真綿の海へ(柳瀬の○○マッサージ偏)
「んんんぅぅぅ……」
ちゃぶ台に乗った八割程は片の付いた宿題を見ながら伸びをする。
ちゃぶ台の向かいでは文句一つ言わず柳瀬が黙々とペンを走らせ続けているわけだが、実が奴がやっているの宿題ではない。
柳瀬はすでに予習に取りかかっているのだ。
柳瀬自身宿題は終わったのだが俺がまだ終わっていないから付き合ってくれているらしい。律儀な奴だぜ。
だが俺としてはそれならいっそのこと答えを教えてほしい所なのだがそれは俺のためにならないからダメらしい。
真面目と言うか何というか……。
だが、解らないところがあった時にも聞けば解き方を教えてくれるしそこら辺はやっぱり良い奴なのであった。
と、言うわけで、普段からは考えられないほどの速いペースで宿題を片付けつつあるのだが、なにぶん普段やりなれない勉強をやったせいか、疲れて体中が痛い。
つーか、鉛筆持ち慣れて無いせいで、鉛筆を持っていると指にめり込んで痛くてやっとれん。全く……どれだけ勉強し慣れていないんだ俺は。
と、言うわけで冒頭へ戻るのであった。
「んんっぅぅぅっっっ…………くうぅぅぅぅ…………ふはあぁぁぁぁぁ…………」
「ずいぶんお疲れのようだね神承?」
「ああ、なんか勉強し慣れていないせいで鉛筆を持った指先が痛い。つーか凹んできたんだけど……」
「くくくくく、そんな風になってしまうなんて、普段どれだけ勉強していないのさ神承は」
「ああ、全く言葉もないぜ。ただそれだけじゃなくて……」
そう言いつつ伸びをする。
背中のあたりからバキバキバキキと言う景気の良い音が聞こえる。
「すごい音がしているね神承」
「ああ。全身が結構痛いかも。最近忙しかったし長時間の勉強は疲れた現代人の身体には結構答えるんすよ」
「……そうなんだ」
そう言うと、少し考えるようなそぶりをして黙ってしまう柳瀬。
どうしたんだろ。
……はぁ、それにしてもなんか一度休むと戻りたくなくなるものだよね。はあぁぁぁぁー……。
「ねぇ神承?」
「ふはあぁぁぁーーーっ、なに柳瀬?」
「そのさ、随分お疲れみたいだしもし良かったら私がマッサージしてあげようか?」
「へ、マッサージ? 柳瀬が?」
「他に誰がいるって言うのさ?」
「だって、その、出来るのか柳瀬」
「うん。部活の後に筋肉痛にならないためにマッサージとか自分でしてたし、他人にはやったこと無いけれど多分出来ないって事は無いと思うんだよね」
「ふーん。まぁ、そうだな。やらないよりはやった方がなんだって良いだろ。お願いするわ」
「くくく、そうかい。それじゃあそこにうつ伏せになって寝てくれないかい?」
「そこ……?」
そうして柳瀬が指さした先にあるのは……ベッド。柳瀬の。
「って、え? 良いのか、そこに俺が寝て?」
「ん? だって床に直にうつ伏せに神承を寝かすわけにもいかないじゃない。むしろベットで何かダメな理由とかあるのかい?」
「いや、だって……」
男友達の家に行ったときだってベッドに乗られたりするのを嫌がる奴は結構いる。
俺は布団で寝てるから良く解らないけれど自分の寝ているところに清潔でない状態の私服で他人が寝るというのは多分男でも嫌なものなのだろう。
まして柳瀬は女なのに、そう言うの気にしないのだろうか……?
「何を迷っているのかは知らないけれど、嫌じゃないんならさっさと寝てもらえるかい?」
「お、おう……」
そう言うと恐る恐る柳瀬のベットに上がりうつ伏せになる。
瞬間、シーツに染み着いた、匂いと言う程に強すぎない僅かな香りが鼻を擽る。
これ、なんだろう……。
香水や石鹸の匂いとは違うのだけど、決して不快な香りではなくて、むしろどこか惹かれる魅力的な、でも何処かでかいだことがあるような気もする、僅に甘い香り。
多分、これは柳瀬の体臭とかそう言った生々しいものじゃなくて、もっと、こう、女性特有の、なにか特別なものな気がした。
思わず本能の赴くままにすぅと息を吸い込むと、じんわりと脳の奥が痺れるような感じがした。
ふぅ、なんだか、落ち着くような、安らぐような、そんな香りだ。
「準備は良いみたいだね神承」
「あ、ああ」
ふと、その柳瀬の声で意識が現実に戻される。
なんだか、頭の奥がまだぼーっとしてる気がするけどまあいい。落ち着こう。
……さて、落ち着いたんだけど、そう言えば俺をベットにうつ伏せに寝かして柳瀬はどうやって俺にマッサージするつもりなのだろうか?
ふにょん。
「ふおおぉおうっ!」
突如背中に感じた絶妙な柔らかさの感触に思わず奇声を発してしまう。
「ど、どうしたのさ神承?」
「お、おま、おま、何やって」
「ああ、マッサージするから神承の上に乗らせてもらったんだけど、大丈夫? 重くはないかい?」
なんとぉー!
