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緋色の眼
作:ジョン



第七話:新宿戦線【中編】


「こりゃぁ・・・またえらい強いモンが揃ってるな・・・」

 暁の目の前には4体の人型悪鬼が存在していた。
 人型悪鬼は戦闘力と知能が高く、類稀なる悪鬼であった。

「フン・・・ナナシの奴の怒りと悪意が満ちておるな」

「まぁいいじゃん! 早く行こうぜ・・・俺はこっちを連れてくからよ」

 暁が八体の人型悪鬼とは別の悪鬼を指で指す。
 その悪鬼は人間の姿をしており、黒装束をつけていた。
 そしてその服の右腕部分には・・・【八神】の刺繍がついている。

「寄生型悪鬼を八神家の者につけるとはな・・・緋澄も人が悪い
 ああ、そういえば緋澄からまた連絡があったんだった」

「何?」

「うむ・・・八神時雨、高遠陸人、千島遥緋も新宿に居るらしい」

「ほぉ・・・んでどうする」

 暁は不適に笑いながら剣菱に問う。
 答えは聞かなくてもわかっている。

「お前の人型を二体貸せ、俺は八神を・・・消す」

「おいおい、命令違反じゃないの? ま、止めねーけどさ」

「助かる」

「んじゃお互いの復讐の前哨戦をはじめますかぁ!」

「うむ」

 暁と二体の人型悪鬼と二体の黒装束は西へ。
 剣菱と二体の悪鬼は東へと歩き始めた。














「蒼二君って・・・何着ても似合いますね〜」

「・・・そうか」

「はい、それはもう」

「・・・一ついいか?」

「なんでしょう?」

「・・どうして女性服売り場で買い物してるんだぁ!!」

 蒼二は怒鳴るが、朱音は涼しげに答える。
 
「こちらのお洋服のほうがスタイリッシュで可愛いからですよ?」

「・・・そうかよ・・・もう好きにしてくれ」

 蒼二は達観した表情を浮かべながら言う。
 しかし、同時に幸せを感じている蒼二も居た。
 朱音と喋っていると疲れるが妙に楽しい、そんな感情もある。

(良い傾向ですね、最近の蒼二は笑顔が増えましたよ)

(そうか? まぁ朱音の行動は常軌を逸してるからな)

 悲煉も嬉しそうに語りかけてくる。
 蒼二はため息をつくと楽しそうに服を選んでいる朱音を見た。

(こんな日々がずっと・・・・・・・・いやいや!! 俺は親父を探しに来たんだ!)

「蒼二君」

「うわぁ!」

 いきなり朱音に呼ばれて蒼二は驚いてしまう。
 朱音は持った服を大事そうに抱えながら蒼二に言う。

「あの・・・やっぱりこういうのはお嫌いですか?」

 不安そうな顔で言う朱音・・・蒼二は慌てて言い返す。

「いや、そんな事ねえって!」

「・・・ならよかったぁ! ではお会計してきますね」

 朱音がレジへと小走りに駆けていく。
 
(幸せってこういう事を言うのかもな・・・)




 全ての買い物を終えると、もう夕暮れ近くであった。
 それでも人の波は途切れることなく、それぞれの場所へ向かって歩いていく。
 その中で蒼二と朱音は人の波に逆らうように歩いていた。

「帰りは電車なのかよ・・・」

「はい! 何かその方がデートっぽくていいじゃないですか」

「デートねぇ・・・アレだけ買ったのに荷物が無いってのもちょっと・・・」

 二人が買い物した物は、全て後日に御崎家に届けられることになっていた。
 そのため二人は手ぶらで歩けているのである。
 そして人気の無い路地裏を歩いていた時、朱音ははにかみながら言う。

「普通はそういうもんなのですか・・・あまり買い物には詳しくないので・・・
でも、一度でいいから普通の女の子みたいなデートが出来てよかったです」

「・・・まぁ、楽なのはいい事だがな・・・・・・・・・おい、気づいたか?」

 蒼二がいきなり口調を変えて、朱音に問いかけた。
 朱音も表情が引き締まり、真面目な口調で返答する。

「はい、気配が幾つか・・・近くに居ますね」

 蒼二は念じると紅雪を虚空から引き出し、構えた。
 朱音も式神を出そうとするが・・・

「お前は出すな・・・・・・普通の女の子なんだろ?」

「蒼二君・・・」

「お前は俺が守ってやる」

「・・・はい!」

 蒼二は何故自分がこんな事を言っているのかわからなかった。
 不思議と心が軽い。今ならなんでも出来そう、その確信がある。
 そして物陰から二体の悪鬼が飛び出してきた。

「・・・フン」

 緋眼を発動させ、蒼二は悪鬼の手の動きを眼で追った。
 突き出された悪鬼の拳を体を倒してギリギリで避け、胴を一閃。
 神速の速さで斬られた悪鬼の上半身は吹っ飛び、壁にぶつかると弾け飛ぶ。

