お久しぶりの投稿です。
夏休みも後一ヶ月・・・終わるかな。
【第三部】五話:自分の真の力
「むぅ〜・・・」
遥緋は自室で目を覚ました。
カーテンの隙間から朝日が差し込み、部屋の中を明るく照らしている。
そして、起き上がり手櫛で髪を整えると立ち上がった。
「もう朝かぁ」
携帯を開き、時刻を確認する──七時三十分。
今日は昨日よりも二分はやい。
そして携帯をベットの上に投げ捨てて、遥緋は一階へと降りていく。
「うぅ〜・・・」
体が重い、学校へ行くのがダルくなってきた。
それでも何とか洗面所へ向かい、身支度を済ませると遥緋は食卓へとつく。
「・・・あ」
信じられないことに父親の蒼威がこの時間に起きていた。
多分、この家に引っ越してきてから初めてだと思う。
それほどに蒼威は朝に弱い。
「おはよう、お父さん」
「おー」
ワンカップを片手に見ているのは漫画。
普通の父親ならここは新聞読んどけよ、と思うが口には出さない。
朝から酒に関しては突っ込む気すら起きなかった。
「ママー、朝ごはんなにー?」
「目玉焼きとパンよ」
「うへぇ〜・・・毎日それじゃん」
呻く遥緋。
遥はヤレヤレと言った感じで娘の前に朝食を置いた。
そして食べないと、後が辛いので遥緋はモソモソと食事を始める。
居間に流れるのは目覚ましテレヴィの音だけ、どうでもいいニュースが今日も垂れ流されていた。
「なぁ、遥緋」
蒼威が漫画から顔を上げて言った。
眠そうな目で朝食を食べていた遥緋は、目玉焼きを頬張りながら返事をする。
「ふぁあに?」
「これから神代との決戦まで学校休んでいいぞ」
「え・・・本気で言ってる?」
「俺はいつも本気だ」
「ママ、お父さんがこう言ってるけどいいの?」
「うーん、いいんじゃない? 中間テストも学年一位だったし」
遥緋は勉強だけはかなりできると自負していた。
それだけが、遥緋が唯一誇れる点。
しかし蒼二のほうが更に勉強が出来たので結局は劣等感だけが生まれている。
「じゃあ、そうさせてもらおうかな」
「本当は、お前を連れて行きたくない・・・でも戦力が足りないんだ」
「いや・・・いいよ。私にだってここまで関わった責任があるし」
遥緋がそう言うと蒼威は以外そうな顔をした。
そして次の瞬間には笑顔になっている、分けの分からない遥緋は蒼威に問う。
「へ? どうしたの?」
「遥ちゃーん。俺達の愛の結晶はまた一歩大人になったよ!」
「そうね〜昔みたいにウジウジしなくなったし、人前で赤面しなくなったしね」
父と母が自分を見て笑っていた。
嘲笑ではなく、紛れも無い嬉しさから来る笑顔だった。
食事を済ませ、部屋で身支度をする。
軽く化粧を済ませ、ベットに大きく飛び込むと遥緋は天井を見つめた。
「輪廻転生ねぇ・・・」
髪留めを外し、式神を発動させる。
すると髪留めは段々と形を崩して行き、やがて粒子状の物体となった。
「これを、再生」
ビデオを巻きもどしたように粒子状の物体が髪留めへと戻っていく。
変化が終わり、再び髪につけると遥緋はため息をついた。
「はぁ・・・やっぱ再生と分解じゃん」
わけがわからない。
神代刹那が言った言葉も、父親が試せといった事も。
(おい、遥緋)
唐突に灼那が話しかけてきた。
(出かけるぞ、準備しろ)
(ほぇ? どこにー? 深雪おばさんのお墓参りなら行ったじゃん)
優しいおばさんだった。
蒼二に苛められていつも泣いていた遥緋を優しく受け止めてくれていた。
葬式の時は思いっきり泣いた思いでも残っている。
(陸人の住んでいる街だ、お前とサシで話したい)
遥緋は灼那に体を預ける。
体の支配権を受け取った灼那は遥緋の選んだ服を着ると家を出た。
そして電車に乗り、陸人の住んでいる街の駅へと辿り着く。
(陸人さんの家に行くの?)
