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  男前な友人 作者:siko
男前柳瀬と純情(変態)神承
―――――放課後。

「メーン!」
「メーン!」

 じたばたじたばた。


 さて、擬音とセリフでお解かりとは思うが、やってきたのは体育館の隣に隣接して立てられた闘技場の中の剣道部の使用しているスペースだ。
 ちなみに今居るのは女子剣道部の練習している所。
 何て言うか去年の夏の大会が終わってすぐに退部したせいか男子剣道部には顔を出しづらい状況だから直接こっちにやって来たのだ。

 はぁ、でもやっぱりここに来るのは久しぶりだよなぁ。
 久しぶりに来ると、なんて言うか、やっぱり懐かしいよなぁ。
 天窓から入る光によって明るく照らされた室内。一生懸命に竹刀を振る少女達の掛け声と、闘技場特有の澄んだ空気。
 
 ……ん? 澄んだ空気?
 
 
 クンクンと良く匂いを嗅いで見る。それでもまだ解からないから今度は深呼吸。
 ……。

 やっぱり澄んだ空気じゃネーヨ! っつうか汗臭いヨ!
 何で剣道ってこうも臭い競技なんだろうか。特に道着や小手の匂いは壮絶な物があるしなぁ。

 あ、でも逆に考えるんだ。この匂いはすべて目の前で運動をしている世の男性方憧れの「花の女子高生」の体臭なんだって。
 そう、それはもう彼女達のありとあらゆる所の匂いの凝縮されたエッセンスなんだぜ? それはもうなんつーか男のロマン!
 おおー、そう考えるとなんか意味も無く興奮してきたぜ。よし、深呼吸して体の深いところまで女子高生成分を浸透させて補給するぜ!

 すーはーすーはー。はーっ、いっつフレグランス! 堪らねーっ!

「何をスーハースーハーしてるんだい? 少し気持ち悪いよ神承」
「って、柳瀬ぇっ!?」

 み、見られた!

「こ、コレはだなぁ……」
「コレは?」

 そうしてそのやや釣り上がった、でもキラキラと光る綺麗な目で覗き込むようにこちらを見る柳瀬。ううぅ、そんな純真な目で俺を見ないでくれぇ……。
 流石に女子高生のかほりを嗅いでましたとは言えんし、でもとりあえずこの場はごまかさねば……。

「実はコレはさ……」
「コレは?」
「その、どうも今日は朝から肺の調子が悪くて、それで少し息苦しかったら深呼吸をしてみたんだって」

 オイオイ、何だその言い訳。自分で言ってても無理あり過ぎだって思えるんだから相当なもんだよ!

「それは大変じゃないか神承! 肺か? 肺が悪いのか!」

 って、信じてるよコイツー!
 だが、そんな俺の心の声も何のその。柳瀬は慌てて俺の胸を両手でペタペタと触りだす。

「って、おっ、オイ!」
「どうした! ココが苦しいのか?」

 そういって胸の一点を慎重にさすりさすりとしてくる柳瀬。

「お、おい、そんな……そこを触られたら……」

 なんだか気持ち良くなっちまうじゃないか……って違ーう!
 なに感じて……もとい、気持ち良くなってるんだよ俺は!

「どうした! 顔が紅いぞ? もしかしてしんどい?」
「おい、ちょっと待て。暴走するなって。ストップっ! すとっぷゆあはんど! 落ち着けって。な?」
「あ、ああ」
「ちょっと、離れてくれないか?」
「なんでさ?」
「それは……」
 
 そうして、長身の柳瀬とは言え男女差の為に僅かにある身長差の為に、やや下から心配そうに俺の顔を見上げる柳瀬を見る。
 いや、確かに滅茶苦茶凛々しいし、意識した事は無いし、男同士の友人のようなノリで付き合ってきたとは言え、その細くて白い指で胸板を触られたのかと思うとふとドキドキしてしまう。
 それに、なにより柳瀬はとてもカッコよくて男前だけど、でもやはり、とても魅力的な「女」であることは確かなんだ。
 そんな柳瀬の綺麗な顔が息が触れそうな位の距離で目の前にあるのだ。

 その事を考えていると、ふわりと、風が吹いた。
 あ、なんか良い匂いがする。なんか、柔らかくてしっとりとした、魅力的な匂い。 
 石鹸なのだろうか、それともシャンプーなのだろうか。もしかすると柳瀬自身の体臭なのだろうか?
 ああっ! そんな事を思っているとなんだか余計にドキドキしてきた。なんだって言うんだよ、もう。

「どうしたのさ、顔が紅いぞ神承?」
「そ、それは……」

 何故か突然柳瀬を意識しちゃってドキドキしちゃってるから……なんて言えるかー! 何処のスケコマシだよそれ。
 それに何より、俺達はそんな事を言い合う関係じゃないんだ。それは壊しちゃいけない。ええぃ、早く何時も通りに振舞えよ俺!
 
