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  緋色の眼 作者:ジョン
はい、続々と新キャラがでております。
次回で一応、第二部の役者は出揃うかと思います。
ついに読者数が1000人突破しました。
皆さん本当にありがとうございます
【第二部】三話:天美 命


 土曜の夜、某所にある廃れた酒場に剣菱と蒼二は居た。
 店主も客もおらず、二人はここを根城にして生活している。
 
「命がそろそろくるそうだな・・・」

 剣菱が蒼二に言う。
 その問いに奥のほうで仮眠を取っていた蒼二が答えた。

「ああ・・・罪歌達の仕事が終わったらしい」

「なるほど・・・こちらの仕事は全く片付いていないというのにな」

「ったく・・・棗 由加も手こずらせてくれるぜ、何なんだアイツは」

「残りの二つの結晶の所持者だ」

「んな事は知ってんだよ! あのガキの妙な力の事だっつーの!」

「アレは・・・半分悪鬼のような存在だな。それ以外考えられん」

「だよな・・・よし、また捜索に行ってくる、お前はどうする?」

「我は例のガキと最近現れた妙な機関の事を調べよう」

「ああ、あいつらか・・・たいした脅威じゃねーと思うけどな」

「一応、念のためだ・・・何らかの国家機関だと推測はしているが」

「了解、それについては任せた・・・んじゃ行くわ」

「・・・八神時雨がこちらへ来ているらしいぞ」

 蒼二が出て行こうとした瞬間、剣菱が思い口調で言い放つ。
 一瞬、蒼二の動きが止まり・・・やがて答えた。

「邪魔をするなら切り捨てる、ただそれだけだ」

 それだけ言うと蒼二は酒場の戸を開けて外へと出た。










「〜♪」

 夜の街を少女が鼻歌を歌いながら歩く。
 外見はまだ幼く、中学生のような印象だが何か異質な雰囲気を持つ少女である。
 ダメージジーンズにバンドTシャツ、そしてニット帽にゴーグルという出で立ちの少女は呟く。

「私には翼がある、そしてその姿は誰にも見えない」

 外見に似合わず凛とした声。
 すると少女の体が光に包まれ、純白の光の翼が生まれた。
 しかし、少女の異質な姿に周囲の人々は誰も気づいていない。

「神奈川か〜ここまで来たらもう飛んでいってもいいよね」

 そう言うと、少女は翼を広げ空へと飛翔した。
 突然吹き荒れた風に周囲の通行人は風になびく髪をおさえ何気なく空を見上げる。
 が、そこには何も見えない。

「さーって! 剣ちゃんと蒼ちゃんに早く会いに行こう」

 しかし少女はそこに確かに居る。
 そして翼をはためかせ空を飛に始める。

 ビル風が酷いので少女はゴーグルをつけて飛んだ。 
 そして思う・・・あの日もこんな風が吹いていたと。



 少女の力は異質だった。
 少女の力の前に誰もが屈した。
 そして少女は多大の犠牲が払われ、牢獄へと閉じ込められた。

(私は・・・何のために生まれてきたのだろう)

 牢屋の中でそんな事を考える毎日。
 そしていつしかそんな事を考えなくなるぐらい長い月日が経った。
 牢屋の中で唯一許可が下りたのは、本を読む事だけ。
 少女は様々な本を要求し、読み漁った。

 本の中は夢の世界のようだった。
 誰もが笑う話、誰もが悲しむ話、色々あった。
 少女は、外の世界を恋しく思いながら生きていた。
 いつか絵本の中の王子様のような人が自分をここから連れ出してくれると信じて。

 ある風の強い日、食事が来ない事に疑問を感じた。
 いつもの時刻になっても誰も来ない、それどころか人の気配すらしない。
 そして遠くから微かに悲鳴や物音が聞こえてきた。

「誰・・・?」

 日ごろから本を音読する癖がついているので、幽閉されていても声は通る。
 そして・・・轟音が鳴り響き天井が崩れた。
 天井に張ってあった結界が解かれ、彼女の式神が再び使えるようになる。

「飛んで」

 彼女が言葉を発すると、落ちてきた岩が全て重力逆らい、彼方へと消えた。
 岩がなくなると月と夜空が見えた。
 口にしょっぱい味が広がる・・・それは彼女の涙。

「何で・・・私・・・泣いているんだろう・・・」

 自分でもわけがわからない。
 そしてとにかくここから出ようと思ったとき、彼が現れた。

 彼は思い描いていた絵本の中の王子様とは正反対であった。
 彼は闇を具現化した存在のようだった。
 黒い髪、黒い服、黒い雰囲気。
 そして目だけが緋色に輝いていた。