(違う)
そのまま灼那はずんずんと進み続ける。
人ごみを通り抜け、だんだんと寂れた場所へと向かっていく。
そして──海の近くに在る廃工場の辺りで灼那は止まった。
(ここは、どこ?)
(まぁ・・・俺達の始まりの場所かな)
錆びきった扉を開き、中へと入る。
工場独特の匂いが溢れ出し、灼那は懐かしそうにその匂いを嗅ぐとゆっくりと歩く。
その工場の奥の壁にはうっすらと何か文字が書いてあった。
灼那はその辺りを手でこすると、文字を見せる。
TEAR PAIN
そう書かれていた。
何か、どこかで聞いた事がある言葉。
そしてその疑問は更に下の部分を擦った灼那によって明かされた。
初代幹部
神埼森羅
高遠陸人
千島蒼威
千島灼也
第一部隊特攻隊長 安曇冥
第二部隊特攻隊長 安曇刃
(これを見て、わかったろ?)
(うん・・・お父さんって兄弟が居たんだね・・・)
(・・・違ぇよっ!)
(ふぇ?)
遥緋のニブさへの怒りを何とか堪える灼那。
何とか気を取り直して再び話を続ける。
(俺は元、千島蒼威の第二人格──灼那だ)
(・・・それが灼那がずっと隠してきた話?)
(ああ・・・)
(ふーん・・・何でその灼也さんが私の中に居るの?)
(めんどくせーから色々省くが、蒼威を守る、その誓いのだけに俺はあの時消えずに今を生きている)
(お父さんを守る、か・・・ずっと昔からそうだったの?)
(ああ、俺は蒼威の第二人格としてずっと共に戦ってきた、陸人や森羅と一緒にな)
(へぇ・・・質問一ついいかな?)
(おう)
(TEARPAINって何?)
(ああ・・・森羅が作ったギャング集団かな、俺らこう見えてもこの街じゃ敵無しだったんだぜ?)
(ギャング・・・)
(話を戻すぜ、この話をお前に今になってしたのは理由がある)
(うん)
(蒼二の中に居る──悲煉、あいつも多分蒼威の元第三人格、煉だと思う)
(奴も誓いを果たすために、今頃蒼二に正体明かしてんじゃねーかな)
(お兄ちゃんの中のあの人が・・・)
(ああ、だから遥緋──神代との戦いの中で蒼威が死にかけていたら、俺に体と力を貸して欲しい)
(アイツが・・・アイツが死んだら俺はもう──どうなっちまうかわからねえ!)
(灼那・・・うん! 私だってお父さん──皆に死んで欲しくないから力を貸すよ)
(・・・ありがとう、遥緋)
(何いってるのよ、もう出会って10年以上経つじゃない・・・水くさいよ)
(・・・サンキュ、遥緋・・・昔の事はまた今度話すわ、だが今は輪廻転生の力について話す)
(輪廻転生の?)
(いいか、遥緋・・・再生と分解ってのはただモノを壊して治すことだけじゃねーんだぞ? 見てろ)
灼那は眼を閉じ集中する。
思い出すのは過去でここで話した記憶、世界からその残滓を掬い出し、自分の記憶とリンク。
そして輪廻転生の力を使い──それを【再生】する。
「ねぇ、陸人君に神崎君・・・ここ勝手に使っちゃっていいのかな?」
気弱そうな少年の声が工場内に響く。
しかし、そこには何処を見ても遥緋だけしかいない。
(これは、初めてココにきたときの蒼威の声だな)
(ええっ!? こ・・・これがお父さん?)