 だが、そんな俺の意志にもかかわらず、目の前で、それこそ鼻と鼻がくっつきそうな位の距離で心配そうに俺を見上げる柳瀬の整った顔を見てると嫌がおうにも胸が高鳴って、頬が熱くなってしまう。

「どうした? さっきより顔が紅いよ神承? 熱でもあるのかい?」
 
 そうして、俺の額に細くて冷たい柳瀬の手が触れる。

「あ、その、柳瀬……?」
「うーん。特に熱は無いみたいだしなぁ。何が原因でこんなに顔が紅く…………って、ははーん」

 そう言うと突然一歩後ろに引き、そして半眼の目で少しニヤニヤしながら嘗め回すように俺の全身を見る柳瀬。

「な、なんだよ……」
「くっくっく、あのさぁ、神承さぁ、もしかして照れてる?」
「ばっ、ばばばっ、バカ言っちゃいけねぇヨ! 何で俺がお前に照れなくちゃいけないのさ!」
「ふーん。へー。ほー」
「あっ、テメッ、信じて無いな柳瀬。俺がお前なんかに照れる訳無いだろ? 自惚れるなよ!」
「へー、そんなこと言っちゃうんだぁ。くっくっく、じゃあさぁ……」

 そう言って、俺の方へとまた近づく柳瀬。
 思わず一歩後ずさる。だが柳瀬は構わず近づいてきて、俺の肩をぐっと掴み、そして……。

 
 コツン。


「なっ、なっ、なっ、おまっ……」
「くくっくっくくく! あれれー、熱は無いみたいなのに、「私」なんかに照れてるはずの無い神承クンの顔は何故かまっかっかですよー?」

 目の前には笑うのを我慢するような表情で俺の眼を見る、どアップの柳瀬の顔。柳瀬が話すたびに柳瀬の息が俺の顔にかかる。
 そう、柳瀬は俺に、所謂「小さい子供に母親がやる熱の測り方」である、額と額のゴッツンという伝統の方法で俺の熱を測っているわけだ。

 当然、少しでも動けばキスをしてしまいそうな距離に柳瀬の顔があるわけで、俺はと言うと酸欠の金魚のように口をパクパクする事しかできないで居る。

「あれれー、どうしたのさ、神承?」

 そう言って今度は一歩離れて人差し指で俺の胸板の辺りをツンツンと突っつく柳瀬。
 クッ、コイツいつの間にこんなに破壊力の高い仕草を!

 だが肝心の柳瀬の表情はと言うと笑いを噛み殺してるのは一目瞭然で、よく見るとプルプルと小刻みに震えている。
 はぁ、これは完全に一本取られたな。

「クッ、俺の負けだよ。そんなに俺が可笑しいかよ!」
「くっくっくっ、あ、アハハハハ! ああ、面白くて笑い死にしにそうだよ!」

 そうして遂にこらえ切れなくなったのか堰を切ったように腹を抱えて大笑いする柳瀬。うん、何て言うか大爆笑。

「クソっ、いたいけな純情少年をからかいやがって。いつからそんな性悪になったんだよ柳瀬はさぁ!」
「いやっ、くくくっ、だって、さぁ、ねぇ? まさか、神承が私に照れているだなんて、それはもう、プフっ、クククっ、アハハハハ!」
「仕方ないじゃないかさ。俺だって男なんだから。柳瀬だって俺に胸触られたらドキドキしちゃうだろ?」

 って、ドサクサ紛れに俺は何を言ってるんだー! 俺のアホアホアホ!

「くくくっ? ん? いや、今中面白い事いわなかったかい神承?」
「い、いや、その……」

 ええぃ、儘よ!

「柳瀬だって俺に胸触られたらドキドキするだろって言ったの!」
「私? 神承に胸を? いや、大丈夫かな。神承だったら平気だね。何なら触ってみるかぃ?」

 そういって満面の笑顔のまま腰に手を当てて仁王立ちする柳瀬。
 って、うおおぃ! マジかよ?

