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  男前な友人 作者:siko
もしかしてライバル? いいえ。
 そうして、指導は一段落したわけだが、また部員との合同の練習に戻る荻原を見送ってしまうとやることも無くなりとたんに暇になる。
 まあ、女子コーセーの躍動ある練習風景でも見つめるとするか。
 うん、これは、アレだ。別にヤラシイ目で見るわけじゃないんだぞ。当たり前じゃないか。
 と言うわけで見る。

 ……。
 …………。
 ………………いや、いい眺めだぜ、フヒヒ。

 ―――――と。

「げっ、神承っ!」

 俺のスイートタイムを邪魔する野太い声が聞こえた。
 そちらを振り向くと……。

「何でここにお前が居るんだよ。神承!」
「ああ、なんだ。2年生で男子剣道部の部長の笹山君じゃないか」
「……なんでそんな説明口調なんだ?」

 当然深い意味は無い。察してください。

「そんな事よりなんで神承なんかがこんな所に居るんだよ!」

 そう上から目線で(実際背が高いからなのだが)俺を見下ろして高圧的に言い放つコイツは笹山弘ささやまひろし
 さっき言ったとおり現男子剣道部部長の笹山は俺が入部していた1年の時からやたらと突っかかって来ると言うか絡んで来る奴なのだ。
 見た目は線が細く背の高い、お坊ちゃま風の整った容貌の優男なのだが、実は中々に締まった筋肉を持った隠れマッチョである。
 剣道のスタイルとしてはその恵まれた肉体である180を軽く超える高身長と筋力を生かした素早く力強い打ち込みで一方的に攻めるタイプで、中々に非凡な腕前だと思う。
 だが、初めての立会いの時に俺に負けたのが納得がいかないらしく、それから事あるごとに突っかかってくる。
 正直、かなりうっとおしい。
 まあ、とりあえず、何故俺がここにいるかと言うと……。

「俺はなんかさ、柳瀬に呼ばれたんだよ。用事があるって」
「柳瀬に? 何で神承が呼ばれるんだよっ! クソッ!」
「って、何を怒ってるんだよ笹山。何が気に食わないんだ?」
「フンッ、剣道部やめて勝ち逃げするようなクズに説明する気は無いね。それより俺は柳瀬に用があって来たんだ。柳瀬はどこに居るんだよ」
「ほれ、あそこだよ」

 そう言って手に持ったままになってた柳瀬の竹刀で指示して知らせる。
 そちらを見て、柳瀬の姿を確認した笹山は俺を一瞥すると。

「クソッ!」

 何が気に食わないのかそう言い捨てて柳瀬の方へと行った。


 しかし、笹山が柳瀬に用か。何の用なんだろう?
 少し、気になるかも。

 ―――――と言うわけで、少し意識を集中して盗み聞きをしてみることにした。
 そうして聞こえてくる会話。


「おいっ、柳瀬!」
「ん? ああ、笹山じゃないか。何か用かい?」
「何か用……じゃないだろ! あの時の話。返事をはぐらかしやがって。ちゃんと会長に俺の事を言っておいたのか?」
「ああ。あの話か。悪いんだけどエレンに笹山の事は話してない」
「なっ! どうしてっ!」
「だって、私は笹山をあれに推すつもりは無いからね」
「何でだよっ。俺じゃあ相応しくないって言うのか!」
「いや、まあそうは言わないけどね。ただ、もっと相応しい人間が居ると思ったからさ」

 ううーむ。イマイチ話の要領が得ないなあ。恋愛沙汰でもなさそうだしなぁ。まあ、俺には関係なさそうな話だし良いか。
 だが、笹山の声がデカイので声は聞こえてくるのであった。

「誰だよ、それは!」
「その、ね。私は神承を紹介しようと思ってるんだよね」
「なっ!」
 ―――――なっ!

「よりによって神承をか!」
 ―――――何の話か全く解からんが俺をだと!

「どういうつもりなんだよ柳瀬!」
「どういうつもりも何も、私はベストと思われる選択をしただけだからねぇ」
「それでどうして神承になるんだよ! よりによってあんな奴を……」
「ふぅん、笹山は神承をあんな奴呼ばわりするけどね。それなら笹山は自分の方が神承よりも適役だと?」
「当たり前だ! 会長も俺を一番気に入るに決まってる!」
「そうは言うけどね笹山。それなら笹山は神承より自分の方が強いと言うのかい?」
「クッ、それは……あ、当たり前だろ。あんな部活もやらないでサボってるような奴、もう身体だって錆び付いているに決まって……」
「そうでもないさ。神承の剣はそう言ったも類のモノじゃない。生まれついてのものなんだよ。その証拠にさっき軽く後輩の相手をして貰ったんだけど相変わらず凄い物だったよ。惚れ惚れとしたというか、惚れ直したね」

 ―――――そう言ってこちらを見て軽くウインクをする柳瀬。
 って、盗み聞きしてるのバレてるー!

「まあ、そう言う訳さ。私は彼をエレンに紹介するつもりだし、他に用事が無かったお引取り願おうかな」
「グッ、畜生!」

 そう言い捨てて踵を返しズンズンとこちらに来る笹山。
 そうして俺の目の前で立ち止まりこちらを見下ろす。

「どうしてどいつもコイツもこんな奴を……クソッ!」

 そう言って笹山は出て行った。
 しかし何の話なんだったんだ。なんか明らかに俺が話の中心に居たのに全く身に覚えの無い話だったぜ。
 何だったっけ。俺を紹介するとか、会長だとか、エレンだとか、そんな。
 ―――――って、待てよ。エレンで、会長って、まさか、あの……。

 だが、そんな考察をする暇も無く。

「ふー。相変わらず汗臭いわね。祐、居るー?」

 そんな能天気な声が聞こえてきた。



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