今回は物語の設定が明かされます。
ヨロシクお願いします。
【一月八日】
文章大幅更新。
次回は第二話を修正します、時期は未定です。
第一話:真実
蒼二は罪歌に促されるようにして、近くにあった公園へと足を運んだ。
夕暮れが近い所為か、子供の姿は見当たらない。そういえば、ここは人気のあまり無い公園だった。
そんな事をを思いながら、蒼二は呑気にブランコを漕いでいる罪歌を睨むと、
「おいコラ! テメーいつになったら話すんだよ?」
「黙って待ってなさい」
「……チッ」
罪歌は蒼二の焦りから出た言葉を一刀の下に切り捨てた。そして、再びブランコを漕ぎ始めてしまう。
仕方が無いので、蒼二は地面を蹴って舌打ちすると、近くのベンチへと腰を下ろした。
しばらく待ってみても、誰も現れないし、何も起きない。そんな時間が十五分ほど経った頃か、
「来たわ」
罪歌が公園の逆側の入り口の方を向き、そう言った。蒼二もその言葉に釣られ、そちらを向くと、
「ぁ……お兄ちゃん!?」
そこに居たのは、自分の双子の妹。正直、関係は上手く言っているとは言いがたい。
蒼二は遥緋の事をあまり好きじゃなかったし、遥緋は遥緋で蒼二の事が苦手なようだった。
昔は何処へ行くにも一緒だったのに──と心の隅で思うが、蒼二はすぐにその感情を打ち消すと、
「遥緋か。……何でテメーがここにいるんだよ?」
「私は、お父さんの事をこの人が教えてくれるって言ったから……」
蒼二はゆっくりと視線をずらし、遥緋の背後に立っている男を睨んだ。
背はあまり高くない。そこに居る秋月罪歌より少し上ぐらいか。目つきは自分よりも最悪。
凶悪極まりない顔で、蒼二の睨みを特に感情を表に出さないまま見ている。
「おいコラ、人の妹勝手に巻き込んでんじゃねーよ」
「遥緋が知りたいつったんだぜ」
男がヘラヘラ笑いを作りながら、そう言う。挑発という事はわかっていた。
それでも──ムカつくものはムカつく。
「人の妹の名前を気安く呼んでんじゃねーよ!」
蒼二は緋眼を発動させ、一気に男へと接近した。そして、得意のハイキックを男の顔にブチこもうとしたが、
「ハッ! いきなりやってくれるじゃねぇか……」
男が同じ位の速さで動き、蒼二の蹴りをポケットに手を突っ込んだまま避けた。
完全に見切られている。だが、ここまできたらもう引けない。蒼二は制服の袖をまくり、臨戦態勢へと入る。
男も男で、ポケットから手を出し指先を軽く振って蒼二に「来いよ」と挑発を浴びせた。
だが、その時──
「狂、蒼二……止めなさい」
罪歌が静かにそう言った。大した声量でもないのに、その凛とした声は頭に血が上った蒼二と狂にも
ちゃんと伝わっている。二人は悪態をつきながら、気まずそうに土を蹴って臨戦態勢を解く。
それに満足したのか、罪歌は肩にかけていたバッグから紙を取り出し、
「では、メンバーも揃ったので話を始めるわ。まず、君が千島蒼二。
身長175センチ 体重65キロ 髪の色は茶色・・・じゃないわね」
「昨日、黒に染めたんだよ……センコーがうっせえからな」
「そう……じゃあ次、千島遥緋 身長164センチ 体重は44キロ 髪の色は茶色ね。こっちは地毛なんだ」
「ぅぅ……体重は言わないで欲しかったなぁ。はい、そうです」
「私は秋月罪歌、こっちが弟の狂。 さて……単刀直入に言うけど、君達の父親は東京にいるわ」
ここは千葉県。意外にも近くに居るのだと、二人は思った。電車で一時間もすれば、都心に辿り着ける。
それなのに何故、父親は十年も帰ってこない?そんな疑問が蒼二に沸く。
