変な、粘着性の極めて高い植物をひっくり返した時点で、トウマから怒られるのは確定済みではあるだろうが。まだ、ペイントの実をひっくり返して、その匂いと色がこびり付いてしまって怒られるよりはマシなのかもしれないが。
「ついさっき。酒場出る時、入れ違いでカノンも帰ってきたから、今から酒場行くか?」
窓枠にもたれるようにして酒場を指差すシュウに、ルースは頷いた。
「行きます、行きます!」
バタバタと走り出るかのようにして、家を出る。慌てて、その後をネルフィが追いかける。
「うニャー! 旦那! 片付けて行くニャー!」
響き渡る、トウマの声から逃げ出すように。
酒場、という場所は、どんな場所であろうと、どんな時代であろうと、人々の中心となる場だ。
そこには、様々なものを求めて人々が集う。一日の仕事の後の、ささやかな幸せとしての一杯であったり。友人たちとの、交流のための食事であったり。必要な、情報のためであったり。
様々な目的を抱いて人々が集まる酒場は、ハンターにとってはそれだけではない意味を持つ。無論、これらの目的で利用する事もあるが、それ以上に重要となる目的。
それは、ハンターギルドの窓口としての役割だ。
ある一定規模の村の酒場は、必ずと言っていいほどギルドの窓口を兼任する。そこには近隣の村から集まる依頼の他に、遠隔地からの依頼がギルド本部を通して集められる。あらゆる依頼は、酒場にあるギルドの支部を通してハンターへ渡るのである。
レイド村の酒場もまた、例外ではない。
「へー。じゃあ、問題なく討伐出来たんだね。良くやったわ、二人とも」
シモフリトマトの上に熟成チーズを乗せ、更にレアオニオンのみじん切りを乗せたサラダにフォークを刺しながら、カノンが感心したかのように少年少女を褒める。
むしろ、それなりに擦り傷や軽い火傷を負ってはいるものの、それだけでナナ・テスカトリを討伐して戻ってきているカノンの方がよっぽどではあるのだが、元からレベルが違う人だ。素直に賛辞を受け入れ、ルースは嬉しそうに笑うと切り分けられたプリンセスポークのソテーを口に入れた。
シュウに連れられ酒場を訪れると、カノンはちょうど、依頼完了の手続きをしているところだった。古龍ナナ・テスカトリの撃退もしくは討伐という依頼だったが、しっかりと討伐して帰って来たらしい。上機嫌のカノンは、それぞれの依頼完遂の祝いとして、酒場で全員分の食事を奢ってくれるという気前の良い事を言い出し、全員がそれに甘えているところである。
「でも、一人じゃ無理だったかも。ルースがいたからです」
照れて笑い、ネルフィはワイルドベーコンとオニマツタケのパスタを、無意味にくるくるとフォークに巻き付けている。まだ、カノンの前では緊張するらしい。
「クック倒せりゃ、一人前だよ。充分、充分」
やはり上機嫌に、上級飛竜であるリオレウスの更に強固な個体である亜種を討伐して帰って来たばかりのシュウが、ポポノタンの煮込みを口に運ぶ。
しばらく、主にルースとネルフィのイャンクック討伐に関しての報告のような雑談と談笑が続いた後、ふと思い出したかのようにシュウが口を開いた。
「そういやカノン、さっきの話」
「ああ。そういえば」
モスの肉と特産キノコを煮込んだシチューにスプーンを差し入れつつ、カノンが応じる。
そのまま、食事の手は止めずに、話を切り出した。
「ドンドルマにしばらく行ってみない?」
「‥‥へ?」
「‥‥はい?」
あまりに唐突な話の振られっぷりに、ルースとネルフィは思わず食事の手を止める。
その反応に苦笑しつつ、カノンは説明した。
レイド村に寄せられる依頼の多くは、テロス密林での依頼だ。主にランポスやコンガといった小型のモンスターに対する依頼だが、それも大方落ち着いている。仮に、遠方からの依頼が発生したとしても、その多くはカノンやシュウに対する名指しの物が多いのが事実だ。そのため、あまりレイド村のギルドで受注出来る依頼が多くない。
「キミらは、今が一番伸びる時だよ。クックを討伐して、これからがハンターとして勝負。だから、出来る限りの経験を、今のうちに積んで欲しいの」
