後二話で第二部終了です。
その後はまた少し間が開くかもしれません。
二部までの感想、評価お待ちしております。
【第二部】二十話:楽園
──接続完了
刹那は心中で呟いた。
その言葉を鍵として自分の中にある【核】を認識した。
──展開
我が思うは、遠い日の誓い。
我が願うは、この世界の終焉。
我が憂うは、現在の秩序。
──目覚めよ
兄貴──
兄さん──
何故俺達がこんな──
──我が式神
人間なんて嫌いだ──
信じるのは俺、お前、彼方、此方だけにしろ──
いつか、いつか・・・俺達のための──
──高速戦闘。
その戦いはその名に相応しい速さをもって行われていた。
「ハハハハハッ! 面白いねぇ!」
彼方が驟雨魔弾を斜めに構え撃つ。
さっきまでの魔弾と違い、連射された弾丸が爆発を巻き起こす。
──粉塵と衝撃波、その中を時雨と正宗が高速で移動し、雷獣と彼方へ近づこうとする。
「死ね」
正宗は雷獣に切りかかる。
しかし二神風雷の刃は雷獣の硬い爪に阻まれ、弾き返されてしまった。
「何て力だ・・・」
衝撃で痺れた手を擦りながら正宗はぼやく。
そしてその時──
「天照!」
声と共に大量放射される熱線。
とっさに反応した彼方と雷獣は大きく飛び上がるとビルの窓枠に避難する。
安堵の息をつく彼方──直後。
「テメーはあの時確実に殺しておけばよかったぜ」
下方から声が響き、見えたのは凄まじい速度でビルの壁を走る影。
「千島蒼二ぃ・・・」
彼方は驟雨魔弾を乱射するがその弾は全て避けられてしまう。
そして蒼二は、空中へ大きく跳躍すると彼方の顔に回し蹴りを放った。
「──っ」
辛うじてガードする彼方だが勢いに耐え切れずにビルの中へ叩き込まれた。
そして蒼二は雷獣の方を向き、怒鳴る。
「テメエもだよっ!」
二本の修羅雪を突きつける。
切っ先から生まれ巨大な氷柱が生まれ雷獣を飲み込む。
短い悲鳴と轟音が響き、ビルに振動が走る。
そこで蒼二の滞空時間が終わり、徐々に下へと落ちていく。
「八神のおっさん!!」
蒼二の怒鳴り声により、正宗は自分がすべき事に気づいた。
二神風雷を構え、斬撃。
「風雷牙・豪」
先ほどよりも巨大な風と雷の斬撃がビルへと真っ直ぐに飛んでいった。
──激突。爆音が轟き、ビルと周囲一体が爆発につつまれる。
爆風に巻き込まれた蒼二は地面を転がり何とか受身を取ると立ち上がって言う。
「判断遅いぞ、八神の名が泣くぜ?」
「・・・流石あの男の息子だ、無駄に僕を苛立たせる」
忌々しそうに言う正宗を蒼二は嘲笑で流した。
そして蒼二は再び修羅雪を前方に突き出す。
「死ね」
虚空より巨大な氷塊が生まれ、ビルへと落下する。
──激突。崩れかけていたビルが更に崩壊し、もはや原型は見えない。
しかし──
「チッ」
崩壊したビルの中から雷撃が天を突き、瓦礫が吹き飛ばされる。
その跡から出てきたのは──彼方と雷獣。
「痛い・・・今のは・・・痛かったぞぉ!」
彼方が怒鳴る。
その声と共に弾かれたように雷獣は四人に迫った。
「剣、いくぞ」
そう勝手に言い放つと蒼二は雷獣ではなく彼方へと向かって走った。
剣菱も無言で頷くと蒼二へと続く。
「行っちゃいましたね・・・では僕らも行きましょう」
「フン・・・わかっている」
時雨と正宗も雷獣へと向かって走り出した。
修羅雪を構え蒼二は彼方へと接近する。
四対の緋色の眼が彼方へと滾る殺意を向けているが彼方は全く動じていない。
「人間風情がぁ! 僕らに逆らうんじゃないよっ!」
彼方の爪が更に巨大化し蒼二へと迫る
しかし、蒼二は限界まで体を横にしてそれを避けたため爪は空を凪ぐ。
──下段からの一閃。彼方は余裕の表情でそれをかわす。
蒼二は尚も中段、下段からの攻撃を執拗に行うが彼方には一発も当らない。
「おいおい、どうし───っ」
首筋に熱量を感じ彼方は慌てて首を逸らす。
