えっと、次回で一応戦い編は終わりです。
後、私信ですが
深名さん、メッセージのお返事しておきました。
ちゃんと届きましたでしょうか?
【第二部】五話:蒼二と遥緋
蒼二と命は八神の術者を適当にあしらいながら進む。
自分達が結界へ追い詰められている事は、無論承知している。
「ここの家の人達いい腕してるね、他に選択肢が思いつかないよ」
命が蒼二に問いかける。
「術者の腕も良いが、指揮が適切なんだ、だから無駄なくどんどん追い込まれる」
「へー・・・ってか蒼ちゃんが人を褒めるなんて珍しいね」
「敵の大将は・・・俺の師匠だからな」
いつもと変わらぬ口調、いつもと変わらぬ表情。
しかし、命には何故か蒼二が笑っているように見えた。
「っと、あそこだね! ──私には羽があるっ!」
正面にそびえる建設途中の巨大なビルを見ながら命は言う。
そこには巨大な結界が張られており、世界から完全に隔離されている。
そして彼女の式神【言霊】が発動し、命の背中に純白の羽根が広がった。
「蒼ちゃん掴まって」
「おう」
差し出されたた手を掴むと命は一気に飛翔した。
そのまま一気に屋上まで飛び上がろうとするが、屋上にはもう人影。
「チッ・・・遥緋か」
蒼二が苦々しく言う。
すると遥緋は屋上から両手一杯の何かの欠片を放り投げた。
次の瞬間それらの欠片が次々と形を取り戻し、日本刀となって空中に静止した。
「マズイッ!」
そして蒼二と命へ向かって凄まじい速度で落下してきた。
「あんな刀弾き飛ばしてやる!」
「待て! 選択肢は最後までとっておけ・・・・・・紅雪っ!」
蒼二が虚空から日本刀を引き抜き、前方へと向ける。
一瞬にして巨大な氷の壁が形成され、日本刀がその表面へ突き刺さっていく。
「よし! 屋上だ」
日本刀達は氷の壁を貫けなかった。
そして無事に屋上以上の高さまで飛翔した蒼二と命は攻撃をしかけようとする。
「蒼ちゃん危ない!」
命の声に反応した時には、鎖が蒼二の両手首に絡みつき引き寄せられていた。
鎖は八神の二人の術者が操作しており、蒼二はそのまま給水タンクへと叩きつけられる。
「グッ・・・」
給水タンクから漏れる水を浴びて何とか意識が保たれる。
そして、ダークスーツを着込んだ時雨と遥緋が蒼二の前に立った。
「久しぶりだな・・・馬鹿蒼二」
「・・・・・・・」
そっぽをむく蒼二。
そんな蒼二の姿に腹を立てるわけでもなく時雨は淡々と続ける。
「お前は、何がしたいんだ? 死罪六神に入って沢山の人を殺し、お前は何を得たいんだ?」
「悪鬼を殺す、ただそれだけだ。んで、あいつらは邪魔だから殺した」
嫌味っぽく笑う蒼二。
すると遥緋が一歩前に出て、蒼二を見つめる。
「何だよ、人殺し」
冷たく言い放つ蒼二。
そして遥緋は思いっきりグーで蒼二を殴った。
「・・・最低だよ」
「蒼ちゃん!?」
殴り倒された蒼二はゆっくりと起き上がると遥緋を睨みながら言う。
「テメーにいわれたくねーよ・・・それだけの力を持ちながら・・・
どうして・・・どうしてアイツを助けてやれなかったんだよ! 何で見捨てた!」
「見捨ててなんか居ないよ! 私はアレで大丈夫だと思って・・・」
「フン、テメーの甘い性格がアイツを殺したんだよ!」
「ッ・・・」
黙りあう二人、すると時雨が呆れたように言い放った。
「それで、どうする蒼二? このまま大人しく捕まるか? まだ抵抗するなら俺はお前を殺す」
本気の殺意を込めて言い放つ。
そして・・・
「クッ・・・クククククッ・・・アハハハハハハハハハハハ!」
面白そうに笑う蒼二。
「何がおかしい」
「いやいや、人が少し手加減してやりゃ随分調子乗ってくれちゃって、と思ってな」
「この状況でお前に何ができる?」
「テメーらを皆殺しにしてやるよ」
その言葉を発すると蒼二は時雨に蹴りを放ち、吹き飛ばした。
