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  緋色の眼 作者:ジョン
はい、次回は神璽と由加のお話か
森羅についてのお話です。
最近、軽くギャグ風味が続いていますが。
もうしばらくしたらシリアスモードになります。

遥緋、陸人、命、神璽、由加、森羅

のは短編とキャラ立てのような物と思ってください。
【第二部】十一話:天美命の幸福
 天美命は一人考えていた。
 たまに横に座って携帯を操作している蒼二をチラチラと見ながら思考を続ける。

(蒼ちゃんがおかしい・・・)

 そう思い始めたのは数日前。
 いつも全く携帯を触らない蒼二が何やらメールを打っている所を目撃したからだ。
 
(・・・・・・・)

 ためしに軽く視線を送ってみるが全く気がつかない。
 すると正面に座って一人、トランプタワーを作っていた剣菱が喋り始めた。

「どうしたのだ?」

「なんでもないよ・・・」

「そうか、我は少し外に出てくるが欲しい物はあるか?」

「うーん・・・アタシはないよ」
 
「蒼二は?」

「ん・・・俺も用事があるから途中まで一緒に行くわ」

(なにぃ!?)

 いつもの蒼二なら無い、と答える。
 命はそれを知っていたのでわざと行かないように返事をしたのである。

「そうか、では命・・・留守番頼んだぞ」

「・・・うん」

 落ち込みながら命はかろうじて返事をした。
 剣菱はいぶかしみながら出て行き、蒼二はついに携帯から眼を離さなかった。



「くぅ〜! 蒼ちゃんの馬鹿!」

 蒼二達が出て行って数分、命は奇声を上げた。

(う〜・・・気になる気になる気になる気になるぅ〜)

 しかし命は動けない。
 罪歌は情報収集に当っているし、剣菱と蒼二は出かけてしまった。
 狂は確か式神の修行をしてくると言っていた。

(ふふん・・・いい事思いついたぁ〜)

 考えがまとまると、命は言霊を発動させた。

『・・・居場所を教えて』

 そう念じ、感覚を研ぎ澄ますと狂の気配を掴んだ。
 そして更に命は言う。

『この気配の人をここに連れてきて』

 数瞬後、天井付近に歪みが出来てその中から狂が落ちてくる。
 狂はいきなりの事に受身をとれずにそのまま床にたたきつけられた。

「テメエ! 何しやがる!」

 怒りに顔を歪めて怒鳴る狂。
 すると命は笑顔で今日に近づくと、狂の額を触って言う。

「ごめんね・・・狂ちゃん・・・」

「チッ・・・何か用事か?」

「うん、『アタシが良いと言うまで狂ちゃんは動けない』って用事〜」

「ハ?・・・っておい!」

 動こうとするが全く動けない狂。
 命は素早く出かける支度を始めてドアを出る前に狂に向かって一言。

「良い子でお留守番してるんだよ〜」

「命ぉ! テメェは絶対ぶっ殺す!」

 狂の叫びを完璧に無視して命は町へと歩き去った。





 町は活気に包まれていた。
 町の至る場所には提灯がつる下げられており、そろそろお祭のような雰囲気。
 その中を命は歩いていく。

「『私の姿は誰に・・・』っとマズイ」

 自分の姿を消そうとして気づく。
 狂に対して一個言霊を使ってしまっているため、コレを使うと命はもう能力を使えない。
 命は用心深い。だから力を使うのを辞めて町をしばらく歩く。

(っと、探知探知)

 命はとある能力を持っていた。
 知っている相手の気配をある程度の距離までなら探知できる能力。
 その能力と言霊を組み合わせる事で凄まじい探知能力を彼女は有していた。
 
(・・・居た)

 剣菱と蒼二の気配を掴んだ。
 しかし、何故か二人は別々に歩いている。
 蒼二は北側へ、剣菱は南側へと。

(確か北側って・・・・・・駅ぐらいしかなかったよね?)

 そう考えている間にも蒼二の気配はどんどんと遠ざかっていく。
 そして命は腹を決めると走り出した。






 全速力で駅へと走ると、蒼二を見つけた。
 命はかなりの距離を開けて、蒼二をじっくりと観察する。
 蒼二は改札口で切符を買い、ホームへと歩く。

(どこにいくんだろ・・・?)