次の瞬間天照の熱線がさっきまで彼方の顔があった空間を通り過ぎて行く。
「チッ 外したか」
死角の方向から剣菱の声が響く。
彼方はその位置を認識すると、驟雨魔弾の引き金を引く。
──発砲音。驟雨魔弾から数初の弾丸が在り得ない軌道で剣菱へと迫る。
「フン」
刀を抜く剣菱。
刀の刀身部分にはやはり前回と同じく刃が無い。
そして次の瞬間光の筋が現れ刃となり、剣菱はそれを振って全ての弾丸を弾く。
「オラァ! よそ見してんじゃねーよ!」
蒼二の斬撃が再び彼方を襲う。
「チッ!」
大きく彼方は後ろへと跳ぶ。
集中。眼を開き悪意の残滓を視る──その力を集め更に集中。
そして彼方は大きく口を開き──
「鬼砲──っ!」
彼方の口から放たれる闇の光線。
「クッ・・・」
「ぬ・・・っ」
高速で走っていた蒼二と剣菱は何とか回避した。
しかし、慌てすぎたため体重移動に失敗し二人は転倒してしまう。
彼方はニヤリと笑うと近くに居た蒼二へと走る。
「右腕の恨み晴らしてやるよぉっ!!」
彼方が右腕の爪を振り上げ蒼二へと叩き付けようとする。
──しかし蒼二は何故か笑った。
「学習しろよな──」
声とともに蒼二の姿が掻き消えた。
空振りした彼方の爪が大地を割り、振動を起こす。
「し、しまっ──」
背後で何かが回っている気配。
次の瞬間猛烈な痛みが彼方の脳髄に響き渡った。
「ああああああああああああっ!」
彼方の背中には二本の修羅雪の刃が高速回転し彼方の肉を削る。
蒼二はその背中を蹴り飛ばすと、剣菱へ怒鳴った。
「剣菱っ!」
「おうっ!」
彼方へと走る剣菱。
すると剣菱の体の周囲から天照が放射され、彼方の体を貫く。
そして剣菱は天照の刃を振りかぶり彼方の頭を狙う。
「ナナシと暁の敵だっ! 死ね!」
そして──その声は聞こえた。
──楽園
蒼威の大我が剣となって狂風へと迫る。
「────!!」
咆哮。その衝撃波だけで大我の軌道は曲げられあらぬ方向へと飛ぶ。
蒼威は翼をはためかせ、空を泳ぐと迫り来る狂風の風玉を避けながら舌打ちした。
「チッ・・・純結晶悪鬼には劣るが中々・・・」
瞬が生んだ狂風はナナシの屍王とは違うタイプの悪鬼。
ナナシは結晶の悪鬼の力を完全に引き出して召還し、
瞬は悪鬼に結晶を入れて結晶の力で中からその力を増大させた。
屍王よりも本質では劣るが十分に強力な悪鬼である。
「あの骸骨よりも悪意の量が半端なく多いぜ・・・」
狂の負の感情がそこまで強大であった事を蒼威は悟る。
風玉と風の刃を避け、飛ばしていた大我を自分の下に集め念じる。
「騎士」
大我が大きく広がり数体の羽を持った騎士を作り出した。。
蒼威は騎士達と並ぶと疾駆する。
──勿論目標は狂風。
「オラァッ!」
瞬の万事残壊を陸人は爆轟で受け止めた。
すると陸人の爆轟に違和感──陸人は後ろにステップする。
「フフン、良い判断だ・・・」
「陸人! 瞬の能力は触れたものを破壊するだ!」
森羅が叫ぶ。
瞬はそれを聞くと楽しそうに嗤った。
万事残壊をくるくると振り回し周囲のモノを粉塵と化す。
「訂正だぁ・・・破壊するんじゃなくて粉々にするんだよっ!」
再び瞬は陸人へと向かう。
陸人は爆轟を振って瞬に爆発を当てようとするが瞬の速さによって全て避けられてしまう。
「テメーらは緋眼使いじゃねーからな・・・このスピードはキツイだろ?」
瞬の拳が陸人の腹へめり込む。
陸人の巨体が数センチ地面から浮き上がり、空気を吐き出す。
瞬は軽く残壊を振り陸人を吹き飛ばす。
「ぐぁっ・・・・」
壁に叩き付けられ苦悶の声を漏らす。
瞬はその光景を見て嗤うと今度は森羅へと向かって走り出す。
「チッ・・・」
森羅も水の壁を作って瞬の勢いを止めようとするが万事残壊によって全て破壊されてしまう。
再び水の鎌を作り出し瞬へと走りだす森羅。
高速で打ち合う刃と刃。──しかし、瞬の驚異的なスピードに森羅は段々と押され始めた。
