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  緋色の眼 作者:ジョン
はい、次回は蒼二と遥緋のお話です。
この話と後にくるもう一個の話が
一番書きたかったので、次回は頑張ろうと思います。
【第三部】九話:今度こそ殺す





 ──ここはどこだ?
 蒼威、遥緋、神璽の三人は全く変わらない廊下をさっきからずっと歩いている。
 まるで迷宮のような屋敷だった。

「長い・・・」

 蒼威がイライラしながら呟いた。

「確かに長いっすね・・・」

 神璽のイライラもそろそろ限界に来ていた。
 早く──早くしないと由加は、焦りが徐々に怒りを強めていく。
 そんな中、遥緋は気配を探知するために神経を研ぎ澄ましていた。
 あちこちで現れている式神の気配、その中で兄の式神の気配はさっきから微量なほどしか感じられなかった。

「はぁ・・・」

 ため息をつき前を向く。
 すると──蒼二の式神の気配が濃くなったのを感じた。

(来た!)

 方角も掴んだ、大まかな距離も掴んだ。
 
「お父さん、榛名君、私行くね」

 そう言い、壁に触る。
 次の瞬間壁が粒子と化して飛び散り、穴が開く。
 どうやら上の階にいたようで、遥緋はそのまま穴を抜けて屋根に飛び移った。
 それを見て神璽は

「やっぱ親子ですねぇ・・・」

「俺も、今のには少し驚いた・・・アレは遥ちゃんの血だな」

「え? 蒼威さんじゃないんですか!?」

「ちげぇよ・・・ありゃ完全に海野よりな子だな」










「どうやら飛ばされた様だな」

 建物の屋上で蒼二は呟いた。
 周囲は既に夕暮れ、いくつかの式神の気配がするがどれも微量。
 屋上から周りの建物の配置を見るからに、正門からたいして飛ばされていないようだ。
 その事に安堵し、蒼二は正面に見えるドアの方へ歩き出す。

「よぉ」

 ドアが開き、現れたのは神代彼方。
 蒼二は彼方を見ると不適に笑い、言う。

「よぉ・・・また痛めつけられたいようだな」

「フン・・・今度こそ君を殺してやるよ」

「奇遇だな、だが──俺は二年前からお前を殺したくて堪らなかったんだよっ!」

 蒼二が虚空から紅雪を抜き、構える。
 彼方も魔弾を取り出し、構えた。
 そして────走る。

「お前らさえ居なければ──朱音はっ!」

 一瞬で間合いを詰めると蒼二は紅雪を振るう。
 斬撃は彼方の前髪を数ミリ切断し、空振った。

「ああ、アレねー! 御崎朱音はとっても面白い玩具だったよ」

「──殺す」

 彼方がステップしてかわすのを蒼二は更に追尾する。
 一撃一撃に、全力を込め。彼方を殺そうとするが中々当らない。
 
「いっくよー!」

 彼方が魔弾を構え撃って来る。
 蒼二は緋眼を発動させ、それを避けると更に彼方へと迫った。
 
「こっちこっちー!」

 彼方が蒼二の足元へ向かって銃弾を撃つ。
 すると着弾した場所から、炎が巻き起こり蒼二の体を包み込む。
 彼方はその姿を見ると腹を抱えて笑い出した。 

「アハハハハハハハッ!」

 燃え盛る炎の中蒼二は体を回転させ、炎を一気に振り払った。
 紅雪の力を使い、炎を打ち消したのである。
 そして蒼二は不適に笑うと彼方へと紅雪の切っ先を向けた。

「ハハハハハハハッ!」

 紅雪の周囲に無数の氷柱が生まれ、彼方へと飛んでいく。
 彼方は、それを一本ずつ確実に魔弾で撃ち落した。

「これがどうかしたの?」

「・・・中々やるじゃねーか」

「人間風情にナめられたくないからねー!」

 彼方の姿が変化し始めた。
 体全体の筋肉が盛り上がり、角が生え、悪鬼のような姿へと成る。
 そして、魔弾の姿も驟雨魔弾へと変わる。
 それを見て蒼二は一言。

「殺す前に聞いておく、鬼神って何なんだ?」

「殺す前に答えてやる。鬼神は悪鬼と人間の混血さ、僕らは母親が生殖能力のあった悪鬼に犯されて、僕らが生まれたんだ」

「ふーん、じゃあ天美運命ってどんな奴?」

「運命? ああ・・・命から聞いたんだ。 僕ら【九尾の狐】の中では最強の鬼神だよ。
 お兄様より強いんじゃないかな? まぁ・・・ここで死ぬから会えないとは思うけどね」