「何で東京なんですか?」
遥緋がそう質問をしすると、罪歌は少し眉を吊り上げ、
「その話は……まぁ、後で。今はあそこを見てちょうだい」
ジャングルジムの方を指差した。蒼二と遥緋がそちらを向くと、そこには何か黒い影のような物があった。
「アレが悪鬼、人間の悪意の集合体」
よくよく目を凝らすと、それは人の形をしている。くねくねと不規則に体を揺らし、とてもじゃないが
まともな生物には見えない。するとジャングルジムの影によって隠れていた黒い影──悪鬼の
姿が街灯に照らされて顕になる。真っ黒な四肢。そして、顔には目や鼻はなく、どうもうな牙を生やした口があった。
「い、嫌……アレ、何なの!?」
遥緋は軽いパニックに陥っているようだった。とりあえず、遥緋の第二人格にそれは任しておこうと思い、
蒼二は自分が少し震えている事に気づく。遥緋がパニックに陥っていなかったら、声を出していたのかもしれない。
ゆっくりと心を落ち着け、蒼二は罪歌へと問う。
「……おい、アレと親父に何の関係があるんだよ?」
「君達の一族は、古来より悪鬼を討伐する一族だったのよ。君達が今住んでいる八神の家もそう。
それぐらいは知っているわよね? そして、貴方達が私達秋月の分家の人間であるという事も」
「う、嘘言わないで! ママや時雨ちゃんはそんな事言ってなかったもん!」
「君達の家庭の事情は知らない。いつか言うつもりだったのかもしれないよ」
遥緋の言い分に罪歌は冷たく返した。流石の遥緋も、少しは八神や母親の態度を疑っていたのだろう。
青い顔をして、唇を震わせている。だが、罪歌はそんな事を意にも返さずに、
「君達の父、千島蒼威は日本でも最強と言われる悪鬼退治の専門家ね。正直、あの強さは異常だわ。
何故東京に居るか。それはご存知悪鬼討伐と、後は──私達を殺す為かもしれないわね」
さらりと微笑を浮かべながら、罪歌はとんでもない事を言うが、蒼二は何とか納得すると、
「とりあえず、わかったよ」
「…………」
「今の人間の悪意は昔と比べて変わったものが多い、悪鬼もそれによって多様な形を見せるの
少し前の話だけど、人間寄生型なんてのも居たわね。本当に、酷い悪鬼だったらしいわ」
「……何で俺と遥緋にそんな事教えたんだ?」
「私と狂には目的がある、その為の手段の一つかな。ギブ&テイク。素晴らしい言葉ね」
「……私は知りたくなかった! そんな事知りたくなかった!」
遥緋が目に涙を溜めながら珍しく怒鳴った。蒼二はまたもそのお陰で妙な冷静さを取り戻す事が出来る。
居なくなった父親がそんなファンタジーの世界のような仕事をしているとはまさか思いもしなかった。
だが、逆にワクワクしている自分も居た。このクソったれな世界にも、中々面白そうな事があるじゃないかと──
「そんなの知らない。それに君の悪意だって悪鬼を作る原因なんだよ?」
「私は悪意なんかもったことがない!」
「詭弁ね、悪意を持たない人間なんて居ない。軽い悪戯心にしても悪意は必ず在る」
「そ、そんな……」
「おい、罪歌……アレ消していいか?」
それまで黙っていた狂が、罪歌にそう問う。人型悪鬼は段々凶暴性を増し、近くにあった木々を破壊し始めている。
これ以上のさばらせると不味い事になる。罪歌も同じような感想を抱いたようで、
「お願い」
「おう……消えな!」
狂が人型悪鬼に向かって手をかざすと、微妙な風の流れを感じた。
次の瞬間、四方八方から鋭い風で作られた刃が人型悪鬼を囲み、粉々に切り裂いていく。
