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  緋色の眼 作者:ジョン
第十五話:蒼二の答え
「燃えろ!」

 罪歌が数十個ほどの火球を放つ。
 正宗は緋眼を発動させ、一つ一つ余裕でかわしていく。
 そして虚空から二本の刀を抜き出した。

「出たわね・・・【二神風雷】」

 現れたのは二振りの日本刀。
 そして片方の刀身には風が、もう片方には雷を纏っていた。
 
「それだけの力がありながら・・・どうして・・・どうしてあの時!!」

 罪歌は腰から短剣を取り出して、炎を絡ませた。
 そして心の中で叫ぶ。

(緋澄!)

(はいはーい)

(緋眼使うわ・・・同調お願い)

(わかったよん♪)

 罪歌は緋眼を発動させた。
 分家の緋色よりも更に濃い緋色の眼。
 本家と呼ばれる所以たるその緋眼は真っ直ぐと正宗を睨む。
 
「ハァァァァッ!」

 凄まじい速さで斬りあう罪歌と正宗。
 剣術の腕では相手にならない、そう思った罪歌は更に速度を上げた。

(貴方ほどの力があったなら─)

 体制を低くして首筋を狙い斬りつける、が首を振っただけで避けられる。

(あの時・・・私達を─)

 そのまま、二度、三度と斬りつけるが全て見切られてしまった。
 そして罪歌は力いっぱい叫んだ。

「私達を助けられたはずじゃないーーーっ!!!! 」

 罪歌の体から黒の炎が巻き起こり、正宗に襲い掛かった。
 正宗は二神風雷を振り回して炎を払うが防ぎきれなかった。
 
「クッ・・・」

 少し距離を置いて正宗は呼吸を落ち着けた。
 流石に三十代なだけあってか、昔のような体力は無い。
 息一つ乱してない罪歌に対して明らかに正宗のほうが疲弊していた。
 そして罪歌は炎を巻き起こす。

「どうして私達を助けてくれなかったのよ! ずっと・・・ずっと待ってのに!」
 
 黒い炎が周囲を飲み込みながら正宗に迫る。
 

「私達には貴方しかいなかったの! それぐらいわかってたはずでしょ!」

 悲しく、猛々しく燃え上がる黒い炎。
 その炎は周囲一体を呑み込み、荒れ狂い、全てを焼き尽くそうとした。

「・・・罪歌」

「貴方は私達を見捨てた・・・捨てられた気持ちが貴方に分かる!?」

 罪歌の緋色の眼には大粒の涙。
 悲しさが溢れ、その感情の矛先には正宗が居た。
 
「違う・・・」

「違わない! どうせ秋月にゴマするために私達に近づいたんでしょ!」

「違うと言っているだろ!」

 罪歌の言葉を正宗は大声で否定した。
 そして・・・罪歌は問う。

「ッ・・・じゃあ・・・じゃあ何なのよ!」







 砂塵が酷いので蒼威は大我を使って羽を形成し空へと上がった。
 夜風を切り裂き飛翔し、やがて止まった。
 そこから眼を凝らして周囲の様子を伺う。
 少し離れた所では黒い炎が猛々しく燃え上がっていた。

「罪歌か・・・あいつは正宗に任せよう」

 そう呟き、他の場所を見る。すると・・・

「遥緋・・・」

 一生懸命走っている娘の姿を見つけた。
 走っている方向から察するに、御崎家の本邸へ向かっているのだろう。
 ─あそこにはさっき蒼二が居たな・・・
 まだ再会していない、息子の名前を思い出し蒼威は動き出す。
 行き先は勿論・・・御崎家本邸

(あの二人の中には多分・・・あの二人が居るな)

 蒼威は二人の第二人格を見たことが無い。
 そして、今まで皆から聞いた話や記憶を整理する。

 ─貴様がそう望んだから私は生まれた──そうか・・・ならば貴様は眠れ・・・後は私に任せて眠れ!──私は煉・・・最近生まれた、蒼威の新たなる体の支配者だ──ああ、解ってるさ・・・俺は煉とは・・・違う!!!──何故だ・・・私は消えたくない・・・きえたくないよぉ・・・──いつまでメソメソしてんだよ煉!!・・・最初から解ってただろ──よせやい。さーてそろそろ俺達は消えますか・・・──蒼二の方は、冷たい感じがする丁寧な言葉使いの悲煉──遥緋の方は、獰猛な感じがする豪快な言葉使いの灼那──何か懐かしい感覚がしたんだよ─




 蒼威は胸が苦しくなった。
 弱かった自分のせいで二人ものか悲しき存在を生み出した自分。
 もう、生み出さないためにも蒼威は強くなる事を誓ったのだ。
 
(灼也・・・煉、お前達はあの二人の中に居るのか?)