「人間が生意気なんだよっ!」
瞬の渾身の一撃──森羅の鎌が弾き飛ばされ、瞬は左手で森羅の首を掴んだ。
そしてそのまま首をギリギリと締め上げる。
「ガッ・・・ァ・・・・ッ・・・」
森羅は眼を見開き瞬の顔にアイアンクローをする。
しかし、当の瞬は涼しい顔をしながら森羅へと言った。
人間を嘲る様な邪気のない顔、森羅はその顔に少々の戦慄を覚える。
「スゲー握力だな、オイ。 人間相手だったら多分人を殺せるぜ」
(チクショウ・・・)
森羅の意識が遠のこうとした時───猛烈な殺気が周囲を埋め尽くした。
周囲一体の熱を完全に奪うような冷たい殺気。
瞬も腕に込める力を緩め、殺気の発生源を見る。
「テメェは・・・千島の娘のほうじゃねーか」
壊れた街頭の下から現れたのは遥緋。
瞬の質問には一切答えず、ただ純然たる殺意を発生させていた。
(──殺す)
灼那──灼也の頭の中はその感情で埋め尽くされていた。
足に少々の力をかけ、前方に体重移動する灼也。
そして姿が掻き消えた。
「チィッ!」
瞬は森羅を放り投げ周囲を視る。
──速い、ほとんど視認できないような速さで灼也は瞬へと迫った。
今、灼也の中では瞬など眼中になかった。
視線の先は空を飛ぶかつての仲間にして宿主の姿。
近くに在ったけどずっと怖くて手を差し伸べられなかった自分の大切な人。
──灼也は地上を見る。
瓦礫埋もれて血を流すかつての仲間、敵に首を絞められ苦悶の表情の仲間。
(陸人・・・森羅・・・蒼威)
灼也の緋色の眼に一筋の水滴。
世界が遅い、自分だけが速い、速く──速く──もっと速く。
「舐めんなぁ!」
瞬のハルベルトが灼也へと迫る。
軽く体を傾け、ハルベルトを回避すると灼也は終式を解く。
「邪魔すんじゃねぇっ!」
瞬のハルベルトを掴み輪廻転生を発動させる。
「な───」
瞬の顔が驚きに染まるのと同時に万事残壊が砕けた。
次の瞬間、瞬の体が糸の切れた操り人形のように地面へと崩れ落ちる。
灼也は瞬の体を蹴り飛ばして突き放すと、声を上げた。
「陸人! 森羅! ついてこいやぁ!」
その声が聞こえた瞬間、陸人と森羅の中に懐かしさがこみ上げてきた。
ピンチな時でもいつもその声で四人は潜り抜けてきた。
それは遥緋の声ではあったが二人には灼也の声となって届く。
陸人と森羅は慌てて起き上がるとあの頃と同じ言葉を叫んだ。
「「おうっ!」」
並んで走る三人。
陸人も森羅も灼也?とは聞こうとしない。
それよりも二人の中には一種の充実感みたいなモノが溢れかえっていたから。
「陸人! 俺を蒼威のトコまで飛ばせ! 森羅は援護を頼む」
「お、おう」
「わかった」
目頭を擦り陸人は加速し前に出る。
体を捻りいつでも全力で拳を放てる体勢で──
「飛ぶぞっ!」
灼也が跳躍し陸人の上へと上がる。
陸人はそれを見ると、灼也の靴に全力で爆轟を叩き付ける。
──爆発。全ての力が集約され灼也は空へと飛び上がった。
(蒼威・・・蒼威っ!!)
もうすぐ──もうすぐ届く。
不安、恐怖、期待、様々な感情が灼也の中でぐちゃぐちゃになって暴れまわる。
そして──その声は聞こえた。
──楽園
世界が改変されていくのを由加は感じた。
自分が自分のモノではない感覚。
しかし、心の中は変わらない。
私には神璽しかいない──
薄れ行く意識の中で由加は呟く。
体に力が入らない、そのため由加は落ちていた角材に寄りすがって歩いていた。
神璽が居なくなったら私は──
それでも一歩一歩意識を保ちながら由加は歩いた。
目指すは神璽の気配。
居なくならないで──
そう思い、由加はさらに一歩踏み出した──が突然の浮遊感。
「何が・・・起きてるの?」
由加の問いは誰に届くわけでもなく世界の中へと消え去った。
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