Side???
八月三十一日。
薄暗い闇の中、俺は一人立っていた。
目の前にあるのは、魔法陣。
夥しいほどの数を誇る、黒い魔法陣。
……俺は、それらの前で、一人立っていた。
「……」
『計画』の進行は、着々と進んでいる。
時間がまだ少しだけかかりそうだが、それでも後一ヶ月程で終わるだろう。
生き血は後十人分。
魔力の方も蓄えなければならない。
「……ハァ」
自然とため息が出てしまう。
……呆れと同時に、ここまでやった自分の労力の使い方にも、だ。
「これもすべて、『計画』を実行する為」
『計画』……それは、俺が何年もの完成を祈願していた、復讐。
あの日……俺は失った物がある。
それは……。
「俺は、この『計画』を完成させて、すべてを壊す」
そのためには……まだ足りない。
『計画』を完成させる為の素材が、まだ足りない。
「……仕方ない。今夜も向かうことにするか」
魔法陣を背にして、俺は歩いていく。
……この時期は学校に学生が歩いていない。
もとより、時間帯的にもうほとんど学校に人がいない状態でもあるのだが。
「なら、今夜は街を歩いてみることにするか」
外に抜ける道を利用して、俺は夜の街に出る。
―――さぁ、今宵も宴の始まりだ。
Side小野田
八月三十一日。
夏休みの宿題の一部に、読書感想文があったことを忘れていた俺は、夜まで図書館に入り浸っていた。
この街の図書館に、夜の九時まで開いている図書館が、一つだけあったからそこに世話になっていたということだ。
「まっ、おかげで読書感想文も終わったし、宿題も完璧だな」
我ながら一日で読書感想文を終わらせるとは……頑張ったと思う。
E組は、他のクラスよりも宿題が少し多く出されるからなぁ。
この読書感想文も、S組とかだとやらなくていいそうだ。
……ずるいなぁ、S組。
「なら俺がS組になればいいじゃないか……と思うけど、それが出来たら苦労しないよなぁ」
EからSに上がるなんて、どれだけ努力しても無理な話だ。
……せめてDかCにはあげないとな。
この前実家に帰ってきた時なんか、
「アンタ、いつの間にかそこまで落ちぶれてたの!?」
とか何とか言われたっけ。
初めて入った時は、これでもC組だったんだけどなぁ。
けど、クラス分け試験であの二人に当たってしまったのが運のつきだったな。
……こうなったら、明日のクラス分け試験で、いい成績を取ってやる。
「……と、意気込みを入れたって、点数が変わるわけでもなんでもないわけだけど」
ヒートアップし、一気にクールダウン。
……はぁ、こんな調子で今度のクラス分け試験を乗り切ることが出来るのだろうか。
と、その時だった。
「うっ……!」
突如、言いようもない殺気を感じる。
……何だこの殺気は。
今まで生きてきた中で、感じたことがないほど強いものだぞ。
……まるで、これから人でも殺そうとでもいうような勢いだ。
「……まさか、噂の通り魔?」
「……」
暗闇にまぎれている為、姿かたちを確認することは出来ない。
けれど、その強すぎる殺気から、敵がどこにいるのかは把握することが出来た。
「どこの誰だか知らないが……俺を狙おうなんて、無駄な話しだ!」
ゴウッ!
風の塊を作り、俺はそれを、恐らくは通り魔であろう人物に投げつける。
……手ごたえはありだ。
「ふっ……つまらぬ者を倒してしまった」
「……どうした?この程度か?」
「……な、に?」
いつの間にか、俺の背後に回っていた。
……まずい、対策をすることが出来ない。
せめて、相手の顔だけでも……。
俺は、通り魔の顔を確認する為、首だけを後ろに向けた。
「……なっ!お、お前は……」
「……我が命の糧となれ、愚かな者」
そのまま俺は、背中を、裂かれて……。
不穏な空気が漂う中。
彼らの夏休みは、幕を閉じたのだった。
次回より、いよいよ雷山塚高等学校も二学期となります。
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