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  緋色の眼 作者:ジョン
第三部が始まりました。
最終部です。
皆さん評価その他よろしくお願いします。
【第三部】一話:手がかりを求めて
「ッ・・・」

 遥緋は目を覚ました。
 最初は白い天井を見てボヤけていたのだが・・・段々と時間が経つと意識が完全に覚醒した。
 ゆっくりと起き上がり体を見る。

「・・・ここは、病院?」

 パジャマの下には包帯に巻かれている自分の体。
 遥緋はベットの横のカーテンを引くと、周囲を見渡す。

 部屋にあるベットは三つ。
 しかし、あとの二つは誰かが使っていたようではあるが姿は無い。
 
(灼那)

(何だ?)

(状況を把握できてる?)

(いや・・・俺もさっき目覚めたばっかだからな)

(そう・・・)

(とりあえず、外に出てみようぜ)

(うん)

 遥緋はベットから降りると靴を履いて歩き出した。
 一歩一歩歩くたびに、痛みが走る。
 痛みに顔を顰めた遥緋は傷口に手を当てた。

(輪廻転生)

 傷が塞がり段々と痛みが引いてきた。
 それに満足をすると遥緋は病室を出る。





 廊下に出ると、非常に騒がしい声が聞こえる、
 しかも、自分がよく見知った声。
 声は隣の部屋から聞こえている・・・遥緋は軽くため息を吐くとその部屋へと入った。

「お、遥緋・・・起きたか」

 部屋に入ると包帯塗れの男が六人。
 蒼威、陸人、森羅、正宗、神璽、時雨、の六人である。
 
「うん・・・結局あれからどうなったの?」

 遥緋は問う。
 すると正宗が口を開き、遥緋へと説明を始めた。

「・・・そして神代刹那に、残りの結晶と棗由加を奪われた」

「・・・・・・」

「俺達は・・・負けたんだな?」

 陸人がボソリと呟く。
 顔こそ無表情であるが、拳は血が滲むほど握られていた。
 それを知っていつつ正宗は事実だけを口にする。

「ああ、負けた」

 ──沈黙。
 すると今まで黙っていた神璽が口を開いた。

「でも、まだ何とかなりますよね?」

「勿論だ、このままじゃ引き下がれない、八神の名にかけてもね」

「俺も借りは返さなきゃな」

「僕だってやられっぱなしは後免ですよ」

 段々と部屋に活力が戻ってきた。
 そして時雨が全員に提案する。

「まずは、情報集めですね」

「うむ、刹那の出したヒントや奴の式神、そして神代の拠点も突き止めなければ」

 大体のことを遥緋は理解した。
 そして、一つの疑問を口にする。

「お兄ちゃんとか・・・死罪六神の人たちは?」

「朝起きたら、全員いなくなっていたよ」

「そう・・・」

 一緒に戦えない事はわかっている。
 神代も敵、そして死罪六神も敵であるから。
 それでも遥緋は──ただ哀しかった。

「んじゃ、俺は浅葱に帰るぜ。 ババァ共に報告があるからな」

「俺も、一旦部隊の元へと帰る、神璽も一応一緒に来てくれるか?」

「はい」

 荷物を持ち、立ち上がる陸人と森羅と神璽。
 まだ、怪我は完全に治ってはいないようだがそれでも足取りはしっかりとしていた。
 
「治癒式神で治したからと言ってまぁ・・よく働けるものだ」

 正宗は半分呆れながらぼやいた。
 










 その後、検査をして遥緋と蒼威は家へと戻った。
 正宗と時雨は本格的な調査に乗り出すために、一旦八神家へと帰り、
 後日、八神家に集まるといった手はずとなる。
 そして遥緋と蒼威は、病院から家へと二人で歩いている。

 黙って歩く蒼威と遥緋。
 父親と歩く事に気恥ずかしさを覚える遥緋だが、多分生まれて初めてだったのでそこそこ楽しい。
 遥緋の中にある蒼威の記憶はほとんど無いと言ってもいい。
 正宗だってほとんど会った事が無い、ずっと時雨と遥が蒼二と遥緋の面倒を見ていた。

「すまないな」

 蒼威が唐突に言った。
 遥緋にはその意味がわからなく、問い返す。

「何で謝るの?」

「俺がずっと家に居てやれば・・・まだお前と蒼二は普通の高校生でいれたのにな」

「・・・うん、でも私は後悔してない」

「・・・・・・」

「こっちの世界に関わってから私は色々と変われた。
 不謹慎だけど、人が死んだり、生き延びたりしてそれを視て私は変われたと思う」

「そうか・・・」

「だから、お兄ちゃんは私が止めるよ・・・」

「すまないな・・・多分、俺の言葉はあいつに届かない。
 だからお前が教えてやれ──朱音君の最後の気持ちを」

「うん!」

「それとお前の輪廻転生だが・・・お前の力は本当に再生と分解か?」

「うーん・・・多分そうだとは思うけど」

「その辺、もう一度突き詰めてみろ・・・思わぬ事実が出てきたりするモンだぜ?」

「わかった」







 五日後、怪我も完治した遥緋は学校への道を陰鬱に歩いていた。
 理由は一つ──志穂と聖子と会うのが怖い。
 あの戦いに巻き込んでしまった事を遥緋は心から後悔していた。
 不可抗力だったとはいえ──自分が許せない。

