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二つの光
作:みつば



夢を与えし者の手


大学生になって3日目。
そんな実感が沸かないのは、大学での生活が高校のそれと何ら変わりがないからだと思う。退屈な授業も、窓の外から聞こえてくる音も、少なくとも今の所は…

ただ、一つだけ大きく変わったと言えるのは



自分を取り巻く人間の種類…だろうか?





4階の教室、その窓際の席に座って頬杖をついている快斗の視線が捕らえているのは…東才美術館。地名の入ったその名からも推測できる様に、西洋風に作られたその建造物は東才大学から程近い場所にあった。


結構大きい建物なんだな…敷地も広そうだし。まぁその方が警備も手薄になるから、好都合なんだけど。予告状も出さなきゃいけねぇし、今日辺り下見に…


「何見とるん?ボーっとして」

「そりゃあ次の予……え?」

何の違和感もなく投げ掛けられた質問に思考が無理矢理中断された為、流れに飲まれて思わずとんでもない事を言いかけてしまい、慌てて振り向くと、


「おはようさん!」

ニカッと白い歯を見せて、朝の挨拶をする服部平次の姿があった。そして彼はそのまま当然のように快斗の隣に座る。 

「…で?何見とったん?」

「別に…何かを見てた訳じゃねぇよ。ただ外見てただけ」


この状況で一番自然だと思われる返事を返すと、幸い彼は納得してくれた様で別の話題を持ち出してくる。

遅れて来たもう一人の名探偵もやはり当然のように服部の隣に座る。この席順にはもはや苦笑するしかなかった。

追う者と追われる者がこんなに近くにいるなんてありえねぇよなフツー…



その後は、なかば半強制的に学食に連れて行かれたりしたのを除けば特に変わった事はなかった。
家に帰り、10分も経たないうちにまた出掛ける。行先は東才美術館…









 
入口は正面に一つ、関係者用の裏口と美術品搬入口。3階建てで屋上は…なし、窓は硬化ガラスだな。階段の場所は…

老人に扮した快斗は、建物の内外を隈なく目に焼き付けていく。どんな小さなモノも、その瞳から見逃される事はない。



ふむ…まあまあかな。

美術館から満足気な老人が出て来たのは、それから2時間ほど後の事だった。 















「またキッドが予告状出したの!?」


東才大学の学生食堂。たった今大声を出して食堂にいる全員の視線を浴びたのは、快斗の持っていた新聞部のチラシを覗き込んだ中森青子である。号外と称されたそれには“怪盗キッド予告状”の文字。


突然の大声に、昼時でごった返していた食堂内の騒音が一瞬消える。だが、朝から散々テレビで報道されていたので、周りの人間が驚く事はない。知らなかったのは、寝坊をしてテレビなど見ている余裕もなかった青子くらいのものだ。


明らかに予告状を出した人物の事を快く思っていないような彼女の様子を見て、平次は、横にいる新一に小声で尋ねた。

「あの姉ちゃんはキッド嫌いなんか?」

探偵という特殊な立場にある自分達はともかく、あのエンターテイナーに対して敵対心を持つ若者は珍しいと感じたから故の質問だった。


「あぁ、たぶんあの子が中森警部の娘だからじゃねぇか?」

同様に小声で返された答えに、成る程ね、と納得する。

あれだけ毎度の如く父親がやられとったら嫌いにもなるわな…


「キッドなんかお父さんがすぐ捕まえるんだから!」

そう言いながら、青子は快斗の持っていたチラシをひったくるとビリビリに破いている。


…あっちゃー、相当頭にきとるみたいやな。

平次は、苦笑しつつも先程からなぜか目が離せずに、斜め前に座っている彼らをずっと黙って観察している。


「バーロ!あんなヘボ警部に怪盗キッドが捕まるかよ」

反論しながらチラシの切れ端を右手に集めていく快斗。欠片をすべて集めた彼は一度グッと右手を握り、すぐに開く。その瞬間、



……は?


箸を持っていた平次の手がピタリと止まり、快斗の手元に目が釘づけになった。見せ付ける様に青子の顔の前で振られた快斗の手には、折り目すらない元のチラシの姿。ビリビリに破かれた破片は一瞬にしてどこかに消え失せている。


何や今の…?いや、マジックなんやろけど。

自分はマジックの種を暴くのは得意な方だと思う。実際、以前マジックショーを観に行った時もほとんどのトリックの種明かしをしてしまい、和葉に怒られた事があるくらいだ。

それなのに…


唐突に目の前で行われた奇術、それに青子が驚く様子はない。つまりそれは、今のは彼らにとって日常的であるという事。 


「黒羽ってマジックできるんやな」


何気なく呟いた言葉によって、和葉達の視線が快斗に集まる。


「え、そうなん?」

「わぁ、見てみたい!」



場の流れで…というか、自分の一言がきっかけで始まった即席マジックショー。わずか数分の間に次々と行われた奇術、それなのにたったの一つもトリックを見破れなかった。
それは隣にいる東の名探偵も同じだったらしく、なんとも間の抜けた顔をしている。


「器用なもんやなぁ…」

思わず漏れる感嘆の言葉。



最後にマジックで出した3本の薔薇の花を、快斗は蘭、和葉、青子にそれぞれ渡しショーを終了する。


「ハハ、キザな奴…」


その様子を見た新一は、少々呆れ気味な笑いを漏らした。


















「アカン!英語のレポート忘れとった!」 
急に隣から響いてきた大声に思わず耳を塞ぐ。

「っるせぇな…何なんだよレポートって」

同じく耳を塞いでいたらしい逆隣りから抗議の声が聞こえる。



…ところで、だ。今は名探偵たちと一緒に6人で学校からの帰宅中、それはもういい。嫌だって言っても青子が聞かねぇだろうしな。
ただ、気になるのはこの並び方。どうして俺は探偵に二人に挟まれているのか。落ち着かねぇったらありゃしねぇ…


「なぁ、黒羽も行くやろ?」

「は?…あ、あぁ」

いきなり話を振られても何の事だかサッパリだ。なんとなく返事しちまったけど…どこに行くって?


「じゃあ決まりやな!」

「おい服部、何勝手に決めてんだよ」

「まぁ、ええやん」


新一の抗議を軽くあしらい、平次はニカッと笑った。


更新遅れ&進展なくてスミマセン(´Д`)みつばの力不足でございます。











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