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  男前な友人 作者:siko
神承、校門前に立つ!
 うららか日和の今朝、遂に風紀委員としての本格的な仕事始めの日である!
 校則を全て覚えたので、どんな状況にも対応してそれなりの指導をすると言うことは、今の俺にとって恐らくそう難しいことじゃない。
 しかし、全部覚えておいてなんだが実は俺はそれほどみんなに完璧に校則を遵守させようと意気込んでいるわけではない。

 少し考えれば解ることだが俺は風紀委員とはいえ一生徒だ。そんな俺に注意される事というのはきっと嫌な気分がするに違いないしプライドの高い奴は傷つきだってするだろう。
 だから、俺は大らかな目で見守る事を主な仕事として、生徒の素行や風紀を注意をすることはよっぽどの事が無い限りしないようにしよう。
 そう心に決めていた。そう、そんな風に決めていたはずだったのだが……。


「アハハハーマジウケル! あ〜!!超お腹減ったしっ♪♪」


 目の前のこの生物は何であろうか。
 数人の女集団、やけに姦しい集団は一人として校則を欠片ほども守っていないことは明白なその女子の集団であった。
 その中でも特に目を引くのがその中心にいる、先ほどの台詞を発した女。

 まず最初に目を引くロングヘアーはまっキンキンに染められて、それも天然のブロンドのエレンの物とは違い明らかな染髪なのでドギツイ金色の頭。
 両耳にはかなり巨大な髑髏のピアス、ドコで売ってんだあんなの?
 ツケまつ毛やラメ入りのマスカラをふんだんに使用したケバい化粧に蛍光色の赤紫のルージュ。
 ブレスレット、ネックレス、指輪ととりあえずつけれる物は全て付けて見ましたと言わんばかりのゴテゴテのファッション。
 セーラー服も校則指定の物と微妙に色の違う物を着ており更にリボンは形色全く違う物を使用している。
 更に今更まだ履いている人間がいたのかと言うような見事なルーズソックスにロンドンブーツかと見紛う程のかかとの高い変な靴。
 スカートは国民的アニメである「夜はマグロなアワビさん」に出てくるアワビさんの妹のコンブちゃんかと思うほどのパンモロに近い超々ミニ。
 良く見れば顔立ちとしてはかなり綺麗な顔で普通にしていればそれこそ美少女と呼んでも良いかも知れないほどの顔なのだが、やや色黒な肌とそのメリハリのつき過ぎた化粧ではまるでドコゾの原住民のようであり元は魅力的だったのかも知れない顔も台無しである。眉毛細すぎるし。

 さて、これはもう、パーフェクトに、欠片ほども校則を守る気が無いのは確実である。
 大抵のことは大目に見ようと思っていたのだが、流石にコレを見逃したら風紀委員である俺の存在価値など無いも同然だろう。
 ハァ、朝から厄介なのに出会っちまったなぁ。でも仕方ない、やるしかないか。

「あのー、君?」

 何年生かは解らないが注意するのに舐められるわけにもいかないし取りあえずタメ口で話しかける俺。

「んー、なにー?」
「いや、その、俺風紀委員なんだけど」
「風紀委員? 何それ? そんなんうちの学校にあったっけ?」
「うん、少し前に会長が朝礼で発表したしその時に俺の紹介もあったはずなんだけど……」
「アハハハー! それじゃあ知らない訳だわ。私朝礼とか出たことないしー!」
「あ、ああ、そうなんだ……」

 予想通りのパーフェクトな返答だぜ……しかし今はそんな事でヘコたれてる場合ではないな。

「まぁ、君は知らないかもしれないけれど、風紀委員が設立されてそれに俺が任命されたわけ。おっけー?」
「うん、まー何となく。それで私に何か用?」
「いや、その、我は風紀委員だけに君の風紀の乱れを注意しなくちゃならんわけだ。まず生徒心得第9条「特別な事情が無い限り染髪の禁止」第11条「過美な化粧の禁止」第12条の「過度の装飾品の使用の禁止」第82条「ピアスはだめだよ〜」第24条の禁止されている靴一覧、ほかにも制服規定の中のリボンの指定やスカート丈、その他もろもろもろもろに君は違反しているわけだ」

