はい、今回で新キャラが出終わりました。
これからの展開はしばらく戦闘して
日常や二年間の事を書いたりしていく予定です。
【第二部】四話:棗 由加
少女は歩く。
もっとも会いたい人の気配が段々と濃くなってきた。
そろそろ彼と会えるかもしれないと思いながら彼女はひたすら歩く。
彼女は手にボロボロになった本を一冊持っている。
それは・・・日記であった。
四月九日
私は悪鬼の結晶を手に入れた。
この二つの結晶は絶対に神代にだけは渡してはならない。
なぜなら彼らは・・・
四月十一日
隠し場所が決まらない。
どこへ隠しても悪鬼が存在してしまうため大まかな場所がつかめてしまうのである。
そこで一つ考えた、人間の中に結晶を設置してみはどうだろう。
もしかしたら、悪鬼の力を手に入れられるかもしれない。
やってみる価値はある、被験者は施設から貰ってきた二人の少年と少女。
この二人にはまだ名前をつけていない。さて・・・どうしたものか。
六月二日
移植手術は無事に終わった。
二人の子供は元気に外で無邪気に遊んでいる。
いかん、何やら愛着が湧いてきた・・・科学者失格だな。
六月四日
二人の名前を決めた、男が神璽、女が由加。
名前の意味は、二つとも器を意味する。
二人は順調に育っている・・・しかし悪鬼が出現するばかりで力は手に入れられていない。
七月十九日
由加が力の片鱗を見せた。
どうやら自分の意思でも悪鬼を召還できるらしい。
それに加えて体の一部分を悪鬼化できるようである。
九月四日
国に私の研究が悟られた。
しかし、話をしにきた人物は悪人には見えない。
いつか神代にここもバレてしまうだろう・・・彼らに預けるか否か。
九月二十日
神璽と由加を預ける事にした。
ここにいては、あの子達にも危険が及ぶ。
去り際に神璽と由加が言った言葉を私は忘れない。
「ありがとう」
か・・・礼を言うのは私のほうだよ。君達と暮らせてよかった。
十二月二十四日
これが私の最後の日記となりそうだ。
外は神代と悪鬼の軍勢に囲まれている。
私の研究成果をあいつらになど渡す気はない。
この日記も・・・いや、これは燃やすのは辞めてあそこに隠そう。
神璽と由加、もし君達がこれを見ていた時のために残しておく。
君達には本当に済まない事をしたと思う、だが私は君達を愛していた。
私が最後に人の温かさを取り戻せたのは君達のおかげだ、ありがとう。
本を閉じ、彼女は歩くスピードを上げる。
そして、その瞳からは大粒の涙が零れていた。
土曜の昼、榛名神璽は街のベンチに座ってハンバーガーを食べていた。
基本的に料理を作る気はないので、いつもこのような食事なのだ。
そして神璽は考えていた。
(・・・俺は、何かを忘れてはいないか?)
神璽には中学生以前の記憶がない。
気がついたときには、あの場所に居てこの力に対する訓練を受けていた。
(ガキの頃、何かがあった気がする・・・とても大切な約束が)
自分は一人じゃなかった。
自分はいつも誰かと一緒に居た。
そんな思いが蘇えるが、そこまでしか思い出せない。
「だぁーっ! チクショウ!」
大声を張り上げて、ゴミを捨てると神璽は立ち上がって雑踏へと消えた。
高層マンションの屋上にの男が居る。
彼は双眼鏡で下を見下ろし、逐一無線機でその状況を連絡しあっていた。
「Sが移動、中心地区へと向かっている模様・・・周辺の建物に異常無し」
「了解、地上からも尾行を続ける」
男は報告を終えると、機材を回収し移動をしようと立ち上がる。
すると突然頭部を鈍い痛みが襲った。
「貴様等に聞きたい事がある」
殴られた部分をさすりながら男が声のした方を向くと・・・
「お前は・・・真砂剣菱!」
資料で見たことがある死罪六神でも古株の男。
緋眼使いである事からも最も要注意な人物の一人であった。
男は慌てて無線機を掴むが・・・
「動くな」
天照が放たれ、無線機は破壊されてしまった。
そして剣菱は問う。
「貴様らの監視しているあの男は何なんだ?」
「・・・・・・・」
剣菱は天照を男の右腕に放った。
「ぎゃあああああっ」
肉の焼ける臭いがして、男は痛みに転げまわる。
それを見ながら剣菱はもう一回問う。
「あの男は何なんだ? と、聞いている」
「し、知らねえよ! 俺達はただ雇われてアイツを監視しているだけだから!」
「本当か?」
もう一発、今度は左腕に放つ。
男はまたも悲鳴を上げ、転げまわる。
「本当だ・・・痛ぇ・・・痛ぇ・・・」
