はい、お久しぶりの投稿でございます。
もう夏休みなので、バンバン書いていきたいと思います。
読者数が3000人突破しました。
読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。
【第二部】十七話:激闘
神代刹那は高層ビルの屋上に立ち、一人座っていた。
正面には結晶が配置されておりそれと向き合い刹那は居る。
(──接続)
結晶と自分が繋がった感触。
そして刹那は結晶から力を少しずつ供給させると一つのイメージを頭の中に抱いた。
(俺達の世界・・・)
それは─彼ら兄弟が夢見た理想郷。
(クソッ・・・庄屋達の応答がねぇ・・・)
森羅は部隊の仲間達との連絡がつかない事に焦っていた。
「どうしました?」
森羅の表情をから何かを察したのか由加が問う。
「いや・・・仲間との連絡がつかないんでな。 このまま本部まで走るぞ」
「わかった」
そして更に速度を上げて走る二人。
(強いな・・・この子は)
森羅は由加を再評価した。
そして思う、自分がこの年の頃これだけの力を持っていればと。
(本当に欲しかった物は全て蒼威が持っていたな・・・)
信頼できる者、強大な力、それらを森羅と出会ったときに蒼威は全て持っていた。
もちろん嫉妬し、彼に襲い掛かって完膚なきまでに叩きのめされた。
(まぁ・・・いいか・・今は俺は強大な力を持っているから」
森羅の式神のランクは、各家の長のランクぐらいであった。
しかし、森羅はその力に溺れずひたすらに磨き上げた。
もう二度と、大切な者を手放さないために。
西区画にある本部へと二人が辿り着いた。
周囲を取り囲むのは神代の軍勢と数十体の悪鬼。
部下である白鷺兄弟の式神【不可侵】によって未だに建物が残っている事に森羅は安堵した。
「由加、切り込むぞ」
「はい」
由加は悪鬼を召還すると、斧を顕現させ術者たちに襲い掛かった。
(すげえな・・・)
由加の戦い方は一撃離脱。
一秒以上同じ場所に留まらずに、致命的な一撃を与え違う目標へと襲い掛かる。
森羅は由加の射程範囲に入ってない術者を圧縮した水で狙い、撃ち落としていった。
「ハァァァァァッ!」
由加の持っている斧が巨大化し、周囲をなぎ払うと戦闘は終了した。
それまで居た数十人の術者はそのほとんどが致命傷をくらって地面へとひれ伏している。
森羅はその行動に痛みを覚えつつ、ビルに向かって怒鳴った。
「庄屋! 俺だ! 負傷者はいるか?」
するとビルの窓が開いて部下の庄屋が顔を出した。
「り、陸曹長! 怪我人は一名、杉谷主任です」
「・・・わかった! 今すぐ全員で守りつつ病院へ搬送しろ!」
「陸曹長はどうなさるんですか?」
「由加と神璽を保護しつつ脱出する!」
「・・・了解! 御幸運を!」
それだけいうと窓が閉じられた。
森羅は由加の方へと向き直り、問う。
「さて、どうやって逃げるか?」
「・・・まぁ、まずはあの狂った男を倒さないといけませんね」
「? ────ああ、わかった」
由加の言葉の意味に気づいた森羅は式神を発動させ身構えた。
由加も腰を低く落とし、いつでも行動できるように備える。
───そして
「上っ!」
由加の声と共に二人は横に転がった。
二人が飛んだ数秒後に空から巨大な圧縮された風の玉が地面へと叩き付けられる。
「チッ・・・ハズシタカ・・・」
上空から姿を現したのは秋月狂。
「久しぶり、囚」
「テメェカ・・・ヒサシブリジャネーカ・・・」
「まぁね」
「ブッコロスッ!!」
風の刃や玉を無差別に放つ狂─囚。
森羅と由加は建物の陰に隠れて攻撃をやり過ごすと相談を始める。
「んだよ、あいつはぁ・・・」
「アレが秋月狂の第二人格囚です」
「結構厄介そうだな・・・相当キれてるぜ・・・ありゃぁ・・・」
「ですね、では前衛私、後衛森羅さんでお願いします」
「おう」
「では行きますよっ!」
森羅と由加は同時に飛び出した。
囚はそれに気づくと自分の周囲に風玉を配置し、両手には風で作られた不可視の刃を持つ。
由加の斧が中段辺りから囚へと迫る、が囚はそれを左手の刃で防ぎ、右腕を振り上げた。
「シネ」
囚の右腕の刃が由加の首筋へと迫った。
由加は斧に添えてあった左腕を放し爪と化すとその一撃を受け止める。
「甘いっ・・・よ」
拮抗しあう二人。
すると二人の周囲に水で出来た球体が出現した。
「撃ち抜けっ!」
森羅の号令と共に圧縮された水が囚めがけて放たれた。
しかし、収束した水は囚に当ることなく地面へと突き刺さるだけ。
─何時の間にか囚が消えている。
由加と森羅がそう思ったときには上空から降り注いだ風の刃達が由加の体を浅く切り裂いた。
苦悶の表情で由加は地面へと倒れた。
「なっ・・・」
意味がわからない。何故囚は突然消えたのか?
