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  緋色の眼 作者:ジョン
投稿ペースも順調に上がってきてますね。
次回は、神代編です。
感想、評価お待ちしております。
【第三部】二話:僕らは知った
ここ数時間、誰も喋っていない。
 千島蒼二は騒がしいよりも静寂を好んでいるのでいつもなら全く問題はない。
 しかし、今回は状況が全く違った。

 病院で寝ていた所を罪歌に起こされ、彼ら死罪六神は脱出した。
 神代も一番の敵ではあるが、八神、千島も敵と言える立場。
 そんな状況だったから彼らは病室から姿を消した。

(・・・そうだよな、俺達はもう・・・)

 朱音のためなら闇に落ちてもいい。
 朱音の無念を晴らせるなら自分の人生なんて蒼二にはどうでもよかった。
 しかし、二年ぶりに家族や、昔の仲間と関わった時から蒼二の心は揺れていた。

 そう──蒼二は迷っていた。
 そしてそれは朱音への侮辱だと蒼二は思ってしまっていた。
 
(決意したじゃないか・・・だからここまで手を汚して・・・)

 一般人は殺したことは無い。
 しかし神代の分家や、敵対するグループを蒼二は容赦なく殺した。
 生死は確かめてはいないが、中には明らかに即死だったと自分で思う事もあった。

(そう、俺は人殺し・・・闇社会の人間)

 殺らなきゃ殺られる──それがこの世界の掟。
 気持ちでは分かっている──だけど、明らかな罪悪感が蒼二の中には在った。

(・・・まぁ、これは今考える事じゃないな)

 そう思い、思考を中断した。
 そして周囲を見渡すと、部屋の中には剣菱と狂しか居なかった。
 
「罪歌は?」

 蒼二は問う。
 すると狂が低い声で言った。

「部屋・・・多分、泣いてる」

「・・・泣く、か」

「姉ちゃんも分けわかんなくなってんじゃねーのかな・・・
 ずっと恨んでいた正宗、しかし秋月を滅ぼしたのは神代・・・
 今までその怒りだけで手を汚してきた姉ちゃんは・・・どうすればいいのかわからねーんだとおもう」

「我みたいに、直接八神正宗、千島蒼威への殺意があるわけではないからな」

「俺だってずっと正宗を恨んでたさ・・・あの時アイツが居れば今頃は──」

「今頃は?」

「・・・いや、想像できねーわ。 結局こうなっていたのかもしれねーし」

 自嘲気味に狂は笑った。
 そしてその笑顔もすぐに消えてしまう。

「蒼二は・・・どうなんだ?」

 剣菱が蒼二に聞く。
 
「俺はわからない・・・俺は朱音を殺した神代と悪鬼を殺すことしか考えてなかった。
 悪鬼を殺して、結晶をぶっ壊して、そこまでしか考えていなかった」

「なるほど、な」

「・・・結局死罪六神の最終目標って何だ?」

 蒼二は狂を見た。
 死罪六神は狂と罪歌によって作られた組織。
 実質、狂は副責任者のような立場に居る。

「結晶を壊して・・・こちらの経済をぶち壊す。 それが当初の目標だったな。
 んで、六つも結晶持ってて壊さなかったのは・・・まずは正宗と蒼威を殺したかった。
 それでもしもの時のための、保険の力ってことで俺らは結晶を所持していたんだ」

「なるほどな・・・経済を壊すって何だ?」

「こっち側の世界は、異能を持つ者たちが悪鬼を狩って経済を成り立たせてるってのが筋だろ?
 だから結晶を壊して悪鬼が生まれなくなれば・・・仕事は減り、家はどんどんと没落していく・・これが俺らの復讐だ」

「ほぉ・・・」

「まぁ・・・あんま効果があるとは思えなかったけどな・・・でも泣き寝入りは嫌だった。
 俺らを疎み、閉じ込めた秋月だけど・・・良い奴もいた・・・何より家族だった・・・だから・・・」