 校門を抜け、靴を履き替えると教室へ向かう。
 怖い、怖い、拒絶されるのが怖い。
 しかし──遥緋は進んだ、そして教室のドアを開け中に入る。

「おはよー」

「おはー」

「あ、おはよう」

 クラスメイト達に挨拶をしつつ、席に着く遥緋。
 神璽の席を見るとまだ着てない。
 不安で心が押し潰されそうになる。

「よっ! ハル」

 背中を叩かれ、遥緋は低く悲鳴をあげた。
 後ろを向くと、志穂と聖子が立っている。

「志穂・・・聖子・・・ごめん」

 謝る遥緋。
 しかし、志穂と聖子は別段気にせずに言い返す。

「怖かったけど・・・ハルとソージが守ってくれたからさ・・・」

「ありがとうね、ハルちゃん」

 涙が出そうになった。
 自分を受け入れてもらえた事がここまで嬉しいとは思わなかった。
 遥緋は、笑うと志穂と聖子に抱きつく。

「ありがとう」



 放課後になっても神璽は現れない。
 遥緋は志穂と聖子と談笑しながら校門へ向かっていた。
 とにかく、今日は早く家に帰ろう、そう思い校門を出ようとする。

「遥緋」

 門を出ると声をかけられた。
 そして声のした方向を向くと──蒼威がバイクに跨って座っている。

「お、お父さん!?」

「え、これハルのお父さん? はじめて見た・・・」

「いつもお世話になってますー」

「遥緋の父親の千島蒼威です。いつも娘がお世話になってます」

(うわぁ・・・猫かぶってる)

 ここぞとばかりに猫を被る父親を見て遥緋はげんなりとした。
 しかも、バイクに乗っているので目立って仕方が無い。
 周囲視線を何とか無視しつつ、遥緋は問う。

「何か用事?」

「ん・・・集合がかかった」

「もう、わかったんだ」

「ああ・・・だから早く乗れ」

「・・・私、スカートなんだけど・・・」

「減るもんじゃないし、別にいいだろ」

「・・・うう」

 ヘルメットを被ってスカートを絞りバイクに跨る遥緋。
 そして志穂と聖子に別れを告げる。

「じゃあ・・・また会えたら」

「絶対だよ!」

「帰ってきてね」

「・・・うん!」

 そう言い終えると蒼威はバイクを発信させた。
 そしてドンドンと加速して行き、広い道路に出ると蒼威は遥緋に言う。

「良い友達もったな」

「うん」

「蒼二にはああいう友達は居なかったのか?」

「お兄ちゃんは、気を許せる友達とか居なかったみたい・・・いつも一人だった」

「・・・俺も陸人や森羅が居なかったら・・・」

「ん?」

「いや、なんでもない」

 自分の弱さを娘に見せるのは少し恥ずかしい。
 こういう時はどうするんだっけ? と蒼威は思う。
 ほとんど子育てに関わっていないので、距離のとり方が分からないのである。

(確か・・・陸人が笑えるシモネタでかっ飛ばせとか言ってたな)

