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申し訳ございません。作者の手違いで1話分が飛びましたので修正をさせていただきます。
第2話 夢は屯(たむろ)する (その90)
それから30分ほどして、今日、2回目の舞台が終わった。

美由紀もそうだが、源次郎も今回は落ち着いていたし、どこかしらに余裕があった。
それは、もう美由紀の舞台に迷いが無いということであり、源次郎からすれば、舞台の様子を殆ど気にしなくても良くなったということになる。
さらには、源次郎は、このあとどうすればよいのかが理解できているから、待つ時間をうまく使えるようになっている。

もう、出てくるだろう。
源次郎は、美由紀が舞台化粧を落として、そして外へ出られるように、裸の上にワンピースを被って出てくる時間が予想できていた。
そして、その予想したとおりの時間に、美由紀が上気した顔で帰ってくる。

「ものすごいお客さんだったよ。立ち見も一杯。」
美由紀が嬉しそうに言う。
「あっ!それと、あの秋本さん。ほら、あの運転手さん、ちゃんと来てくれてたわよ。」
美由紀の顔が、ほらね、と言うように笑っている。

源次郎も段取りには抜かりは無い。
預かっていたハイヒールをそこに揃え、そして、例の笠野の名刺もちゃんとポケットに忍ばせている。
その名刺の裏には、希望された公演期間も鉛筆で記されていた。
こうしたところに、源次郎の性格がよく現れている。


先ほどと同じように、2人は「美由紀の育った家」に向う。
これは、美由紀が改めて言ったのではなく、「また、次の休憩時に来るね」と言い残していたのを源次郎が覚えていたから、自然とそのような動きになる。

商店街は、夕食の材料を買う主婦達でごった返している。
「これから、大安売りの時間だからね。」
美由紀が、その雑踏を目の端に捕らえて、そのように言う。
笠野の話は、部屋へ上がってからにしよう。
源次郎は、そのように考えていた。


店の前まで行くと、暖簾がかかってなく、入り口の戸も少しだけが開いているだけとなっていた。
「あれ?お店、閉めちゃったんですかね?」
源次郎が美由紀に確かめるように言う。
美由紀は笑って、
「ううん、午後の3時から6時までは休憩なのよ。私たちと、お・な・じ。」
と説明する。
「食べ物商売ってね、開けてても無駄な時間があるのよ。」
その言葉に、源次郎は「なるほど」と感心する。

そして、そうした休憩時間だと分っていて、美由紀がこうしてやってくるのは、なんだかんだと言いつつも、この家には愛着もあり、あの育ての親とも言うべき「おじさん、おばさん」夫婦にも、それなりの思いやりや感謝の気持があるからなのだろうと源次郎は思っている。

「そうなんだよなあ、親って、何でも言えそうなのに、決してそうじゃない部分があるんだよなぁ。」
源次郎は、ふと、大阪にある自分の家のことを思い出して、そう呟いた。
その呟きを耳にした美由紀が、
「じゃあさ、源ちゃんも、ここを自分のうちだと思ってよ。私と一緒に、そう思ってよ。ねっ!」

そう言ったかと思うと、美由紀は少しだけ開いていた表の戸を勢いよく開けて、大きな声で、
「ただいま!」
と声を上げた。
源次郎がふと見ると、美由紀のその顔は、なぜかしらはにかんでいた。


(つづく)



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