ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  緋色の眼 作者:ジョン
今回で第一部終了!
第十九話:火葬
「うわ・・・スゲエ・・・」

 空を飛んでいる蒼威と遥緋は真下の光景を見つめた。
 御崎家はほとんど巨大な氷に覆われて見えなくなっている。
 そこら中から氷柱が突き出し、その上に乗って避難している者もいる。

「これ・・・お兄ちゃんが全部やったんだ・・・」

「ああ・・・相当な感情の爆発だな・・・あいつの全力が十分に発揮されている」

「お兄ちゃんもあの着物のお姉さんも生きてるよね?」

「多分、な・・・」

 蒼威はわかっていた。
 蒼二の方は多分生きている・・・だが朱音はもう死んでいるだろう。

(多分・・・朱音君の死体を見て感情が爆発しちまったんだろうな)

 どうしようもない怒りが湧いてくる。
 しかし、蒼威はそれを一瞬で沈めると仲間を探して移動を始めた。







 悲しみが心を満たしている。
 しかし、蒼二は紅雪をしまうと朱音の亡骸へ近づいた。
 乱れた服装を直し、姿勢もキチンとした格好にさせる。

「・・・・・・」

 そのまま黙って周囲を見つめる。
 そこら中に転がっている死体はほとんど原形をとどめていない。
 腕だけ、足だけ、顔だけ、上半身だけ、と言った地獄絵図のような光景である。
 そして蒼二は、少し離れた森の中にある亡骸を見つけた。

「こいつは・・・」

 蒼二はその亡骸を優しく抱き上げ朱音の元へと移動し、並べてやる。
 その亡骸はいつしか自分の前に現れた朱音の兄、暁の亡骸。
 右腕が破損していたため、左手を朱音の手の上に重ねてやる。
 
「うっ・・・・・・くっ・・・・・・・」
 
 再び涙が溢れてきた。
 
 ─何でこんな事に─

 ─悪鬼が・・・悪鬼が悪いんだ─

 ─悪鬼なんて・・・悪鬼なんて・・・全部俺が殺し尽してやる─

 ─だから朱音・・・約束、守るよ─

 ─悪鬼を・・・悪鬼を殺し尽くせば約束は守れるだろ?─

 誓う蒼二。
 すると、近くの山で一瞬黒い炎が上がった。
 
(あの炎・・・・・・)









 御崎の敷地から少し離れた山奥に罪歌、狂、剣菱の三人は居た。
 神代との戦いの後、狂と剣菱が目を覚ますのを待ってここまできたのである。
 そして三人の視線の先にはナナシの亡骸があった。

「馬鹿野郎・・・」

 狂が瞳に涙をためながら呟く。
 何に対して馬鹿野郎と言ったのかは自分でも分からない。
 
「・・・・・・」

 沈黙が再び訪れた。
 三人はしばらく黙ったままナナシの亡骸をまた見つめだした。
 
「おい」

 唐突に声をかけられて弾かれた様に三人は振り向く。
 振り向いた先には、何かを背負っている蒼二が全く感情のない顔で立っていた。
 
「何か用事・・・?」

 罪歌が問う。

「コイツを火葬するならこの二人も一緒にやってほしい」

 蒼二は胸で括っていた紐を解き、ゆっくりと背負っていたものを下ろす。
 すると三人の顔が更なる絶望に染まった。

「暁・・・それに御崎朱音・・・」

 罪歌が暁の亡骸に近づいて色々と観察を始めた。
 すると狂が蒼二を睨みながら言い放った。

「テメエが・・・テメエが暁を殺しやがったのか?」

「違う」

「嘘付け!! テメーら以外に暁を殺せるほどの式神使いなんていねーんだよ!」

 狂は怒鳴りながら蒼二に掴み掛かった。
 暁を殺したのは蒼二ではない、と心の奥でわかっているが理性が否定できない。
 すると罪歌が狂に言う。

「狂やめなさい・・・多分この二人は神代にやられているわ・・・」

「!? 朱音もか?」

 蒼二が罪歌に問う。

「そう・・・多分この傷口は神代彼方の式神の力ね」

「あいつか・・・」

 殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、絶対に殺す。
 殺意の炎が蒼威の中で渦を巻き、体が異常に熱くなる。
 
「じゃあ・・・今から火葬をするわ・・・皆、離れて」 

 罪歌の言葉に狂と剣菱と蒼二は三人の亡骸から離れた。
 集中し、亡骸付近一帯を炎が燃え盛った。
 戦いの時とは違い黒くない、赤い、赤い炎。
 そして四人は後ろを向いて三人の亡骸が燃え尽きるのをずっと待った。





 亡骸が燃え尽きた。
 罪歌の炎は、灰すらも残さないほどに強く、強く燃えたようである。
 そして蒼二が話題を切り出す。

「おい、死罪六神はこれからどうするんだよ?」

「わからない・・・」

 罪歌が俯きながら答える。
 すると狂が怒鳴った。

「・・・俺は神代のクソ共をぶち殺すぜ! ナナシと暁の仇をとってやる」

「我も狂に同意する」

 怒りを燃え上がらせる狂と剣菱。
 その意見を聞くと蒼二は三人に向かって言い放つ。

「じゃあ俺を死罪六神に入れろ」

「ハァ? テメーは千島家だろうが!」

「お前には聞いていない、どうなんだよ秋月罪歌?」

 すぐに狂が文句を言うが蒼二は軽く流した。
 まっすぐ罪歌を睨みながら問う。
 すると罪歌はその視線に真正面から向き合い、逆に問う。

「貴方の目的は何?」

「全ての悪鬼を殺し、朱音との約束を守る、ただそれだけだ」

 間髪居れずに蒼二は答えた。
 それが自分が今ここに居る理由。
 
「・・・まぁ、いいわ・・・認めましょう」

「おい罪歌!?」

「我も同意だこの少年の決意は本物であろう」

 剣菱も同意してしまったので、狂はすごすごと引っ込む。
 そして四人は歩き出した。
 その姿は森の闇に消え、やがて見えなくなった。







─二年後─





 ピリリリリリ、ピリリリリリリリ
 ネオンに照らされている夜の街を歩く少年の携帯が鳴った。
 中肉中背で髪の色は金髪の少年である。
 耳には数個のピアス、いかにも遊び人のような風体だ。

「はいはーい!! あー・・・アンタ達か」

 知り合いの女の子だと思って電話に出た少年は落胆した。
 相手の事をよく思ってない事を十分に感じさせる横柄な声である。
 
「ふんふん・・・今度は東京か〜 ま、大阪も飽きてきたし別にいいか」

 少年はヘラヘラ笑いながら電話を切った。
 そしてうーんと伸びを一回すると、呟く。

「さて、この街を出る前に色々片付けなきゃねぇ」

 気がつけば数十人の男達に囲まれている。
 否、気づいていたのだが存在を無視していたのだ。
 男達は金属バットやら、木刀やら色々な武器を持って少年を囲む。
 そしてリーダー格の男が少年に怒鳴る。

「今日こそ殺してやるぜぇ・・・榛名神璽!」

 少年─神璽の中で何かが歓喜の咆哮を上げた。 


ってわけで第一部終了しました。
次回は灼那と悲煉の話で
少し、間を空けて
その次から榛名神璽がメインっぽい話になるかと。
ちゃんと蒼二や遥緋も出ますがねw

ではでは
ここまでお読みいただきありがとうございました。




+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。