次回、お祭戦闘編突入。
神璽と由加を狙って動き出す死罪六神。
蒼二はその中である人物に呼び出される。
そして時を同じくして神代も動き出した。
再び出会ってしまう蒼二と遥緋。
蒼二は復讐と過去との間に揺れ
遥緋は大切なものを守るために戦う。
ぶつかり合う三勢力の中でついに彼の者が覚醒する時
世界は大きく動き出す。
それでは、真面目に単位が危ういので
またお会いしましょう。
【第二部】十三話:榛名神璽の決意
どこまでも続く青い空。
教室の窓からそんな風景を見ていると心が和む。
たとえ、周りがいかに騒々しくとも。
「でねでね、それでハルったらザけんじゃねーぞコラァ!とか言って暴れだしたのよ」
「志穂・・・お願いだからそれはもう忘れて・・・」
「ハルちゃんやっぱレディースだったんだね」
「遥緋、過剰な暴力はいけませんよ」
「いや・・・だからアレは私じゃなくてね・・・」
自分の周囲で女子四人組が仲良く談笑している。
しかもそのうちの二人は自分側の人間でもあった。
(まぁ・・・由加も楽しそうだしいいか・・・)
実際昔は由加はあまり笑わない子だったと記憶している。
しかも自分とは違い、ずっと厳しい戦いに身を投じてきたのだ。
神璽とは技量も、心も比べ物にならないぐらい強い。
(昔から・・・俺は由加に守られていたんだったっけ・・・)
遥緋達の輪に溶け込んでいる由加を見ながら神璽は軽い嫉妬と嬉しさを感じていた。
昔自分たちはいつも二人だったという思いと、楽しそうな由加を見ていると
こちらも楽しくなってしまうような感情、その二つがせめぎ合っていた。
すると教室の隅から視線を感じた。
「?」
神璽が振り向くと、クラスメイトがこちらへ来いと合図をしていた。
神璽は席を立ち、そちらへと向かった。
「どしたん?」
「榛名・・・あの人は誰だ?」
「ってーか! お前なんで千島と何時の間にか仲良くなってんだよ!」
「それに最近、女遊びも全くしなくなったしよぉ・・・」
正に怒涛の攻め、神璽は少したじろぐと、一つ一つに応えていく。
「アイツは由加、俺の血のつながらない家族のようなもんだ。
千島さんとは昔から結構話していたけど、由加のお陰で仲良くなった。
んで、女遊びは・・・・・・まぁ、由加が・・・じゃなかった!・・・飽きたからもうやめたの!」
「テメェ・・・」
「相変わらず一人で羨ましい状態をキープしやがって!」
「お前はクラスの男子全員の敵だ!」
クラスメイト達の雰囲気が剣呑になっていく。
神璽は軽く冷や汗を浮かべ逃げる準備を始めようとした。
その時。
「神璽」
何時の間にか由加が神璽の後ろに立っていた。
神璽はゆっくりと聞き返す。
「な、何だ?」
「明日、お祭がある」
「そうみたいだな」
「・・・・・・」
「・・・何だ? 行きたいのか?」
「うん」
「おー・・・俺も多分許可おりっから一緒に行こうぜ!」
「・・・うん! じゃあ明日ね」
それだけ言うと由加は教室を出て行く。
そして後ろからの猛烈な殺気に気づいた。
「はーるーなー・・・」
「殺すよね? 殺すよね? 殺すよねぇぇ!?」
「人前であんなヌルイ会話するなんていい度胸じゃねーか・・・」
眼がヤバイ、真剣にそう思った。
そして一歩後ずさりすると、全力で逃げ出し始めた。
放課後、何とかクラスメイトの追撃をかわした神璽はへとへとになって廊下を歩いていた。
カバンを片手に持ち、フラフラしながら帰り道を歩く。
「あー・・・疲れたぁ・・・」
制服のポケットから煙草を取り出し、一本吸う。
肺にゆっくりと煙を流し込み、神璽はようやく一息ついた。
(平和だなぁ・・・)
よくよく見ると、街のほうはすっかりお祭ムードとなっている。
平和な町だ、神璽は正直に思った。
数ヶ月前まで大阪に居たときは、毎日が退屈だったが妙に荒れていた。
そんな日々に比べるとここは天国のようだった。
(由加にも再会できたしな・・・)
もし、この町で由加に会わなかったら・・・と思う。
多分、由加や先生の事なんか忘れたまま毎日テキトーに生きて。
