次回は、陸人と森羅か。
剣菱達の話です。
どちらを先に書くかまだ迷ってます。
【第三部】十話:思いがぶつかり合い
向かい合う兄妹。
まず動いたのは遥緋。一直線に蒼二へと向かい、剣を振る。
蒼二はステップして避けようとするが、頭が重い。
(蒼二、私が代わりましょう)
(頼む)
五感が遠ざかり、自分が奥に引っ込んだ感触。
その中で蒼二は目を瞑り、気分回復を図る。
そして表に出た悲煉は遥緋から距離をとると、喋りかける。
「はじめましてですかね? 千島遥緋」
「貴方・・・悲煉ね」
「そうです。では行きますよっ!」
一直線に遥緋へと向かう。
修羅雪を閃かせ、まずは遥緋の剣を破壊しようと執拗に剣を打ち付ける。
力では敵わない遥緋は巧みに剣をいなし、衝撃を分散させた。
(遥緋、コイツは・・・俺がやるっ!)
(・・・わかった)
遥緋も灼那に代わった。
一瞬動きを止めた遥緋に、悲煉は容赦なく襲い掛かる。
すると遥緋が動き、修羅雪をかわすと悲煉の顔に蹴りを叩き込む。
「クッ・・・」
とっさ後ろへ飛び衝撃を軽減したが顎を打ちぬかれたため、頭が揺れる。
修羅雪を地面に刺し、それによりかかって何とか立ち上がると悲煉は言った。
「久しぶりですね」
「これで、昔テメーに封じられた借りはかえしたぜっ!」
遥緋──灼那は獰猛に笑った。
そして灼那は悲煉へと走る。
「マジでお互い生きてるたぁなぁ!」
「貴方もしぶとい人ですよね!」
打ち合いながら二人は語った。
精神の中で戦った事はあるが、別の肉体同士で戦う事が初めてな二人は楽しそうに切りあう。
元々反りが合わない二人だっただけに攻撃は激しさを増して行く。
「誓いは守る、だが遥緋は負けさせねーよ!」
「フン・・・貴方の脆弱宿主に負けたら、蒼二があまりにも可哀想ですよ」
「テメーに遥緋の何がわかるっ!」
「貴方こそ蒼二の何がわかるっ!」
二人の全力の一撃がぶつかり合う。
やはり一般の刀では式神である修羅雪に勝てるはずもなく、灼那の剣は折れた。
しかし、灼那は既に欠片を取り出し輪廻転生の力で新たに刀を形成した。
そして二人は止まらない。
「貴方の甘ちゃん宿主のせいで・・・蒼二がどれほど苦しみ、努力したかわからないくせにっ!」
「テメーのアホ宿主のせいで、遥緋がどれだけの友達を失ったと思ってやがるっ!」
お互いの主張がぶつかり合い、苛烈な攻撃を二人は紙一重でかわしていた。
二人の体には徐々にだが浅く傷がつき、軽くだが血が周囲に飛び散っている。
そして二人は一瞬向かい会い、そしてお互いに向かって走り出す。
「おおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「あああああああああああああああっ!」
一瞬交差し、二人はすれ違い様に相手を斬った。
そして悲煉の左腕から出血、遥緋の右腕からも血が滲む。
(悲煉、ありがとう・・・こっからは俺の番だ)
(感情的になって申し訳ない)
(灼那、ありがとう・・・ここからは私が戦うよ)
(ああ・・・ガンバレよっ!)
お互いの人格が入れ替わり、蒼二と遥緋はまた向き合う。
そして蒼二が遥緋に言う。
「俺は負けるわけにはいかねーんだよ・・・甘やかされてたお前なんかになっ!」
「さっきから思ってたんだけど、甘やかされたって何?」
遥緋の質問には答えずに蒼二は再び遥緋へと走る。
そして修羅雪を振りながら蒼二は喋りだした。
「同じ双子でもよ。母さんは俺よりもお前の事を可愛がった! 時雨もそうだっ! いつもお前が俺から全部奪って行った!」
「・・・?」
「俺は努力したさ! 勉強も一番! スポーツも一番! それなのにいつもお前だけが気にかけられる!」
「・・・うん」
「俺の努力をわかってくれたのは悲煉だけ! 中学なって俺が荒れてからは更に母さんはお前の事だけを可愛がった!」
「・・・!?」
「俺はいつも一人ぼっちだった、学校でも誰も分かってくれない! 家でも誰も分かってくれない!」
(ああ・・・)
遥緋は気づいた。
兄の心の暗さとこの性格はここから来ているのだろうと。
確かに自分は甘やかされていたかもしれない、だけど蒼二は一つだけ間違っている。
遥緋はそれを口にした。
「ママは・・・お兄ちゃんを愛していたよ・・・」
「ハッ! 今更うるせぇんだよ!」
「お兄ちゃんが停学になるたびにママはすぐに学校に駆けつけて、皆に謝っていたよっ!
