第七部 『幼馴染』
「・・・あぁ〜もうダメだ!耐え切れない!!・・・なぁ黒羽の事一発ぐらいぶっ飛ばしてやっても構わねぇよな?志保・・。」
――あれから一ヶ月がたった。
蘭は新一の気持ちを知りもしないで快斗とイチャついている。
今は昼休み・・・新一は志保と一緒に屋上で相談に乗ってもらっていたのだ。
「ダメよ。そんな事したら余計に貴方が彼女に嫌われるだけよ?・・・そんなに耐え切れないのなら、思い切って自分の気持ちを蘭さんにぶつけてみれば?」
「!!だめだ、できない・・・・っ、くっそ〜!そんな事・・。」
(そんな事・・・今、幸せそうなあいつらに言えるわけ・・)
新一は頭をガリガリかきむしりながらそう思った。
その時、
バンッッ!
いきなり屋上のドアが開いた。
「はぁ・・・・つくづくかわいそうな人ね・・新一君?」
驚いて振り返るとそこには蘭の親友、園子が立っていた。
「園子・・・お前も知ってたのか?」
「あったりまえでしょ?あんなにイチャイチャしてたのに・・・。今なんて・・こうだもんね。」
園子は呆れた顔をしていった。
「・・・・ねぇ、蘭さんっていつから黒羽君と付き合ってるのかしら?」
そこまで、口を出さなかった志保が言った。
「ん?・・あぁ、あれはね。何かいつのまにかああなってたらしいんだ〜・・。」
「・・・へ?」
新一はポカンと口を開けた。
「新一君。快斗君が転校してきたのは知ってるよね?」
「あ?ああ。」
「・・・でも何でああなったかは私もよくわかんないんだ・・。」
しばらく沈黙が続いた。
「・・・そういうことね。なんとなく分かったわ・・。」
『え!?』
二人ともビックリして言った。
「鈴木さん、ちょっといいかしら?」
「え?う、うん。」
志保はいきなり園子を呼び出すと、屋上への階段を下りていって、新一に聞こえないぐらいのところまで来ると足を止めた。
「あのね・・蘭さんは初め工藤君が好きだったでしょ?彼女、よく工藤君を想って泣いてたそうじゃない・・。そこで黒羽君が転校してきた。彼女は性格、声、顔まで瓜二つの彼に工藤君と重ねてしまって、好きになってしまったんじゃないかと私は思うの・・。」
「・・・・確かに・・私もそう思う。」
そこまで真剣に聞いていた園子は言った。
「わ、私その事新一君に知らせてくる!!」
「待って!」
ダッと走り出そうとした瞬間、園子は志保に腕をつかまれた。
「な、何で・・?新一君にこの事を知らせておいた方が・・・絶対、楽なはず・・!?」
ビックリして振り返った園子は志保の顔を見て言葉を失った。
志保の目からは、涙がこぼれていたのだ・・。
「ダ、ダメ。この事は絶対に工藤君には言わないで・・!彼は、自分でそのことを突き止め彼女を取り戻してから彼女の口から真実を聞く権利があるのよ・・。私たちが言ってはいけない。彼は、彼女の口から本当の言葉をもらうの・・。」
「・・・・志保さん・・。」
(あぁ、志保さん・・・・あなたも新一君の事を愛してたのね・・。その気持ちが痛いほど伝わってくる・・)
園子は悲しい笑みを浮かべて志保の頭をそっと撫でた。
「うっ・・・・く・・・。」
(・・・・志保さん)
「・・・志保さん。私、蘭に新一君と快斗君の事どう思ってるのか聞いてくる。」
「え・・・?ちょ、ちょっと鈴木さん!?」
ダッッ
志保がそう言いかけた時にはもう遅かった。
園子は走って昇降口の方へと走っていってしまった。
「鈴木さん・・・。」
(志保さん、待ってて!私が、私が真実を確かめてきてあげるからっ)
園子は走りながらそう思った。
******
「らーん!!」
「ん?」
その声に蘭と快斗が振り向いた。
