思い出は冬のように寒い
クリスマス一色の街並みは親子連れが多く、笑顔で溢れていた。色とりどりの華やかなツリーやイルミネーションが点灯している。少女は目線だけで通り過ぎる数々の親子を見つめる。この少女の両親はある日突然、殺されてしまいそれ以来温もりのある手には触れていない。ーこんな冬には素敵なドレスを着て、母や父とクリスマスパーティーをしてたんだっけ…ー金髪の緩くカールされた母の髪を触っていた片手を見る。「母上の髪、柔らかくてきれ〜なの〜‼︎」こんな素敵な髪が羨ましいと思っていた。「父上、お仕事をしてる姿が一番かっこいいの〜‼︎」いつも世界の中心には父がいた。例えどこかで殺されたとしても、父なら避けたり、相手に怪我を負わせる事だって出来たのにどうして死んでしまったの?母も父も殺した仇は必ず私が打つわ。例えそれが人外だったとしても。私の中にある闇は屈辱と恥をもたらされて造られた物。父上の代わりに私が中心に統治させて私の方から犯人を引き寄せるの。だから、早く貴方の姿を見せて……………?
人混みに呑まれそうになった時、私の片手を握る執事の手は温かだった。体温を持たない癖に、私の心を読み取ったのね。執事の名前を呼んだ。その顔は笑顔がある。
ーどこまでも意地が悪い人ねー
ー手を冷やすよりも良いでしょう?ー
ーそうね。温かいわー ー剥がれてしまわないようにしっかりと捕まってくださいねー少女の身体全身に伝わって、ポカポカな陽気の様に温まっていく。こんな体温もたまには悪くないのかも。