「わかった、後一つ・・・今お前の式神も変化したよな? お前も多重人格なのか?」

「違うよ、僕と瞬兄さんは人間に擬態してるときは、本気を出さないようにしてるんだよ。
 こっちが本当の式神ってわけ、刹那お兄様の楽園は狂化しても変わらないじゃん? つまりそういう事」

「わかった、じゃあ殺す」

「うん、こっちも殺すよー」

 おかしな会話が終わり、再び蒼二と彼方はぶつかり合った。
 彼方の大きく尖った爪が蒼二を狙う。
 蒼二はそれを避けつつ、彼方の後ろへと周り背中を袈裟切りにした。

「ウッ・・・」

「チッ・・・紅雪じゃ浅いな」

 蒼二はステップして一旦彼方から離れた。
 そして紅雪を一旦しまい、悲煉に呼びかける。


(悲煉、同調行くぞ)

            (はい、行きますよっ!)


 蒼二の手に、二本の禍々しい形状の小型チェーンソー、修羅雪が出現した。
 それを二、三回、クルクルと振り回すと、蒼二は構えた。

「本気っぽいねー! じゃあこっちも行くよ!」

 彼方は驟雨魔弾を構えた。
 そしてトリガーが引かれると、大量の銃弾が蒼二を襲う」

「──ッ!」

 修羅雪が怪しく光り厚い氷壁が生まれる。
 直後、凄まじい音がして氷壁に無数の弾が着弾した。

「アハハハハハハッ! 急に逃げ腰?」

 彼方の口に闇色の光。
 それを見ると、蒼二はとっさに横に転び、新たな氷壁を形成する。

「鬼砲!」

 次の瞬間、闇色の光が彼方の口から放射され、氷壁が砕け散る。
 中々の威力に蒼二の頬に冷や汗が伝う。
 
「もしかして、僕の弾切れを待ってたりする?」

 彼方はそう呟く。
 蒼二は返事をせずにただじっと様子を伺っていた。
 すると彼方は沈黙を肯定と取ったのか、指を鳴らした。

「出ておいでよ」

 屋上にあった、コンテナを突き破り数十体の悪鬼が現れた。
 悪鬼達はノロノロとした動きで彼方の前まで歩くと、動きを止める。

「これを見て、無駄だって事を知ってね」
 
 驟雨魔弾がカタカタと震えだし、銃口が巨大化し悪鬼達を飲み込んでいく。
 そして全ての悪鬼が驟雨魔弾に食い尽くされると、彼方はそれを軽く振って蒼二へと言う。

「補充完了ってね!」

 再び彼方は銃弾を乱射する。
 蒼二は少しずつ作った氷壁の間を移動し、彼方との距離を詰めていく。
 感覚を研ぎ澄まし、彼方の弾が途切れる瞬間を待つ。

(──今だ!)

 銃撃が止んだ。
 蒼二は緋眼を再び発動させ彼方へと接近する。

「うおおおおおおおおおっ!」

 修羅雪を閃かせ、彼方へと切りかかった。
 しかし、彼方は蒼二の修羅雪をかわすと、振り向き様に銃弾を放つ。
 蒼二はその銃弾をなんとか回避すると、更に斬る。

「クッ・・・」

 彼方が修羅雪を驟雨魔弾で受け止めた。
 回転する刃と、驟雨魔弾の装甲が拮抗し合い、二人の手から式神が吹っ飛ぶ。
 距離にして二十メートルほどの場所で修羅雪と驟雨魔弾が止まった。

「フフン。これで僕の勝ちは決まったね」

 彼方は笑う。
 彼方の肉体は既に人間の域を超越している、式神無しでは蒼二は到底勝てない。
 だがしかし、蒼二は笑みを崩さない。

「何が可笑しいの? これから死ぬってのに」

「俺はさ、家でずっと一人ぼっちだったんだ」

「ハァ?」

「妹ばかり可愛がられて、俺は少しでも母親と兄と慕った人の気を引きたくて必死で頑張った。
 勉強もスポーツも俺は一番になったのに、何故かいつも出来ない妹が可愛がられるんだよ」

