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  男前な友人 作者:siko
立つモノと言えば○○○と○○○と○○○
「と、言うわけで指導タイムなわけだが!」
「解かりました。その、ええと……かみ、じょう?」
「ああ、神承武ね、俺の名前は」
「はい。神承先輩。まず何すれば良いですか?」
「う〜ん。そうだね。とりあえず素振りやってみて」
「はい」

 そう言うと素振りを始める荻原。んー、可愛い顔が面を付けているせいで見えなくて残念だぜ!
 と、まあ、最初こそふざけて見ていた訳だが……。

 正直、驚いた。かなり練習もしたのだろう。中々綺麗な素振りを見せてくれる。踏み込みもしっかりしてるし動きも速いし正確だ。
 
「へー、凄いね荻原さん。中々綺麗な素振りじゃん。治す所なんて見当たらないよ。てっきり柳瀬目当てで入部したミーハーな子だと思ってたんだけど、真面目に剣道やってたんだね」
「くっ、当たり前ですっ、馬鹿にしないでください! 柳瀬先輩は目標ですし、尊敬してますけど別に私は不純な動機で剣道やってるわけじゃないですっ!
「でも好きなんでしょ?」
「それは……でもっ、柳瀬先輩に会うために剣道部に入ったんじゃないです! 入部して、柳瀬先輩の試合見てなんて綺麗な動きをする人なんだろうと思って、それで。その憧れて……あの、その、そうなっただけですっ!」
「ふ〜ん、そうなんだ。まあ、惚れるのも無理もないか。柳瀬の動きって凄い綺麗だもんな」

 そう。柳瀬の剣道の動きは凄く綺麗なのだ。しっかり型の上に成り立っているというか、試合だけでなく、練習の時もただ動いているだけで見るものを惚れ惚れとさせるようなそんな動きを柳瀬はする。
 流石は昔からやってる奴は違うぜ。まあ、でも今はそんな事はどうでもよくて……。

「さて、いつまでも棒振りさせててもしょうがない。とりあえず素振りでは治す所は見つからなかった。と言うわけで試合形式で指導だぜ荻原さん」
「解かりました。それなら神承先輩も防具つけてください」
「いや、俺はこのままで良い」
「へ? 何でです?」
「だって、当たらなければ良いだけなんでしょ。メンドクサイし兎に角そのまま打ち込んできて良いよ?」
「……っ! 馬鹿にしてるんですか神承先輩!」
「馬鹿になんてして無いよ。荻原の剣道は真面目で立派だよ?」
「だったら危険だから防具を付けて下さい!」
「いや、当たらなければどうと言うことは無いって言うし別に危険じゃないぞ?」
「クッ! やっぱり馬鹿にしてるっ! いいです、後悔しても知らないですからね!」

 そう言うと同時にかなりのスピードで打ち込んでくる荻原。
 ―――――刹那 


 スパーン!


 と言う乾いた音が響き渡った。
 
 でも双方無言。
 ―――そして数瞬後。


「へ?」

 そんな声が聞こえた。

「ん? どうしたの荻原さん」
「今っ、な、なにっ、何がっ?」
「何がってさー。俺が君の打ち込みを横に交わしてそのまま面を打っただけだよ?」
「私っ、何が起きたか、わ、わか、わかっ!」

 和歌?

「解からなかった。解かる暇も、無かったし、見えなかった……気がついたら、面に衝撃が走ってて」
「ああ、そう言えば結構強く打ち込んじゃったかも。大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫ですけど、でも、どうしてそんな事が可能なんですか? 私の動きが、そんなに遅かったって事です、か?」
「いや、君の打ち込みは早いし鋭かったよ。悪くないと思う。ただね、なにぶん意識の持ち方があまりよくない」
「意識の、持ち方?」
「ああ、君は相手の竹刀の先に集中してるだろ? それはあまりお勧めできないな。どうしても視野が狭くなるからね」
「だったら、何処を見れば」
「うーん、まあ、あえて言えば全体の空気かな。全体の空気とそこから生まれる動きが読めるようになれば自ずと相手の次の行動が読めて自分がどう行動すれば良いかが解かるんだよ」 
「全体の空気……ですか?」
「ああ。特に荻原さんは竹刀の先に集中しすぎちゃうみたいだからね、その集中力は武器になるんだからさ、大丈夫。今度試合の時には意識して竹刀の先を見ないくらいにしてやった方が良いよ」
「ええっ、竹刀を見ないようにして、ですか? そんな事をしたら……」
「うん。確かに勇気が居る行動だし慣れない内はかなり打ち込まれるかもしれない。でも成功すればきっとその先があるさ」
「その先……ですか。そんな事、考えた事も無かった」

 そう言うと面を取って近づいてくる荻原。
 
「神承先輩」
「ん、なんだい?」
「その、さっきは、すみませんでした」
「はてな、なにがさ?」
「いや、その、色々と酷いことを言って。私、神承先輩がこんなに凄い人だって、その、知らなくて……」
「ああ、そんな事か。大丈夫だって。気にするなよ」
「でも、沢山失礼な事を……」
「はぁ、俺が気にしないって言ってるんだから気にするの禁止。ほら、沈んでないで笑顔笑顔! 折角の可愛い顔が台無しだぞ?」


 そう言って、くしゃっと荻原の髪を触り頭を撫でる。
 すると……。

「あ……」

 そう言って、少し頬を紅く染めて、潤んだ瞳で俺を見上げる荻原。
 

 ―――その瞬間!
 頭の中で在りえない風景を幻視する。


 その風景は何処だろうか。非常に爽やかな風の吹く高原のような場所。
 おじいさんと車椅子に乗った少女が遠くに見える。
 そして、近くには赤と黄色と言うヘンテコな配色の服を着た少女が居る。
 そして、おもむろに少女は叫ぶのであった。


「立った! 立った! ク○ラが立ったーっ!」

 ふと遠くを見ると生まれたての小鹿のように震えながらも懸命に一歩づつ立ち上がっている少女。
 だが俺は逆の事を思う。止めろ、立つなと。そこは立てちゃいけない。立っちゃいけないんだ! こう、ストーリーの進行上。
 そして俺は叫ぶ。知っている限りの隠語を。

「ク○ラの○○! ク○ラの○○! 淫○! ○×○!」

 それを聞き泣き崩れて座り込むク○ラ。こうして俺は運命に勝つのだった!




「どうしたんですか? 神承先輩」

 
 ハッ!俺は何を……。何故かとってもインモラルな気分だぜ。
 と言うか、やっぱ気のせいだよな。俺なんかにそうポンポン色んなモンが立つ訳ねぇよ。
 気のせい気のせい。全く、自意識過剰だぜ神承武! あー恥ずかしぃ!

「いや、何でもないよ荻原さん」
「そうですか、それより、その、お願いがあるんですけど……」
「ん? なんだい?」
「その、もしまた今度時間があるようだったら、えと、その、また指導してくれませんか?」

 そう、胸の前で懇願するように両手を握り合わせて潤んだ目でこちらを見上る荻原。


 ふぅ、気のせい気のせい……。
 気のせい……だよな?




自分で書いてて我ながら最低だと思った話。あの部分、切るかも。

あと、最近凄い忙しい生活で、人間って多忙になると肉体労働して無くても全身筋肉痛になるって始めて知りました。
新たなる発見!