第十七話:逃亡
ズドンッ!
爆発音が鳴り響く。
そして無音の風が大気を切り裂き、陸人に迫る。
「ハッ!」
ワンステップで風を回避すると、陸人は地面を思いっきり蹴る。
足元で小爆発が起き、その反動を利用して陸人は一気に距離をつめた。
「クッ・・・」
慌てて、狂はガードを固めるが陸人はもう数センチ先に居る。
ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!
殴られた場所で小爆発が何回も起き、狂は吹っ飛ぶ。
幸い風で薄い膜を張ったお陰でダメージは軽減されていた。
しかし、確実に疲労と痛みは溜まっていく。
「おいおい、こんなモンかよ?」
陸人が半ば呆れつつ言い放った。
その言葉に・・・狂は怒りをあらわにして言う。
「・・・・・・・じゃあ見せてやるぜ」
「お?」
「テメーに多重人格の式神使いの怖さを教えてやる・・・出て来い!しゅ・・・」
狂が何かを言おうとした瞬間。
二人の間の地面から巨大な氷柱が現れた。
それはどんどん周囲の地面から突き出す。
「クソッ・・・」
「覚えてやがれ!」
陸人と狂は自分の身を守ることを最優先とし、身構える。
その間にもどんどんと氷柱は増えていきやがてお互いの姿は
完全に見えなくなってしまった。
(一体・・・何が起こってるんだよ)
「・・・じゃあ・・・じゃあ何なのよ!」
罪歌は正宗に問う。
瞳から大粒の涙が零れ、大地をぬらす。
「見捨てたわけじゃない・・・あの日、秋月から救援の要請は無かったんだ」
「嘘よ! 何で本家の危険に分家に連絡がいかないのよ!」
「こっちだって・・・後に知って驚いたさ・・・」
「・・・・・・」
「だから僕は調べた、そして少し離れた場所で数人の死体を見つけた」
「普通悪鬼に襲われたら傷口とかは普通はぐちゃぐちゃなんだ、君もわかるだろう?」
「・・・うん」
「しかしその死体には弾痕や刃物で切り裂かれた傷ばかりであった。
そしてそれ以外に死体は全く残っていない・・・これがどういう意味かわかるかい?」
「・・・悪鬼の犯行に見せかけた・・・他の誰かの仕業?」
「僕もその結論に至った・・・しかし犯人まではわからなかったけどね」
「・・・・・・」
「・・・僕は今でも君と狂の事を見捨ててはいない・・・だから・・・」
「だから・・・だから何よ!
じゃあ・・・私達の十五年間は何だったの!?
生きるために手を汚して・・・復讐のために沢山の人を殺して・・・・・・」
罪歌の中で今までの記憶が溢れかえる。
自分達の復讐のためならなんでもやった、笑いながら人も殺した。
その理由が正宗の言葉によって全て崩れていく。
「罪歌・・・」
その時、二人の間に巨大な氷柱が出現した。
次々と地面から突き出す氷柱はすぐに二人の姿を覆い隠す。
その氷の世界の中で罪歌は呟いた・・・
「もう・・・私達は戻れないのよ・・・」
そう言うと、腕を天に向けて火球を一発放つ。
その火球はある程の高さまで上昇すると爆音を上げて炸裂した。
死罪六神の撤退に合図である。
火球を放ち終えると罪歌は走り出した・・・決して後ろを振り向くことなく。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「フゥー・・・フゥー・・・」
お互い血塗れで睨み合う剣菱と時雨。
緋眼は剣菱のほうが上手く使いこなし、
式神では時雨のほうが剣菱を圧倒していた。
「ぬぅ・・・流石若くても八神家の仮の当主だな」
「うるさい・・・仮は余計だ・・・数年以内に八神は僕が継いでやる」
時雨は再び重場を使って自信にかかる重力を軽減した。
そして全力で跳躍すると刀を引き抜き、剣菱へと投げつける。
「落ちろ!」
投げた剣に数十倍の重力をかける。
そして剣が見えないくらいの速度で剣菱へと向かって落ちていく。
「クッ」
剣菱も天照を剣へ向かって放った。
凝縮された熱線が剣とぶつかり合い、激しい火花を散らす。
