初めて近くで見た人。
思わず声を失う。
何故って、それはあまりに異質な物を見たからだ。そこだけ浮き上がるように明らかに異常な空間なのだ。
なんと言うか、日常からの別離と言うか、結界と言うか、オーラと言うか。兎に角、感じたことの無い空気をそれは放っていたのだ。
細くて長い手足。白く傷一つ無い陶磁のような肌。見たことがないほど艶やかで繊細で、触ったらさぞ気持ち良さそうなサラサラふわふわの眩しいほどの美しいブロンドの髪。そして勝ち気そうではあるもののトンでもなく整った顔に輝くブルーの瞳。
全てが未知との遭遇だった。
つまり、トンでもない、それこそ見たことも無いような美人が突然現れたわけだ。
いや、反則だよねコレ。名人が作ったフランス人形でもこうは整ってないぜとまでに整った顔。
純国産じゃまねできないであろうその身体。そして何よりもそのオーラ。
こんな凄い美人がうちの高校に居たとはね。
だが、その美人は何事でもないように俺の空気を侵食する。
具体的に言うと俺のほうに近づいてくると……。
「ねえ、君。柳瀬祐って子どこに居るか解かる?」
「うおっ! まぶしっ!」
いきなり話しかけられて反射的にそう叫ぶ俺。
当然、突然の俺の奇行に不思議そうと言うか、怪訝な顔をする目の前の美人。
だが、本当に眩しかったのだから仕方が無い。
外から入って来た太陽光が金髪に反射した気がして(勿論錯覚だけど)目に沁みたのと、そして何よりもその存在が、眩しかったんだから。
だが、そんな小粋な感情は相手に伝わるわけも無いので、真面目に対応する。
「んっ、オホン! えーっと、柳瀬ならあっちに居ますよ」
「ん? どれどれ?」
「ほら、アレです」
そう言って持っている竹刀で柳瀬を指す。
「あー、アレね。解かったわ」
そう言うともう俺には用が無いとでも言う感じで柳瀬の所に行く。
うん、いや、今更ながらビックリした。
今のって、やっぱり、「会長」だよなぁ。
聞いたことはあった。
曰く、去年の九月の生徒会選挙で若干一年生でありながら大差で会長に当選した奴がいると、
曰く、その会長はフランス人の女の子であるとか。
曰く、その会長はモデルも裸足で逃げ出すほどの美人であるとか。
曰く、会長は文武両道全てに通じていてその上実家は大金持ちのお嬢様で、まさに死角の無いパーフェクトな女性だとか。
曰く、すでにファンクラブが出来ていて男女共にかなりの人間が在籍しているとか。
兎に角、噂話は枚挙に暇が無い。
だが、俺自身は特に噂等には興味が無かった事もあり、舞台上に立って挨拶をしているのを遠くから見て、良く顔も解からない物だから「おー、金髪さんだー」などと能天気に驚いていただけだったから近くでハッキリと顔を見たのはさっきのが初めてだった。
いや、それにしても驚いたね。あれほどの美人だったとは……そりゃあ騒がれるのも納得だわ。
でも、そう言えばその生徒会長様が剣道部、特に柳瀬にとは何の用なんだろうか?
―――――と言うわけで、耳をすませてみる。略して耳すまヘブン状態。
と、聞こえてくる柳瀬との会話。
「ところで、今回足りなくなった物はどれ?」
「ええっと、これなんだけどねエレン。今回は竹刀4本。あと部員が増えて足りなくなった物のリストがこれなんだけど」
「ふーん、確かに竹刀はどれも酷く割れているわね。ふーん。グラスファイバーとかじゃなくて竹の使ってるんだ。えーっと、それから必要な物も……解かったわ。剣道部は結果も残しているしね。竹刀四本分とプラスアルファでの臨時予算を認めるわ」
「うん、助かった。でもさ、予算の確認の為にわざわざ会長自らお出ましとは随分とご苦労な話だね」
そう言うと意地の悪そうな感じでクククと笑う柳瀬。
生徒会長が相手でも相変わらず素直に可愛く笑えない子なのである。
「うん、まあね。今までがドンブリ勘定過ぎたのよ。去年までの予算報告書を見てビックリしたもの。予算の選別がザルと言うか……そもそもオカルト研究部にイモリの黒焼きを買う為の予算をどうして今までの生徒会は出してたのかが不思議でならないわ」
確かにそれは不思議だな……。
「必要な所には必要なだけ。見込みのある所は吟味の上で希望的結果を出せるための予算を。明らかに無駄な予算は見切りを付けて引き締める。経営の基本よこれは?」
「いや、学校の生徒会で、経営の話をされても……」
「うふふ、良いじゃない。それに、今日来たのはあの件の事もあったしね。私としては祐がやってくれると、資質、能力、共に申し分なくて適職だと思うから嬉しいんだけど」
「アハハ、そう出来たらいいんだけどね。あいにく私は部長の仕事だけで一杯一杯だからさ。お役に立てないよ」
「それは理解してるし仕方ないと思って納得済みよ。だから代わりを用意してくれたんでしょ? で、今日は会えるって聞いたんだけどどこに居るの?」
「うん、すぐに紹介するから、その前に……」
そう言うと柳瀬はパンパンと手を叩き言った。
「ハイみんなー! 少し早いけど今日の部活はここまで切り上げだよ。早く着替えて帰るように」
そう言うと部員たちは素直に「はーい!」と言ってすぐに練習をやめて部室の方へと散っていく。
人望あるなぁ、愛されてるなぁ、柳瀬。だがその愛の何割かは恐らく性的な意味なんだろうなぁ。
などと良からぬことを考えていると、目の前に会長を連れ立って柳瀬が来た。
「ごめん、待たせたね神承」
「いや、別に良いんだけど、その……」
そう言って、俺は目線で会長の方を指して「説明しろよ」と促す。
「ああ、そうだった、まだ紹介してなかったね。知ってるかもしれないけど、これが、私の友達で生徒会長のエレン・ブレンターノ」
「へー、柳瀬って会長と友達だったんだ」
「うん、まあね。それでエレン。彼が紹介するって話していていた相手の神承武」
「ふーん。ルックスは悪くはないけど、他にこれといって普通の男にしか見えないわよ。本当に彼をなの?」
そう言って値定めするように俺を見る会長改めエレン。
「うん、本当に彼を。私は彼を……」
そう言ってこちらを見てニヤリと笑うと。
「風紀委員に推薦するね」
そう、言い切った。
長らくお待たせしました。本当にごめんなさい。
事情を一言で説明させていただくと、日本に居ませんでした。
いや、向こうのパソコンって日本語は表示されても日本語は打てないので。
これからまた3,4ヶ月は非常に多忙で時間を作れた時のみの更新になるかもしれませんが、今後とも読んでもらえると嬉しいです。
本当にありがとうございます。
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