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蝕−ショク−
作:尾継也太



蝕:27


 突如、境生の間の抜けた声が聞こえた。
「お邪魔しまーす」
「遅かったな。だが、もう終わったよ」
 どうやら栄都と玄関で鉢合わせになったらしい。
「……それで皆救われたのか」
「救う?」
「まだ君はそんな事言っているのか……呆れた奴だ」
「呆れてくれて結構。だがお前言ったよな? 問題を先に解決した方がって」
「フン、覚えていたか」
「ああ、いつもなら『問題を先に解いた方が』って言うはずだからな」
「いずれにせよおな……じ」
 何かが倒れるような音がした。
「おい栄都! どうした? 道明いるかっ!」
「は、はいっ!」
 急いで玄関に向うと、境生が栄都を膝に抱えていた。
「どうしたんですか」
「分からん、急に倒れた」
「とにかく病院へ。あ、外に運転手さんが居ますよ」
「良し、そっち持ってくれ」
 境生と二人で栄都を車まで運ぶと、白い運転手が慌てて聞いた。
「ど、どうしたんですか?」
「分かりません。僕らが乗せますから、とにかく急いで病院へ」
「そ、そうですね」
 そう言って運転手は急いで自分の持ち場へと戻り、後部座席のロックを解除した。
 慎重に栄都を後部座席に乗せていると、栄都がほんの僅か目を開いた。
「良し、意識は戻ったな。大丈夫か?」
「どうやら借りを作ってしまったようだな」
 瞼を持ち上げる事さえ困難であろう栄都だったが、声は意外と確りしていた。
「けっ、お前の存在自体が借りまくりだっつーの」
「フン、ならばこの勝負に君が勝てば、僕の名をくれてやろう」
「だーれがそんなもんいるか。良いからさっさと病院行って来い」
 そう言って荒々しくドアを閉めると、境生は運転手にお願いしますと言いお辞儀をした。
 運転手はありがとうございますとだけ言ってお辞儀も会釈もしなかったが、どうやらそれは時間が勿体無いからで、早々と車を動かし去っていった。
 

 
「栄都さん、大丈夫ですかね?」
 栄都を乗せた車が去ったあと暫く境生の指示を待ってみたが、何のアクションも無かったので僕から聞いてみる事にした。
「多分な……」
「先生が言っていた栄都さんがちょっと変ってのは『解決』の事だったんですね」
「ああ」
 反応が鈍い。
「でも『解く』と『解決』ってそんなに違いますかね?」
「あいつが過程専門でおれが結果専門」
「ああ、なるほど」
 境生は未だにぼんやりとしていた。きっとショックだったのだろう。
「じゃあ、結果の方を出しに行かないと」
「そう……だな、良し」
 僕はようやく立ち直った境生に栄都がした解説と青葉の状態を簡単に説明し、再び青葉宅に戻った。
 そしてまた立ち眩んだ――







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