 命も一番遠い場所までの切符を買い電車へと乗り込む。
 そして隣の車両にて気配を探知しつつ命は座席へと座る。
 
(蒼ちゃん・・・)

 命にとって蒼二は王子様
 自分をあの監獄から救い出してくれた王子様。
 蒼二は命を死罪六神に入れるとすぐに特訓を開始した。

 毎日毎日、結晶から生まれた悪鬼相手に戦い方を覚えた。
 式神の使い方、刀やナイフの使い方、様々な事を教わった。
 修行している間の蒼二はずっと不機嫌で、命は期待に応えようと死ぬ気で修行をした。
 そしてある時、気づく。

(この人は私を見ていない・・・)

 彼の機嫌が悪い理由は悪鬼の存在。
 自分は全く気にされていない、ただの便利な道具。
 そう思ってしまった。

 そしてとある戦い、命の初陣の日。
 敵を殺すのにためらいはなかった、というよりも弱すぎて話にならなかった。
 しかし敵の中心人物との戦闘のとき、命は窮地に追い込まれた。

 殺される、そう思った瞬間にその相手は粉々に切り刻まれた。
 返り血が飛ぶが全て一瞬で凍りつき、結晶となって舞う。
 そこには息を荒らげた蒼二が悲痛な表情で立っている。

(おい・・・何で一人で進んだ)

(・・・・・・ごめんなさい)

(死んだら何にもならねぇだろ・・・馬鹿野郎)

(・・・・・・はい)

(・・・お前は、危なっかしい・・・だから俺が守ってやる)

(え?)

(・・・俺は誓ったんだ・・・もう絶対に大切なモノは無くさないってな・・・)

(・・・・・・)

(・・・だから、守ってやる)

(はい)

 大切、そう言われた。
 それだけで命の心は晴れ渡り、蒼二について行こうと心から思った。




「──っ」

 命は思考をやめた。
 蒼二が動いたからである。
 慌てて電車を降りると、蒼二はもう改札口付近に居た。

(はやっ)



 その後、蒼二は山道をずっと歩いた。
 命も数百メートルぐらいの間隔をとって蒼二の後を付ける。

(蒼ちゃん・・・本当にどこまで行くんだろう・・・)

 一時間ぐらい歩くと、蒼二の動きが止まった。
 そして命も周りの景色が変わっている事に気づく。

「ここ・・・何だろ? 自然っぽいけど人工的」

 以前は何か建物があった跡や、人が歩いていたような道がある。
 しかし大半は草や木に覆われており、よくよく見ないとわからないほどであった。

「ここは・・・何なんだろう?」

 考えても答えは出ない。
 仕方が無いので、命は蒼二のいる場所へと歩き出した。


 蒼二のいる場所は高台。
 そこからは、かつて蒼二が全てを憎んだ景色の二年後が広がっていた。
 森の先には街が見え、ネオンの明かりが煌びやかに光っている。
 命は気配を殺して数メートル後ろの木陰へと身を潜める。
 すると蒼二が喋りだした。


「朱音・・・俺はどうすればいい? 俺・・・もう一人は嫌だよ」

(・・・? 朱音って・・・ああ・・・罪ちゃんが言ってた・・・蒼ちゃんの大切な人)