そして次の町へ行っていたのだろうと思う。
(俺は・・・もう由加と離れたくない、この世にいるたった一人の・・・)
ピロロロロロロロロロロロロロロ
携帯が鳴った。ポケットから取り出すと表示は神崎森羅とある。
無視するのも悪いので神璽は電話に出た。
「はい、何ですか?」
「暇か?」
「まぁ・・・これから家に帰りますけど・・・」
「んじゃ、今から言う場所に来い」
「はぁ・・・わかりました」
神璽が待ち合わせ場所に行くと私服にサングラスをかけた森羅がいた。
何やら妙に似合ってて貫禄がある風情である。
「ども」
「お、来たか・・・んじゃ行くぞ」
「どこいくんすか?」
「一つ言っておく」
「はい」
「これから俺はかつての親友の家に行く、んでお前はクラスメイトの家に行ったそれだけだ」
「はぁ?」
「それだけは忘れるな、全ては偶然だ」
「・・・わかりました」
そのまま黙って歩く事数分。
森羅が突然とある家の前で立ち止まった。
「ここだ」
「ここって・・・?」
表札を見てみる・・・そこに書いてある文字は千島。
神璽は嫌な予感がした。
「あの、森羅さん・・・」
「何だ?」
「あの女が知ったら確実にキれますよ」
「大丈夫だ、杉谷さんは現在出張中だからな」
「なるほどね・・・」
会話が終わると、森羅はドアをノックして中へと入る。
神璽もそれに続くと、中から一人の女性が出てきた。
「あらいらっしゃい、そちらが由加ちゃんのお友達?」
「は、榛名神璽です!」
「神璽君ね、私は千島遥、蒼二と遥緋の母親です。 娘がいつもお世話になってます」
「あ・・・いえ。 こちらこそお世話になってます」
何故か赤面してしまう神璽。
遥を見て神璽は思う・・・アレから遥緋が生まれてくるのはわかる。
しかし、どう考えても蒼二みたいなタイプが生まれてくるとは思えなかった。
「おい、行くぞ」
「あ、はい」
森羅に促され、神璽は靴を脱いで中へと入った。
廊下を通り抜け、居間へと行くと神璽達は最後のようであった。
神璽は由加の隣へと座り、周囲を見渡す。
知らない顔がいくつかあり困惑する神璽。
「さて・・・いきなり呼び出してすまなかったね」
正宗が喋りだす。
「いや・・・いいです」
「知らない顔もあるだろうから紹介しておこう、君の正面に居るのが八神時雨・・・僕の息子だ」
「よろしく」
正面に座っていた時雨が笑顔で言う。
神璽も軽く会釈で返した。
「それでその隣に居るのが、浅葱家当主の浅葱詩歌さんだ」
「よろしくお願いしますね」
詩歌も笑顔で神璽に言った。
神璽もようやく慣れてきたのか笑顔が出せた。
「・・・んで、その横に居るのが詩歌さんのペットのニワトリ、コケッコー君だ」
「喧嘩売ってんのかコラァ!!」
「ああ、失礼。 嘘はつけない性格なのでね・・・彼は浅葱陸人、異常・・・いや以上」
「クッ・・・いつかぶっ殺してやる・・・」
詩歌になだめられ怒りを収める陸人。
テーブルの上を介して凄まじい睨みあいが繰り広げられた。
(うわぁ・・・なんだよこの人達)
軽くひきつった顔で神璽は陸人を見た。
「さて、自己紹介も終わったので飯食おうぜ、飯」
「待て、説明が先だ」
蒼威の提案を一瞬で却下する正宗。
却下された蒼威はいじけた様に俯いてしまう。
(子供か・・・この人は・・・)
「単刀直入に言おう・・・平穏が崩れようとしている」
「おいロリコン! いきなり意味わからねーよ!」
陸人がヤジをいれた。
しかし正宗はすぐに取って返す。
「・・・すまない。 誰かニワトリ語を喋れる人はいるかね? 通訳してやって欲しいのだが・・・」
「・・・いやぁ、ロリコン語を辞めていただければ後はわかるんだけどなぁ・・・」
「ハハハ、そんな言語どこにあるというのかね!」
「ハハハ、ないとも限らねーだろ、ロリコン!」
正宗と陸人が同時に立ち上がった。
お互いを殺そうとするような視線をぶつけながら二人は対峙する。
「断絶」
突然の詩歌の呟きと共に虚空に黒い線が引かれ、陸人と時雨の姿が消えた。