 ちなみに数字が若い校則は元からあったものなのでマトモなのだが数字の大きい校則は現校長が決めたので言葉が無茶苦茶である。
 正直、口にするのも恥ずかしい。

「ふーん、それで」
「つまり君は我が菖蒲里高校の生徒として在籍する以上それらの事を修正する義務があり俺はそう修正させるのが仕事なの」
「何それ! ワケわかんない!」
「何でだよ!」

 思わずツッこむ。

「だってぇー、何でアンタみたいな一生徒にそれを注意されなくちゃいけない訳?」
「そう言う君みたいな生徒がいるから俺みたいな立場の人間が必要になったの。そう会長が生徒会の方針として決めたんだから」

 俺だってやりたくてやってるわけじゃないと言う言葉は飲み込んでおく。

「何それェー、意味不明だしぃ、そもそも会長、エレン……だったけぇ? アイツも自分が金髪の癖に他人の髪は黒くしろって、それって超オウボウな感じー!」
「マジそうだよねー」
「ホントホント!」

 今まで黙っていた周りの取り巻きっぽい連中も合いの手を入れる。
 
「って、エレンは自毛の本物のブロンドだっつーの。君みたいに染めてないから良いんだよ」
「何それーっ! 超不公平!」
「不公平も何も……そもそも生徒心得第9条は「特別な事情が無い限り染髪の禁止」だ。理由の無い染髪が禁止されているだけで金髪が禁止されているわけじゃない!」
「うっ……それじゃぁー、私のコレも自毛でーす!」
「嘘つくなよ。根元が黒い金髪なんて聞いた事も無いわ。そもそも天然はそんな色にならない。ああもう、埒が明かない。ちょっと生徒手帳出して!」
「何でよ、何でアンタなんかに私の個人情報教えなくちゃなんない訳? お断りしまーす。私もう行くしぃー」

 そう言ってンベーっと舌を出して立ち去ろうとするギャルな生徒。見た目の割りに個人情報とは変な言い回しをする。
 しかし、あくまで俺に生徒手帳を見せるつもりは無い様だな。ならいい。

「それなら、俺は君についていって周りの人に片っ端から君のことを知らないか聞いて回ることにするよ」
「何それ! 何でそんなことするの! 信じらんないサイテー!」
「そうじゃないと君が誰かも解らないし手立ての打ちようが無いからね。じゃあ行こうか?」
「解ったわよ! 見せれば良いんでしょ見せれば!」

 そう言ってポケットから生徒手帳を出し地面に叩きつける。
 俺はそれを拾い、砂をぱっぱと払って名前を見る。

「1年D組佐藤美嘉……1年生なんだ。別にいいんだけどさ、俺は二年で君は1年生なんだけど、それにしては随分態度でかいんだね」
「フンッ、大きなお世話よ!」
「ふぅ。あ、それから周りの君たちも今回は取りあえず見逃すけど少しはマトモな格好してね?」
「うるさいわ! 早く返してよ!」
「はいはい」

 そう言って生徒手帳を手渡す。
 佐藤美嘉は取り巻きを連れて去っていった。
 なにやら去っていった集団から「サイテー」やら「何なのアイツ」だとか「マジキモい」だとか言う声がした気がするが聞こえなかったことにする。
 フゥ、なんだか大変な上に損な役回りだな。

 それにしても、今の佐藤美嘉……気になるな。妙だ。
 如何に我が校がそれほど表面的には荒れては居ないとは言えあそこまで一年生で目立ったことや目立った格好をすれば上の学年の同じような連中から目をつけられそうな物だ。
 それでもエレンほどの実力や柳瀬ほどの人徳があれば内心なんと思われていようと乗り切れるだろうが今の佐藤はそれほどの物を持った特別な人間にも見えなかった。
 ならなんで1年生であれ程やりたい放題なことが出来るんだ?
 すこし、本当に少しだけど気になる存在だ。注意しておくべきかもしれないな。



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