「シャアッ!」

 もう一体の悪鬼の爪が蒼二の頬を掠る。
 蒼二は後ろへ跳び一旦距離を置くと、紅雪を地面に突き刺す。
 
「死ね」

 その言葉と共に地面から氷柱が突き出し、悪鬼を貫く。
 蒼二は氷柱が突き刺さって身動きできない悪鬼に接近し、
 紅雪を顔面に突き立てた。

「────────────!」

 声にならない悲鳴を上げて悪鬼の動きが止まる。
 そして紅雪はその刀身から悪鬼の血を啜る。
 やがて・・・悪鬼の原型は無くなり紅雪が音を立てて地面に落ちた。

「流石だね。人型悪鬼をここまで簡単に消滅させるなんてさ」

 拍手の音がして物陰から暁が現れた。
 
「誰だテメーは?」

 緋眼を解いた蒼二は黒目で暁を睨みながら問う。

「俺は死罪六刃第六位 雷獣 御崎暁だよ」

 御崎─その名前を聴いた瞬間に蒼二は嫌な予感がした。
 そして後ろを向いて朱音を見た。
 朱音は唇を噛み締め俯いている。

「朱音・・・」

「御崎暁は・・・私の実の兄です」 

 苦しげに朱音は言った。
 すると暁は怒りも顕に言い放つ。

「よく実兄なんて言えるもんだねぇ! 俺を見殺しにしたくせにさぁ!」

「・・・・・・・・・」

「八年前の話さ、御崎家が悪鬼の集団に襲われた時・・・俺は戦って瀕死の重傷だった
 そしたらこの女、どうしたと思う? 千島蒼二君」

「知るか」

「この女は瀕死の俺を含め数名を最前線の置いて、悪鬼の餌にしようとしやがったのさぁ!
 皆が食われてく中、俺は必死に逃げ延びたね。戦いが終わった後は敵前逃亡の罪で追放さ!
 この裏切り者の刺青をいれられてなぁ!」

 暁は首筋の刺青を触りながら責めるように朱音と蒼二に言い放つ。
 そして朱音が呟くように言った。

「仕方なかったんです・・・少しでも時間を稼がなきゃ回復も追いつきませんでしたし、
 ・・・・・・あのままでは家が消滅しそうだったんです!」

「それが言い訳?」

「ッ!・・・」

 暁の痛烈な嫌味に朱音はまたも黙ってしまう。
 そんな中、蒼二が呟く。

「それで?」

「ハ?」

 暁が拍子抜けしたように聞き返した。

「それを言って俺に何をして欲しいの? 確かに可哀想だとは思うけどさ、
 ぶっちゃけ、アンタの過去なんてどうでもいいんだけど・・・?」

「あー・・・・・・ま、君も追放された者だから俺の気持ちが分かると思ったんだけどね」

「ハ?」

 今度は蒼二が拍子抜けしたように聞き返す。

「八神と同じ分家の千島家でありながら、八神の敵である御崎の長女と同棲なんてのは、
 立派な裏切りだと思うよ?」

「いや、俺そんな事聞いてないし」

「んじゃ、朱音の後ろに居る八神家の人はどうなるのかな?」

 蒼二が振り向くと、何時の間にか八神家の黒装束を着た二人の男が居た。
 確かに、八神で見たことある顔だ、蒼二はそう思った。
 そして蒼二が二人に声をかけようとすると・・・

(蒼二! 避けなさい!)

「蒼二君!」

 朱音と悲煉がほぼ同時に叫んだ時には、蒼二の腹部に二本の短剣が突き刺さっていた。
 そして二人の黒装束は一気に加速すると走り去った。
 
「あ・・・れ・・・?」

 お腹が熱い・・・そして一気に体が冷え込むような感覚がした。
 首筋辺りから一気に寒気が襲い、蒼二は倒れこんだ。

「蒼二君! 蒼二君!」

(蒼二! 起きなさい! 蒼二!)

 朱音が蒼二に駆け寄り、悲煉も蒼二を呼び続ける。
 暁は絶望に染まった朱音の顔を見て満面の笑みを浮かべた。

(まだまだ復讐は終わってないぜぇ・・・アハハハハハ!)

 暁はそう思うと、路地裏から姿を消す。
 それに気づかぬまま、朱音は携帯電話を取り出して連絡を取る。

「至急病院搬送の準備をしなさい! それと家の者も集めておいてください・・・
 私は八神を許しません・・・今度こそ滅ぼします」

 怒りながら朱音は電話を切った。
 彼女が普段の状態なら気づいたであろう・・・八神家の二人組みの男の異常な気配を。
 その事に気がつかぬまま・・・朱音は蒼二の止血を開始した。







次回は後編です。
剣菱と八神の因縁が明かされる予定です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。


アルカディア様、コメントありがとうございます。
最終話までは必ず投稿いたします。
これからも緋色の眼をよろしくお願いいたします。











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