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蝕−ショク−
作:尾継也太



蝕:23


 耳を劈くエンジン音にようやく耳が慣れた頃、境生達を乗せた軽トラックが青葉の家へ到着した。
 庭には昨日、哉来を運んだ白い車が停まっている。車内を良く見ると真っ白な運転手が座っていた。
「もう検査結果でたのか」
 車から降りながら境生が言った。
「帰ってきてるんですかね、哉来君」
「じゃないとあの車は使わないだろう」
「ですね……どうします?」
「おれはとりあえず雅ちゃんの家に行ってくる。そうだな、お前は栄都を止めといてくれ」
「自信ないです」
 止めるという行為が何を指すのか道明には良く分からなかったが、いずれにせよ栄都の意思に反する行動は取り難いと思ったし、それは境生にしか出来ない仕事だと思った。
「じゃあ話を聞いとくだけで良いや」
「了解です」
「じゃ」
 そう言って右手を軽く上げ、雅宅に歩いて向おうとする境生の背中に向って、道明が言った。
「先生……」
「ん」
「この件が終わったら、僕……辞めます」
 振り返り、そうかとただ一言だけ言った境生の顔は、暗くて道明には確認できなかった。
「すいません」
「謝る事ないさ」
「でも……」
 何か言おうとする道明を手で制し、境生は雅の家へと歩を進める。
「分かってる、前にもあったから。じゃあまた後でな」
 そう、前にもあった。だから――でも――早かった――早過ぎだ――くそ――
 境生の舌打は湿った大気に干渉されて、あまり響かなかった。







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