白いセーター(22/33)縦書き表示RDF


白いセーター
作:雪野 空



第22話:紙切れ


夕方、店長からメールが届き、離職の手続きをするため私は辞めた店に向かった。つまりそこには副店もいるわけで…私はどんな顔で会ったらいいか、ドキドキしながらドアを開けた。
始めに目が合ったのは副店だった。
「お、お疲れ様です。」明らかに挙動不信な私に対し、副店は顔色一つ変えずに返事を返す。…なんとも思ってない証拠、だろうか。
「おぉ、来たか。この書類なんだ。ちょちょいと適当に書いちゃって。」副店の隣にいた店長が書類片手にそう言った。
「はい。」私はその場でちょちょいと適当に書く。そんな姿を副店が横から見ていた気がした。
書き終わった私はみんなとくだらない話を10分ほどして、帰ることにした。話をしてる間副店の顔を1度も見ることが出来なくて…どんな顔で副店が私の話を聞いているかまったくわからなかった。
「じゃあ、また来ますね。お疲れ様です。」私はそう言うとみんなに手を振り、ドアを閉めた。結局私は最後まで副店の顔を見れないまま。こんなんじゃ『気にしてます』って言ってるようなもんだ。自分に呆れてため息を着くと、後ろから誰かが私を呼び止めた。
びっくりして振り返るとそこには副店が立っていた。
「お前、これ忘れてるぞ。」
「えっ!?」私は慌てて副店に駆け寄る。手渡されたのはただの紙切れだった。困惑した様子で副店の顔を見上げると
「挙動不信すぎるだろ。」と副店は私を馬鹿にした。
「気をつけて帰れよ。」
「はい。」副店は私の返事を聞くと店へと戻って行った。
一体何のために出てきたんだろう…。私に注意するため?疑問を抱えながら自転車に乗ろうとした時、さっき渡された紙切れが手から擦り抜けた。その時、はっと気付いて紙を拾い上げ、ごちゃごちゃに丸まった紙を開いた。中には見慣れないアドレスが書いてあった。
間違いなく、副店のもの。
「なんで…。」
私はその紙切れを捨てることができなかった。
気持ちが動いてしまっている気がした。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう