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第1話
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―――じゃあね! また会いましょう、一刀!


 唐突に声が聞こえた。

 俺が愛している女の子の声だ。

 凛々しく、力強い。

 ある時は戦場で、またある時は寝台の上で、俺はその声をずっと聞いてきた。

 最後に聞いたのは月の綺麗な静かな夜だった。

 その声はとても辛そうな声音だったのを覚えている。

 でも、今聞こえた声は違う。

 まるでこれから始まるパーティを楽しみにしているような明るい声だった。

 その声の余韻で、俺の胸も温かくなる。

「華琳……」

 何気なく目を開けた。

 痛いぐらいの明るさが、視覚から脳に伝わる。

 慌てて目を細め、光に慣れさせるために今度はゆっくりと目を開けていく。

「……え?」

 自然と声がこぼれ落ちた。

 目の前に広がる荒野に対する、それが俺の精一杯の反応だった。
 
「え、え、え?」

 360度、見渡す限り同じような景色が広がっている。

 まるで海の真ん中に取り残された船からの景色ようだった。

 水のかわりに砂の海だけど。

「えーと……」

 いきなり見ず知らずの場所で目を覚ましたとは思えないほど、俺は冷静だった。
 
 それもそのはず。

「まあ、2回目だしな」 

 そう、最初に華琳たちの世界に来たときと同じような状況だったからだ。

 さすがに2回目ともなるとあまり驚かない。

 そして、状況への順応も早い。

「とりあえず、直前の状況を思い出すか。たしか俺は華琳と別れて――」

 気がついたらここにいた。

「……あれ?」

 その間の記憶がまったくない。

 寝たと思ったら一瞬で朝でした、みたいな感覚だ。

 華琳に別れを告げる同時に、意識が遠くなっていった感覚は覚えている。

 ただ、その後の記憶がない。

 なんとなく、俺が本来暮らしていた世界に戻るのかと思っていたんだけど……。

「明らかにここは日本じゃないしなー」

 再度、辺りの様子を確認する。

 おそらくまた三国志の世界で間違いないと思う。

 根拠はまったくないが、なんとなく肌に感じる空気が同じだ。

「……まさか時代が違うとかじゃないよな」

 何気なくそんな可能性が口をついて出たが、否定はできない。

「……」

 まあ、いいか。

「これ以上考えてもしかたないよな。とりあえず、何処かの街に行かないとどうにもならないだろうし」

 俺は立ち上がって、制服についた砂をはらう。

 ついでに持ち物を確認――やはり華琳と別れたときと同じ状態だ。

 というより何も持っていない。

「生徒手帳も携帯も部屋に置いてきたからなー」

 形見……、みたいな気持ちだった。

 縁起でもないけど。

 また戻れるとも思わなかったし。

「……まあ、いいや。とりあえずどっちに向かおうかな」

 改めて、念入りに辺りの地形を確認する。

 少しでも覚えがないか、記憶と照合する。

 だが生憎、該当する地形は記憶の中にない。

「しかたないか」

 じっとしていても埒が明かないので、俺はとりあえず勘で方角を決め、進むことにした。


2/ 


 しばらく歩いていると、何処か遠くからドドドという地響きが聞こえてきた。

 俺はこの地響きを知っている。

 戦場で聞き慣れた馬の蹄の音だ。

「――」

 素早く辺りを確認し、右斜め前方に砂埃を確認する。

 砂埃の規模から推測して、20から30騎の部隊。

 旗は……、ある。

 この時点で野盗の可能性はかなり低くなった。

 わざわざ自分の正体を明かす野盗は少ないからだ。

 身分を偽っている可能性は捨てきれないが……。

「……」

 そんなことを当たり前に考えている自分に気付いて苦笑した。

「戦場では当たり前のことだったからなー」
 
 むしろこの距離まで気付かずに接近されていたら華琳に殺される。

 改めて、旗印を確認しようと目をこらす。

 第一希望は【曹】。

 次点で【夏候】。

 いや、この際【魏】の軍旗であればいい。

「――」

 わずかに緊張しながら視認できる距離まで待つ。

 どんどん俺に近づいてくる部隊。
 
 旗印が、やっと確認できた。

 その旗印は――。

「――【関】」

 俺が知っている武将の中で【関】の旗印はただ1人――蜀の勇将『関雲長』。 

「全軍止まれ!」

 はたして、騎乗の美しい少女は俺の前で部隊を止め、そして名乗った。 

「我が名は関雲長! 貴殿の名は?」

 美髪公の名に恥じぬ、艶のある黒髪の少女だった。

 服からはち切れんばかりに自己主張している胸も、以前と変わりない。

「俺の名前は北郷一刀です。魏では『天の御遣い』なんて呼ばれていました」

 俺の名前を聞いた瞬間、関羽さんは目を見開いた。

「――やはり、貴殿が」

 そこで関羽さんは馬を降り、俺の前までやってきた。
 
「城から流星を認め、慌ててお迎えに伺いました。我ら蜀は、貴方様のお帰りを心からお待ちしておりました。我が主、劉備玄徳に代わり礼と心を尽くしてお迎えいたします」

 関羽さんは、まるで華琳に頭を下げる桂花みたいに俺に一礼した。

「そ、そんな――こちらこそありがとうございます。わざわざ迎えに来ていただいて」

 俺も慌てて頭を下げた。

 
 俺がこちらの世界に帰ってきて、最初に会ったのが関羽さんだった。

 あとでこのことを知った華琳には「そう。一刀は私より関羽に会いたかったのね」なんて散々言われたっけ。
はじめまして!

深原雨音と申します。

この『真・恋姫無双 魏伝』なのですが、以前に『TINAMI』という投稿サイトで、lainという名前で連載していた作品になります。

諸事情により、今後はこちらの『小説家になろう』でお世話になることにしました。

『TINAMI』の時から読んでいただいている方にはお手数をおかけしてしまいますが、何卒ご理解とご了承のほど、よろしくお願い申し上げます。


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