蒼二には何が起こったのかわからない。遥緋はそれどころではないようで、ぽかんと口を開けていた。
「さて……私も覗き魔さんのお相手をしなきゃ!」
罪歌はそう言うと、滑り台のほうへ向かって手をかざす。一瞬の間の後、罪歌の掌から炎が迸った。
普通の炎ではない。まるで生きているかのように膨張しながら滑り台を炎で包み込む。
「盗み聞きはよくないよ、八神時雨」
「えっ?」
見知った人物の名を聞き、遥緋は声を上げた。すると、物凄い勢いで何かが滑り台を押しつぶし、
炎も圧縮されるようにして、小さくなっていく。その滑り台の後ろに居たのは、ダークスーツを身に纏った青年の姿。
前髪は短いが襟足だけは妙に長い髪を揺らすと、青年──八神時雨は何時もの曖昧な微笑を作り、
「これが噂の式神【炎帝】か、さっきのは【神舞】と」
「…………」
「…………」
罪歌と狂は黙ってしまう。蒼二も遥緋も声が出せない。何時も優しい兄貴分の姿が今は遠く見える。
時雨は何時もの調子で、靴を鳴らしてこちらへと近づいてくる。そして、蒼二は、
「おい! 時雨ぇ! 何で俺らにこの事を隠してた!」
「そうだよ! 私達に嘘ついてたんだ!」
すると時雨は頭を抱えてしゃがみ込むと、
「あ〜ヤバイ……遥さんに何て言おうかなぁ」
「遥さん」とは蒼二と遥緋の実の母親の名前。普段は優しいが、怒ると物凄く怖い。
最近では、あまり話すらしていない。蒼二が暗いのもあるのだが、事あるごとに遥は娘の遥緋ばかりに
世話を焼いていた。それは遥の蒼二への信頼故の態度だったのだが、蒼二は別の意味でそれを捉えていた。
「悪いね。蒼二、遥緋。家に帰ったら全部話すよ……でもその前にやることがある」
「何?」
「僕の可愛い弟と妹をこんな怖い目にあわせた彼らには、お仕置きしなくちゃね!」
いつも優しい筈の時雨の目が緋色に染まった。時雨は八神家の直系の長男だ。
蒼二や遥緋とは少し違うものの、同じく緋眼が使える。と言っても、蒼二と遥緋は時雨には遠く及ばない。
持続力、操るタイミング。戦闘後の疲労感。どれをとっても時雨は蒼二達の上を行っていた。
「ハハハハハハハッ! 嬉しいぜぇ……八神の秘蔵っ子と戦えるなんてよぉ!」
狂は嬉しそうに笑い、同じく目の色を緋色に変えた。秋月──それは緋眼の始祖の家系。
時雨や蒼二達よりも血が濃いので、緋眼としての能力や、体の作りは向こうの方が上だろうと予測。
だが、罪歌は顔を顰めると、狂の服の襟を掴み、
「今は、君と戦っている暇はないんだ……引くよ、狂」
「ハァッ!? おい、マジかよ?」
「私達の目的を忘れたの?」
「……チッ! 今日は見逃してやるぜ」
「逃がすかよっ!」
罪歌と狂が跳躍するのと同時に、時雨が力を発動させ、一瞬前まで二人が居た場所を押し潰す。
だが、罪歌が手をこちらに向かってかざした瞬間、時雨は蒼二と遥緋の前に立ち、防御体勢を取る。
赤い炎が吹き荒れ、視界が真っ赤に染まる。
「あー、逃げられちゃったね」
時雨が空間ごと炎を押し潰すと、罪歌と狂の姿は見えなくなっていた。帰りの遅い蒼二と遥緋を心配して、
一人で迎えに来たのが仇になったようだ。といっても、時雨自身そこまで戦闘する気は無かった。
あの二人の力は凄まじい。しかもこちらに【式神】を使えるのは自分だけだ。勝ち目は無いに等しい。
そして、時雨はゆっくりとため息をつくと、
「よし、帰ろうか。蒼二、遥緋」
そう言い大事な弟分と妹分の頭を優しく撫でた。
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