(悲煉・・・行くぞ)
(・・・了解)
頭の中に蘇るのは狂に教わった本当の式神の使い方。
─いいか? 俺らみたいな多重人格の式神使いは本来の力の半分しかだせねーんだ─
(俺はまだ、死ぬわけにはいかない)
(私はまだ、消えるわけにはいかない)
─召還した時の事を思い出せ、お前らは二人で自分の中心を探ったろ?─
(俺はまだ、約束を果たしていない)
(私はまだ、誓いを果たしてはない)
─そう、多重人格の式神使いの式神はその時点で半分に分かれちまうんだよ─
(こいつらは邪魔だ、排除したい)
(私の目的を邪魔されるわけにはいかない)
─じゃあどうするかって? 二つの人格が両方出てくればいいだけの話じゃねーか─
(だから、力を貸してくれ・・・悲煉)
(蒼二、私に力を)
─俺達はそれを同調って呼んでるんだ、ま、やってみな─
蒼二の周囲に冷気が立ち込めた。
そしてその両手に握られているのは、日本刀だった紅雪ではない。
二本の黒い禍々しい形状の細いチェーンソー。
「これが・・・俺達の本当の式神、【修羅雪】だ」
高速回転する鋭利な刃。
それを軽く振って蒼二は自分を束縛していた鎖を断ち切った。
鎖を操っていた二人の術者は一瞬痙攣すると地面へと倒れこむ。
「ハハハハハハハハハハッ! 死ねぇ!」
二本の修羅雪が怪しく光を発すると蒼二の周囲一体から氷柱が放たれる。
時雨と遥緋はそれぞれの式神を発生させ、何とか防いだが、数人の術者には氷柱が突き刺さった。
「ガハッ・・・え?・・・ギャアアアアアアアアア」
氷が突き刺さった部分からどんどん血液が凍り付いていく。
「酷い・・・」
慌てて遥緋が輪廻転生を発動させて、氷を分解してやる。
術者はしなし呻いた後、大丈夫ですと呟くと戦線から後退した。
そしてその時、街の中心区から凄まじい悪鬼の気配が膨れ上がった。
闇が咆哮したようなそんな気配。不思議と嫌な感じはしない。
「この気配・・・悪鬼? いや、これは何か違う」
「・・・棗 由加・・・じゃないな。 誰だこれは?
・・・よし、お前らはそっちを調べてくれ、ここは俺と遥緋が引き受ける」
時雨が指示を出すと、八神術者達は一斉に引いた。
誰もが蒼二のおぞましい力に脅え、戦意を失っていたのは時雨にはよくわかっている。
自分だって・・・とまで思い、時雨は思いを断ち切る。
「おい、命・・・こいつら五分で片付けてアイツのトコ行くぞ」
「うん!」
「遥緋はテメーに任せた、俺は時雨をやる」
「任せて〜! こんな女ブチ殺してやるから」
修羅雪を構える蒼二、緋眼を発動させ、前方の時雨を睨む。
時雨もまた、腰刀を引き抜き、緋眼を発動させ腰を低く落とす。
「──ッ!」
二人は同時に動いた。
高速回転する修羅雪の刃を時雨は巧みにいなし、時には強くぶつける。
火花が飛びちり目にもとまらぬ速さで切りあう二人、そして時雨の時雨の刀にヒビが入った。
(コイツ・・・式神だけじゃなく剣術も比べ物にならないほど上達している)
(時雨の野郎・・・追い越したと思ったらまた強くなってやがる)
時雨は腰からもう一本の刀を引き抜くと重場を発動させた。
蒼二も牽制として、何発か氷柱を放つが、全てあらぬ方向へ飛ばされてしまう。
「フン」
蒼二は一本の修羅雪を地面へと突き刺し、残りの一本を持って時雨に迫る。
時雨は蒼二に対して、通常の五倍の重力をかけた。
一瞬蒼二の動きが止まり、時雨は蒼二に向かって迫る。
「バーカ」
地面に立てた修羅雪が怪しく光り、タンクから漏れた水が氷柱となって時雨に迫る。
時雨は、落ち着いて向かってくる氷柱の向きに対して重力ののかかる方向を逆に変えた。
かけられた重力と氷柱が拮抗仕合い、氷が砕けた。
「まだまだ、だな」
時雨が蒼二に迫る。
「仕方ねえ・・・これはあんま使いたくねーんだが・・・─終式」
