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  緋色の眼 作者:ジョン
はい、数日振りの投稿です。

大学がちと忙しいので、
しばらく投稿が遅れそうです。


後、ファンタジー部門でランキング10位になりました。
皆さん本当にありがとうございます。
【第二部】六話:神璽と由加


「神崎陸曹長、準備はよろしいですか?」

 未来が森羅に告げた。
 今、彼らが居る場所は神璽を観察するための本部のオフィスビルである。
 
「はい」

 そう返事をすると、森羅は部下の方を向いて作戦の説明を始めた。
 
「俺は対象SとYと戦闘をする、白鷺兄弟は周囲の監視と封鎖。
 庄屋は遠くから狙撃体制で待機、合図でいつでも撃てるようにしておけ」

「了解」

「YES」

「了解」

 淡々と語って外へ出ていった四人を見ながら未来は思った。
 確かにこの部隊は実力が秀ですぎていて、他の隊から敬遠されていた者達を
 式神使いとして使用してみると言う実験も兼ねた部隊のはずだ。

(何で・・・こんなに冷静で居られるのよ)

 ほぼ実験動物だということは彼らも分かっているのだろう。
 しかし、この落ち着きぶりは異常である。
 しかも彼らにとってこれは初めての実戦なのだ。

(特に神埼陸曹長が異質だわ・・・)

 ふと、起動してあったPCを見て彼女は思った。
 彼は・・・どんな経歴を送ってきた人物なのだろうか。
 そして未来はパソコンを操作し、個人情報の欄へとアクセスして、森羅の事を調べ始めた。
 事前にこの部隊の全員の経歴は全て調べてあった、ただ今まで興味がなかったのである。


 神埼森羅:階級、陸曹長

 幼少時に父親が蒸発、その後母が再婚し新たな家庭を築くが二年で崩壊。
 原因は教育委員会所属の父親と神埼陸曹長の問題行動の確執によるもの。
 その後、高遠陸人、千島蒼威と共に、TEARPAINという少年ギャング団を設立。
 数々の問題行動を起こし、その後母親が病のため亡くなり叔父から保護を受けて生活。
 高校卒業後、陸上自衛隊に入隊。


(何故・・・この資料に一般人の名前が載っているの?)

 未来はこの異常な資料の名前を再検索した。


 高遠陸人:現浅葱陸人
 
 高校卒業後に、浅葱家の婿養子に入る。
 現在、当主の浅葱詩歌の補佐的な役割と浅葱家最強の式神使いとして名高い。
 式神名【爆轟】

 
 千島蒼威 

 没落した緋眼の一族、千島家の長男。
 彼の代から八神家と交流が始まり、現存する式神使いの中では最強の部類に入る。
 双子の息子と娘がおり、両方とも緋眼使いで更に式神使い。
 息子は現在死罪六神第三位─断罪。
 式神名【大我】



「な・・・何よこれ・・・この世界の有名人と幼馴染ってわけ!?」


 嫌な予感がした。
 そして未来はドアを開けると多急ぎで現場へと走る。


 







 神璽と由加は走っていた。
 そして・・・人通りが全く無くなっていることに気づき、立ち止まる。

「囲まれたわね」

「ああ・・・」

 するとビルの陰から一人の男が現れた。
 長身で、華奢だが無駄な贅肉のない体つき、鋭い眼。
 
「特別編成部隊所属、神埼森羅陸曹長だ。君らを拘束する」

「敵は一人、いや狙撃兵がもう一人・・・神璽、行くわよ」

「お、おう」

 由加に言われて神璽は遠くにある式神の気配にやっと気づいた。
 やはり、平和ボケしてた自分と由加は違うとも思った。

「任務開始」

 懐から暴徒鎮圧用のゴムボール銃と特殊警防を取り出し、構える。

「来るわ!」

 由加の両腕が変質し、巨大な爪となり走り出した。
 神璽も慌てて、虚空から剣を取り出して森羅へと向かう。


 凄まじい速さで森羅へ迫る由加と神璽。
 由加の巨大な爪が、森羅の体へと迫ると森羅も動き出した。
 前方に転がり爪を避けると、神璽に向かって弾丸を数発撃つ。

「ハッ! んなモンに当るかよぉ─死にやが・・・」

 神璽は余裕の表情で避けた。
 しかし、次の瞬間、背中に痛みが走った。

「痛っ・・・」

「どうだい? ウチの狙撃手の式神は」

 森羅が笑いながら言う。

「神璽!」

 慌てた由加が方向を変えて森羅へと迫った。
 すると森羅はまたも笑う。

「やはり、冷静さを欠くか」

「うるさい!」

 由加の爪が森羅へと襲い掛かるが、その爪は寸前で静止した。
 まるで、見えない壁に阻まれたかのように動かない。

「ウチの部下の式神さ」  
 
「クッ・・・神璽!」

「おう」

 由加は一度後ろへ跳躍すると、神璽と並んだ。
 そして二人は集中し、視界の中に映る”悪意”を探った。 
 その悪意へと向かって自分達の根源から力をそこに向かって放出する。
 すると周囲一体に数十体の悪鬼が生まれた。

「あ・・・これはちょっとやばいかも」

 森羅が呻く。
 そしてジリジリと迫ってくる悪鬼を見渡す。

(式神・・・使うかな、でも手の内はあまり知られたくないし)