 馬鹿だが、子育てに関しては自分よりも数枚上手だと蒼威は思っていた。
 そしてそれは重大なミスに繋がるともしらずに、蒼威は考えた事を口にする。

「なぁ、遥緋」

「ん?」

「遥ちゃんは高校のときはもっと大きかったぞ」

「・・・・・・」

「おかしいな・・・そういうのは遺伝すると思うのだが・・・なぁ、どうおも──」











「あ、蒼威さん? どうしたんですかその顔?」

 ドアを開けると傷だらけの蒼威が居た。
 そしてその隣には何故かむくれた顔の遥緋が立っている。

「いや・・・子育ての難しさを知り、陸人への信頼度が下がっただけだ、気にするな」

「はぁ・・・まぁ、上がってください」

 時雨は二人を家に上げると部屋まで案内をした。





 部屋に入ると全員が座っていた。
 遥緋と蒼威は開いていた二つの席に座る。
 そして全員が揃った事を確認した正宗は喋り始めた。

「じゃあ、はじめようか・・・時雨」

 正宗が

「じゃあ、まず僕から説明します」
「まず神代刹那の最初のヒント、世界の悪鬼と日本の悪鬼の対比ですね」

 そういうと、時雨は一枚の紙を取り出し、ホワイトボードに貼り付ける。
 何かのグラフのようなものが書かれており、それは年々減っている。

「これは欧州の悪鬼の出現率です、1970年以降かなり減少していますよね?
 そして僕達の調べでは、1970年以降・・・結晶は一個も発見されていません」

「誰かが国外に持ち出したんじゃねーの?」

「向こうにも結晶を探知できる能力者が居ます、一応欧州内に反応はあるそうです
 そしてごくたまにですが・・・存在を感知出来なくなる日もあるそうです」

「何が言いたいんだ?」

「欧州の結晶は、誰かが所持しているって事ですよ」

「まぁ・・・それは日本でもあるよな」

「問題は、気配が一つだって事なんですよ」

「ハ? そりゃねーだろ あんな日本でさえ八つあるんだからよ」

「そこで神代刹那の言葉、この日本は計画が遅れているんだよ です
 彼らの行動は、結晶を知った一族を根絶やしにし、結晶を集めてる事ですよね?」

「そうっすね」

「彼らの言う計画──それは結晶に何らかの細工を施す事ではないかと思います
 だから、日本は遅れているし、悪鬼の数も全く減っていない」

 時雨がそういい終えると全員は黙った。
 それを肯定だと判断した時雨は話を更に進める。

「じゃあ次は蒼威さんお願いします」

 時雨が席に着き蒼威が立ちあがった。
 そして喋りだす。

「次に、刹那が言った 俺達の正体 って奴だが
 この前の戦いで、奴らが変化したのを全員見てるよな?」

 全員が頷く。
 狂化と呼んでいた彼らのあの力を思い出す。

「俺は刹那に訊ねた、お前らは人間と悪鬼のハーフみたいなもんかってな
 そして刹那の答えは、正解だそうだ・・・これはもう間違いないと思う」

「悪鬼と人間って・・・子供が出来るんだ」

「まぁ、その事について俺は八神の資料を読みふけったんだよ
 家系図とかいっぱい読んだ、そしたら先祖の八神の日記ってのがあってな」

「うん・・・」

「千島は滅亡しかけた、一族の大半が死に絶え、残った者は北の地へと逃げた
 って記述があったんだよ、んで俺がガキの頃住んでたのは北海道・・・まぁこの日記は正しいよな?」

「知らなかった・・・」

「僕もそんな日記は見たことなかったね」

「んで、今度は千島の記録を漁りまくってこの滅亡した頃の事を調べたんだ、そして気になる文章を見つけた」

「・・・まさか」

「千島の異端児藍、その力悪鬼の如く強大にして異形にして邪悪。 故に鬼神と断定 
 ってあった、悪鬼の如く強大、そして異形・・・これって神代と同じだよな?」

「鬼神?」

「そう、そこがポイントだ・・・鬼神=悪鬼と人間のハーフって事なんじゃねーかって思う」

「ほぅ・・・一応筋は通るな」

「日本は古来から異類婚とか伝わってるしな・・・だから無理な話ではないと思う 俺からの報告は以上だ」

 それだけ言うと蒼威は席に着く。
 そして今度は正宗が前に立った。

「最後に神々の黄昏だが・・・ぶっちゃけ意味が分からん」

「え・・・」

「神々の黄昏は北欧神話の世界の週末の日、ラグナロクの事だな
 実際は、リヒャルト・ワーグナーがドイツ語に訳して生まれた言葉なんだけどね」

「知らなかった・・・」

「まぁ、彼らの狙っているのは世界の終焉って事じゃないのかな?
 刹那の言葉の端々には純粋な人間への怒りも感じられたしね・・・僕からは以上だ」

 正宗が席に着くと場が静まり返った。
 すると神璽が立ち上がって質問をする。

「あの・・・それで由加はいつ助けるんでしょうか?」

「こっちも神代の本拠地の割り出しはまだまだって感じだ・・・まぁ、後二週間か一ヶ月はかかるね」

「そんな・・・由加が・・・殺されちまうかもしれない」

「それは無いと思うよ」

「何でそんな事が言えるんですか?」

 気休めはよしてくれとばかりに神璽は正宗を見た。
 対する正宗はその視線を軽く受け流すという。

「罪歌は、君から結晶を奪えなかったんだろ?」

「・・・はい」

「炎帝の火すら効かない再生力・・・神代にはまだ難しいと思うよ
 それに・・・あちらにはかなりの重症を与えてある、しばらくは動けないだろうね」

「でも治癒の式神使いとかが居れば・・・」

「ああ、それなら手配済みさ、一般の使い手や、闇医者に至るまでほぼ全員に監視を光らせている
 無論、八神だけでやってるわけじゃない、神代に滅ばされた家の生き残りの人達とかも協力してくれていてね」

「しばらくはお互い手詰まりってわけですか」

「ああ、だから存分に力を磨いておけばいい」

「はい、わかりました」

「素直で大変よろしいね・・・そういえば陸人、浅葱もこの件に関わるんだよね?」

「ああ・・・ババァ共も納得したさ。 だから詩歌は本邸に缶詰なんでしばらくお別れだぜ」

「成る程、ま、元々お別れな雰囲気が漂ってたから変わらないじゃないか」

「テメェ・・・」

「ふふん。 それで森羅はどうするんだい?」

 正宗は陸人の瞳を軽く受け流すと今度は森羅に問う。
 
「指揮の杉谷さんが入院、隊員も戦闘不能者が多いんでな・・・アンタから圧力かけてもらえると助かる」

「わかった、やっておこう」

「頼むわ」

「さて・・・一応これで会議は終わりだ。 また連絡するから今日は解散かな
 ここに泊まって修行しても良し、実家に帰って家族と過ごしても良し、好きにやってくれ」

 正宗のその声で全員は同時に席を立った。
 


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