お兄ちゃんの帰りの遅い日はいつもソワソワして、お兄ちゃんの事を心配してたよっ!」
「───っ!」
「最初から諦めて、ママの事なんか知ろうともしなかったくせにそんな事言わないでっ!」
遥緋は修羅雪を弾き飛ばす。
おそして空いていた左腕で、蒼二を思いっきりぶん殴った。
拳の痛み──だが心の痛みの方が遥に大きい。
「それにさ・・・いつも警察に捕まったりすると、迎えにきてくれたのは誰?」
問題児となっていた蒼二をいつも教師や警官は疎ましい目で見ていた。
はじめから全部お前が悪いと決め付けられ、そのまま話が進んでいこうとすると
いつも助け舟を出してくれたのは───八神時雨。
(思い出した・・・)
気づいていなかった。
それが当たり前すぎて。
そしてそれを知らぬまま、自分は愛されていない──そう思い尖ってきた自分。
心の底から笑いがこみ上げれくる。
「お兄ちゃん・・・」
動きが止まった蒼二を見て遥緋は声をかけた。
そして数秒後、蒼二は顔を上げる。
その目にはある種の達観と、心の奥に残る悪鬼への憎悪だけが灯っていた。
「悪かったよ・・・その点については謝るよ」
「お兄ちゃん」
「だけど、俺は神代は殺すよ、悪鬼も、それを邪魔する奴も全て、アハ・・・アハハ・・・アハハハハハハハッ!」
(自暴自棄になってるな・・・)
(うん、だから教えてあげなきゃ、朱音さんの最後の気持ちを)
笑う蒼二に近づき、遥緋は蒼二の頭に触れた。
だけど蒼二は笑ったまま抵抗すらしない。
そして遥緋は集中する。
(輪廻転生──)
あの時の朱音と接した記憶を頭の中で思い出す。
それを手から、蒼二へと伝えるイメージ。
そして輪廻転生の力を使い、【再生】した。
「タスケテー!!!!!」
「・・・・・・タスケテ・・・」
「・・・アオイ・・・チシマアオイ・・・・・・」
「・・・コロシテ・・・ヤクソクマモリタカッタケド・・・モウコロシテホシイ
「 コレイジョウ・・・コロシタクナイ・・・モウイヤ・・・」
「・・・・・・わかった」
「ああ・・・ありがとうございます・・・私ならもう大丈夫ですから」
「私なら大丈夫です」
「蒼威さん・・・お優しい娘さんをお持ちですね」
「君は・・・いや・・・ありがとう」
蒼二の頭の中に朱音との戦いの記憶が再生された。
そして蒼二はそれを見終わると、膝を突いた。
「一族を殺しちゃって、朱音さんはもう生きたくないって言ってたの。それほどまでに、優しい人が復讐何て望むと思う?