「重くはないけど、そ、それじゃ、おま、おまえ、この、」
背中に感じる堅すぎず柔らかすぎずな絶妙すぎる好感触の物体は、柳瀬の、し、し、し……り?
「重くない……か。くくくく、それは良かったよ」
いやいやいやいや、良くないだろ、いや、感触はでぃもーると良いんだけどそう言う問題じゃなくて純粋異性交遊的な意味でその俺と柳瀬の関係から言ってこの行為はどうかというかそもそもそれがどうとか言う問題じゃなくてあれれれそもそもなにをおれはああいうつもりだったのかというかせなかのかんしょくがきもちよくてあのやなせのしりがあばばばばば……。
「それじゃあ行くよ神承!」
バキキキキキ!
「ふぐぉうっっ!」
なんじゃこの突然の激痛は!
「あー、こりゃ随分凝ってるね。少し強く行くよっ!」
ビキキキキキ!
「うげげぇっ! いだいだだいだだいよ柳瀬!」
「なに、嫌よ嫌よも……ってね!」
ベキキキキキ!
「ひでぶっ!」
「ああ、痛むみたいだね結構。でも最初はそう言うものなんだよ。ジキに気持ちよくなるはずだから……っと!」
ボキボキボキキィッ!
「たわらばっ! ちょ、ちょ、おまっ!」
「ククククク、なに、すぐよくなるさ」
そ、そんなぁ……。
柳瀬に頼んだのは失敗だったのか……?
それと、お前、そのセリフは女子高生の物じゃない……。
―――――十分後。
「どうだい。だからすぐ気持ち良くなるって言っただろ?」
「あ、あぁ、あふぅん……」
そう。奇跡的なことに痛いのは最初だけで本当にすぐに気持ちよくなったのである。
そうなるまでは地獄だったのだがそうなってからは正反対だった。
凝ったところをほぐして腕、肩、背中と満遍なくやってくれるのだ。
背中に感じる柳瀬の重さの感触と相まって、俺は今、まさに天国的な心地良さを感じているのであった。
「あっ、ああっ……そこっ、いい、あっ、くぅっ……柳瀬ぇ……」
「……ちょっと、変な声を上げないでくれないか神承。私まで変な気分になりそうだよ」
なにか柳瀬が言っているが正直良く理解できるほどの余裕はない。
「そうはぁ、言ってぇっ……もっ、はぁぁー、気持ちいいんだからさぁ……」
「ハァ、まあ喜んで貰えるのはうれしいけれどね」
そう言いつつマッサージを続けてくれる柳瀬。
はあぁぁぁぁー、マジで癖になりそうな気持ちよさだぜ。
「…………ねぇ、神承?」
「ん、んんんっ、んあ?」
「今日会ったときにさ、随分と疲れていたみたいだけど、少しは直った?」
「ん、んんんっ。ああ。少なくともぉ……今は……極楽かも……」
「そうか、それは、よかった……」
「あ、あぁ……」
何を言っているのかは良く聞き取れないし、もちろん柳瀬の様子を見ることなど叶わないのだけど、何となく、背中の後ろから感じる空気がふわりと柔らかくなった気がした。
ああ、でも、いかん。天国的な気持ちよさと、疲労の解れていく沈むような感覚にだんだん頭がぼーっとして意識が遠のいて行っている感じがする。
「あ、あああぁぁぁ……やば……気持ちよすぎて少し眠くなったかも……」
「ふふふ……そう。それなら、少しだけなら、寝ても良いよ神承?」
「そ、そうなのかぁ……? いや、でもいくら何でもそれはぁああぁぁぁぁー……」
「ねぇ、神承の疲れがとれて気持ちいいって言うんならそれは私にとっても嬉しいことなんだし、ちゃんと起こすからさ」
「い、いいのかあぁぁー……?」
「ふふふ、いいんだよ。おやすみ神承」
「あ、あふぅーーー……う……うぅぅ……っ、ん……」
そうして、俺の意識は、綿の海に落ちていくような心地良さを感じながら沈んでいった。
最後に……。
「……本当に、良かった」
そんな、聞き取れる筈の無い声がしたのを聞いたような気がしながら。
いきなりのお詫びになりますが、長い間が空いてしまった事、待っていてくださった方には、本当にご迷惑をかけました。
理由は非常に個人的な問題なうえ、言い訳になってしまうのでここには書きませんが、私自身の仕事の問題から来るライフスタイルの変化。心理的健康的問題等諸所の事情が重なって、更新をする事が出来ませんでした。
あまりお詫びと言い訳を重ねても見てくださる方に不快な思いをさせる事と思いますので、細かい事は連絡帳として昔作ったブログの方へと書いておきます。
あまりいないとは思いますが、私の言い訳を聞いてくださると言う方はそちらの方をご覧になって頂けると助かります。
一応リンクはついていると思いますがhtmlタグの使い方に自信が無いのでURLを貼っておきます。
http://19320925.blog104.fc2.com/blog-entry-39.html
です。
更新が出来なかった事、すみませんでした。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。