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  男前な友人 作者:siko
ヒンデミットにて
 そう言うわけで処変わって場所は「ヒンデミット」と言う名のケーキショップ。
 店名のネーミングセンスは最悪に等しいが、ケーキの方なんかは中々の物を出すという事でちょっとした評判になってる店だ。
 ケーキショップとしてはかなり広めの店で、道路沿いはガラス張りになっていて外からの明るい光が清潔な店内を照らしている。
 当然、時間も時間だけにうちの高校帰りの生徒もかなり利用しているようでほぼ満席の店内には制服姿があちこちにチラホラと見える。
 そして、俺のテーブルの向いには……。

「ねぇねぇ、祐っちは紅茶飲むの?」
「そうだね、少し欲しいかも。エレンはどれにするのさ?」
「んー、そうねぇ、私は……」

 といった感じで仲良さ気にメニューを眺める会長ことエレンと女子剣道部部長こと柳瀬が居るわけで。
 当然、タイプは違えど二人とも美人で、そして我が校の有名人だ。
 そこに混じるごく普通の俺。

 なんか、さっきから視線が痛い気がする。
 俺が見ると見ていたのを誤魔化すように目を不自然に逸らす女生徒が多数。
 やれやれ、変な噂が立たなければいいんだけど……。

「ハァ、何で俺はこんな所に居るんだか……」
「ん? だって、帰る前に言っておいただろう? 今日は少し豪華に奢ってやるってさ」
「確かに言ってたけど……」

 そう、確かに言っていたし、ヒンデミットのケーキなら値段もそう安くはない。
 悪くない話だったのだが、だけどまさかこんな異常な面子でテーブルを囲む事になるなんて思わなかったしなぁ……。

「それよりも神承。神承は何を頼むか決めたのかい? 私の奢りだし遠慮しないでいいんだぞ?」

 そう言ってメニューを差し出してくれる柳瀬。
 まぁ、考えても仕方がないしここは甘えておくか。

「うん、決めた」
「それじゃあ頼むわね。すみませーん」

 そう言って手を上げる会長。

「はい、ご注文はお決まりですか?」
「ええ、私は、この、レアチーズタルトで。祐は?」
「私は……ザッハトルテ。神承は何を頼むんだい?」
「俺は、んー、そうだな。じゃあ俺はこのデラックスチョコパフェで」 

「以上で。あっ、あと飲み物なんだけど私は紅茶、そうね。キーマンで。祐は何かこだわりとかある?」
「私は良く解からないけど、んー、ミルクティーが飲みたいかも」
「そう、それじゃあアッサムが良いと思う」
「そうなんだ。じゃあそれで」
「それと、えーっと、神承……君だったっけ?」

 って、俺か。突然話しかけられてビックリした。

「はい、神承ですよ。会長」
「ハァ、別に同い年だし敬語じゃなくても良いんだけどね……」

 そう、金髪の頭をゆらしながらため息をつく会長。
 そうは言われても今日突然目の前に現れた異常な美人に気安く話せるほど俺はスレてないんだよ。

「神承君は飲み物どうするの?」
「あ、それじゃあ俺はコーヒーで」
「そう。えっと、注文は以上だから」
「はい、かしこまりました」

 そう言って下がっていくウエイトレス。
 さて、後は待つのみって……ん?

 そうして気づくと、目の前の会長がそのブルーの瞳で俺をじーっと、それこそ睨むのに近いような感じで見ている。
 な、なんだって言うんだ一体。そもそも会長の美貌は人間離れし過ぎていて見られるだけで何か緊張してしまう。
 あ、なんかドキドキしてきたかも。

 思わず、俺はそんな動揺を悟られぬように、少しスカした仕草で水を飲む。
 ふぅ、少し落ち着いたかも。
 ヤレヤレだぜ。ホントさぁ。

 と、俺を見たままの会長が、口を開く。

「ねぇ、祐。私が祐に頼んだ内容覚えてる?」
「ん? 勿論さ。えーっと、風紀委員を作ろうと思うから私に初代風紀委員になってくれって言った時のことでしょ?」
「そうそう。それで祐が無理って言うものだから代わりを見つけて欲しいって言って。その時に私が出した条件覚えてる? こう言う人を探して欲しいって言って」
「ああ。「強くて」「信頼できて」そして「面白い」人を探して欲しいって」
「そう! 確かにそう言った筈よね。面白い人をって。これって、スッゴク、もう一番くらいに重要なことなのよ」
「ああ、解かってる」

 オイオイ、良いのかよ。我が校の風紀委員の条件がそれで。

「そう。それで、私はまだこの神承君の事を良く知らないから彼がどのくらい強いのかも、信頼が置けるかと言うのも良く解からないわ。でも、祐が連れてきた人間なんだもの。そこの所はあまり心配していないの」
「そうなんだ、それは良かった。大丈夫、神承は信頼は置けるし、それに飛びっきり強い男だから」

 あのー、自分ではあまりそうは思えないんですけど……。
 などと心の中でだけ思っておく。口には出さない。だって、会話に入れないんだモン!

「そう。きっと祐が言うんだからそうなんでしょうね。でもね、正直私にとってそれは2番目3番目に重要な条件でしかないの。私が今求めているのは私の暇を潰せる面白い人材なの!」

 だからそれで良いのかよ。菖蒲里高校生徒会長!

「それでね、肝心の神承君だけど……」

 そう言って俺のほうへ不躾で無遠慮な視線を向けてくる会長。

「さっきも言ったように確かにルックスは悪くないけどね、でもスカした感じで水を飲んでるだけのこの神承君はとてもそんな面白い人間にも見えないし、正直私は神承君に何も惹かれる所は無いわ」

 うおっ、噂ではかなり高飛車でキツイ性格をしているとは聞いていたけど、本人の前でそう言い切りますか。
 でも……。

「その通りだよ柳瀬。俺はそんな特別な奴でも面白い奴でもない。柳瀬や会長の期待に答えられるような奴じゃ、俺はないんだよ」

 と、柳瀬は少し不機嫌そうに言う。

「何を言ってるんだ神承! 神承は絶対面白い奴だって。私が保証する! 安心して良いさ」
「いや、俺はお笑い芸人じゃないし別に面白い言われても嬉しくは……」
「兎に角エレン。私はエレンを楽しませる意味でも神承以上の適材は知らないし、エレンもすぐに神承の面白さが解かるさ!」
「ハァ、そうだと良いんだけどね……」

 そう言うと、会長は一つため息をついて氷の入ったグラスをカラカラと揺らした。


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