今は部活も終わって二人は一緒に帰るところだったらしい。
「ど、どうしたの?園子。」
「何?どうした?」
「ハァ・・ハァ!快斗君、ゴメン。ちょっと席はずしてもらえる?」
「え?あ、ああ。」
「ごめん快斗!すぐ終わらすから先に帰ってて!ってちょっと、何よー園子〜?」
単刀直入に言われたので快斗も少し戸惑った。
だが、問答無用といった感じで園子はかまわずぐいぐいと蘭の腕を引っ張っていった。
蘭は園子が返事も返してくれないので呆れた声で言った。
「?どうしたの、園子。何か困った事でもあったの?今日は快斗の誕生日だからできるだけ早く用事は済ませたいんだけど・・・。」
ピクッ
「快斗君の?」
「うん!この前、新一に手伝ってもらってプレゼント買ったんだよ?私、男子が好きなものって全然分かんなかったから、新一と一緒に快斗が好きそうな物一緒に探したんだぁ、って言ってなかったっけ?」
蘭が幸せそうな顔をして言った。
(新一君が・・・。そんな事一言も聞いてない。・・新一君、辛かったよね、なのに頑張って蘭のために探してあげたんだ。快斗君のプレゼント・・)
しばらくの沈黙が続いていた。
「ね、ねぇ園子ー?どうしたの、あ、まさか何か怒ってる?って・・えぇ!?」
蘭が戸惑った様子で園子の顔を見たとき、驚いだ。
園子は絶えられなくなって涙が零れ落ちてしまったのだ。
「どうしたの園子!?」
蘭がおどおどしながら聞いた。
「ねぇ何か・・・。」
「ねぇ蘭。私達って親友だよね?」
「え?」
急に聞かれた蘭は驚きの表情を見せた。
「何言ってるのよ!あたりまえでしょ!?」
「そう、ありがと。・・・それじゃあ・・・・新一君は?」
「新一・・・?」
「あ、あいつはただの幼馴染よ・・・。」
その時、蘭が少し暗い表情を浮かべているのを園子は見逃さなかった。
「じゃあ快斗君は?」
「かいと?あいつは私の彼・・彼氏だよ!!」
「本当に?」
「本当だよ!」
「ふぅ〜ん・・・。」
(蘭・・・・・・。あなた、新一君の気持ちが・・分からないの!?)
そう思いながら園子は言った。
蘭は早く逃げ出したそうな顔をしていた。
また、少しの間沈黙が続いた。
そして園子が自分の思いをいっきにぶちまけてしまった。
「蘭・・・新一君の気持ち分かってるの!?」
「し、新一の気持ち?そ、そんなの知るわけないじゃない!」
「あんたねぇ、それでも新一君の幼馴染!?」
「な・・・っ!?」
蘭は黙ってしまった。
園子の目には涙が溢れ出している。
(た、確かに快斗のプレゼント選んでくれてる時はずっと寂しそうな顔してた・・。いっつもハイテンションで意地悪な奴だったのに・・・・。)
「し、新一君と一緒に快斗君のプレゼントを選んでる時とても悲しそうだったでしょ?」
「え・・・・?」
園子の言葉に蘭は驚いてしまった。
自分の心を見透かされているように園子の瞳はまっすぐ蘭を捕らえていた。
「その顔はそうらしいわね。それじゃ、私が言えることは一つだけ・・・・。快斗君と新一君を重ね合わせないで!・・蘭が苦しかった事は知ってたよ、気持ちが抑えられない事も・・・私には、分からないけど・・・・でも!いつの間にか、知らないうちに人を傷つけてる事って・・あるんだよ?」
バタバタッ
園子はその言葉を言い残すと一目散に駆け出してしまった。
蘭はそこでずっと立っていた。
園子のその言葉が、何度も繰り返して耳に痛く鳴り響いていた。
――いつの間にか人を傷つけてるって事・・・あるんだよ?
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