告白(Eの場合)
そうして考える事数分。
やっぱり柳瀬が何で俺の名前を呼んだのかは解からないが、もうそんな事どうだって良いやと思い始めていた矢先!
ギギィーッと言う軋むドアの開く音が次の来客が来た事を告げた。
全く、この小汚い屋上にしては今日は来客が多いな。
今度は誰だよ!
そう思い来客者の方を気配を消してこっそり覗き見ると……。
「ふう、薄汚れてる屋上だけど今日みたいに天気の良い日は風が強くて爽やかで気持ち良いわね」
そう、キラキラとした金髪を棚引かせながら立つフランス人が1人。
って、今度はエレンかよ!
だがどうやら1人ではないようだ。もう1人は、男だ。
それもただの男ではない。身長は190を軽く超えようかと言うようなかなりの長身でその上体躯の良い大男だった。
うん、なんて言うかすげく強そうなのな。
「それで、君? 手紙には来いと言う内容だけで何の用かは解からないのだけれど、何用で私を呼んだのかしら?」
「ああ、俺空手部3年の伊東って言うんだけどさ、エレンさ、俺と付き合うきない?」
また告白かよ! まるで告白のバーゲンセールだな!
男女交際が風紀の引き締めの為には良くないなどと言うほど古い頭をしている訳ではないが、しかし俺を風紀委員に引き込んだ2人の女が居なければこの学校はもう少し大人しい気がすらする。
だが、今はそんな事はどうでも良い。果たしてエレンの返答や如何に!
「お断りするわ」
即答だった。これ以上ない即答だった。
簡単にOKが出るとは思ってはいなかったがこれは流石に酷い返答だろう。
流石の俺もビックリしたし、当然言われた伊東と言う男もビックリしている。
「なっ、何でだよ!」
「なんでも何も、そもそも私あなたの事、部活動での活動内容で優秀と言う事は知っているけれどそれ以外は何も知らないのだもの。それに私はアナタに対して何の感情も持っていないし、そしてそんな私がアナタと付き合うメリットが少しでもあるというのかしら?」
うん、ヒンデミットで話した時も思ったが相変わらず辛辣だぜ。いや、正直と言うべきなのだろうか?
「ぐっ、で、でもな、メリットならあるぜ!」
「へぇ、何よ。聞いてあげるから言ってみて」
「エレンは風紀委員に適任の人材が欲しいんだろ? 俺がそれになってやるよ。今日の朝挨拶していたなんだっけ、かみじょう……とか言ったか? あんなひ弱そうな奴よりは俺のほうが役に立つ自信あるぜ」
「さて、それはどうかしらね。私は恐怖政治をするつもりも無いのだし。それに私はよく知らないんだけど彼はかなり強いそうだしアナタじゃ敵わないんじゃないの?」
「そんな馬鹿なわけねぇだろ。あんな噛んじまってまともな挨拶も出来ない奴にこの俺が負けるわけが無い。あんな情けない奴に!」
「ああ、朝のあのときの挨拶ね、ふふふっ、ホント面白いわよね神承君って。まさかあの場で噛むなんてね。それも「神承武でちゅ!」だもの。舞台上なのに思わず噴き出すところだったわ。ホントにもう、あんなに面白いのに笑えないなんて何の罰ゲームかと思ったわよ本当に。ああ、そうね。そう言う私を楽しませるって言うことに掛けても風紀委員の役職にはアナタじゃ役者不足よ」
「……っ!」
うわー、言うなぁ……。
っていうかエレンも人をダシにひとりで笑ってはいけない朝礼やってる暇があったのなら助けて欲しかったのが本音だぜ……。
「それにね、何より気に入らないのがあなたのその態度よ。そもそも校則で書かれているように告白には出来るだけ手紙をって言うのがあるでしょ? それがもしもちゃんとした恋文だったら私も真剣に考えてお返事をしたわよ。でも、手紙には来て欲しいとだけ。自慢じゃないけど私はよく告白されるから今回もそうだったとしたらとも思ったわよ。だからちゃんと来たのに、どんな心のこもった告白をしてくれると思ったら偉そうに……「エレ〜ン、俺とぉ、付き合うきはぁ、ないかぁ?」だもの、馬鹿にするのも大概にしなさいってなもんよ!」
すごい剣幕である。ちなみに「エレンさ、俺と付き合うきないかぁ?」の部分は低くてアホっぽい声で言っていた。伊東君の物まねのつもりなのだろう……多分。
「確かにアナタは私の先輩に当たるし私はアナタの後輩よ。でもそれが他人に付き合って欲しいと頼む態度? こう言う時は先輩後輩年上年下関係ないわよ。相手が後輩でも誠意を持って「エレンさん、僕と付き合ってください!」とか頼むのが筋じゃない? それなのにそんな告白……。それじゃあ誠意の欠片も見えてこないし心だって伝わらない。そんな告白じゃ私どころかどんな女の子だってあなたになんか振り向かないと断言できるわよ!」
「何だとっ!」
「確かにアナタは確か空手部で結構活躍してて、確か……空手部の副部長だったわよね。それは立派だと思うし誇れることだと思うわ。学校の活動をちゃんと頑張ってそれなりの結果を出しているのだもの。空手部副部長……うん、立派なものよ。でもね……」
そう言うと急にエッヘンとでも言うように腰に手を当てて偉そうにふんぞり返るエレン。
