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緋色の眼
作:ジョン



第六話:新宿戦線【前編】


夜の森を風が切り裂く。
 
「ハハハハハハ! いいよ・・・いいよ! 千島蒼威」

 ナナシは狂が起こした風に乗りながら蒼威に接近する。
 片手に篭絡を持ち、前面体勢で接近する。

「ナナシ、右に避けろ!」

 狂の言葉に反応し、ナナシは右へ跳躍した。
 そして、次の瞬間ナナシの居た場所を銀の刃が掠めていった。
 刃はすぐに元の球体となり、蒼威の元へと帰っていく。

「チッ・・・外したか」

 蒼威は宙に浮く、十個の球体を五個ほど地上へ降ろした。

「お前ら、食っていいぞ」

 その言葉と同時に球体の形が変化し、銀色の大型犬になった。
 銀色の犬達は唸り声を上げると、ナナシの作った悪鬼と狂へと襲い掛かる。
 更に蒼威は二個の球体の形を剣の形に変化させ、ナナシへと切りかかった。

「ハッ!」

 蒼威の剣がナナシの首元を狙って切りつけた、がナナシは首を振って回避する。
 
「おっとぉ! まだ殺されてあげないよぉ! アハハハハ」

 笑いながらナナシは連続で蒼威を切りつけるが、全て弾かれた。
 そして蒼威の傍に浮いていた球体が高速回転してナナシに襲い掛かった。

「クッ・・・」
 
 篭絡を振って球体を弾き飛ばす。
 しかし、蒼威は持っていた剣を球体に変形させ、ナナシに投げつけた。
 二つの回転した球体がナナシの体を抉りこむように打つ。

「ガァッ・・・」

 口から血を吐き、ナナシは崩れ落ちた。 

「ナナシッ!!」

 狂が叫ぶがナナシはピクリとも動かない。
 ・・・ヤベエ・・・ここまで力の差があるもんなのかよ・・・
 狂は改めて千島蒼威の力を実感した。
 
「ふぅ、疲れた」

 その声と共に、蒼威が放った犬が元の球体に戻り、再び蒼威の周囲を漂う。
 そして蒼威は言う。

「お前、秋月狂だろ?」

「それがどうした・・・」

「死罪六神の目的はなんだ? 何故お前ら秋月が滅ぼそうとする!」

「・・・うるせぇ!・・・お前らは分家のくせに俺達を見捨てやがったじゃねえか!」
「俺達がどれだけ苦しんだか・・・どれだけ悲しんだか! テメーらに分かるのかよ!」

「十五年前か・・・」

「俺と罪歌の苦しみはその前からだよ! 生れた時から俺達は・・・」

「そうなのか・・・」

「だから誓ったんだ、俺達を認めない世界なんて滅びてしまえばいい」

 狂が息を荒らげて怒鳴る。
 その時、上空から声が響いた。

「はーい! そこまでぇ! 狂ちゃんストーップ!」

 夜空が黒く燃えていた。黒い炎が吹き荒れている。
 その炎の中から一人の少女が地上に降り立った・・・罪歌である。

「お前が秋月罪歌の第二人格、緋澄だな?」

 間髪居れずに蒼威は問うた。

「そうですよん! ちなみに貴方は千島蒼威さんでしょ?」

「おう」

「貴方の息子さんと娘さんに会ってきましたよ? 可愛い双子さんですね」

 その瞬間、大我が一斉に動き出し、緋澄を襲った。
 しかし緋澄が纏う黒い炎に球体は全て燃やされそうになり離れざるをえない。

「蒼二と遥緋を巻き込みやがったのか!」

「アハハハハ! 貴方も人の親なんですね・・・本家は見捨てたのにね」

 緋澄が暗い口調でボソリと呟いた。
 周りの黒い炎も猛々しく更に燃え上がる。

「事実だ・・・だが俺の家族を巻き込んだ事は許さん」

「ふぅ〜ん・・・許さないってどうするんですかぁ?」

「お前らの目的を止める」

「・・・へぇ・・・ま、いいわ・・・狂ちゃん、行きましょう」

「・・・ああ」

 黒い炎と風が吹き荒れて、彼らの姿を覆い隠した。
 そして炎がおさまった頃には彼らの姿は消えていた。
 蒼威はため息をついて、懐から煙草を出すと火をつけて一服する。