そんな疑問だけが残る。
「ヒャハハハハハハハ」
その時、空中から笑い声が響き、突然囚の姿が再び現れた。
それを見て由加は呟いた。
「光の屈折率を変えたのね・・・後は普通に緋眼を使うだけ・・・」
「セイカイ」
「流石ね・・・前回はこんな力使えなかったじゃない・・・」
「オレダッテセイチョウ・・・──!」
囚が突然中を高速で動き出した。
──次の瞬間、囚が居た場所に透明な何かが空間を貫いていく。
それは四方八方から囚を襲い、だんだんと追い詰めていく。
「どうよ? 俺の水伯は」
「クソガ・・・」
縦横無尽に空を舞い、水を避ける囚。
仕返しとばかりに風玉や刃を放つが森羅はそれらを全て避けてしまう。
「キョウ!! キョウッ! ドウチョウダッ!!」
激しく叫び森羅を睨む囚。
そして周囲に猛烈な風が吹き荒れ、風と風の摩擦で稲光も現れた時にソレは来た。
それは──闇を纏いし巨大な鬼の形をした悪鬼。
「ナ・・・ナンダコイツッ!?」
「な・・・」
その姿を見て森羅も絶句した。
囚は慌てて風玉を放つが全く効果は見られない。
巨大な悪鬼は体を斜めに構え、右腕を後ろに引くと腰を深く落とした。
「アアアアアアッ!! シネヨォッ!!!」
直径五メートルはありそうな圧縮された風玉を作り、囚は絶叫した。
──巨大な悪鬼の拳と風玉がぶつかり、拮抗しあう。
「────────!!」
「アアアアアアアアッ!!」
競り合いは数秒に満たない。
そして悪鬼の拳が徐々に風玉を押し返し始めた。
「────────!!」
悪鬼が声にならない雄叫びを上げ、拳を力いっぱい押し込んだ。
風玉が一気に加速し囚へと命中した。
「ギャアアアアアアアアアアッ」
甲高い悲鳴をあげ囚はそのまま吹き飛んでいった。
あらゆる建物を破壊し、突き抜け、ようやくどこかで止まった音がした。
戦況に見とれてしまった森羅は慌てて我を取り戻すと、悪鬼を見た。
「由加・・・?」
さっきまで由加が居た場所を見るがそこに姿は無い。
「───っ」
悪鬼の体が砕け散り、粒子と化すと大気に混ざって消え去る。
後に残ったのは膝を突きうなだれている由加の姿。
「おい、大丈夫かよ?」
「は、い・・・」
体から血を流し応える由加。
由加の着ていた浴衣は傷だらけであり、もうほとんど浴衣には見えなくなっていた。
森羅は由加の体に手を回し、優しく抱き起こした。
「どうも・・・」
「気にするな、歩けるか?」
「戦闘行動はまだ出来ます」
「・・・そうか、んじゃ俺の部隊に追いつくぞ」
「はい」
二人は歩き始めた。
森羅は道を歩きながら倒れた術者たちの物言わぬ姿を見つめる。
・・・正に地獄絵図だな。
心からの本心、しかしその考えを数秒後に打ち消すと森羅は再び前を向く。
(いつから・・・こんなになっちまったんだろうな)
この結界の外では、今も祭が盛大行われている事を思うと歯がゆい。
そして、全ての元凶である神代への怒りが募ってきた。
「どこ行くんだい? お二人さん」
──声が響く。
森羅と由加がとっさに振り返るとそこにはいつか資料で見た男の顔があった。
その男の名は、神代瞬。
「神代瞬・・・」
「よぉ、棗由加・・・そっちは何たら部隊の神埼森羅だよな?」
「そうだ」
「お前・・・お前らが! お前らが先生を・・・」
由加の殺意が爆発的に膨れ上がった。
しかし、そんな殺意を物ともせずに瞬は言い放つ。
「ああ、あのジジイか、最後までテメーらの事言わなくてよ。 めんどくせぇから殺した」
「・・・ふざけるなよ・・・痛ッ・・・」
由加が戦闘体制を取る、しかし傷が深いのかすぐに地面へと倒れこんでしまった。
ソレを見て森羅の心の中に何かが灯った。
(俺らがこの年代の頃は・・・)
思い出すのは楽しくて哀しかった記憶。
母さん、蒼威、陸人、灼也、夕、海里、あの頃の自分に関わった人達の顔が浮かんでは消えた。
自分は、全てを敵に回しても戦い抜ける力が欲しくて──
──苛められっ子・・・────俺をテメーらと一緒に────チクショウ───俺が本当に────
───俺は灼也、蒼威じゃないぜ──高遠君に神崎君、よろしくね────お前・・・ホント天然なのな───
─さて、チーム作るか───狂犬のジャンクドッグぐらいデケーのがいいな───母さん・・・うん、学校楽しいよ────
───単車欲しい単車欲しい!!──翡翠と紫電・・・───すまん、俺原付派───灼也が嫌いなんだ───
──南中の双子、安曇兄弟なんてよくね?────じゃあ森羅がリーダーだな───森羅、チーム名は?──
森羅の頭の中で自分が十代の頃の記憶が走馬灯のように回想された。
(コイツはまだ16だぞ・・・こんな目にあわせて言い訳がないっ!)
───チーム名はTEAR PAINにしようぜっ────
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