驚愕する遥緋。
今の父親からは全く想像が出来ない。
「あー? 俺らはこの街の市民、だからこの街の敷地に建ってる物は俺等にも使う権利があるってことよ」
(これは絶対に陸人さんだ・・・言ってる事が相変わらず無茶苦茶・・・)
「そ、そうなのかな・・・?」
「蒼威、そこの馬鹿の言う事は真に受けるな・・・伝染るぞ」
(森羅さんは相変わらずっぽいね)
「ま、いいじゃねーか! ココが新たな俺らの溜まり場になるんだからよ」
「ああ、ここが俺達のこの街の征服計画の第一歩だ」
「うん」
「んじゃ、後は数を集めるだけか」
「しばらくは少数精鋭で行く、まずは南中の安曇兄弟ってのに目をつけてるんだが」
「ああ、あのイカれた双子か・・・」
「ナイフとテコンドー使いの冥、ボクシングや空手の打撃系の刃、いい素材じゃん」
「まあな、さて蒼威・・・お前は灼也と二人で水原先輩の気を引いとけ」
「えー!? お、俺あの人怖くて・・・」
「いざとなったら灼也に変わってもらえ、お前はまだ水原先輩に俺らぐらいまで目をつけられてねーからな」
「んじゃ、行こうぜ・・・ミスすんじゃねーぞ」
「お前にだけは言われたくない」
「俺も陸人君には言われたくないな」
「うるせーっ!」
そこで音声はぷっつりと途切れた。
再生が終わったのだろう──後にはまた静かな工場の姿になった。
(これも、輪廻転生の力だ・・・再生って概念の用途はとてつもなく広い)
(うん・・・灼那って凄いね!)
(まあよ・・・後もう一つ疑問なんだが・・・本当に再生と、分解なのか?)
(わからない・・・)
(俺が思うには、お前は優しい──だからお前は輪廻転生の力に無意識にセーブかけてんじゃねーのかな?)
(力を・・・セーブ・・・)
(お前の本当の力は──分解じゃなくて・・・)
(やってみる、代わって)
灼那と代わると遥緋は集中した。
目の前にある廃材を掴み、いつもの仕方で式神を発動させる。
「輪廻転生」
呟く。
そして廃材の形が段々と粒子と化していく──
(まだだっ! その力は傷つける力──それをイメージしろ!)
灼那の声が響く。
遥緋はその声を聞くと、前回刹那が使った自分の式神の力をイメージした。
(アレは・・・純粋な悪意を感じた・・・)
遥緋の中に怒りが燃え上がった。
すると──廃材が粒子と化すのを止め、どんどんと砕け散っていく。
「いっけえええええええええっ!」
遥緋は怒鳴った。
そして、廃材は粉々になって砕けちる。
「あれれ・・・変わってないや」
(・・・再生してみろ)
「うん」
遥緋は破片に触れて再生させようとした。
「あれ?」
しかし、いつまでたっても再生は始まらない。
それを見て首を傾げる遥緋。
(どうやら、これにヒントがあるみたいだな・・・まぁ、今日は帰るか)
(うん、私お腹すいた)
(おお、じゃあ駅の近くに美味いコロッケの店があったんだ、そこに行って見ようぜ)
(へー、やっぱ物知りだね)
(この街は・・・ずっと俺の庭みたいなモンだったからな──)
駅近くのコロッケ屋は灼那曰く、息子が継いで居たそうな。
遥緋はその絶品コロッケを堪能すると、電車へと乗り家へと変える。
そして家に着くと、男物の靴が二つあるのを見つけた。
「ただいまー」
「おかえりぃ」
「おー、帰ったか」
「遥緋ちゃんお帰り」
居間へといくと陸人と森羅が着ていた。
三人してテレビへと向かい、ビールを煽りながら談笑している。
そして遥緋は良い事を思いついたとばかりに笑うと、三人に言う。
「水原先輩って誰?」
───三人の動きが固まる。
台所で母親も一瞬固まったような気配がした。
予想以上のリアクションに遥緋はこみ上げる笑いを堪えるのに必死だった。
「は、遥緋? お・・・お前水原先輩の事知ってるのか?」
父親が震えた声で言う。
そんな父親の態度が更に笑いを大きくする。
「お父さん、昔は陸人君と神崎君って呼んでたんだね」
更に固まった。
その隙を突いて遥緋はスルリと移動し自室への階段を登る。
そして下では──
「だ、誰が喋った!」
「お、俺しらねーぞ!」
「俺だって!」
「マズイ・・・水原先輩と遥緋が繋がると父としての威厳が・・・」
「絶対・・・ロクな事喋らないな・・・」
「チッ・・・暗殺したいが、誠一先輩にまず殺られちまう」
三人の男達は今も記憶に新しい長い黒髪の女の姿を見て背筋を震わせた。
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