アルバイト始めました。
そろそろ大学も始まりますが、
頑張って書きたいと思い居ます。
エピローグもあわせて後四話ですが、
皆さんよろしくお願いします。
【第三部】十三話:そして
棗 由加は廊下をを歩いていた。
手には巨大な黒い斧、それに男性用スーツと言う妙な格好で歩く由加。
そしてふと立ち止まると、気を集中させた。
「神璽」
神璽の反応が近くなっている。
さっきから数分歩いては、気配探知、それの繰り返し。
だが徐々にだが神璽の結晶の気配が増してきている。
その事に安堵しつつ、再び由加は歩き出した。
蒼威と神璽は、走っていた。
それを阻もうとする悪鬼達を神璽の剣が凪ぎ、蒼威の大我が粉砕する。
さっきからその繰り返し。
「───っと」
神璽の剣が最後の悪鬼を切り捨てる。
上下左右に分たれた悪鬼は壁に叩き付けられると、息絶えた。
「扉・・・」
目の前には今までとは違う豪勢な扉。
蒼威と神璽は一瞬目を見合わせると、その扉へ向かって進む。
そしてドアが開く──
「来たか」
そこからは空が一望できた。
満天の星空が煌き、薄く灯った灯りと相まって静寂さを感じる空間。
部屋の中央には何かのオブジェクトのようなものが立っており、空へと突き抜けている。
そして神代刹那が腕を組んで立っていた。
「これまた豪勢な作りじゃねーか」
蒼威が感心しながら言うと、刹那は口の端を歪めて言う。
「ここは、俺達の世界の始まりの場所、お前らの終わりの場所だからな」
「ふーん・・・まぁ、どうでもいいや」
「そうか」
蒼威の式神の気配が増した。
それを見ると、刹那も腰を低くしいつでも対応できるようにする。
すると、神璽が刹那に話しかけた。
「なぁ・・・何で先生を殺す必要があった?」
「お前達の居場所を吐かなかったからだ、まさか俺達と同じ近畿に隠れさすとは思いもしなかったよ」
「俺達がお前らに何をした! 先生がお前らに何かしたかっ!?」
「フン、殺す理由なんて──人間である、それだけで俺達には十分」
「んだと・・・」
「まぁ、お前は殺さないよ、もう人間じゃないんだし」
「な・・・っ!?」
「お前と棗由加は、もう人間じゃない──新たな種だ」
「・・・・・・」
「ラグナロクの奴らや、俺らの上の奴もお前達の事は殺さないだろうよ、もうお前は俺達とほぼ同種なんだ」
「うるせぇ・・・うるせぇよ・・・」
「この前、お前が見せた力。 アレは俺達の狂化と同じじゃないか?」
「───っ」
神璽が刹那へと剣を振り上げ襲い掛かる。
しかし、神璽の前に蒼威の大我が回りこみ、神璽の動きを阻んだ。
「落ち着け、神璽」
蒼威が諭すように言うと、神璽はしぶしぶと下がった。
刹那はそれを見ると笑う。
「千島蒼威」
「何だ?」
「アンタの息子と娘はさっきまで壮絶な殺し合いをしてたよ」
「・・・・・・そうか」
「反応が薄いな、やはり千島は家族なんてどうでもいいって家系なんだな」
「?・・・まぁ、例え殺し合いをしてとしても──あいつらには、あの二人がいるから心配はない」
「ほぉ・・・?」
刹那の顔に疑問符が浮かぶ。
そして今度は蒼威から刹那に話しかけた。
「お前らさ、結晶集めてどうする気だよ?」
「聞きたい?」
「是非に」
「ふーん・・・まぁいいか。 冥土の土産って奴だな」
「そうそう、お前のな」
そして一瞬会話が止まり、
「ハハハハハハハハハハハハッ」
「アハハハハハハハハハハハッ」
蒼威と刹那は同時に笑った。
刹那の目が真剣な光を宿し、蒼威を見据える。
そして、刹那は空中に黒い闇の塊を出した。
「これが結晶の純粋な力だけを集めた、俺達鬼神の中じゃコアって呼ばれるモンだ」
「へぇ・・・」
「榛名神璽と棗由加のせいで、六個でしか作れなかったが中々の力を持っている。
まぁ・・・日本を八等分したうちの六つの地域に悪鬼を出現させる核みたいなモンだからな」
「ほぉ・・・」
「これを使い俺の式神、楽園で日本を全て覆い───俺達が目指した世界を作る」
「それがお前達の目的か・・・」
「ああ、そうさ。 人間が万物の王? ふざけるなよ・・・この世界の害虫め・・・」
刹那の瞳に怒りが灯った。
全身から怒りの気配が立ち上がり、威圧感を増す。
「確かに人間はどうしようもねーと思うよ・・・でもさ、その中にだって真面目に一生懸命生きてる奴もいるんだぜ?」
「・・・・・・俺達だって懸命に生きたさ! だけど! 村の奴らは・・・あいつらは・・・俺達を・・・」
燃え盛る家、農具を持った村人が刹那の頭の中によぎった。
それを払いのけ、刹那は再度蒼威を睨む。
そして蒼威はさらに続けた。
「そうかい・・・じゃあお前らは他の神代家をどうした?
