蝕:15
栄都は隣に座っている少年を隙間なく観察していた。横顔は凛として、美しい部類に入るだろう。もっとも人として見ているのか、それとも美術品として見ているのか、それは栄都自身にも判断出来なかった。
フム――僕が判断に迷うとは――
少年に対する興味が湧いたのもこのためである。
あいつみたいだな――
栄都は自分の中に巣食った境生を追い出すように頭を振ると、少年を見つめた。
少年は俯き加減で微動だにせず、ただ静かに、そこに存在した。
一人だけの世界にあって目は死んでいない。少年の眼は、目の前のただ一点を静かに見つめている。それはあたかもそこに自分の世界を構築する、そんな頑強な意思を感じさせた。否、それは光りのようなのかもしれない。ただ真っ直ぐに、誰にも曲げられぬ、誰にも触れられぬ――
栄都は少年の唇にそっと唇を重ねた。
慣性力だけが支配する遮断された空間に、車内に設置された電話の鳴らす極めてシンプルな呼び出し音が突如鳴り響いた。
沈黙に耐えかねた運転手が発言する機会を窺っていた時で、思わず肩をびくつかせたが、相変わらず少年は動かなかったし、栄都の受話器を持ち上げる動作にも全く澱みはなかった。
「来たか。良し、ちょっと待て」
そう言うと栄都は速やかに車を停めさせ、後部座席を降り助手席に乗り換えた。
「いいぞ、繋げ」
その言葉とほぼ同時に、車の前部と後部を遮断するパネルが動き出したが、その間も、少年はやはり微動だにしなかった。
|