詩歌の式神の能力によって二人を隔離したのである。
「ごめん時雨君、続けてくれるかな?」
「は、はい・・・」
笑顔で言う詩歌に軽く脅えながら時雨が説明を始めた。
「昨日、この町の監視カメラに一人の人物が映ってました
名前は・・・皆さん御存知の神代彼方。神代家の三男です」
「ああ、あいつか・・・」
蒼威が納得したように言う。
由加もどうやら知っているらしく軽く頷いた。
「二年前の御崎家の戦いの後から彼らはほとんど姿を消しています。
そして証言から死罪六神の二名を殺し結晶を奪ったとされます」
「二年前は我々の味方でした、だがアレも意図があってのことでしょう
あれから僕なりに神代の事を調べてましたが・・・相当な数の家を滅亡、あるいは取り込んでいました」
「神代・・・」
由加が憎々しげに言う。
神璽は少し気になって聞いてみた。
「由加、神代を知ってるのか?」
「・・・先生、神代に殺されたのよ」
「・・・・・・マジか」
神璽の中で沸々と怒りが湧いてきた。
初めての殺意、それも強大な殺意が自分を埋め尽くしていくのを感じる。
しかし由加が神璽の手のひらに手を置いた瞬間、全て弾けとんだ。
「落ち着いて」
「・・・ああ」
「・・・では、話を続けます。神代の狙いは多分、君達二人の結晶だよ」
時雨が神璽と由加を見ながら言った。
「わかってます」
「・・・・・・・・・」
「僕の考えとしては、神代に結晶を渡す気はありませんが蒼威さんはどうですか?」
「俺も無いな、まぁ奴らにも聞いてみたい事があるし・・・一度あう必要があるとは思う」
「遥緋は?」
「・・・何かよくないことが起こりそうなら、止めます」
「詩歌さんはどうですか?」
「ごめんなさい、浅葱は他の仕事に多忙で・・・でも陸人なら個人的に力を貸せます」
「わかりました、ご多忙中申し訳ないです」
そして最後に時雨はもう一度神璽と由加の方を向き、問う。
「棗由加、君が神代の所に行きたいというなら僕は止めない・・・君はどうしたい?」
「神代は先生を殺した、その時点で私にとってはもう敵です」
「そうか・・・じゃあ僕達についてきてくれるかい?」
「私は・・・遥緋を信用しています、だから遥緋とは共に居るつもりです」
「由加ちゃん・・・」
(由加・・・)
由加にも心を許せる人が出来た・・・それが神璽にはたまらなく嬉しい。
そして、時雨が再び神璽を見て問う。
「榛名神璽、君はどうしたい?」
「俺は・・・俺がやっと掴んだこの平穏を壊すなら・・・容赦しません」
「彼らは君を狙っているわけじゃない、君の体の中の結晶を狙っているのだよ?」
「じゃあ尚更です、先生がくれたこの力は・・・誰にも渡す気はないですから」
「そうか、わかったよ・・・森羅さんは勿論OKですよね?」
「ああ、仕事だからな」
「了解しました、では会議を終了しま「遥ちゃん晩御飯!!」
その言葉が言い終わるかのうちに蒼威は言った。
遥は台所から返事をすると、次々と料理を運んできた。
「あ、手伝います」
神璽が立ち上がり食器を受け取る。
「あらあら、すいませんねぇ〜ウチの娘なんか一歩も動きもしないで・・・全くお恥ずかしい」
「う・・・」
遥緋も慌てて立ち上がって手伝い始めた。
詩歌と時雨も台所へと向かって消えていった。
そして皆が忙しく動き回ってる中、森羅が蒼威にポツリと言った。
「お前の息子の中に・・・アイツが居たぞ」
「・・・やっぱりか」
「ああ・・・ってことは遥緋ちゃんの中にも・・・」
「灼也・・・ま、この話はまた今度な」
「ああ」
それっきり黙ってしまう森羅と蒼威。
神璽はそんな光景をこっそりと見ていた。
(何か色々あるみてーだな・・・)
自分は部外者なのかもしれない。
もしかしたら自分は平和で居れたのかも知れない。
でもこの平穏を失う事だけは許せない。
神璽はそう決意すると台所へと走った。
+注意+
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