 狂は膝を抱え顔をその上に置くとブツブツと呟きだした。
 狂も狂で分からなくなっているのであろう。
 それをわかっている剣菱と蒼二はそのまま何も声をかけない。
 
「だが我は・・・後悔はしていないぞ」

「剣菱・・・」

「我と蒼二は違う、だから後悔するなとは言わん。 だが・・・蒼二が死罪六神である以上
 我と共に戦う時だけは、後悔もせず、迷いもせず、戦いに集中して欲しい」

 蒼二はその言葉の中に剣菱の優しさを知った。
 剣菱は出来た人間──自分の仇の子でもそれを関係なしに接し、背中を預けると言ってくれている。
 
(ずっと欲しかった・・・俺は・・・欲しかったんだな)

 蒼二は、泣いた。
 朱音が死んだ時に泣いてからは一度も泣いていない。
 当に涙など枯れ果てていたと思っていたがやはり止まらない。
 
(俺はここで生きている、俺は誰かに認められ、必要とされ生きている)

 中学時代はロクな思い出が無い。 
 周囲が自分を傷つけようとする、それを恐れ強くなったら誰も近づいてこなかった。
 学校ではいつも一人、あの頃の蒼二はずっとそれでいいと思っていた──
 だけど本当は──

 母親はあまり自分に構ってくれなかった、分かって貰えなかった。
 妹は自分にあまり関わろうとしなかった、心が離れていた。
 兄貴分はあまり自分の味方をしてくれなかった、妹に甘かった。
 父親は・・・・・・・ずっと居なかった。
 大切な人は、殺された。

 蒼二の心は孤独。
 唯一の友でもあり、同胞でもあるのは悲煉だけ、しかし彼は現実では居場所を作れない。
 蒼二は居場所を欲した、そして今──ようやく見つけた。
 その事に気づき、蒼二は涙を流した。

「蒼二・・・」

 剣菱が自分を見た。
 蒼二は涙を擦ると、剣菱に向かって言う。

「ああ、わかったよ」

 そのまま数分間の静寂。
 そして徐にドアが開き、命と罪歌が入ってきた。
 やはり、罪歌の目は緋眼の赤ではなく他の赤色に染まっていた。

「命が、全員に話があるそうよ」

 鬱にはいっていた狂も顔を上げる。
 全員の視線が命に集中し命は一歩たじろいだが、すぐに体勢を立て直し言う。

「私は忘れてた、神代が何なのか・・・何をしようとしていたのか」

「ほぉ、言ってみろ」

「神代のあの四人、刹那、瞬、彼方、そして皆の仲間だった此方は悪鬼と人間の混血──鬼神。
 世界にはね、何人もの鬼神が居て・・・徒党を組んでる。 私のおねえちゃんもその一人」

「あ? お前姉が居たのか?」

「血は繋がってないけどね・・・私を桐生の牢獄に閉じ込めたのもお姉ちゃん」

「何のために?」

「それはわからない、私は記憶を封じられてあそこに閉じ込められた」

「なるほどね・・・それでその鬼神の集団って何なのよ?」

「鬼神はね、昔から居たって聞いた・・・原住民とかに多くてそれらは気にせず森の奥で暮らしてる。
 でも日本とか欧米諸国で生まれた鬼神は・・・人間社会にまぎれて昔からこの世界に居るの。
 個人じゃ限界があるじゃん? だから彼らは徒党を組み相互扶助関係を保って生きているんだよ」

「神代も入ってるのか?」

「うん・・・私のお姉ちゃんと同じ【九尾の狐】っていうアジア系の鬼神が多い集団
 後、有名なのは【ラグナロク】とか【七つの大罪】とかだね・・・」

「ふむ・・・妙に詳しいな」

「私が閉じ込められる前、お姉ちゃんが色々教えてくれたから・・・
 閉じ込められるのが嫌で・・・私はいっぱい人を傷つけた・・・そしてお姉ちゃんにやられて閉じ込められたの」