「おー森羅、苦戦してるみたいじゃん」

「まぁ、公僕にしてはよくやったよ」


 頭上から声が響き、二人の人間が降り立った。
 それと同時に、十本の剣が天から降り注ぎ悪鬼たちを切り裂く。
 
「蒼威! それに正宗!」

「君と会うのは14年ぶりかね? そこのアホとウチに殴りこんできた時以来かな」

 正宗が二神風雷で悪鬼を切り裂きながら森羅に言う。
 対する森羅も蹴りで悪鬼の頭部を砕きながら言った。

「そうかもな、あん時は迷惑をかけたかな?」

「ハハハ、ウチの使用人十数名負傷に器物破損、訴えようかと思ったよ」

「・・・ちょっと笑えない」

「まぁいいさ・・・大切な事を気づかせてもらえたからね!」

 正宗が気合と共に刀を振り回す。
 左の風を纏った剣と、右の雷を纏った剣の力が残った悪鬼たちを消滅させた。
 正宗は刀をしまうと呆然として動けない神璽と由加に言い放った。

「さて、君らが結晶保持者だね?」

「・・・」

「・・・」

「そんなに睨まないでくれ、僕達は君に危害を加える気はない」

「信用できるか!」

「私を散々追い回したくせに・・・」

「ああ、では謝罪しよう・・・すまなかった」

「・・・」

「・・・」

「僕達の保護下に入らないか?」

「・・・条件はなんだよ」

「神璽!?」

「特にないね・・・あるとすれば他勢力だけにはいかないでくれかな」

「俺はどうなってもいい・・・ただ由加には普通の・・・俺がしてた生活をさせてやってくれ」

「わかった、約束しよう」

 正宗は頷く。
 神璽と由加は一度視線を合わせると体を元に戻す。
 そして・・・

「そんな事はさせません!」

 未来の声が響き渡った。
 スーツと髪は乱れ、息を弾ませている。

「神璽と由加は我々の管轄です! 一般人が口を挟まないで頂きたい」

「杉谷さん・・・」

「神崎陸曹長!! 貴方も何をやっているんですか! 昔の知り合いだからって甘い顔して」

「いや・・・その・・・」

 未来が森羅の襟首を締め上げながら詰め寄る。
 すると蒼威と正宗が大声で言い始める。

「おお、森羅お熱いですな〜ヒューヒュー!」

「君らは見ちゃ駄目だよ、ほらほら子供はあっちを向いてなさい」

 神璽と由加の視界を覆い隠す正宗。
 すると未来は真っ赤な顔で二人へ怒鳴る。

「何言ってるんですか! 大体、何故貴方達緋眼の一族がこの件に絡むんですか!」

「ああ、それはだね・・・神代が何か企んでいるからさ」

「神代・・・それは我々も調査しています、だからこの件からは・・・」

「手を引けってか? それは無理だぜ」

 それまで黙っていた蒼威が口を開いた。

「・・・何故ですか?」

「俺達は多くの犠牲を払って神代の企みを掴んだんだ、今更立ち止まれるかよ」

「・・・・・・・」

「ってかアンタら・・・俺ら一族に喧嘩売る気? 何なら今でも買ってやるぜ」

 殺意を撒き散らし未来を脅す蒼威。
 その威圧感に押され、未来は一歩下がってしまう。

「・・・少しお待ちを」

 それだけ言うと未来は携帯を取り出して少し離れた場所へと歩いた。
 相手に電話をかけ、数分ばかり話すとこちらへ戻ってくる。

「神璽か由加、どちらか一方をお渡しします」

「俺は今まで通り監視生活でいい、だから由加の事をお願いします」

「神璽・・・」

「俺はもう十分楽しんだ・・・今度はお前が楽しむ番だよ」

 由加の肩を押し、蒼威達のほうへ押しやると、神璽は森羅の横へ並んだ。
 由加はしぶしぶといった感じで蒼威の横へと立つ。

「預けるに当って条件があります」

「ほぉ」

「常に腕の立つ術者一人を傍に置き、なるべく一人にしないで頂きたい」

「了解、適任が一人居る」

「後は、結晶が二つあると言う事は悪鬼の発生確率も高いです、貴方方に駆除をお願いします」

「わかった」

「では・・・行きますよ、神崎陸曹長、神璽」

 未来はそれだけ言うと踵を返して歩き去った。
 そして去る直前、森羅が蒼威に向かって言う。

「ってことだ、また今度飲み会でもやろうぜ」

「おう、またな」

 蒼威も手を振って答えた。
 そして辺り一体の封鎖が解かれ、正宗が話題を切り出した。

「で、この子は八神と千島どっちで預かる?」

「ウチでいいだろ、ついでに時雨もしばらく預かってやるわ」

「それは助かる、最近反抗期なのか段々と生意気になってきてね」

「ハハハ、ウチの息子なんか敵だぜ、時雨はまだマシだってーの」

「そうか・・・蒼二の事も調べておこう・・・じゃあ僕は仕事があるからこれで」

 正宗はそれだけ言うと歩き去った。
 そして蒼威は由加の方を向くと、笑顔で言う。

「んじゃ、ウチ行くか」

「・・・はい」












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