「俺はお前との約束を守るために生きている・・・
 でも遥緋や時雨は俺のやり方を間違っているって言うんだ」


「確かに人を殺すってのに慣れちまった俺は最悪だと思うぜ・・・
 でも・・・俺はお前を殺した、世界、悪鬼、神代がどうしても許せねーんだ・・・」


「あいつらは悪だ・・・自分達の脅威となる子を監禁したり、事前に殺したりするんだ」


「前に話した天美命ってガキが居るだろ? アイツもその一人・・・俺を嫌わない所がお前に似てる」


「だから守るって決めた・・・もう二度と・・・俺はあんな思いはしたくないから・・・」


「お前が死んで、世界を怨んで・・・俺は沢山の罪を犯した」


「でも、欲しい物なんて手に入ってない・・・俺が・・・俺が本当に欲しかったのは」


「今もお前が隣に居て・・・皆・・・家族と一緒にいれる未来が欲しかった・・」


「お前と一緒に学校も通ってみたかった、クダラネーことで笑って、泣いて、そんな未来が・・・」


「でも・・・俺は約束は忘れてないぜ」


「いつか・・・いつか全ての悪鬼を殺したら・・・お前との約束を果たしたら・・・俺・・・俺もその時は死ぬよ」

 自嘲気味に言う蒼二。
 今まで黙って聞いていた命はいてもたってもいられなくなり叫んだ。

「駄目だよ!」

「命!?」

「蒼ちゃん駄目だよ! そんなの絶対駄目!」

「な・・・何でお前がここに居るんだよ!」

「ぁ・・・ついてきた」

「・・・そうか、んで全部聞いたのか?」

「うん」

 それだけ言うとしばらく二人は黙りあった。
 命にはその時間が永遠ほどに長く感じ、蒼二の言葉を待つ。

「・・・笑いたきゃ笑えよ」

「笑わないよ、とても大切な事だと思うから」

「・・・そうか」

「うん、きっと朱音さんも幸せだと思うよ」

「・・・・・・チッ、帰るぞ」

 そう言うと蒼二は踵を返して歩き出す。
 命も無言で頷くと蒼二に追いつこうとして走った。
 そして一緒に横を歩いてしばらく歩いていると蒼二はポツリと呟いた。

「ありがとよ・・・」

「うん・・・」

 命は笑顔で返した。








「命〜〜〜・・・待ってたぜぇ〜・・・アヒャ、ヒャヒャヒャ!」

 酒場へ帰ると狂が凶悪な笑顔で命を迎えた。

「あ、アハハハハ・・・狂ちゃん・・・怒ってる?」

「ああ、とーーっても怒ってるが?」

「狂ちゃん、あんま怒るとハゲるよ?」

「誰のせいかな〜?」

 狂は命の背後に回ってチョークスリーパーをかけた。
 完全に極まっており、命の顔が苦痛に歪む。

「ギブギブ! 狂ちゃんギブアップーッ!! 蒼ちゃんタスケテー!」

「ふざけろ、こっちは忙しいんだ」

 蒼二がカップ麺を物色しながら言い放った。

「酷い〜じゃあ剣ちゃんでいいから助けて!」

「拒否、我は忙しい」

 剣菱がトランプタワーを造りながら言った。

「ケケケケ、お楽しみはこれからだぜぇ〜」

 狂が笑いながら更に締め上げた。
 そしてその時だった。

「何・・・してるの?」

 ドアが開いて罪歌が現れる。
 そして狂の体が硬直し、命はやっと開放された。

「あ・・・いや、その・・・命がよぉ・・・」

「罪ちゃーん! 狂ちゃんがいきなり息を荒らげて襲い掛かってきたのー」

「狂・・・?」

「ち、違うよ! コイツが俺を酷い目に合わせて・・・剣菱! 蒼二! お前らも見てたよな?」

「我は寝る」

「俺も」

 狂が言うのと同時に蒼二と剣菱はそれぞれの荷物を持って撤収した。
 無論、巻き添えをくらわないために。

「あ・・・・・・・あいつらぁ! 裏切りやがったな!」

「裏切る?・・・狂、正直に言いなさい? お姉ちゃん男の事は結構わかってるつもりよ?」

「おいぃぃぃぃぃ命! 説明してやってくれ!」

「狂ちゃんがね、私の事怒ってるみたいでね・・・それでいきなり抱きつかれて・・・」

「いいのよ命・・・もう寝なさい。 狂にはキツーク言っておくから」

「うん・・・じゃあお休みなさい」

「はい、お休み」

 それを言うと命は罪歌から離れ、寝室へと向かう。
 布団へはいってしばらくすると狂の悲鳴が聞こえてくる。

「違うって! 誤解だって姉ちゃん!」

「誤解? じゃあ説明して? 何で命に抱きついていたの?」

「いや・・・だからお仕置きを・・・」

「お仕置きと強姦は違うのよ? 狂・・・そんなに女の子に飢えてたのね」

「飢えてねーっての!」

「お姉ちゃん気づいてあげられなかった・・・明日にでもHな本買ってきてあげるから」

「いらねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 そんな微笑ましいやり取りを聞きながら命は眠りについた。
 昔とは違う確かな幸せを感じながら。







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