「ドンドルマに行けば、嫌でも依頼は溢れてるしな。さっきルースも行ってみたいって言ってたろ。ちょうど良いじゃないか」
「いや、確かに言いましたけど‥‥」
「じゃあ、いいじゃない。何か不都合があれば、無理にとは言わないけど」
モスの肉を頬張るカノンに、ルースは考える。
レイド村での依頼が落ち着いたのであれば、確かに村にいてもやる事は限られてくる。留守の間の農場の管理は、ちょっと大変かもしれないがネルフィのところのアイルーたちとトウマにお願いしておけば良い。不都合は、ないだろう。
ただ、ドンドルマという街の事を考えてみる。
ハンターたちが大陸全土から集う、多くの依頼と多くの人々の中心になる街だ。当然、その街に集うハンターはいずれも屈強な者たちであり、ルースのような新米ハンターが訪れても、鼻で笑われるだけのような気がしてしまう。それに、気後れしてしまう。
「私は、行きます。むしろ、連れて行って下さい」
デザートに運ばれてきた北極リンゴのシャーベットを、人数分、酒場の給仕アイルーから受け取ったネルフィが、すんなりと結論を出す。
はっとして、ルースは隣に座る彼女を見た。
「村で依頼がないんだったら、街に行くしかないですし。私も、もっともっと経験積みたいです」
「でも、ネルフィは‥‥」
出会った時の事を思い出し、ルースが口を挟む。
女性ハンターである事を理由に、謂れのない蔑みを受けていたネルフィ。彼女が当時拠点としていたのは、ドンドルマではなかったか。
「気にしてないわ。私は、ちゃんとクック倒したもん。もう、何言われても気にしない」
すんなりと答えて、ネルフィは北極リンゴのシャーベットをルースの前に置く。
そして。
「それに、ルースもいるんでしょ? だったら大丈夫だわ」
にっこりと笑顔で言い切った。
どうやら、ネルフィが行くという事は、ルースには行かないという選択肢は残されてないらしい。
ルースは諦めて、頷いた。
「んじゃ、決まりだな」
何やら笑いを堪えながら、シュウが手を叩いて会話を止める。カノンは、食べ終えた食器を給仕アイルーに渡しつつ、食後の珈琲を注文しているようだった。
「俺たちは帰ってきたばっかだから、ちょっと雑用がある。明日それを片付けて、明後日出発で良いか。どうだ、カノン?」
「それでいいよ。明日出発って言われても、何かと大変でしょ。キミたちも、明日のうちに準備すればいい」
トントン拍子に進む話に、ふとルースは気付いた。
「あ、あの‥‥僕、あと一週間は安静にしろってお医者さんに言われてるんですけど‥‥」
「え? そんなに重傷だったの?」
「は‥‥はい。肋骨にヒビ入ってるとかで‥‥ゴメンナサイ」
「ああ、いいよ。謝るような事じゃないから。じゃあ、ルースの安静が解けてからにしようか」
ひらひらと手を振りながら、カノンが笑う。
「しかし、肋にヒビ入れて、よく剣振れたなぁ。あれ、脂汗出るぐらい痛いんだよな。何やっても」
庶民の味方でもある、アルコール度が高くて安価なポピ酒を傾けながら、シュウが感心するかのようにルースを見る。心なしか、その頬がうっすらと赤い。
「シュウさんもそんな怪我した事、あるんですか?」
「ああ、あるさ。最初にリオレウス討伐に行った時なんだがな、あの時は酷かったぞ?」
ネルフィの問いかけにシュウが答え、それからはシュウの『初めてのリオレウス討伐』の思い出話に花が咲く。シュウが大袈裟に語り、ネルフィが感心し、ルースが驚き、カノンが茶々を入れる。
賑やかに酒場の夜は、更けて行った。
あまり遅くなると傷に悪いから、と少年少女は夜が更けると共に家に帰された。
既に客足も疎らになり、静けささえも感じ始めた酒場の片隅のテーブルで、今度は向かい合った形で二人の称号持ちハンターはゆっくりと酒を傾けていた。
「しっかし、爆弾使うとはねぇ‥‥。カノン、爆弾の扱い、教えたか?」
「アタシは教えてないよ。教官じゃないの?」
「それはないような気がするんだが。よく考えたもんだ」
