これでいいのか。
「ねぇ神承、冗談は置いておいて確か私たち、宿題は本当に出ていた気がするのだけどさ?」
「あ、そう言えばそうだな。今日は結構沢山宿題出てるわ」
「うん、それならせっかくだし一緒に済ませちゃおうよ」
「お、そうだな。俺も学校帰りだから宿題持ってるし丁度良いな。確か今日の宿題は……数学と現代文か。結構あるし、数学は面倒だな。苦手科目だし……」
「あれ、神承って数学とか苦手だったけ?」
「数学が苦手って言うか……基本的に理系ダメなんだよ。現代文は少しは出来るんだけど……って言っても柳瀬より成績悪いと思うけどな」
「ふーん。でも国語系の、古語とか漢文はどうなのさ?」
「古語も少し良くないし、漢文に至ってはからっきしだな」
「じゃあ英語はどうだい?」
「日本語で苦労するのに外国語なんてとてもとても……」
「じゃあ日本史とか世界史とかの歴史は?」
「あー暗記するのが面倒でどうも宜しくない成績なんだよな。つーかヤバい」
「……それじゃあ地理はどうだい?」
「俺土地勘無いんだよ」
「それじゃあ美術は?」
「絵心無いんだよなー俺」
「音楽の成績は!?」
「さっぱりだ!」
「全然ダメじゃないか。どうするのさ神承!」
「あー、確かに……」
言われてみると俺って勉強できないんだなぁ。良くこの高校入れたよなぁ……。
と、暢気な俺をよそに少し焦った表情の柳瀬。
そう言えばコイツは人事でも親身になる性格だったな。
「ねぇ神承。私たちも2年生だしそろそろ進路とか考える時期なんだけど、その成績で神承はどうするつもりなのかい?」
「んー、どうなるんだろ」
そう言えば先のことなぞ考えたこともなかったな俺。
「暢気に言ってるけどね神承。私たちもいつまでも子供じゃいられないんだよ!解ってるのかい?」
「まあ、そりゃそうだけどさぁ」
こーどもーでいーたいー♪
そんなフレーズがふと脳裏によぎった気がするが気のせいだ。
しかしいきなり言われてもなぁ。そう言えば進路とか考えてなかったしなぁ。
と、暢気な俺を差し置いて慌てていたのから一転、自らを落ち着けるように胸に手を当てて息を吐く柳瀬。
「フゥ、オーケーオーケー神承。それじゃあ神承の得意なことはなんだい?」
「んー、剣道は得意だけど……」
「それだ! 今からでも剣道部に入りなおしてインターハイで優勝してスポーツ推薦で大学に行けば……」
「うーん、現実的ではあるけどさ、俺はずっと剣道を続けるつもりは無いのに進学のためだけに剣道を使うって言うのは、その、なんて言うかさ、誠実さに欠ける行動だと思うぜ俺は?」
「それは、そうだけどさ……」
「あっ、そうだ! 得意な教科あったぞ俺!」
「なんだい神承!」
身を乗り出す柳瀬。ここで俺とっておきのネタをっ!
「俺は保健体育が好きな上に得意だからそれを極めてエロ本の編集者になるって言うのが良いと思うんだ」
「……アハハハハハハハ!」
おっ、ウケたか?
「ハハハハハハハー……全く面白くないよ神承!」
ウケなかった。柳瀬には少し高度なネタであったか。
「まじめに考えなよ神承! これは神承自身の問題なんだよ!」
「そうは言われてもなー……」
「神承がそうやって何気なく過ごしている間にも私たちは大人になっていくんだよ。神承はそうやって何気なく日々を消費していくつもりかい?」
「どうなんだろ?」
「ハァ、これだから神承は。ねぇ神承、例えばだよ。1日在ると人はいろんな事が出来ると言うけれどさ、神承は昨日一日でなにをしたっていうんだい?」
「昨日……」
昨日、昨日って言えば……。
「昨日、そんな昔のことは覚えてないなぁ」
「神承はレイモンド・チャンドラーかい!」
スパコーン!
痛い。スリッパで頭をはたかれた。
「痛いじゃないか」
「神承がくだらないボケをするからだよ!」
「うん、悪かった」
本当に昨日のことをあまり思い出せなかったという事は黙っておこう。
あと、ツッコムならそこはフィリップ・マーロウと言ってほしかった。残念!
「ハァ、肝心の神承がこれだからねぇ……私の考えている事だってきっと……」
「ん? 何か言ったか柳瀬?」
「別に……何でもないよ神承」
「そうか」
まあ、これ以上柳瀬の言う難しい話を聞くのも疲れたしな。別に良いか。
「それより柳瀬。そんな先のことは解らないけれど一つだけ確かなこがあるんだけどさ」
「なんなの?」
「そろそろ宿題やらないと終わらない訳なんだが……」
「…………そうだね。取りあえず目先の問題から片づける事にしようか」
「おう、そうしようぜ」
ふぅ、まあ取りあえずひと段落かな。
でも言われてみたら本当に昨日俺はなにをしてたんだっけ……。
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