俺の知っている神代は無能な家じゃなかった、修行に励み、頑張っている奴らが居たぞ」
「あぁ・・・神代ね。 邪魔だからここの屋敷に居たのは全員殺したよ・・・元々あいつらは俺達を歓迎してなかったし」
「テメェ・・・」
「お前らが他の命を考えないのと一緒だ」
「・・・これ以上の会話には意味がなさそうだな」
「ああ、そうだな」
「俺には帰る場所がある、守りたい人が居る、だからお前らを倒す」
「俺には目指す場所がある、一緒に居たい人がいる、だからお前を殺す・・・なぁ、瞬、彼方」
刹那の呼び声と共に、瞬と彼方が虚空から現れた。
楽園の力で転送されてきた二人は、満身創痍、だげ眼だけはまだ死んでいない。
万事残壊と驟雨魔弾を構えた二人は言った。
「そうだな・・・兄貴」
「僕らは、僕らの目指した世界に行くんだ」
刹那、瞬、彼方の決意を聞くと蒼威は突然怒鳴った。
「神璽っ!」
「は、はいっ!」
「この戦いが終わったら、お前は何をしたい?」
蒼威の問いに神璽は考え込む。
この数ヶ月、色々な人との出会いがあった。
由加と再会し、遥緋達と出あった自分はどうだったかについて考える。
(──楽しい・・・)
大阪に居た時は退屈を周囲にぶつけていた。
家族も居ない、親友も居ない、一人ぼっちの生活。
でも──ここでは───
「また、学校に通って・・・・・・また皆と過ごしたいっす!」
「そうか」
「俺は遥ちゃんを愛して、今度こそ蒼二と遥緋の父親をやりてーんだ・・・協力してくれるか?」
「・・・はいっ」
蒼威の周囲に大我が顕現した。
それと同時に、神璽の体が闇色の鎧に包まれていく。
「ウオオオオオオオオオッ!」
神璽は吼えた、強く、強く。
そして、戦いが始まろうとした時──扉を突き破って一本の斧が刹那達へと迫った。
「瞬」
「おう」
瞬が万事残壊を振り、斧を粉々に砕く。
斧の飛んできた方向を見る───そこには、
「神璽、貴方の願いに私も混ぜてくれる?」
由加が立っていた。
そして神璽は由加のほうを向くと言う。
「勿論! お前が居なきゃ始まらないよ」
「ありがとう」
そして由加は目を閉じる。
自分の中の結晶の力をどんどんと引き出し、自分を侵食させた。
溢れるその力は、由加の周囲に展開し形を作り上げていく。
(前回の時は集中しきれなかった──でも今はっ!)