「では・・・貴様らの後ろについている組織の事はわかるか?」
「・・・国の機関だって事しかしらねえよ・・・」
「なるほどな・・・もう死んでいいぞ」
「え?」
天照が男の体に降り注ぎ、男は跡形も無く燃え尽きる。
剣菱はそれを一瞬見つめた後、屋上を後にした。
「監視員の一人が消息不明?」
部下から報告を受け女が顔色を変えた。
女の名前は、杉谷未来─神璽の担当者である。
「はい、監視場所へ行ってみたら壊れた無線機と死体が焼かれた痕跡が」
部下が現場の写真をさし出した。
未来はその写真を見て一つの確信を得る。
「真砂剣菱・・・」
「私もそう思います・・・厄介な事になりましたね」
「死罪六神が二人もこの町に・・・四日以内に神璽を移動させましょう」
「すぐに手配致します」
未来も急いで上司と連絡をとろうとした、その時一人の監視員の報告が鳴り響く。
「杉谷主任! この画像を・・・」
自分のPCに表示された画像を見て、未来は凍りついた。
それは数十分前の監視カメラの映像、そこに映っていたのは・・・
「棗 由加・・・急いで神璽を確保しなさい! そして神崎陸曹長達も待機させておいて!」
夜、街の裏路地で退屈しのぎに座っていると、突然胸が熱くなった。
鼓動が高鳴り、体中の血液が沸騰するような感じ。
熱い熱い熱いアツイアツイアツイ・・・アイツガココニイル・・・
「んだよ・・・これ・・・」
壁に手をつき、神璽は唸る。
昔にもこんな事があった気がする、そんな思いがどんどんあふれ出てきた。
アイツガアイツガチカクニイル・・・アイツガ・・・イル
大切な人だった気がする。
自分は孤独じゃない、一人ぼっちじゃない、そう思わせてくれた人。
アワナキャ・・・モウイチドアイツニアワナキャ
アイツが居たから今の自分がある。
アイツが居たから俺は今、自由を満喫できている。
アイツノナマエハ─
そこまで思い出しかけたところで、邪魔が入った。
「榛名神璽、君を連行する」
何人かの黒スーツが神璽へと迫った。
それに憤りを覚えた神璽は吼える。
「ウザイ・・・ウザイィィィィィィィッ!!!」
暴走した神璽は力を展開させ、黒スーツ達に襲い掛かる。
そして・・・一瞬にして五人居た黒スーツ達は気絶してしまった。
「ハァハァ・・・・・・・・・ん、落ち着いてきたな」
やっと体の熱が冷めて、汗がひいてきた。
さっきまでの心の高鳴りも抑えられて、今はいつも通りの状態。
そして・・・感じた、自分と同じモノが自分へ接近している事に、神璽は身構えてそれがくるのを待った。
「神璽・・・」
声が聞こえ、通路の影から人影が現れる。
長身で、黒い髪を後ろで一つに纏めている女性。
「お前・・・由加!?」
脳が熱い・・・記憶がどんどんと溢れ出てくる。
神璽と由加はずっと一緒に育っていたのだが国に引き取られてからは離れ離れだった。
そうしなければ悪鬼の場所が偏ってしまう・・・そんな理由があったから。
「由加・・・お前・・・何しに来たんだよ?」
「神璽に会いたかったのよ・・・会って話がしたかった」
「そうか・・・何で俺・・・お前の事を忘れてたんだろう・・・」
「私達が一緒だと悪鬼の数が偏るのよ・・・だから記憶を消されてたのね」
「そうか・・・でもまた会えて嬉しいよ」
「私も嬉しい」
「それでこれからどうする? とりあえず俺の家来るか?」
「私は神代、八神、その他の家に追われる身・・・すぐにこの街も出るわ」
「・・・マジか」
「今回は神璽にこれを渡しに来たの・・・」
由加は神璽に一冊のボロボロになった本を渡した。
神璽は黙ってそれを受け取ると、丁寧に読み始める。
「これ・・・先生の・・・」
「うん・・・先生、やっぱ神代に殺されちゃったみたい・・・」
「先生・・・先生・・・先生・・・」
神璽の目から涙が溢れ出した。
大切な思い出を全て取り戻した、しかし本当に大切な人はもうこの世にはいない。
何とも皮肉な話だ・・・神璽はそう心中でつぶやく。
「・・・お前、これを届けるためだけに脱走してきたのか?」
「うん・・・先生の最後の言葉は伝えなきゃいけないと思って」
「そうか・・・ありがとう、なぁ! やっぱ昔みたいに一緒に暮らさないか?」
「駄目よ・・・あの機関の人達も許さないわ」
「いや、俺が説得する! 神代とかからも俺が守ってやる! だからもう少しだけ・・・」
「・・・じゃあ、少しだけね」
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