ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  男前な友人 作者:siko
大井鞘華
 ―――――昼休み。
 今日は弁当を持っていないので昼飯を求めて購買へと歩く。
 朝は、あれから佐藤美嘉ほどの大物は居なかったものの何人か見逃せないほどの大きな校則違反をしている者が居て注意することになるのだが素直に言う事を聞くような奴は一人として居なかった。
 俺は学校の中で特別名前が売れているほうでもないし、見た目も普通の男子校生といった風情で特別強そうでも無い。
 言い方は化石のように古いが所謂「ツッパっている」生徒がそんな俺の注意を素直に受けるわけも無いのだ。
 勿論そう言うことも想定はしていたのだがエレン曰く「野放しではなくて見るたびに注意する人間がいるということが重要」らしいんだけど……本当にそうなのかなぁ。
 つまりこれから毎日俺はコレを続けるわけだよ、ハァ、想像しただけで気が重いなぁ……。
 そんなことを柳瀬と相談したかったのだがアイツは何か用事が入ったのか昼休みになると同時にさっさと教室を出て行ってしまったからそんな暇も無かった。
 はぁ、いったいどうした物か。

「あっ、神承先輩!」

 ん、俺を先輩と呼ぶこの声は……。
 そうして振り返ると頭をポニーテールで縛った小動物的な感じがしつつも元気いっぱいなのとショートカットで大人しそうな感じの小柄な二人の女子生徒が……。
 って、確か片方、ポニーの方は見覚えがあるぞ。うん。

「あ、えー……っと、君は確か、荻原さん、だったよね?」
「はい! 覚えて貰えて嬉しいです。先輩は今も風紀委員のお仕事ですか?」
「いや、ちょっと昼飯をね」
「あ、そうなんですか。でも今日は朝から風紀委員として働いてましたよね。いろんな人に注意して、立派だったと思います!」
「見てたんだ。恥ずかしいなあ。なんだかうまく行かなくてさぁ」
「そんな、神承先輩なら余裕ですって! すっごく強いんですしイチャモンつける相手はちゃっちゃとやっつけちゃえば良いじゃないですか。こう、剣道の感じでエイヤッと!」
「あのねぇ、君は俺に校内で言う事聞かない奴を木刀や竹刀でシバキ倒せって言うの? 逆に俺が注意されるというか捕まっちゃうよ」

 それも警察に。

「あはは、それもそうですね。でも、それじゃあどうやって態度とか矯正させるんですか?」
「出来る事といえば口頭で注意する事だけさ。エレ……会長はさ、見るたびに注意する人間がいるという事が大事だって言うんだけどさ、正直どうなのよって思うよ」
「あ、でもそれって絶対無駄じゃないと思いますよ。見ている人が居るって事は絶対気にもなりますし少しは心掛けが変わるかも知れないじゃないですか?」
「ふぅん、そんなものかなぁ。あ、それより、その、荻原さん?」
「はい。なんです?」
「君と一緒に居るそっちの娘は?」
「あ、すみません。紹介してなかったですね。同じクラスの友達で大井鞘華おおいさやかって言う子です」

 なるほど、まだ一年生だし荻原と大井で出席番号が一つ違いだったから仲良くなったと見た!
 取りあえず挨拶しとこう。

「そうなんだ、2年で風紀委員の神承って言うんだけど、よろしくね、大井さん」
「あ……は、はい。先輩……」

 そう言うと顔を紅くしてもじもじと俯いてしまう。む、なにか変な事したか俺?

「あっ、ごめんなさい神承先輩。この子いい子なんだけど凄く人見知りが激しい上に内気だから、多分照れちゃってて……」
「ああ。なるほどね。それは確かに俺のほうが無神経だったかも」
「い、いえ、先輩は何も……その、ごめんなさい……」
「いや、いいって。気にしないでよ」
「はい……」

 うーん、確かに悪い子じゃなさそうなんだけどこのままじゃ会話が続かんな。

「そう言えば神承先輩?」
「ん?」
「今日の朝、風紀委員のお仕事の具合はどうでした?」

 朝かぁ……。

「いやいや、結構大変だったよ。ほら、俺って見た感じ凄く普通じゃん」
「普通……ですか?」

 そう言うと不思議そうに首を傾げる荻原さん。
 あれ、普通じゃないのか俺?

「いや、その、俺って見た目威厳も無いし余り強そうでも無いしさ……」

 なんか普通よりかなり不細工とか言われたら傷つきそうなので慌てて趣旨を言う。

「そう言う意味でですね。はい、その通りだと思います!」
「いや、そこでそんな即答せんでも……」
「ああっ、ごめんなさい!」
「いや、まあ良いんだけどね……で、本題に戻るとさ、その威厳の無い俺が口頭のみの注意をする訳よ。それでそのちょいヤンキー入ってる生徒が言う事聞くと思う?」
「それは、多分聞かないですよね……」
「そうなんだよ。その上うっとおしがられるしさ、何だか損な役回りだよ全くさ」
「そうなんですか……」
「それにホンの一部なんだけど凄いのも居てさ。もう欠片ほども校則とか守る気が無いのが居るんだよ。特に佐藤美嘉っていう女子生徒は頭一つ飛び出て酷い物でさ……」

「ええっ!!」

 そこで急に別の方から驚きの声が聞こえる。
 って、今のは……?

「大井さん……だよね今の? どうしたの突然大きな声上げて?」
「あ、ああっ、あの、その……」

 もじもじもじもじ。

 下を向いて言い辛そうにする大井さん。何に驚きの声を上げたんだ?
 会話を遡って考えるに……。

「大井さん、佐藤美嘉のこの知ってるの?」
「はうぅっ、いや、その、あの……」

 そう言ってまた顔を紅くして下を向いてしまう。
 この反応からするにビンゴか。でもなんで素直に知ってるって言わないんだろう。いくらシャイだとは言え知っている人間の事を知っているという事ぐらいはできると思うのだが。
 そう思い大井さんのほうを見てみると……。

「…………」

 相変わらず下を向いてしまいモジモジしている。
 ハァ、まあ大した理由は無いのかもしれないし大井さんの性格からして無理に聞くのも可愛そうだ。
 ここはいったん退散しよう。

「まあ、どうでもいいや。おっ、こんな時間だ。じゃあ俺は飯買わなくちゃならないしもう行くよ。荻原さん、大井さん、一応役職柄言っとくけど何かあったらいつでも相談には乗るから。それじゃまたね」
「はい。風紀委員頑張ってくださいね先輩!」
「あ……」

 元気な荻原さんと何か言いたげな大井さんを残し購買へ向う。あ、でも結構話し込んじゃったしこの時間じゃ……。

 
 そうして既に殆どの商品が売れてしまい閑散としている購買についたときに目に入るのは唯一売れ残っている一種類のパン。
 我が校名物のまずい物。「クワトロパン」
 名前の通り、4種類の具(餡、マーガリン、クリーム、カレー)が一度に楽しめると言う売りのパンなのだがパンの中に仕切りが無いため4種類の具が混ざり合い絶妙に最悪な不協和音を口の中で奏でるという食物兵器だ。
 と言うか、パンの中身として甘い物、特にあんことカレーを一緒に入れるのは法律で規制すべきだと思うんだ。
 去年入学したてに怖い物見たさで買った時の事を思い出し、そんなことを考える。

 ハァ、今日は昼食抜きかぁ……。
 


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。