間抜けなポーズなのだがもともとデカいバインバインのチチが余計強調されて、うん、なんつーか、ダイナマイツ。
「そんなこと言えば私だって生徒会長よ!」
…………。
いや、まったく意味解らん。
「エレンテメェ、黙って聞いてたら訳解らないことばっかり言いやがって……舐めてんのか、俺を」
「別に舐めては無いわよ。だって事実じゃない」
「チッ……それにしてもエレン、お前は今滅多に人の来ない学校の屋上に俺と二人っきりって言う今の状況わかってんのか?」
うん、二人っきりでは無くて俺もいるのだけど、まあいいや。今更口も出せないしな。
「別に解ってるけど、それが何か?」
「だからよぉ、あんま俺を怒らせないほうが良いって言ってるんだぜ。俺を怒らせると……痛い目見るかも知れねぇしさぁ」
「あら、痛い目ってどんな目かしら?」
「こんな目だ……っぜ!」
そう言うと伊東は突然エレンの制服の胸元を掴みそのままエレンごと突進して屋上のフェンスに叩き付けた。
「!!!」
余りのことに思わず物陰から飛び出しそうになる。
助けなければ! そう思ったのだから。
だが、一瞬。その一瞬エレンのほうを見たら。
「うふふふふ」
笑っていた。もう、これ異常ないほど悪人面で。美人だからか余計に凶悪そうに見えるその顔で。
フェンスに押し付けられているのをモノともせず余裕の笑顔である。
「ねぇ、伊東君。アナタ、女の子に暴力振るうんだ。サイテーね。こう、男としてのプライドとか言うものは無いの?」
「てめぇ、いけしゃあしゃあと言いやがって……。エレンの言うことを俺のプライドが許さなかったからこうなってんだろーがよ!」
「ふぅん、つまりあなたが傷ついたから私に仕返ししたって言うわけね。尤もな意見だわ。でもね……」
でも?
「一回は一回よ!」
そう言うと、エレンは、思いっきり男の股間を蹴り上げた。
「おぶぅっ!」
そんな奇声を上げて蹴られた股間を押さえて前のめりになる伊東君。
それを見て思わず俺も反射的に前のめりになって自分の股間を押さえていた。
男だからこそ解るその痛み!
そこを的確に蹴り上げるなんて、エレン……残酷だ、残酷すぎます!
だが、エレンの残虐性はそれだけで収まらない。
良く見ると、右手を高く上げて振りかぶって……。
「えいっ!」
腰の入った良いビンタが前のめりになってちょうど良い高さになっていた伊藤君の頬に直撃した。
パシィィィン! と言う素晴らしい響きを残して伊東君はダウンした。
あれだけの体格差がある屈強な男を美人の女性がダウンさせる図と言うのはシュールですらある。
エレン……ここまで強かったのか。
「ふぅ、私も伊達にモテては無いわよ。たまにアナタみたいな馬鹿がいるからね。告白を受けるときは基本二人っきりのの時間だもの。何かあっても自分の身を守れるくらいの力はつけてるつもりよ。侮らないで欲しいわね。それから……」
そう言うと蹲ったまま倒れて震えている伊東君を蹴飛ばして仰向けに転がす。
そして、なんとそのまま仰向けになった伊東君の股間を足でぐりぐりと踏みつける!
「私は生徒会長よ! 偉いのよ! だから初対面の人間に呼び捨てにされるいわれは無いわ。エレンじゃない、エレンさんでしょ。あんまりふざけた態度とると去勢するわよこの駄馬!」
「あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁ〜〜〜!」
断末魔……と言うか昇天しそうな絶叫をあげる伊東君。
女王様や。ホンマモンの女王様がここにいる!
きっとそのクチのヒトにとって堪らない光景だろう。
絶叫を上げる大男とぐりぐりする金髪美人。うん、完璧な図だね!
「ふぅ、今日はこの程度にして置いてあげるわ」
そう言うと、スッキリとしような表情で伊東君から足をどけ屋上を出て行くエレン。
後には、恍惚とした表情で気絶して取り残された男が一人。
だが、その男の顔には、悔いの無い表情に俺には見えた。
あれは、やることをやり遂げた漢の表情だね。
しかし、まあ、アレだな。俺を風紀委員に引き込んだ二人がモテてて告白されまくってるのは解ったのだ……。
柳瀬はまだ良いとして、だな。
エレンに風紀を守るべきだなどと言う殊勝な心掛けは、欠片ほども無いことだけは良く解った。
「ハァ……風紀委員、か」
屋上に取り残された俺は、実は少しだけぐりぐりされてた伊東君を羨ましいと思っていたりする自分を必死で否定しながら、ただただため息をつくことしか出来なかったのだ。
今日、時間が無くて新幹線の中で仕事する振りしてコレの仕上げをしていたときは見られたらと思うとヒヤヒヤでした。
それぐらいに今回はインモラル&マニアック!
大丈夫なのでしょうか……。
それと感想等ありがとうございます。
時間が出来次第片っ端から返信していきます。
どうも返信しようとするとウイルス漬けのパソコンが固まってしまって……。
感想にあったネタを散りばめる量、気をつけます。
では。