「え、それさ、柳瀬マジで言ってるの?」
「ああ勿論。私は平気だって。神承に触られてもね。さあどうぞ?」

 そうしてクックックと悪人っぽく笑いながらも、こちらを見たまま仁王立ちしている柳瀬。
 口元は相変わらず噴出すのを我慢してるようにピクピクとしている。

 なんだこの状況。胸を触って良いぞと言って、笑顔のまま照れるでもなく仁王立ちして、さあ揉めと言わんばかりのこの迫力。
 何処からともなくゴゴゴゴゴと言うような擬音すら聞こえてくる気がする。
 カッコいい。スゲェカッコよくて男前過ぎるよ柳瀬! でも女子高生としてそれで良いのか柳瀬祐!

 さて、それはさておきどうするよ、どうする俺!
 目の前にはスレンダーで引き締まっていながらも中々の丁度良い大きさの、セーラー服越しの美乳が二つ。
 この千歳一隅のチャンスでどうするんだ俺! そう、こんな時は……。

 1、ハンサムな神承武は柳瀬の胸をモミモミする。
 2、突如新しいアイディアでパフパフさせて貰う。
 3、さわれない。現実は非情である。

 ま、当然答は……。

「クックックッ、さあどうした? 触っても良いんだぞ?」

 そう言って仁王立ちのポーズのままむしろ胸を強調するように立つ柳瀬。
 でも、それでも俺は……。

「はぁ、俺が出来ないって、解かっててやってるんだろう? 俺の負けだよ、柳瀬」
「ああ、解かって居たさ。私の知っている神承って言う男はこういう時にはめっぽう臆病だってね」

 そう言って心底ユカイそうにクックックと悪人ぽく笑う柳瀬。ちぇ、最初っから柳瀬の掌の上で踊らされてたわけだよな。
 まぁ、普通に考えて「じゃあお言葉に甘えて」って言って「友達」の胸を揉むわけにはいかない。
 俺にとって柳瀬って言う「友達」はそう言う存在なんだ。

「ふふっ、くくくっ、相変わらず良い奴だよ、神承はさ。神承をからかってるとさ、凄く楽しいんだよね」
「くっそー、いつか復讐してやるぜ。って言うかさ、俺は冗談で済むから良いけど、あんまりむやみやたらに胸を触らせてやるとか言うんじゃねーぞ!」
「くくっ、ああ。勿論、解かってるさ。神承以外にはこんな馬鹿な冗談、言えるわけ無いしね」

 そういって、また腹を抱えて、それでも悪役っぽく笑う柳瀬。

 ああ、まあ結局俺は一方的にからかわれた訳なんだけど、柳瀬のあんな言葉と笑顔を見てるとなんか許せちゃう気になってきた訳で。
 我ながら単純って言うか、甘いよなぁ。
 まったく、困ったものだよ。

(9月10日注)
 第7部分男前柳瀬と純情(変態)神承の畳描写について。
 畳表記を変更しました。具体的に言うと、畳の描写を見えなくしました。
 誤字等の小さな問題ではなく世界観の問題なので非常に悩んだのですが、やはり自分の置かれていた環境をモデルにしたところ、少数で在ったことは事実のようなので、意見を取り入れて、畳表記を消しました。
 この件に置いて不快に思っていた方も居られると思います。ごめんなさい。
 あと、元の状態は、消してしまうのも汚い気がしたのでこの話だけをブログの方(http://19320925.blog104.fc2.com/)に保存しておきました。
 大きな変更になりましたので、戸惑う方も居られると思います。すみませんでした。
 あと、この注釈は問題の第7部分、それと改変時最新部分である第15部分の各後書きにて置いておきます。
 ご迷惑をおかけしました。
 



旅に出てました。非情に多忙を極めました。

そして今日からまた地獄の日々です。出来るだけ早く更新したい。
でもいつになるやら。死む。

あと、ランキング見てビックリしました。良いのでしょうか。これが1位で。
まあ、一時的なことだとは思いますが。それにしても光栄です。
私としては、これを読んだ人が少しでも楽しんで貰えたならそれ以上に嬉しい事はありません。
あと、感想、誤字脱字指摘ありがとうございます。
批判でも何でも意見を貰えるって言うのはそれだけで幸せな事です。
その上面白かったなどといわれればそれはこの上なく嬉しいです。
ありがとうございます。

ああ、なんだか取り留めの無い文章になっちゃいました。
最後に、こんな所まで読んで下さった人が居たら、またお礼を。
ありがとうございました。
今後も時間見つけて頑張ります。