ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  緋色の眼 作者:ジョン
はい、今回は短めですね。

次回、神璽と由加編が終わると
再び物語が動き出します。

もしかした第三部表記になるかも・・・

第二部の中心人物の神璽の活躍にご期待ください、
【第二部】十二話:神崎森羅の代償

 深夜、とある雑居ビルの一室には緊迫した空気が流れていた。
 原因は杉谷未来、彼女の不機嫌オーラが周囲に伝染しているのである。
 その状態に痺れを切らしそうになっている部下達を見つめ、神埼森羅は動いた。

「杉谷さん、そろそろ休憩されてはどうですか?」

「結構です、お構いなく」

 即答された。
 森羅は頭を一回掻くと部下達のほうを見る。
 後は任せた、みたいな視線が自分を襲った。

「・・・そんなに根を詰めるとバテますよ?」

「大丈夫です、それに仕事が終わったならどうぞ帰宅なさってください」

 未来のその言葉にその場にいた者達はこっそりどガッツポーズをした。

「んじゃ、お疲れ様でした〜」

「失礼します」

「ご苦労様です」

 それぞれが思い思いの挨拶をして部屋から出て行く。
 後に残ったのは森羅と未来だけとなった。 

「神崎陸曹長も仕事がないなら帰って結構ですよ」

「いや・・・まぁ、もう遅いので最後まで付き合いますよ」

「貴方がいても仕事は全く進まないのですが」

「というか、ぶっちゃけ仕事なんてないでしょう?」

「う・・・」

 図星であった。
 由加が千島に引き取られて以来、探索の必要がないのである。
 神璽は今までどおり、監視のみでいいので未来の仕事は激減していたのである。

「杉谷さん・・・何でそんなに肩肘張ってるんですか?」

「私達は、二人の子供を実験動物にしているんですよ
 それを忘れて息を抜く事なんて私には出来ません」

「なるほど・・・」

「貴方達、特殊部隊も同じです・・・」

「でも俺は後悔してませんよ・・・この世界に入ったからまた俺はあいつらと戦えるんだし・・・」

「・・・貴方は何を考えてるんですか? これから悪鬼と戦うんですよ?
 この平和な日本という国でほとんど死なない自衛隊の通常業務のほうがいいじゃないですか!」

「ふむ・・・」

「なんですか?」

「杉谷さん、俺が昔ドラッグ中毒だったって事知ってますよね?」

「はい」

「俺は誰よりも力が欲しくて、その方法の一つがドラッグでした。
 まぁ・・・そんな事もあってか俺は自分を鍛えなおしたくて自衛隊に入ったんですよね」

「・・・」

「それで強力な式神の力を得ました、だから別に・・・後悔ってモンはないっす
 他のメンバーも大体そうなんですよ、どいつもこいつも俺と同じような境遇の奴ばっかでね」

 自嘲気味に森羅は笑う。
 
「・・・わかりました、さっきの言葉は取り消しましょう」

「了解」

 そう言って二人は軽く笑いあった。
 そして・・・

「杉谷主任、神埼陸曹長、異常発生です」

「どうしました?」

「対象Sの自宅付近、式神使い8人を確認・・・神代一派かと思われます」

「了解、神埼陸曹長お願いします」

「了解。 お前ら準備は出来てるな?」

 無線機に向かって森羅は問う。

「完了っす」

「はい」

「YES」

「それぞれの持ち場へつけ、俺はそのまま急行する」









 夜の闇に紛れ、その男達は居た。
 全員が武装しており、それぞれの獲物を構えてアパートの前に立っている。

「結界展開」

 一人の男がそう呟くと光の膜が周囲を覆う。
 結界とは式神の種類の一つであり、その用途は色々と異なる。
 正に外とは完全に隔離された世界である。

「殺らなきゃ殺られる、わかってるな?」

 全員が無言で頷く。
 そしてその時、爆音が響き一台の黄色いバイクが結界内に突っ込んできた。
 車体には【紫電】と刻まれており、厳しい雰囲気が出ている。
 
「チッ・・・国の犬か!」

「──水伯」

 森羅が式神を発動させた。
 森羅の腕に透明な高速回転した球体が現れる。

「応戦しろ!」

 術者達が式神を発動させ、森羅を取り囲んだ。
 しかし、森羅の背後に回った二人は突然糸が切れたように倒れてしまう。

「ナイスだ、庄屋」

「ども」

「な・・・何が起きたんだ!?」

「わからねーなら寝てろ」

 森羅の腕にあった球体が投げつけられ、男に直撃する。
 高速回転した球体をくらい、男は口から鮮血を撒き散らした。

「クソッ!」

 正面に居た男が重厚な鎧を纏い森羅へと襲い掛かった。

「フン」

 森羅の正面に数個の水球が現れる。

「その程度の攻撃でこの鎧が破れるかぁ!」

「・・・ウォーターカッターって知ってるか?」

 男の言葉を無視して森羅は問う。
 しかし、答えが帰ってくる前に球体から圧縮された水が放出されて鎧を貫いた。

「ああ・・・もう少し早く聞けばよかったな」

 そう言い、周囲を見渡すと立っているのは森羅だけであった。

「いや・・・まだ居るか」

 背後を向くとアパートの屋上に誰かが立っていた。
 誰かに似ている面影、誰かに似ている雰囲気。
 そう確か・・・

「珍しい人が居たので挨拶に来ましたよ」

「お前が蒼威の息子の蒼二・・・いや、テメーはどっかで会った事があるな」

「おやおや、自分が殺されかかった相手の名前も覚えてないのですか?」

「煉・・・っ!」

「お久しぶりです、神埼森羅。 十六年ぶりでしょうかね?」

「テメエ・・・何で生きてやがる! お前はあの時灼也と消えたはずじゃ・・・」

 そう言いながらも森羅は庄屋に狙撃のサインを出した。
 しかし、いつまでたっても煉は倒れない。

「それが消えなかったのですよ、おっとあの怖い狙撃の式神は気絶してもらってますがね」

「チッ・・・相変わらず嫌な野郎だぜ。今日は何の用だ?」

「挨拶と警告ですよ」

「警告だぁ?」

「蒼威の知り合いだからって私と蒼二の邪魔をしたら命の保障はしないって事ですよ」

 森羅の中で久しぶりの怒りがこみ上げてきた。
 やはりコイツは好きになれない、そんな感傷と共に。

「面白ぇ・・・」

「ふふ・・・」

 不適に笑いあう森羅と煉。
 ──そして、

「やめなさいっ!」

 特大級の怒鳴り声が結界内に響き渡った。
 そして声を発したのは未来である。
 
「主任・・・」

「・・・・・・」

「貴方は死罪六神の方ですね、この事を秋月罪歌は知っているのですか?」

「いや、私の独断ですよ・・・蒼二も知りません」

「なら、今回は引いてくれますね? お互いのために」

「・・・面白い女性だ。 よろしい、今回は引きましょう」

「・・・次はこっちも容赦しねえからな・・・」

「その台詞そっくり返しますよ」

 再びにらみ合う、森羅と煉。 
 しかし今度は数秒にらみ合っただけで終わり、煉はそのまま結界の中から立ち去ってしまった。

「お疲れ様でした」

「いや、仕事ですから」

「神璽は寝てますね・・・全く図太い奴です」

「まぁ、最近は色々ありましたから・・・」

「そうですね、では帰りましょう」

「了解」


 頭が重い。
 体の疲労も限界に近づいている。
 それでも森羅はめげない、これが自分の望んだ力の代償だと思っているから。





+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。