鬼──小柄で鎧を着込んだ鬼の仮面をかぶった悪鬼がそこに居た。
一応体にくびれや膨らみが見えるので、かろうじて由加とわかる。
そして由加は背中に手を回すと、体に似合わないほどの大きさの斧を顕現させた。
「行くっ──」
由加が駆け出すと、蒼威と神璽も走り出した。
そして瞬と彼方が走り出した。
刹那はその場に立ったままで、二人に指示を出す。
「コアと同調する! 時間を頼むぞ」
「はい」
「おうっ!」
瞬と彼方は狂化する。
二人の肉体が変化し、悪鬼のような形と成る。
「オラァァァァァッ!」
瞬が振った万事残壊を由加は斧で弾いた。
全力で打ったにも関わらず、瞬の万事残壊はいともたやすく飛ぶ。
「チッ・・・力まで上がるのかよっ!」
由加は更に無言で瞬へと切り込む。
そして彼方は、壁を蹴って移動をしながら蒼威と神璽を刹那に近づかせない。
「行くぞっ!」
彼方へと迫る神璽。
巨大な鎌が閃き、彼方を断とうとするが彼方は中に跳んでかわす。
そして蒼威へと狙いをつけ、魔弾を連射した。
「うぉっ」
大我が集まり、盾を形成して彼方の銃弾を防ぐ。
爆発が轟き全員の一瞬目が眩んだ。
そして神璽は更に上へと跳び、彼方をを追尾する。
「しつこいいんだよっ!」
彼方が神璽へと向かって銃弾を放つが、鎧が全て弾いてしまった。
それどころか弾となった悪鬼を吸収し、更に力を強める。
鎌の長さがまた一段と伸び、彼方はそれをギリギリで回避した。
「彼方っ!」
瞬が彼方の下へと向かおうとするが、由加が立ちふさがる。
「貴方の相手は、私」
斧を振って瞬の体へと叩き付ける。
凄まじい衝撃に、瞬の体は吹き飛ばされ壁へと叩き付けられた。
しかし──瞬はすぐさま立ち上がる。
「・・・まだやる気?」
「おう」
瞬の体はまだ一撃しか与えていないのに、各所から血が滲んでいた。
鬼神の回復力と言えども無限ではない、さっきまでの戦闘のダメージが明らかに抜けていないのである。
しかし──由加は容赦せずに、二発、三発と攻撃を打ち込んだ。
「・・・・・・オラ、ど・・・うした」
万事残壊に寄りかかるようにして、瞬はまだ立っていた。
その姿に苛立ちを覚え、由加は強めに問う。
「何故そこまでして立つの!」
「・・・行くべき場所がある、だからまだ死ねねーんだ」
由加は横で行われている、戦いを見た。
彼方は何度倒されようと、決して諦めずに刹那の下へと向かわせない。
信じられないほどの決意、覚悟がそこにはあった。
「だからよぉ・・・俺ぁ・・・・・・立つ!」
瞬が再び、由加へと迫った。
万事残壊が怪しく光り、由加へと迫る。
由加は斧を腰溜めに構え、重心を落とした。
「私も、負けないっ!」
一瞬の攻防。
万事残壊が由加の鎧の胸の装甲を粉々に砕く。
由加の体から鮮血が迸る──が由加はそれを堪えると全力で斧を振るった。
斧が瞬の体に突き刺さり、筋肉によって刃が止まる。
「まだっ───」
そのまま斧を振りぬき、手を離す。
圧倒的な力により、瞬の体はそのまま斧ごと壁に叩き付けられる。
瞬の体が一瞬ビクッと跳ね、やがて小さく痙攣しだした。
夥しい量の鮮血、そして瞬の目からは一筋の雫。
「瞬兄さんっ!」
彼方が遠くから叫ぶ。
そしてその一瞬の不注意が、彼方の命取りだった。
「悪ぃな・・・」
蒼威の大我が彼方の周囲を囲み、剣の形へと成った。
十本の剣は全方位から彼方を突き刺し、地面へと磔にする。
「ぼ・・・・・・僕たちは・・・・・・ら・・・く・・・」
血を吐きながら彼方がボソボソと呟く。
神璽は彼方に接近すると鎌を振るい、彼方を正面から切り裂いた。
更に血が噴出し、彼方の動きが完全に止まる。
それを見て神璽は呟く───
「・・・先生、ごめんなさい」
そう言い終えると、蒼威と神璽は刹那のほうを見た。
目を瞑って、静かに佇む刹那。
そして蒼威、由加、神璽の三人は刹那へと攻撃しようと走り出す。
そして───
刹那の目が開かれた───
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