時雨の視界から一瞬蒼二が消えた。
慌てて周囲を見渡すと、後ろから声がかかった。
「ここだぜ」
顔殴られ、時雨は吹き飛ぶ。
そして蒼二の手に在った二本の修羅雪が閃き、時雨の体を正面から十字に切り裂いた。
「グァッ・・・」
地面に崩れ落ちると、氷が自分の体を覆い始め身動きが取れない。
そんな時雨を見下ろして蒼二は笑いながら言う。
「育てて貰ったから殺さないでやる、しかし次に俺の邪魔をしたら今度こそ容赦はしないからな」
「ま・・・待て・・・蒼二・・・」
時雨を無視して蒼二は怒鳴った。
「おい命! こっちは片付いたぞ!」
「何よ・・・この女何よぉ!」
さっきから命の攻撃は全て遥緋に防がれていた。
コンクリートを投げつければ、触れた瞬間に粉々に砕かれ、
ナイフを持って接近すれば凄まじい速さによって、避けられてしまう。
「貴女の力、大体理解したわ」
淡々と語りながら迫る遥緋。
「言葉を現実にさせる力みたいね、発動にはいくつかの条件が必要みたいだけど」
「!?」
この一瞬で、ここまで力の事を見抜かれたのは初めてだった。
命は動揺を何とか抑えると、次の一手を考える。
(触れれば・・・触れられれば一瞬でどうにでもなるのに・・・)
命の能力のルールは大まかに分けて二つ。
一つ、言葉を現実にさせる媒体に触れてなければならない。
二つ、一度に現実にさせれれる言葉は二つまで。
「うー!! 石よ、あの女を閉じ込めて!」
屋上のコンクリートが形を変えて、遥緋を閉じ込める牢屋となる、が
遥緋は壁に気にせず止まらずに進んだ・・・そして壁は一瞬で粉々になって砕けてしまう。
「風よ! あの女を切り裂け!」
周囲の大気がカマイタチとなって遥緋に襲い掛かる。
すると、遥緋の目が一瞬赤く染まり、カマイタチは全て避けられてしまった。
「うっ・・・」
完全に手詰まり、そして遥緋はそのままの速さで命に接近し、命の頭を掴んだ。
(やった! 自分から触ってくれた!)
会心の笑みを浮かべ、命は言葉を紡ごうとする。
「アンタなんか・・・」
「ごめんね・・・」
遥緋の言葉と共に、命の体から先決が噴出した。
輪廻転生は再生と分解の力、遥緋はその再生の力で命が今までに受けた傷を再生したのだ。
「痛い・・・痛いよぉ・・・」
涙を流して痛がる命。
すると蒼二がこちらへ向かって歩いてくるのが見えた。
「やはり命じゃ遥緋とは相性が悪いか・・・」
「蒼ちゃん、ごめんね・・・私・・・私・・・」
「仕方ねーよ、コイツには俺でも勝てるかどうかわからん・・・」
蒼二は命見ながら言い放つ。
すると遥緋は、命に手をかざして再生された傷を再び治した。
「相変わらず、わが妹ながら甘ちゃんだな」
「・・・なんとでも言えば、私はなんと言われても私の道を貫くだけだから」
遥緋の言葉に一瞬面食らったような顔をした蒼二はやがて薄く笑いながら言った。
「へぇ・・・あのウジウジした性格は治った見てーじゃん」
「それはどうも」
「んで、ここで俺と殺しあうか? そしたら俺も死ぬが確実に時雨も死ぬぜ」
「・・・今回は、これでお終いにするわ」
「そうか」
命を立たせてやり、蒼二は踵を返した。
そして、最後に遥緋に向かって言い放つ。
「俺はテメーらと分かり合おうとは思わねぇ・・・俺は俺の道を行く、止めたきゃ俺を倒して見せろ」
「最初からそのつもりだよ」
命が翼を展開して飛び去った。
その後姿を見送った後、遥緋は時雨の元に駆け寄って傷を再生し始めた。
「面目ないな・・・師匠が弟子に負けるなんてね・・・」
「・・・次、頑張ろうよ」
遥緋は明後日の方向を見ながら言う。
多分・・・時雨は泣いているのだと思ったからの行動であった。
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