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  男前な友人 作者:siko
紅い帰り道
 夕陽に赤く照らされた学校帰りの坂道。俺は缶コーヒーを、柳瀬は500mlのスポーツドリンクのペットボトルを飲みながら二人でポクポクと歩く。
 陽はもうかなり深く傾いていて、二人の影は長く長く伸びていて、その先は少し重なっている。 
 ちなみに俺が飲んでいるのはジョージアコーヒーのマックス。この下品で頭痛がするほどの異常な甘さがたまらないぜ!

「なぁ……その、武?」
「ん、なんだよ祐、突然名前で呼んで」
「あ、嫌だったりした?」
「いや、別に良いんだけどさ、何か用か?」
「そのさ、どうしても剣道部に戻る気は無いか?」
「ああ」
「どれだけ言っても?」
「ああ。って言うか最近ホントお前会うたびに戻れって言ってくるのな」
「はぁ、だってさ、本当に、ほんとーっに……勿体無い」
「なんでさ、別にお前女子剣道部だし関係ないだろ?」
「そうは言うけどね神承、私は実際の所、神承以上に凄い剣道家って言うのを見た事が無いのよ。正真正銘、神承の剣は天才のソレなんだよ?」
「でもさ、去年はインターハイで俺は敗退したじゃんかさ」
「そりゃ神承が勝った後ガッツポーズしたからじゃない」
「だって嬉しかったんだし」
「はぁ、これだから……」

 そうなのだ、去年の敗退理由は勝利のあとのガッツポーズ。これは剣道の試合では禁じられているのだ。やった時点で負けになる。
 だが、まあ実際の所、こいつの言う事は事実だろう。正直、自分でも俺は剣道の才能はあると思う。

 中学の頃教師に進められてから今まで何百と試合に練習に重ねてきて、そのどちらでも今まで俺は一度も、一本も取られた事は無い。
 剣、正確には竹刀だが俺は剣を握った時に、全く相手に負ける気がした事がないのだ。
 威圧感も、恐怖感も、やられるとか危ないとかそう言った感覚を持った事も無い。
 どう言う訳か負けるイメージが湧かない。腕力はそれなりにあるけど運動神経もそんなオリンピック選手のように良いわけではない。
 ただ、どう言う訳か剣と意識した物を握った時には自然と身体が動いて気がついたら相手に一本を入れた後なのだ。
 だから、インターハイの決勝戦の試合を見ても、全く凄いと思わなかったし、それどころか名のある剣道家の動きなどを見ても全く「負ける」と言う感じは無く、確実に勝てる自信もある。

 ただまぁインターハイでガッツポーズをしたのは相手がなんか見えないように挑発とかして来るイケスカナイ奴だから出来るだけ衝撃が深く伝わるように殴ってその結果防具の上から打ったのに見事相手を気絶させる事に成功したからだ。
 って、話が少し脱線したな。

「その、さ。神承がもう剣道をやりたくないって言うのはやっぱあの時平山に滅茶苦茶怒られたのが原因なの……?」

 あ、平山って言うのはうちの男女共通の剣道部顧問のオッサンね。嫌な奴じゃないんだけど無駄に熱血なことで嫌われてはいなけど近づきたくないと言われる妙な教師だ。

「まあ、ね。正直、ソレもあるよ。何でこんな滅茶苦茶言われなくちゃならんのだって。別にそこまで言われてまでやりたくないやって。でもやっぱり一番の理由はさ……」
「一番の理由は……?」
「俺ってばさ、別に剣道が好きじゃないんだよね」

 ズルっ!

「おう、どうしたーんだーねー、柳瀬ちゃん。派手に転んで」
「何で棒読みになるのっ! って言うか本当? 本当に神承は剣道好きじゃなかったの!?」
「ああ、中学時代に授業でやってるのを教師が見て薦められて始めたけど、楽しいって思ったことは無いな。そもそも人を竹刀で叩くって言う行為に俺は魅力を感じないんだよ」
「いや、それは別に良いんだけど、でも本当に? あんなに強いのに……?」
「ああ、まあ正直俺は剣道が巧いと自分でも思ってるよ? でもさ、それと好きかどうかは関係ないと思うんだよね。何かの漫画で読んだんだけどこういうセリフがあってね、「きっと野球選手の中にも別に好きじゃないけど巧いからってだけで仕方なく野球選手をやってる人が2,3人は居ると思うんだよね」って言うセリフ。俺の場合がそれで、これがサッカーや野球だったらそれで生活していけば良いけど剣道じゃあ、いつか大人になった時それだけやって生活するわけにも行かないだろ」
「それはそうだけど……はぁ、そうだったなんて、知らなかったわ」
「まあな、だって言って無いもん」
「それじゃあ、今までの私の努力はすべて、馬の耳に念仏だったわけかぁ」

 馬の耳て……。

「せめて暖簾に腕押しと言ってくれよ」
「はぁ、どっちでも良いよそんな事。でも、そうかぁ、神承が剣道が好きじゃないんだったら無理に誘うのも酷な話なのかなぁ」
「うーん、まあ別に不愉快ではないけど面倒かな」
「そっかぁ、はぁ。じゃあ少し自重するかな」
「おう、そうしてくれ」
「あ、でも戻ってきたくなったら何時でも言ってくれよ? 私が平山に話をつけて神承は全く不満の無い環境で再開できるようにするから」
「ああ、まあ多分無いがその時はよろしく頼むわ」
「ふふ、任せなさいって。あ……」
「ん?」

 そうして柳瀬の視線の先にはT字路。ここで俺とコイツは帰り道が別れる。
 日ももう殆ど沈んで薄明の中の微かな灯りの世界。そろそろ街灯が着き始める。ここで俺たち二人の下校は別れ道を辿るわけだ。

 ちなみにT字路の真ん中にはゴミ箱が置いてある。と……。

「えいっ!」

 柳瀬はまだ5メートル以上はあろうかと言う距離でペットボトルをゴミ箱へと向って放り投げる。
 投げられたペットボトルは綺麗な放物線を描いてゴミ箱と入った。

「おおー」
「どう? こんな物よ。神承は?」

 そう言って俺のほうを向いて口の端だけをあげてフフンと悪人ぽく嗤う。
 ム……。

「ふん、こんなの簡単だね」
「お、言うじゃない神承。じゃあやって見せてよ」
「いいさ。やってやるよ」

 そう言ってとっくに飲み干していた空き缶を持って構える。
 まずはセットポジションを取って、と。むぅ、あまり関係ないか?

「はやくなげろー」
「ええぃ、ままよ!」

 そうしてスローインぎゅ。投げられた缶は……。

 カラン!

「イェイっ、ストライクー!」
「むぅ、やるわね神承。外したら問答無用で明日の昼ごはん奢らせるつもりだったのに……」
「ゲッ、最初っからそれが目的かよ」
「まぁね。やっぱり賭けは先手に限るのだよ神承」
「くだらねー!」
「ふふ、まあいいや、じゃあな、神承。また明日!」
「ああ、ばいばい、柳瀬。また明日な」

 そう言って、二人はバラバラの道を歩き帰路についた。


ふう、本当に気楽に書けて良いね。
なんか自分が一番楽しんでます。
良いんだろうか。

あ、エレンは次にでてきますし、憐神も頑張ってますし、大丈夫です。
何がかは知らないけど兎に角大丈夫ですよ! 多分。


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