お兄ちゃんは朱音さんの事詳しいんでしょ! だったらわかるでしょ!」
「アハハ・・・アハハハハハハハハ・・・」
蒼二は涙を流して笑うだけ。
するとその態度に流石の遥緋も生まれて初めて本気で怒った。
「答えなさいよっ! 千島蒼二!」
「・・・・・・・・・・」
すると蒼二は地面に頭を叩きつける。
(俺は──馬鹿だ)
何度も、何度も、何度も叩き付けた。
(あの時、朱音は言ったじゃないか─私のことなんか全て忘れていいと)
(アレは・・・俺の幸せを願ってくれていたんだな、過去に囚われずに幸せに──でも)
そのうち、床に血が滲み──やがて蒼二が顔を上げる。
「・・・でもさ、俺は今、死罪六神第三位 断罪 千島蒼二──仲間が、俺に背中を預けるって言ってるんだ」
「・・・」
「だからさ、ここで俺は終われない、俺に居場所をくれたあいつらのためにも俺はここで止まれないんだ!」
修羅雪が再び回転を始める。
蒼二は一心不乱に遥緋へと襲い掛かる。
足元をおぼつかない、ただ無闇に蒼二は力を振るっているだけだ。
「わかった、決着つけよう・・・私も、ここで止まれないから」
遥緋言うと、蒼二の動きが止まった。
「・・・・・・俺が勝ったら、俺は俺の道を行く、お前が勝ったら──もう復讐は止めるよ」
「うん」
「行くぞっ!」
ほぼ同時に、終式を発動させた蒼二と遥緋。
お互いの速度は全くの互角。
蒼二が修羅雪一本投げた──遥緋の集中が一瞬それに集中する。
(今だっ!)
更に速度を上げた。
足から血が噴出し、全身に痛みが走るが、無視。
そして修羅雪の切っ先が遥緋の左腕を貫き、そのまま勢いに任せてコンテナへと叩き付ける。
(勝った)
その瞬間、遥緋の目が見開かれた。
右腕を修羅雪に当てる。
(マズイ)
トリガーを引き、刃を回転させえる。遅い。遅い。遅い。
遥緋の表情が苦悶に染まると同時に、修羅雪にひびが入り──やがて砕けた。
遥緋は泣いた──蒼二は自分がどんな表情をしているのかわからない。
そして終式が解ける。
「あ──ち───き────な」
妹の声は聞こえなかった。
「お兄ちゃん」
振り返ると6歳ぐらいの遥緋が居た。
泣きそうな顔で俺の手を握り、もう片方の手でどこかを指差す。
周囲には人間ばかり、どうやら縁日のようだ。
そして遥緋の指差した先には家族で楽しそうに笑っている同級生が居た。
「ママが居ない・・・パパも居ない・・・」
どうやら俺達ははぐれてしまったようだ。
遥緋は今にも泣きそうで、ずっと家族で来ている同級生を見ていた。
すると、俺が喋りだす。
「きっとこっちにいるよ」
遥緋の手を握り、俺は進んだ。
勿論、母親の居場所もましてや親父の居場所なんてわかるわけが無い。
だけど俺は進んだ。
「蒼二! 遥緋!」
俺達より少し年上の男の子が走ってきた。
10年前の時雨、いつも俺達の世話をしてくれていたな。
時雨は相当走ったようで、全身汗だくである。
「時雨お兄ちゃん!」
遥緋の顔が輝く。多分この時の俺も笑っていたのだろう。
時雨は俺を右手に、遥緋を左手に手を繋ぐと歩き出す。
そしてその先には──
「蒼二! 遥緋! どこへ行ってたの!」
母親が血相を変えて俺達に聞く。
どうやら今思えば相当な心配をかけていたようである。
そして時雨が言った。
「遥さんごめんなさい、僕が連れ出しちゃいました」
勝手に居なくなったのは遥緋と俺なのに時雨は嘘をついた。
母親もそれはわかっているようで、怒るに怒れないようである。
そして母親はため息をつくと、俺達を抱きしめた。
ああ・・・何で今更こんな事を思いだしているんだ俺は・・・
ずっと忘れてたんだな・・・こんな事があったって・・・
俺はまだまだガキだったから、皆に背を向けて勝手に孤独になって・・・
ああ・・・でも朱音と出会えたからそれでよかったのかもしれない・・・
そんな事を考えていると、俺の視界に現れたのは現実。
全身に痛みが走り、式神が破壊された事によって意識が遠のいていく──
ああ・・・遥緋が泣いてるよ・・・また・・・・・・怒られ────
倒れている二つの影。
やがて、一人が起き上がり自分の体を触る。
見る見るうちに傷が治った。
そして一人は、倒れたもう一人にの体を触る。
案の定、傷が治っていく。
そしてもう一人が起き上がった。
「誓い、果たしに行こうぜ」
「・・・はい」
二人はお互いの体を支えて歩き出す。
ずっと昔から一緒だった仲の良い兄弟のように──
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