「何が言いたいんだよー?」

「そして俺は朱音と出会った、朱音は俺の努力や気持ちをいつも理解してくれて、俺に優しかった」

「・・・・・・・・」

「だが、そんな朱音をお前らは散々遊び倒して死に追いやったんだよな」

「もーいいっ!! 死ねっ!」

 彼方の爪が蒼二へと迫る。
 蒼二はそれを軽い足取りで避けると、彼方の角を掴んでへし折った。
 
「だから──勝ち負けなんてどうでもいい! お前には最大限の苦痛を与えて殺してやるっ!」

「痛いなぁ・・・」

 彼方の拳が蒼二の腹へとめり込む。
 近くで爆弾が爆発したような衝撃、蒼二はそれを堪えると、彼方に向かって蹴りを放つ。
 吹っ飛ぶ彼方、そしてその先にはそれぞれの式神。
 二人は、ほとんど同じ速度で武器まで辿り着いた。

「ああああああああああああああああああっ!」

 蒼二は修羅雪を抜くと再び彼方へと突進した。
 刃が激しく回転し、彼方へと迫る。
 彼方も驟雨魔弾を撃つ、近距離で連射は危険なので魔弾に戻して。

「ああああああああああああああああああっ!」

 右の修羅雪の柄の部分に命中。
 衝撃によって蒼二は修羅雪を手放してしまう。
 しかし、それでも気にせずに蒼二は更に彼方へと迫る。
 そして修羅雪を左腕に突き刺し、そのまま押し倒して地面へも突き刺した。

「────っ!」

 彼方の右腕が魔弾を蒼二の顔へと向けようとする。
 蒼二は修羅雪の力を使い近くに氷柱を出現させ、それを両手で掴むと魔弾へと叩き付ける。
 銃弾が逸れ、蒼二の頬を掠める。

「ハァ・・・ハァ・・・これが、朱音を殺したお前の最後だ・・・」

 蒼二は左腕に刺さった修羅雪を引き抜き、彼方の魔弾を斬り飛ばす。

「ぎゃあああああああああっ!」

 彼方の悲鳴。そして式神を破壊された彼方は気絶した。
 それ見ると蒼二は楽しそうに笑う。

「ハハハ・・・朱音、やっとお前の──お前の仇が討てるよ」

 そう言い、彼方の顔目掛けて修羅雪を突き刺そうとする。
 そして──

「───っ!?」

 蒼二はとっさに彼方から跳んで離れる。
 次の瞬間、彼方の付近に数本のナイフが突き刺さった。
 投擲された方向を見ると、妹がいた。

「お兄ちゃん、駄目だよ・・・」

 彼方が出てきたドアから遥緋が歩いてくる。
 その足取りは重く、一歩一歩に勇気を振り絞っているような感じだ。
 蒼二は遥緋を睨むと言う。

「朱音を殺した奴を殺して何が悪い」

「朱音さんはきっとそんな事望んでないと思うよ」

 遥緋の言葉に蒼二は苛立った。
 こいつに朱音の何がわかる。そんな感情があふれ出した。

「テメーに朱音の何がわかるんだよ! 知った風な口を利くんじゃねぇ!」

「そうだね・・・でも私は朱音さんが最後どんな気持ちだったのかは、お兄ちゃんよりもわかってるつもりだよ」

「うるせぇ・・・散々甘やかされて育ったお前にそんな口利く資格はねえんだよっ!」

「そうやって、自分が正しいと思って人の意見を聞かないからこんな所まで来たんじゃない!」

 遥緋はそう怒鳴り返すと蒼二を見つめた。
 揺るぎの無い決意の瞳。どうやら遥緋は本気のようだと、蒼二も気づく。
 そして遥緋へと言った。

「やってみろよ・・・泣き虫、甘ちゃん、人殺し」

「やってあげるよ、根暗、鈍感、人殺し」

 初めて妹が啖呵を切り返したことに驚きつつも、蒼二はもう一本の修羅雪を取りに行く。
 どうやら二年前と同じと見てると痛い目を見そうだ。
 そう思うと、蒼二は修羅雪を打ち鳴らし遥緋を威嚇する。
 遥緋も日本刀を欠片から本物へと再生し、構えた。


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