話の種は当然、二人の弟子である少年少女たちのイャンクック討伐になっている。
「自分なりに考えたんでしょ。大したもんだ。シュウとは大違い」
「それを言うな」
珍しく、多少のアルコールが入ったカノンが笑う。彼女は、あまり酒を嗜まない。理由は恐らく、あの時、村を襲った大惨事ではないかとシュウは踏んでいる。あのような事態が再度起きたとしたら、次に前線へ討って出るのは、間違いなく自分たちだ。いつ起きるか分からない事態である以上、常に前線へ出れるぐらいの状態を維持していなければならないから。
そこまでストイックにならなくても、とシュウは思う。だが、言っても無駄だという事も知っている。目の前の幼なじみが、どれほど生真面目で、どれほど村を大事に思っているか、それは長年一緒にいたシュウが、誰よりも良く知っているのだ。
そして、彼女が今、一番気に病んでいる事も分かっている。
「これで‥‥いいのかなぁ‥‥?」
その疑問は、二人の少年少女に対する疑問。
「いいんじゃね? 俺らに出来る事なんて、限られてるだろ?」
「分かってるんだけど‥‥」
分かっていても、気に病んでしまう。それが彼女の性格だ。
「経験しろ。あとは自分で学べ。お前、俺がハンターなり立ての頃、ずっと言ってたじゃないか」
「シュウはいいの。シュウだから。でも、あの子たちは違うじゃない?」
「ひでぇ」
押し掛けに等しいとは言え、彼らの将来を預かる形になった。
ハンターを教育する立場にある教官とは違い、カノンは今まで、ひたすらに自分だけが高みを追いかけていれば良かった。シュウは、その後を必死で足掻きながら追い続けていただけだ。
それが、誰かを育てる立場になり、これで良いのかと迷うようになった。
今が、彼らにとって最も重要な時だ。彼らを一人前のハンターに育てるには、今を大事にしなければならない。ある程度を過ぎたら、後は手を離れ、自分たちだけで成長していくだろう。
だから、今、間違えてはならない。
彼らのため、最良の選択を、カノンとシュウがしてやらなければならない。
当然、全ては彼らの意志次第ではあるが、道を示す役割は伴う。彼らは、カノンたちの言葉を疑う事はないだろう。だから、常に最良の言葉を与える必要がある。それは、いくら一流と言われるハンターになったとは言っても容易な事ではない。
「ホント、どうしよう‥‥」
微かなアルコールも手伝ってか、カノンは項垂れるようにテーブルに突っ伏した。
「大丈夫だって。アイツらはアイツらで、ちゃんと自分を考えてる。そんなに気にするなよ」
ポピ酒で満たされたジョッキを傾け、シュウはもう片方の手で項垂れたカノンの黒髪を、ぽんぽんと撫でるように叩く。
影でこれだけ悩んでいる事を、少年少女たちが知ったら、どれだけ驚くだろうか。
そんな事を考えつつ、未だ唸るように「これでいいのかなぁ」と呟き続けるカノンに苦笑する。
まぁ、教えてやるつもりはないが。
シュウは、ほくそ笑みながらジョッキの中身を煽る。
かの【黒狼】が、ここまで弱気になっている図など、誰が他に教えてやるものか。それは、シュウだけが知るトップシークレットで良い。弱気になった光景を晒してくれる特権は、そうそう他人に譲るつもりなどないのだ。
「大丈夫。お前は間違ってないさ」
シュウの優しい声が、静かになった酒場に溶け込んでいく。
夜は静かに更けていく。
フラグが立った!(ハ○ジ口調でお願いします/待て)
師匠帰還。そして、レッツ・ドンドルマ。
二回に一回は、ドルドンマと記述したくなります。記述している箇所があったら、優しく教えてやって下さい。
ちなみに、師匠ズはそーゆー関係ではございません。単なる幼なじみです。カノン姐様は、誰よりも愛されてなければならないので。私の中で。ただそれだけです。
少年少女組にも、若干フラグ立ってるっぽいですが、今のところあり得ません。
+注意+
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