競り合いの結果はまたも引き分けであった。
「フン・・・きりが無いな」
剣菱がそう呟くと、夜空に火球が舞い上がり炸裂した。
死罪六神の撤退の合図である。
(罪歌がこれを出すとは・・・よっぽど追い詰められているみたいだな)
そう思うと剣菱は時雨に背を向けて走り出した。
「逃がすと思ってるわけ!」
時雨が怒鳴りながら重場を発動させようとするが、体の限界だった。
背後に立っていた木に寄りかかるようにしてようやく倒れるのを堪えた。
すると剣菱が突然立ち止まり時雨に言い放つ。
「・・・貴様に天照の真の力を見せていなかったな」
剣菱は腰にさしてあった刀を引き抜いた。
刀身が全く存在しない異質な刀である。
そして鍔から一瞬光が迸り、時雨の頭の上を薙いだ。
「では、さらばだ」
それだけ言うと剣菱は夜の森に姿を消す。
時雨はそれを見届けると・・・倒れてしまう。
「・・・アレを出されていたら負けていたかもな・・・」
悔しそうに、そして誰にも聞こえない声で言い放つ。
そしてごろりと寝転がると夜空を見て驚愕した。
地面から生えたであろう巨大な氷柱が空をも覆い尽くそうとしている。
「まさか・・・蒼二か」
罪歌は赤い眼を擦りながら北にある出口を目指して走る。
死罪六神は北にある出口から逃走する手はずになっていた。
そこで一旦合流して、逃走する手はずになっているのである。
「おい、罪歌」
罪歌が走っていると風に乗って狂が現れた。
弟の無事に罪歌は満足すると、質問をする。
「剣菱とナナシと暁は?」
「わからねぇ・・・屍王が蒼威に倒されたからナナシはヤバイかもな」
「そう」
素っ気無く言い放つが、内申は不安でいっぱいだった。
特にナナシは死罪六神の中では外見が一番幼いので、
皆から随分と可愛がられていたのだ。
「狂、罪歌・・・他の二人は?」
突然声がして、剣菱が横の道から現れる。
「剣菱・・・いや、わからないわ」
「そうか」
三人はたまに在る氷柱を破壊しながら黙って走り続けた。
暁とナナシが居ない・・・それだけでとても不安。
そんな感情が三人を埋め尽くしている。
そして出口の北門が見えてきた時、異変に気づいた。
「おい・・・誰か居るぜ・・・」
剣菱と罪歌も門の上に四つの人影を見つけた。
確実にこちらを見つめている・・・それだけはわかる。
そして三人は足を止めた。
「ようこそ秋月罪歌、秋月狂、真砂剣菱」
四人の中心に居た白装束の黒髪の男─刹那が言う。
端整だがどこか皮肉っぽい顔つき、全てを見下しているような眼。
嫌味な感じがする男である。
「神代家か・・・」
「そう、よく覚えているな・・・俺たちはお前たちの持ってる結晶を貰いにきたんだよ」
大柄で白装束のオレンジ色の髪の男─瞬が言った。
捻くれたような顔つきで、威圧感のある瞳で三人を見ている。
「結晶が狙いか・・・」
狂が呟く。
正直、勝つのは厳しいと思った。
こちらは全員満身創痍であり、向こうは体力に随分と余裕がありそうである。
狂は罪歌と剣菱に小さい声で囁く
「ここは軽くあしらって逃げるが勝ちだぜ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しかし、二人からの返事は無い。
二人の視線は白装束の四人のうちの一人に釘付けであった。
狂も気になり見てみる・・・そして驚愕した。
そこに居たのは・・・
「ナナシ!!」
狂が怒鳴る。
そして刹那はさも面白い事を聞いたように言った。
「ナナシ? この子は神代家の四男、神代此方ですよ」
「なっ・・・」
三人の顔が驚愕に染まる。
しかし此方は俯いたまま何も答えなかった。
今回は短めです。
次回か、次々回で第一部完結ですw
感想、採点、待ってます。
一部が終わったらキャラ紹介を入れようと思います。
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