「あ? ・・・テメーも桐生家か?」

「違います」

「ほぉ・・・まぁいい、死ぬか?」

「死にたくない、世界をもっと見たい」

「・・・・・・へぇ」

「お兄さん、私に世界を見せて?」

「ハ?」

「お兄さんのせいでこの家は滅茶苦茶、
私もう住む場所がない、責任取ってください、ねえ、聞いてます?」

 少女は破壊され尽くした家と人を見ながら言う。
 すると男はしばらく少女から目を逸らすと少女に言い放った。

「それでもいいが・・・俺の進む道は復讐と人殺しの道だぜ」

「それでもいいよ、責任とって」

 少女は男を見つめながら問う。
 少女の無垢な瞳に見つめられ男はさっきから視線を逸らしてばかりである。

「貴方の名前は?」

「・・・千島蒼二」

「私の名前は天美 命」





(何てこともあったなぁ・・・)


 空を飛びながら彼女─命は薄く笑った。
 そろそろ目的の街につく、そう思うと移動を止めて空中に静止した。
 そしてポケットから携帯を取り出すとショートカットに登録してある番号を呼ぶ。

「・・・あ?」

 愛想のカケラもない声。
 しかし、命には出てくれた事がたまらなく嬉しい。

「今ねードコに居ると思う?」

「知るか」

「蒼ちゃんの居る街の上空だよー」

「そうか」

「今回のお仕事は何?」

「残る二つの結晶の持ち主の一人、棗 由加の捜索だ」

「ふーん、で見つかったの?」

「成果はない、そういやこの前話した妙なガキの事を罪歌に言ったか?」

「うん、今は放っておけだってー棗 由加を最優先目標にしろと」

「そうか・・・んじゃテメーは俺と合流しろ、場所は・・・俺の気配を察知しろ」

「はいー」

 電話が切れるのと同時にとある場所で一瞬だけ式神の気配が膨れ上がった。
 禍々しく、悲しみと狂気に満ちた気配。
 命はその気配を完全に認識すると、【言霊】 を発動させ、唱えた。

「この気配の場所まで連れて行って」

 直後、命の体は虚空へ掻き消えた。







「─ッ」

「・・・蒼二」


 千島家で食卓を囲んでいた遥緋と時雨は突然感じた気配に反応した。
 唯一式神を使えない遥だけが、キョトンとした顔で二人を見ている。
 すると時雨はすぐさま携帯を取り出し、部下に繋げた。

「今の気配、探知したな? すぐさま場所を特定してくれ」

「時雨ちゃん・・・お兄ちゃんをどうするの?」

「弟子の不始末は師匠がケリをつける・・・意地でもアイツを連れ戻す」

 時雨はそう言うと戦闘用具を取り出し、身に着ける。
 遥緋も慌てて自室においてある装備をとりに行った。
 
「時雨君・・・あの子をよろしくね・・・」

 遥が時雨に言う。
 その目には子供に対する悲しみと心配の色が写っていた。
 
「多分・・・蒼二は自分の悲しみをどこにぶつければいいのかわからないんだと思います。
 神代が憎い、悪鬼が憎い、朱音を殺した世界が憎い・・・アイツの心はそれだけでしょう」

「・・・時雨君に任せるわ・・・全く、蒼威君もこんな日に飲み会だなんて」

「仕方ないですよ、陸人さんとは同じ世界でも森羅さんはただの一般人ですから。
 今まで仕事の関係で会えなかったから話したい事がいっぱいあるんでしょうね」

 言い終えると、ちょうど装備をつけ終えた。
 バタバタと二階から音がして遥緋も一階に降りてくる。
 そして玄関を開けると・・・そこにはダークスーツの八神の術者たちが勢ぞろいしていた。

「気配は?」

「補足しました、現在結界方面へと追い込んでいます」

「・・・多分わざと追い込まれてるんだろうね」

「そう思います」

 探索担当の術者から報告を聞き終えると時雨は全員に呼びかける。

「目的は蒼二の捕獲、そして要求する事は二つだ、死ぬな、殺すな、以上」

 その言葉を合図に一斉に術者たちは散会。
 後に残された時雨と遥緋は、結界を張った領域へと走り出した。

















  そして数十分後、凄まじい悪鬼の気配が膨れ上がった。








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