 問いかけても答えは返ってこない事はわかっている。
 それでも蒼威は願った。

(あの二人を・・・守ってやってくれ)












「ハァ・・・ハァ・・・」

 蒼二は御崎家の本邸を目指して走る。
 あと少しで到着しそうな時に、異様な気配を感じた。

「何だ・・・?」

 人間であって人間ではない気配がする。
 凄く曖昧な気配だ・・・そして恐怖を感じる。
 熊や虎に感じると同じような恐怖・・・
 
「あらら? こんな所に男の子が居るよ?」

 森の中から小柄な白髪の少年が現れた。
 年齢は俺と同じくらいだろう・・・そしてもう一人居るな。
 蒼二の予想通りもう一人、大柄な青色の髪の少年も現れた。

「ほぉ・・・テメーは御崎か? それとも八神か?」

 上から見下ろしたような口調で言う青髪。
 
「俺は・・・千島蒼二・・・テメーらこそ誰だよ」

 蒼二はぶっきらぼうに言い放つ。
 すると瞬が驚いたように言う。

「おー! 千島ってあの千島かよ。 俺は神代瞬」

「そして僕が神代彼方さ」

 彼方も瞬に続いた。

「へぇ・・・テメーらが神代かよ・・・殺すわ」

 虚空から紅雪を抜く。
 蒼二の行動に瞬と彼方は困惑した。

「おいおい、千島なら俺らの仲間だろ?」

「そうだよー何で僕らが殺されなきゃいけないんだー!」

 抗議する瞬と彼方、しかし蒼二は耳を貸そうとしない。
 御崎家の敵は俺の敵、蒼二はその精神で動いている。
 ましてや朱音が恐怖を感じると言っていた一族だ。

「ハァ? オメーらの事を朱音が嫌っていたからだよ」

 蒼二は二人言う。
 そして次の瞬間、瞬と彼方は爆笑し始めた。

「アハハハハ! 朱音って御崎朱音の事かよ。 アハハハハ」

「ホントに馬鹿な兄妹だったなぁ〜ってか妹の方ってまだ人間で居れるのかね?」

 心がひび割れていくのを感じた。
 こいつらは朱音に何かをしやがった・・・話fだけでそこまではわかる。
 そしてそれは蒼二がこの二人を殺そうとするには十分すぎる理由だった。
 
「死ね」

 緋眼を発動させて蒼二は瞬に向かって斬りかかる。
 殺意を十分に込めた一撃は、瞬の首の薄皮一枚を切り裂いた。

「テメェ・・・」

「瞬兄さん・・・コイツ殺そうよ」

 瞬の手にハルベルトが現れる。
 そして彼方の手にも禍々しい姿の拳銃が現れた。

(ふぅ・・・ん。 こいつらも同じか)

 次の瞬間二人が一斉に動いた。
 緋眼をもってしても早いと感じる動きである。
 
「ヒャハッ!・・・ヒャハハハハハ」

 彼方が撃ち出した数発の銃弾を剣ではじく。
 すると後ろで何かが振り下ろされる気配─蒼二は体を回転させた。
 次の瞬間、巨大なハルベルトがさっきまで体があった所に振り下ろされる。

(蒼二)

 動きながら二人の攻撃を避けていると悲煉が話しかけてきた。
 今は余裕が無い、が悲煉もそれはわかっているはずである。
 とりあえず蒼二は聞き返した。

「何だよ?)

(今の貴方じゃ彼ら二人には勝てませんよ)

(ハァッ!? んじゃ逃げろってか? まぁ・・・それも一つの手だがね)

(・・・緋眼には更にそれの上を行くものがあると言ったらどうします?)

