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二つの光
作:みつば



攻防の果て


「予告1時間前だ!全員気を引き締めていけよ!もう奴は変装してこの場にいるかもしれないんだからな」


現場を取り仕切る中森警部が大声を出す。ホール内にいるのは、中森警部と警官が30名ほど、それに宝石展の主催者であり宝石の持ち主でもある上品な老人。その全員に緊張が走る。



「念のため、今から全員の顔を引っ張りたい所だが…」


と言いかけ全員の顔が引きつった時、ホールに新一が入ってきた。


「中森警部!警官の配置の変更をお願いしたいのですが」

そう言いながら新一は中森警部に駆け寄り、ビル内の見取り図を広げる。


「14階より下に配置されている警官を………っっぃぃいひゃいです、なかもりけーぶ!!」



新一の言葉が途中で止まったのは、中森警部に顔を引っ張られたからである。
頬が赤くなり、ジンジンするまで引っ張られた後、


「いやぁ、すまんなぁ工藤君。警官の配置変更なんて言うからキッドの変装じゃないかと思ってなぁ!ははははは!」


そんな言葉を投げかけられた…。新一は、目の前で意地悪そうにニヤニヤ笑う人物にうっすら涙で滲んだ恨みの視線を送りながら、絶対に私怨だと感じた。 

こんな青二才に現場の指揮をとられることが気にいらないのだろうということは分かっている。新一だって中森警部の、刑事としての腕は悪くないと思っているのだが、いかんせん相手が相手だ。このままでは終わりは見えない…。


今後、中森警部には必要以上に近寄らないようにしよう。会う度に顔を引っ張られたのでは堪らない…
そう決心し、さりげなく彼から少し離れるとまた説明を始めた。



「14階より下の階に配置されている警官をもっと増やしてほしいんです。このホールがある19階から16階と、14階から下に警官を多く配置してください」


「そんなことして、どうなるんだ?19階から上は警備しないつもりか!?」


「あ、それと15階から14階に下りる階段の途中に5人ずつ!」

警部の質問には答えず、新一は思い出したように付け加える。


「階段の途中だぁ!?いったい何のために…?」


新一の指示した配置に疑問を抱いた中森警部に向かって、大丈夫ですよ と笑いかける。


「僕にまかせてください。必ず奴を捕まえてみせますから!」 

















さぁ時間だ…


そろそろ行きますか!


予告3分前、警備の者達の緊張が最高潮に達していた時、ホールに一人の青年がゆっくりと入ってくる。ホール内の者達は彼の姿を見つけると驚きをあらわにした。


ホールに入ってきたのは…


「工藤探偵!どうしたんです?警備室で待機のハズでは…」


そう尋ねてきた警官の方に向き直り、長い人差し指を口元まであげて、『黙って』と、ポーズで示す。薄い笑みと共に…。 


先程までの彼とは少し違う雰囲気が漂っている。

中森警部が不審に思い彼に近づこうとした瞬間、どこからか鳥の羽音がした。
慌てて音源を探そうとした者の視線の先には一羽の白い鳩。そして、その鳩はあろうことか、たった今ホールに入って来た工藤新一の肩に降り立った。



「It's show time!!」


よく通る声は、白鳩を肩に乗せた青年から…


そしてその瞬間、ビル内の照明がすべて落とされた。 


「キッドだーっ!!宝石を守れぇっ!」


暗闇の中、中森警部の叫び声が聞こえ、間髪入れずにバタバタと警官が宝石の入ったガラスケースに走り寄る。



そんなに大勢寄って来たら逆効果だってことに、どーして気付かないかなぁ?

不謹慎にもそんなことを考えながら、暗闇でも見える目を使ってさっさと宝石を盗んだキッド。もっとも、今は工藤新一の姿だが…。
そして、警官の中でもみくちゃになっている中森警部を見つけると、


「では、またお会いしましょう中森警部」


彼にだけ聞こえる大きさで囁いて、ホールから脱出した。まだ暗いままの廊下を一番近い階段に向かって走る。 


今夜は屋上には向かわず、正面玄関を突破する算段だった。逃走手段としてもはや定番化してしまっているハンググライダーを敢えて使わず、警備の穴を突くためだ。もう一つ理由はあるのだが…



後は、この宝石がパンドラかどうか確かめるだけ!
ただ、少し簡単に事が進みすぎだよな…
あの名探偵が素直に引き下がるなんて考えられねぇし!絶対なにか企んでやがるな…



そんな彼の予感は当たってしまう訳で…
動きの良すぎる警官たちから逃げているうちに、下に降りるどころかどんどん上に追いやられて結局、屋上まで来てしまった。



 
ハァ…

微かにこぼした溜息は、唸りをあげて吹き荒む風音の中に消えていく。もう探偵の変装は解いて、いつもの白いステージ衣装に戻っている。


ハンググライダーを使わないもう一つの理由…
それはこの強風だ。こんなんじゃ命がいくつあっても足りやしない。



それでもとりあえず宝石を月にかざしてみる。



ハァ…


本日二度目の溜息が風に飲み込まれていく。



その時、屋上の扉がギィィと開いた。
扉から出てきたのは、勝ち誇ったような笑みを浮かべる名探偵… 












 
俺はゆっくりと屋上に通じる扉を開いた。
そして、そこに立っていた人影を見て思わず笑みをこぼしてしまう。
独特の冷涼な気配を漂わせて佇む我が好敵手、怪盗キッド…



「なるほどね。俺はここまで誘導されてたって訳か」

そう言う怪盗の口調からは少しの焦りも感じられない。むしろ楽しんでいるようにも見える。だが、今の状況においては自分が優勢であることには違いない。


「あぁ、今日は風が強いんでね。自慢の羽は使えないんだろ?」



「そこまでお見通しか、さすがだな名探偵は」


猶も楽しそうに奴は笑いながら答える。

何故笑っていられるんだ?まだ何か勝算があるとでもいうのだろうか… 


……まぁいい。とりあえず奴に聞きたいことがあるんだ。


「どうして組織壊滅に手を貸した?」


上着のポケットから、あの時拾った白い羽を出しヒラヒラと振りながら問い掛けた。


突然の質問に驚いたのか、モノクルに隠れた瞳が一瞬揺らいだ気がした。



「別に手を貸した訳じゃないさ。俺は俺の目的のために動いただけ…」


予想外の返答に何も答えず、言葉の真意を考え初めてしまった俺に怪盗は付け加える。


「お前は目的を果たしたかもしれねぇが、俺は果たしていない。まだ終わってないんでね。今捕まる訳にはいかねぇんだよ」 



マズイ!本能的にそう思った。でも、もう遅い。
奴の白い手袋にはいつのまにかボールのようなモノが握られていて…
 その手を上に振り上げると、勢いよくボールを地面に叩きつけた。途端に吹き出した煙幕のような煙は、風下にいた新一に物凄いスピードで迫ってくる。



「じゃぁな名探偵!」

すぐ横を通り過ぎていく奴を追おうとして、体の異変に気付いた。


くそ!しびれ薬か!

思うように動かない腕を必死に動かして、何とか無線を掴む。

頃合いを見計らって、

「屋内にいる警官の皆さん、全員15階に集まって下さい!」


そう指示すると新一はガクンとその場にうなだれた。


読んで下さりありがとうございます!この話の中では初めての対決でした。今回は服部君は現場に登場しなかったんですが次回からは出ると思いますので…











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