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第2話 夢は屯(たむろ)する (その929)
「大阪に、通天閣ってあるんでしょう?」
美由紀は続けてくる。

「ええ、市内の南の方ですけれど・・・。
大阪城と並んで、大阪のシンボルのようなところです。」
源次郎は、もう随分と昔に行った通天閣界隈を思い出す。
近代化が進んでいる大阪で、今でも昔の面影を強く残した独特なエリアでもある。

「その近くにある劇場をメインに活動しているらしいわ。サリーさん。
行ったことない?」
「い、いえ・・・、通天閣の方は・・・。。
でも、そうした方がこの札幌まで・・・って考えると、凄い事ですねぇ。」
「そうよ。皆、そうして全国を渡り歩いているの。」
「み、美由紀さんもです?」
源次郎は、そう言いながらも、美由紀がそうした遠征をしているというイメージはなかった。
あくまでも東京の人って印象が強い。

「そ、そうねぇ・・・。私は、まだそこまでは行ってないかな?」
「・・・・・・。」
源次郎は、その美由紀の言葉の意味が理解できなかった。

ふたとおりの解釈が出来る。
ひとつは、それほどまでにあちこちには行っていないという意味だ。
そして、もうひとつは、自分はそのレベルに到達していないという意味もある。


「サリーさんみたいに、特定のお客さんが付いてもいないしね。」
美由紀がそう補足してくる。

「えっ! 特定のお客?」
源次郎は、その意味も分らない。
それでいて、どうしてか聞き捨てならない感じがする。

「そ、そうねぇ・・・。熱狂的なファンってところかな?
全国、どこの劇場に出ても、必ずその劇場に足を運んでくれる。」
「えっ! 全国どこでも?」
「そう。その踊り子さんのスケジュールを把握していて、それに合わせて遠征してくれるの。」
「そ、それは凄い・・・。」

「私には、まだ、そうした熱狂的なファンもいないし・・・。」
「そ、そんなぁ・・・。」
源次郎は、美由紀の言葉を信じたくはなかった。

「やっぱりね、他人に無いものを持たないと駄目なのよ。」
「・・・・・・。」
「サリーさんは、背中に刺青があるの。
それが何とも色っぽくって・・・。
初めて見たとき、女の私でも息を飲んだぐらいだし・・・。」
「い、刺青・・・ですか・・・。」

「私も入れようかな?」
「えっ! そ、それは・・・。」
源次郎は、美由紀に挑発されていると感じた。


(つづく)





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