「ありがとう、命・・・神代の目的とかは覚えてない?」

「神代とはあまり・・・ごめん、わからない」

 命がそういうと、会話が止まった。
 誰もが黙り、命の話したことを頭の中で整理する。
 
「俺らは・・・世界の真実を知っちまったんだな」

 蒼二は呟いた──


















 夜、蒼二は屋上で星を見ていた。
 朱音と何回も一緒に見た夜空、しかしあの優しい時間は二度と手に入らない。
 そんな事を思いつつ蒼二は星を見ていた。
 
「蒼二──?」

 声が聞こえ、意識をそちらへ向けると罪歌が居た。

「よぉ」

「良い夜だね」

「まぁな」

 罪歌は蒼二の横へと座った。
 しばしの沈黙──そして蒼二が罪歌に問う。

「なぁ・・・何で二年前の夏に俺らの前に現れたんだ?」

 全ての始まりはあの二年前の夏。
 罪歌が父親の事知りたくない?という言葉から全てが始まった。
 ずっと気になっていた、何故あの時罪歌は自分達の前に現れたのかを。

「ああ、蒼威の子供達をけしかけてアイツの動きを鈍らせようと思ったのよ。
 でも君達はその後すぐに式神を手に入れた──しかも多重人格者の式神使いだよ?
 これは仲間に入れてみたいと思ったわね」

「なるほど・・・」

「でも私は謝らないよ、貴方は今、望んでこの場所に居るんでしょ?」

 罪歌の瞳が蒼二を見る。
 大きな黒目がちの瞳に見つめられた蒼二は、はっきりという。

「ああ、俺は望んでこの場所に居るんだ」

「なら良かった」

 ケラケラと笑う罪歌。
 始めてみた罪歌の無邪気な笑顔に蒼二は若干の驚きを覚えた。
 
「元気になったみたいじゃん」

「え?」

「さっきまで泣いてたんだろ?」

「・・・・・・うん」

「八神のおっさんを殺すのか?」

「・・・・・・」

 黙りこくる罪歌。
 その顔に浮いた感情を蒼二は見逃さなかった。

「ははぁ・・・さてはお前あのおっさんが──」

「うるさい!」

 蒼二の頭を殴る罪歌。
 暗闇でよくわからないが、その顔が赤くなってる事は容易にわかる。

「いって! お前本気で殴るなよ!」

「うるさい!」

 罪歌は蒼二に圧し掛かりマウントポジションを取った。
 そしてニヤリと笑いながら指を鳴らす。

「さて、どうしようかな」

「凄く難しいな、敵であるけど自分を見てもらいぐぼぇっ」

 罪歌の拳が蒼二の腹にめり込んだ。
 多少は手加減されているようだが、中々深刻なダメージである。

「生意気な口を利くのはどの口かなー?」

 蒼二の頬をつねり罪歌は顔を近づけてにっこりと笑う。
 そしてその時──

「何、してるの?」

 ぞっとするほど冷たい命の声が聞こえた。
 屋上への入り口で命は重なり合い顔を近づけている二人を涙目で見ていた。
 そして気づく。

((命は誤解している!))

 目を一回擦り命は二人に告げた。

「こっの・・・泥棒猫とエロガッパ────っ!!!」

 命の式神の気配が濃密に増した。
 罪歌と蒼二は慌てて離れようとするが、同時に動いたために中々立てない。
 そして更に──

「うるせぇなぁ・・・こっちは寝てるん・・・・・・・・・・蒼二?」

 目を擦りながら狂が現れた。
 そしてもつれ合う蒼二と罪歌を見て狂の動きが硬くなった。
 固まった狂はしばらく下を向くと笑い出す。

「ハハハハハハハハハッ じゃあな蒼二」

 神舞も発動した。
 大気が渦巻き、狂の周囲へと収束して行った。

「狂ちゃん・・・共同戦線だね」

「ああ、頼むぜ」

「違う! 誤解だ! 俺は朱音一筋なんだっ!」

「私のことはどうでもいいってわけぇっ!?」

「だから──っと危ねぇっ!」

「チッ! 外したか・・・」

「罪ちゃんの泥棒猫ーっ!」

「命! 落ち着いて!」

 激しい戦闘音。
 鳴り響く破壊の連鎖は振動と音を生み出し、下の階に居た剣菱へと響く。

「むぅ・・・馬鹿共め・・・そういえば、二年前もこんな事があったな」

 崩れた大量のトランプタワーを見つめながら剣菱は哀しそうに呟いた。



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