(蒼二と遥緋も知っちまったか・・・はぁ・・・遥ちゃんにアレだけ言ったのに)



















 朝は良い、千島蒼二は朝が好きである。
 御崎家の手入れされた庭に朝日が差し込み情緒ある雰囲気が出ている。
 オレンジジュースを啜りながら蒼二はその風景を眺めていた。
 
「朝は良いな」

「私は夜景のほうが好きだなぁ」

「!?」

 蒼二が振り向くと、いつの間にか朱音が後ろに立っていた。
 ・・・いつの間にコイツは現れたんだ・・・?
 しかしそう突っ込みたい欲求を堪えて蒼二は朱音に問いかけた。

「何か用事か?」

「はい、お買い物へ行きま「断る」

 朱音が言い終わらないうちに蒼二は即答した。
 崩れ落ちた朱音が泣きまねをしながら言う。

「酷い・・・買い物へ行きませんよ!かもしれないじゃないですか・・・」

「じゃあ最初から言うな」

「はぁ・・・蒼二君・・・いつまで同じ服と下着履いている気ですか?」

「無論朽ちるまで」

「不潔〜!!」

 朱音の悲鳴が屋敷にむなしく響き渡った。















 人、人、人、人で溢れかえる夕方の新宿駅に遥緋、時雨、陸人の三人は居た。
 電車を降りてようやく一息をつく。

「ふぅ・・・やっとついたね」

「これからどうします? あ、陸人さんはお仕事ですか?」

「うーん、今日からになるかな? お前らも手伝ってくれると楽なんだけどな」

 ニッコリと笑いながら陸人が時雨と遥緋を見る。
 
「・・・・・・ヤダなぁ・・・」

「私は構いませんよ、陸人さんにはお世話になりましたし」

「さっすが蒼威と遥ちゃんの娘だね! どっかの捻くれたロリコン親父の息子とは大違い!」

「ガキですか・・・アンタは・・・」

「心はいつまでたっても中学生さ・・・」

 陸人は笑顔を輝かせ、遠くを見つめながら言う。
 その光景に遥緋と時雨はゲンナリとした。
 
「んじゃ、手伝え! ではではGO!」

 遥緋と時雨を引っ張りながら陸人は人を掻き分け豪快に進みだした。












「おい、御崎朱音と千島蒼二が動き出したぜ」

 とあるマンションからモニターで監視していた御崎暁が言った。
 そして、その奥にある暗がりから真砂剣菱が現れて返事を返す。

「さっき緋澄から連絡があった・・・千島蒼威にナナシがやられたらしい」

「死んだのか?・・・ってか緋澄出てきたのかよ・・・」
 
「いや、生きている」

「ふ〜ん・・・村雨は殺したのにな」

「アレは・・・うむ・・・」

 剣菱の怒気が一瞬膨れ上がった。
 しかし、それはすぐに霧散し跡形も無く消え去る。

「気持ちはわからなくも無いが・・・な」

 暁は自分の首筋の刺青を触り、モニターに写っている朱音を睨む。
 そして一度深呼吸をすると剣菱に告げる。

「奴らが向かった先は新宿だ・・・そこで仕掛けるぞ!」

「・・・うむ、後ナナシが何匹か新宿に悪鬼を作るらしい、まずはそれと合流だ」






 


ふぅ、何とか第六話です。
七話、八話は連続投稿したいので
少し遅くなるかもしれません。
それではお読みいただきありがとうございました











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