(くれ)

(貴方らしいですね・・・緋眼には千島家には終式、八神家には墜式
 真砂家には対式、秋月家には零式と言うものがあるのです。)

(ふーん・・・何でお前がそんな事を知ってるんだ?)

(・・・・・・貴方の父親は終式、使えますよ)

(・・・・・・フン、じゃあ教えてくれよ、その終式の使い方をな)

(貴方の緋眼に対する答えを聞かせてください。
 貴方はこの力を何のために使いたい? 何のためにこの力を振るうのですか?)

(・・・・・・)

(しばらく考えてください、その間は私が戦闘を引き受けます)

(・・・頼む)

 悲煉は久しぶりの五感を痛烈に感じた。
 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、全てが鮮明に感じられる。
 そして突然動きを止めた蒼二に瞬と彼方も動きを止める。
 悲煉は笑いながら言う。

「フフフ・・・少し遊んであげましょう」

「あ? 負けそうなのはテメーだろうが!」

「気が狂ったんじゃないの?」 

 再び瞬と彼方が迫ってくる。
 悲煉は紅雪を握り締めると瞬に向かって突進した。

「馬鹿め・・・この体格差で勝てると思ってるのか?」

 瞬が肩を突き出しタックルしようとする。
 その時悲煉は軽く跳躍し、瞬の肩に足を掛けるとその足場を利用して更に跳ぶ。
 
「馬鹿は貴方でしょう」

 そう言い放つと、縦に瞬の背中を袈裟斬りにした。
 血が飛び散り紅雪がその血を吸う。

「グッ!」

 瞬の悲鳴が上がる、が悲煉は無視して氷の結晶を作り出す。
 そしてそれを今度は彼方へ向かって放つ。

「フン」

 彼方が二発の銃弾を撃ち氷を砕く。
 そしてその氷の破片の隙間から靴が飛び出してきた。
 
「グァッ!」

 顔面をモロに蹴られて彼方は吹っ飛んだ。
 氷を目潰しにして悲煉は飛び蹴りをしていたのである。
 
「ハハハ、さっきまでの威勢はどこへ行ったんです? あまりガッカリさせないでくださいよ」

 笑う悲煉。しかし心中ではかなり焦っていた。
 体力の消耗が激しい・・・早く蒼二に代わってもらわなければキツイですね。
 そう思うが中々返事が無い。

(蒼二、貴方ならできます・・・貴方は緋眼に愛されている。自分を信じなさい)
 




 この力は何のためにあるのだろう?
 緋眼って何だ?

 俺の血統の力?
 
 悪鬼と戦う力?

 それとも人を殺す力?

 よくわからない・・・

 よくよく考えてみると俺の先祖は何で緋眼を手に入れたのだろう?

 別に普通に生きて普通に死ねればいいじゃん。

 でも、きっと理由があったんだろうな?

 俺に置き換えて、考えてみよう。

 俺は何のために緋眼を使う?

 勝つため? 

 いやいや・・・それよりもっと前だ。

 何で勝たなきゃならないんだろう?

 ああ、御崎家も八神家潰れて欲しくないんだ。

 何で俺はそう思ったの? 八神さえ助かればいいじゃん?

 ・・・・・・・・・・・・朱音。

 そうだ・・・朱音だよ。

 朱音を悲しませたくない。

 朱音を失いたくない。

 朱音とずっと一緒に居たい。

 それが俺が緋眼を使う理由・・・

 ─もし、私が死んで、その後悪鬼が世界のバランスを崩しそうになったら・・・貴方が止めて─

 俺よりも強い朱音が俺を頼ってくれた。

 俺を認めてくれた。

 だから・・・俺は・・・俺は、朱音のために全力を尽くす!

(貴方の答え、確かに聞きました)
 
 悲煉の声と共に体が熱くなる。
 心臓音が五月蝿い、血の流れる音が五月蝿い。
 そして再び五感を感じた時、俺は見た。
 全てが遅く見える、しかし自分の感覚だけはいつも通り。

(何だ・・・これ)




明日から帰省です・・・
もう二度と富士山は見たくないのに・・・

感想、批評、採点待ってます@^^
それでは
今回もお読みいただきありがとうございました。


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